ホーム > 調査・提言 > レポート > 介護保険制度に関する区市町村アンケート集計結果
対象 | 都内区市町村介護保険主管課 |
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実施主体 | 東京都社会福祉協議会 |
実施状況 | 平成10年度以降、毎年実施 |
実施時期 | 平成13年12月7日~21日 |
実施方法 | 郵送による送付、郵送による回収 |
回収 | 62分の62区市町村(100%) |
回答方法 | 原則的に選択肢による回答(一部回答) |
調査項目 |
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区市町村による実態把握からは「まだまだサービスの利用方法が分からない利用者も少なくない」「サービスを選択する上で利用者は十分な情報が得られていない」などの課題が明らかになっている。事業者の情報を冊子にまとめるほか、自分の利用目的や希望に合ったサービスの探し方やケアマネジャーの選び方のポイント、契約を結ぶ際のチェックリストを作成する区市町村もみられ(報告書5頁)、区市町村の立場で利用と選択を支援する情報提供の工夫が徐々に広がりつつある。
とりわけケアマネジャーは利用者が最初に選ぶ事業者であり、要介護認定の申請時に窓口で説明しながら名簿を渡す区市町村もみられるほか、市民の会による相談窓口が設置されるなど、人を間に介した情報提供も重視されつつある。そして、上記のようなチェックリストの作成や第三者評価情報をはじめとする、選べるための情報の加工と発信が求められている。
痴呆性高齢者が地域で生活していくためには、さまざまな支援メニューが必要となっている。グループホームの整備促進や、痴呆性高齢者のケアマネジメントや介護技術の向上のための支援に取り組む区市町村もみられる。そして、判断能力が十分でない人に対する成年後見制度等の利用支援のあり方を検討する区市町村も少なくなく、区市町村長による成年後見制度の申立のケースや措置による入所等の実績もみられるようになった(報告書20頁)。
また、例えば、介護者の入院や家庭内での虐待がある場合など、在宅生活における緊急事態に対応する緊急ショートステイ床を確保している区市町村もみられる(同42頁)。介護保険制度になってからも、区市町村が措置的な対応を図らなければならないケースがあることをうかがうことができる。
苦情対応のための窓口、第三者機関やオンブズマン制度の設置に取り組む区市町村が増え始めている。そして、苦情を確実に受け止め、解決するための仕組みとともに、より身近な所で相談できたり、苦情に至らない困りごとの段階で解消する予防的な視点も必要であり、身近な地域で苦情等を日常的にキャッチするための工夫に取り組む区市町村がみられる(報告書11頁)。
また、サービスの質の向上と選べるための情報の充実に向けて、区市町村独自のサービス評価事業もみられる(同12頁)。サービス評価事業を検討する検討委員会を設けている区市町村も少なくなく、今後、サービス評価の取り組みが広がりをみせていくと考えられる。
介護保険がスタートして以降、各区市町村では利用者満足度調査などさまざまな実態把握に取り組んでいる(報告書30頁)。そうした実態把握とともに、平成15年度からの第2期介護保険事業計画に向けて、平成14年3~4月頃に事業計画作成委員会の設置を予定する区市町村が多くみられる。新たに委員会を設置する区市町村のほか、第1期に作成した計画の推進を担っている介護保険運営協議会等の組織を中心に計画づくりをすすめようとする区市町村もみられる(同50頁)。
第2期の計画づくりの準備が始まった現時点で、区市町村が挙げる介護保険制度の実施における課題としては、サービス評価をはじめとするサービスの質の向上、情報提供のあり方や低所得者対策、基盤整備などが挙げられている(同62頁)。
介護保険制度がスタートしてまもなく2年。保険者としての区市町村の役割がより明らかに発揮されてきており、利用と選択を支える情報提供のあり方や、苦情を確実に受け止め解決し、サービスの質の向上につなげていく取り組みについて、区市町村独自の創意工夫が広がりつつある。また、平成15年度からの「第2期区市町村介護保険事業計画」の作成に向けて、地域の実態把握や作成委員会の設置準備がすすめられてきている。
今回のアンケートを通じて、次のような点が明らかになった。
