ホーム > 調査・提言 > レポート > 精神障害者福祉に関する区市町村アンケート 調査結果
調査名称 | 精神障害者福祉に関する区市町村アンケート |
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対象 | 区市町村精神障害者福祉主管課 |
実施主体 | 東京都社会福祉協議会 |
実施時期 | 平成16年1月6日~1月23日 |
実施方法 | 郵送による送付、郵送による回収 |
回収 | 62分の62区市町村(100%) |
調査項目 |
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回答方法 | 選択肢による回答および自由回答 |
精神障害者地域生活支援センターの設置状況については、設置している区市町村が全体の約6割となっている。都内多摩地区では、保健所が都立であるため、平成14年度からの精神障害者の社会復帰に関する相談助言、あっせん調整について新たに市町村に移管されている。精神障害者の相談業務は市町村の障害福祉担当課で行われており、18市3町村で精神の専任相談担当者が配置されていた。相談担当者は1~3名がほとんどで、職種は保健師が多くみられた。
地域生活支援センターの業務内容は相談事業に限らず、多彩なプログラムにより運営されている。窓口体制の充実と人口の多い区市での複数設置が必要である。
町村を除くほとんどの区市で取り組まれているが、派遣件数が10人未満の区市町村も全体の約6割を占めいている。
支援内容の約7割は「家事援助」であり、国の要綱には盛り込まれていない「外出支援」や「通院同行」を行っている区市町村もみられた。これは区市町村独自の判断で積極的に利用者のニーズに応えようとするものとして評価すべきものと考えられる。今後も精神障害者の特性やニーズに応じたサービス内容を現場の実践から創り出してゆくことが必要となる。
国の運営要綱では、精神障害者ショートステイ事業の運営主体を「市町村長が指定した生活訓練施設、入所授産施設、その他短期入所による介護等を適切に行うことができる施設」に限定している。こうしたことから、ショートステイについては「実施していない」が実に約9割をしめ、居宅生活支援事業の中でも最も低い実施状況であった。
入院するほどではないけれども一時的に手厚い支援が必要だったり、家族との距離を一定期間とることが望ましい場合の利用や、入院中から地域生活を体験する場としての利用が考えられるなど、そのニーズは決して低くはない。
精神障害者グループホームは41区市町で設置され、実施率は高いが、設置が1か所のみも多い。課題として居住プログラムの選択肢の拡大が指摘されている。
社会復帰施設整備の数値目標に関しては、全体の7割が未設定となっていた。
また、平成14年度前後に約半数の区市町村が何らかの形で区市町村内の精神障害者の実態把握を行っている。しかし、その調査時期が古かったり、対象者が作業所利用者のみに限定されているなど、まだサービスに結びついてない精神障害者のニーズの把握が必ずしもできていない区市町村もみられた。
精神障害者の就労支援相談窓口を設けている区市町村は少ないが、窓口を設けている区市町村では年間に千件単位での相談実績があり、就労をめぐる問題のニーズの高さが現れている。
「公営住宅の優先入居」を行っているという回答は少なく、都営住宅のほかに、区営住宅の入居にあたってのポイントアップのしくみや市営住宅の優遇抽選制度などが設けている区市町村もみられた。
また、世田谷区では、「居住支援制度」が実施されている。今後、多くの地域生活者を支えるためには、障害者、不動産屋、家主ともに安心して利用しやすい制度の早急に創設が求められている。
この調査は、精神障害者居宅生活支援事業及び相談事業等について、都内62の区市町村全てから回答のご協力いただくことができた。この調査結果は、今後の施策及び活動に役立てていける貴重な資料となることを期待したい。以下、全体的な考察と調査結果及びまとめについて参考にしていただきたい。
まず、相談窓口と地域生活支援センターの現状と課題の項目では、平成14年度からの多摩地区において保健所の相談の一部が市町村に移管されたため、市町村から地域生活支援センターへ相談業務の委託がされているところが増えてきている。また、ホームヘルプ事業の窓口業務を担っている地域生活支援センターもみられる。サービス利用調整会議は4割の区市町村で実施されており、その内容はホームヘルプの利用調整が中心となっていた。ホームヘルプ事業の実施状況はここ2年でほとんどの区市で実施されてきている。利用されている人数は各自治体10人未満が6割で、利用時間にも上限を付けている自治体もあった。今後はニーズに合わせた利用ができるように改善していきたいとの意見もあった。ショートスティは全区市町村うち7カ所でしか実施されていなかった。都立精神保健福祉センターの援護寮2カ所以外は自治体と契約がされていないと利用できない制度で、ショートスティの数も1施設2部屋程度と少なく、援護寮の増設と福祉ホームやグループホームでも利用できるよう制度の改善が必要だと考えられる。
居住に関わる社会資源では、グループホームが最も多く、現在都内に92カ所設置されている。しかしながら、区市町村内には1~2カ所の設置で、ほとんどのグループホームが入居待機の状態となっている。グループホームの増設や状況に即した利用できるような柔軟な運営が望まれており、援護寮や福祉ホームの増設も必要とされている。また、自治体での精神障害者を対象とした公営住宅の優先入居や民間アパート等を借りる際の公的保証人制度はほとんど実施されておらず、社会的入院の解消を進める上で切実な課題となっている。精神障害者の地域生活における障害者計画の取り組みや実態調査は、平成14年度からの居宅生活支援事業及び相談事業の市町村移管は、まだ日も浅いこともあり、市町村は区に比べ取り組みの遅れがみられた。区市町村内の実態を把握する調査方法では、多くが社会復帰施設の利用者やその家族を対象にした調査で、まだサービスに結びついていない人への調査の実施が充分行われていない。医療機関等と協力をしての調査の工夫が必要だと考えられる。社会復帰施設等の整備目標での具体的数値を掲げている区市町村は2割程度と少なく、早期に未設置区市町村において、数値目標を掲げた整備計画の取り組みが望まれる。
就労支援施策についての項目では、精神障害者は雇用促進法の雇用率の対象外であり、どの区市町でも就労支援の取り組みは弱く、就労支援の窓口を設けているのは10の自治体のみで、それも区に多く設置されている。精神障害者者の就労を希望するニーズは高く、対策が急がれている。
最後に、精神障害者をより正しく理解していただくための啓発、広報活動はどの区市町村も弱く、行政としての積極的な取り組みを期待するとともに関係者や市民参加型で進められていくことが大切と考えられる。
東京都社会福祉協議会 福祉部 児童・障害担当 貫井
TEL:03-3268-7174