介護保険制度の内容や利用方法を周知する方法は、「広報紙で周知」「パンフレットを独自に作成」「ホームページで利用方法を紹介」の3つが一般的な方法となっている。また、在宅介護支援センターが身近な情報提供の拠点として位置づけられているほか、介護保険主管課に専任の相談員を配置するなどの相談体制をとる取り組みも多くみられる。さらには、出前学習会や出前相談の実施や地域相談員の設置など、地域に出向いた情報提供にも取り組まれている。
利用と選択を支えるためのガイドブックを作成する区市町村もみられる。杉並区では『介護保険利用者ガイド~介護サービスを上手に使うために~』を平成11年9月から発行し、利用目的や希望に合った介護サービスの内容の紹介のほか、契約の意味や内容を紹介している。また、板橋区立おとしより保健福祉センターでは、『よりよいサービスを利用するためのチェックリスト』を発行し、事業者を選び契約を結ぶ時に確認しておきたいチェックポイントを整理している。その他にも、調布市では介護保険事業計画の策定委員会に参加した公募委員を中心に発足した市民の会が市民の立場からの相談や情報提供を行っている。
指定居宅介護支援事業者については、要介護認定の決定通知を送付する際、指定居宅介護支援事業者の名簿を同封する方法が、最も一般的な情報提供となっている。名簿を要介護認定の申請や訪問調査の際に手渡して説明している区市町村もみられる。また、事業者全般にアンケート調査等を実施して、サービス内容や事業者が記入した特徴を冊子などにまとめている区市町村も多い。「特養入所希望者の申込順によらない緊急優先度の調整を区市町村で行っている」とする回答は7区市町村でみられた。
その他に、多摩市では市のホームページで事業者ごとの契約書や説明書を公開し、事業者を選ぶ前に契約書の内容を個別にみることができるように工夫している。
介護保険法施行時にホームヘルプサービスを利用していた利用者に対する経過措置として、所得税非課税世帯の低所得者を対象に利用者負担を軽減する国の特別対策を実施するとともに、それを法施行後の新規利用者や訪問介護以外の利用者にも適用したり、所得の基準を国よりも緩やかにして対象者を拡大する区市町村独自の取り組みがみられる。
また、上記とは別に平成14年1月からの東京都独自の利用者負担軽減措置として、区市町村民税非課税世帯等の要件に該当する生計困難者を対象に、9種類の在宅サービスについて利用者負担額を事業者の申出により減免する措置を活用する区市町村もみられる。
16区市町村が「成年後見制度の利用支援に関する検討会を設けた(ている)」と回答している。区市町村長による成年後見制度の申立に関する手続を定めた要綱を整備する区市町村もみられる。その他の取り組みには、「成年後見制度の利用相談の窓口を設けている」、「成年後見制度の利用に関する経費の助成を行っている」がある。
また、「成年後見制度の区市町村長による申立を行った実績がある」と回答した区市町村は17区市町村となっている。また、5区市町村が「措置による介護保険施設への入所や介護サービスの提供を行った(ている)」と回答している。
主に以下のような連絡会がさまざまな形態で設置されている。区市町村が設置しているものもあれば、事業者の自主組織として設置されているものもあり、設置の形態もさまざまとなっている。
介護支援専門員を対象とした区市町村独自の研修では、主に「ケース検討」「給付管理業務」「医療機関との連携」「福祉用具、住宅改修」「痴呆性高齢者の理解」「成年後見制度」「コミュニケーション技術」などがテーマに取り上げられている。
その他に、品川区では、平成14年5月に社協の介護福祉専門学校に現場スタッフの再教育の場として「品川福祉カレッジ」を開設し、介護支援専門員や主任ヘルパーの人材育成を行うことを予定している。
介護保険制度の導入に伴い、契約制度における介護サービス利用者の保護とサービスの質の向上のためのメニュー事業として実施されている「介護サービス適正実施指導事業」のメニュー事業を活用した取り組みには、例えば、「痴呆専門医や保健婦等から構成する痴呆専門チームを設置し、ケースカンファレンスなどの専門的な指導等を通じて痴呆性高齢者に対するケアマネジメントが適切に行われるよう支援している」(品川区)などの取り組みがみられる。
基盤整備の取り組みでは、「痴呆性高齢者グループホームの整備助成による設置促進」が複数の区市町村で見られるほか、「余裕教室を活用した通所施設の整備」(中野区・杉並区)や「PFI方式を活用した施設整備を検討中」(中央区)、「高齢者市場協議会の運営」(足立区)などの回答がみられる。また、ケアマネジメントへの支援として、武蔵野市では、市独自に「ケアマネジャーガイドライン」を策定している。
平成12年度には「居宅介護支援(ケアマネ)の利用者満足度調査」「居宅介護サービス利用者満足度調査」が多くの区市町村で取り組まれたが、平成13年度は「要介護認定を受けたが未利用者の実態把握」「特養入所希望者の実態把握調査」に取り組む区市町村が多く見られた。その他に独自の調査として、「ケアマネジャーグループインタビュー」(杉並区)、「利用料金調査」(板橋区)、「ケアマネジャー実態調査」(江戸川区)、「若年者に対する制度理解等調査」(奥多摩町)などの取り組みがみられる。
上記調査を通じて明らかになったことに関する自由記述では、主に次のような課題が挙げられた。
区市町村の地域の実情に応じて、高齢者の生活支援、介護予防、生きがい活動支援、家族介護支援等のメニュー事業として実施されている「介護予防・生活支援事業」の実施状況は、以下のような回答(→略)になっている。
メニュー事業を活用した取り組みには、「痴呆性高齢者を抱える家族やグループホーム近隣の地域住民を対象に痴呆性介護に関する講習を行い、痴呆に対する知識や理解を深めて、痴呆性高齢者の介護技術の向上を図っている」(杉並区)などの取り組みがみられる。
地域の実情に応じて、区市町村が実施する高齢者が安心していきいきと暮らせるためのメニュー事業や独自事業を支援する「高齢者いきいき事業」の実施状況は、以下のような回答(→略)になっている。
メニュー事業以外の独自事業では、ふれあいを目的とした入浴事業やねたきり高齢者のための大掃除サービスなどの取り組みがみられる。
(1)(2)以外の区市町村単独事業による取組みでは、緊急ショートステイ床を確保して、緊急時対応の支援策を講じている区市町村が多くみられた。
「法人格のない団体の実施するサービスを基準該当サービスとして指定している」と回答した区市町村は15、「東京都の地域福祉推進事業補助を活用してNPO、市民団体の活動を支援している」と回答した区市町村が10となっている。その他の取り組みでは、杉並区が「NPO等介護保険事業者資金貸付」、足立区が「あだち一万人の介護者家族会」の組織化への支援、武蔵野市が社協の行う助成事業である「ミリオンプロジェクト事業」に対する補助を行うなどの取り組みがみられる。また、国分寺市では、介護保険の普及を図るための公募市民による「介護保険サポーター制度」が創設されている。
本庁の介護保険課を苦情相談の窓口として苦情対応の専任職員を配置したり、在宅介護支援センターを苦情相談窓口に位置づけるほか、苦情対応のための窓口の設置、苦情解決のための第三者機関やオンブズマン制度の設置、身近な地域で苦情をキャッチするための地域相談員の設置などの取り組みがみられる。
サービスの質の向上を図る取り組みには、利用者満足度調査の実施や、集積された苦情を事業者の連絡会に報告し、サービス改善に反映する取り組みが多くみられる。また、サービス評価事業の検討や実施が広がりつつある。サービス評価事業に関わる主な取り組みは次のようになっている。
平成15年度からの第2期介護保険事業計画の作成に向けて、現在、各区市町村で地域の実態把握がすすめられている。計画作成委員会の設置時期は、平成14年3~4月頃に予定している区市町村が多く、委員会を新たに設置する区市町村のほか、第1期計画の推進を担っている介護保険運営協議会等の組織が第2期の計画づくりも担う区市町村もみられる。第2期の計画づくりを担う組織における委員には、最大で9名の公募委員が参加する区市町村もみられる。
介護保険制度の実施における課題として各区市町村から主に次のような課題が挙げられた。
(1)利用者に対する情報提供、(2)介護保険制度利用の拡充、(3)要介護認定の適正な実施、(4)要介護認定期間の原則6ヶ月からの延長、(5)ひとり暮らし痴呆性高齢者への対応、(6)成年後見制度、福祉サービス利用援助事業の活用、(7)低所得者対策(保険料及び利用料)、(8)特養待機者の対策、(9)苦情対応、苦情解決、(10)サービス評価等サービスの質の向上、(11)ケアマネジメントの質の向上、(12)介護予防の取り組み、(13)介護保険サービス供給基盤の整備、島嶼部におけるサービス確保、(14)保険料の収納率向上、(15)介護保険の法定メニュー以外の配食、移送サービスの取り扱い