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知的障害者施設の医療、看護の実態調査報告書

東京都社会福祉協議会知的発達部会に登録していう会員施設は284施設あります(平成18年4月現在)。これらの施設で働く看護師は、少数派であり、施設内では医療専門職としての重責を担っています。これまでの調査や学習会の参加者からの意見において、知的障害者施設で 働く看護師は、次のような疑問や不安を抱いています。
○施設での看護師の役割について明確でないこと。
○利用者の高齢虚弱化のこと。
○地域の医療機関の受け入れがわるいこと。
○医療看護技術や知識の遅れがちになること。
○支援スタッフとの連携に関すること。
施設における看護師の業務と医療に関する問題を明らかにし、利用者に安全でより良い医療的なサービスを提供できるようにするため、施設で働く職員同士が問題を共有し、具体的な解決の方向を見極める必要があると考えこのアンケートを実施しました。

調査概要

調査対象 知的障害者施設で東京都社会福祉協議会の会員施設全て(平成18年4月現在)
総施設数 284件(重複3施設含む)(入所120件・通所164件)
実施方法 アンケート用紙を発送し郵送にて回収
実施期間 平成18年6月23日~平成18年7月18日
調査責任者(調査時) 東京都社会福祉協議会知的発達部会 保健医療スタッフ会
事務及び集計担当 東京都社会福祉協議会福祉部 児童・障害担当(池谷)

調査結果のあらまし

1.アンケート全体像

(1) 回収率
62% 175件(回答施設は、成人施設・定員50名以上・30歳以上の方が多数)
(2) 職員内訳(常勤、非常勤、嘱託など)
○看護師の人数は全体的に1,2名のところが多い。
○又医師は1,2名が施設に来ている。

2. 看護師及び看護業務について

○看護師の経験が長い方が多く、勤続年数も4年以上の方が多い。
○通所施設では勤続年数が入所よりもやや短めで、1~3年程度の看護師が多い。
○積極的に知的障害者施設で働くことを希望した看護師が多い。
○看護師が夜勤を行っている施設は少数派である。
○夜間の医療的対応は、看護師の無償のアドバイスが支えている。
○夜間に利用者が不調の際は看護師が直接出向いているケースも少なくない。
○施設での看護師業務は、医療機関に勤めていては経験しない業務(保険証の管理や支援費関連の請求など)を行っている。
○施設で働く看護師は、その技術や知識の遅れをほぼ独学で補っている。

3. 医療環境について

○多くの知的障害者施設では、協力医療機関を持っている。
○入院は付き添いや個室対応が必要で、費用負担も多い。
○施設に医師は来ているが、来る日数や滞在時間は限られている。
○知的障害者は診察や治療、健康診断など断られることがある。

4.高齢虚弱化について

○高齢虚弱化により、寝たきりや嚥下困難になった方が複数入所している。
○高齢者への対策はほとんど進んでいない。

5. 支援スタッフとの関わりについて

○看護師はその専門性が上手く生かされていない場面がある。
○看護師は支援スタッフとの関係作りに努力している。

6.その他について

○医療スタッフのいない施設での救急マニュアルは必要
○マニュアル作成は医療の専門職以外の職員が行うケースが少なくない。
○健康診断書の必要の有無や、必要とされる検査項目や期限にはばらつきがある。
○糞尿や血液検査(感染症の有無)のチェックも行われている。
○保健医療スタッフ会活動が現場に伝わっていない!

知的障害者入所施設の医療・看護の解決策(案) ~アンケート結果から~

  1. 施設での看護の専門性について、“施設看護の専門性の確立や「知的障害者とは?施設での看護とは?」に答えられるマニュアルなどが必要である。”
  2. 施設内医療の安全性の向上について、現実問題を見据えながら“利用者にとって安全で必要な医療をどこで誰がどのように提供できるのかを各施設の判断に任せず専門的に検討する必要がある”。
  3. 知的障害者への医療機関の差別的扱いの是正について、“現状の打開策として、上手な医師との付き合い方のマニュアル作成などを考えると共に、全体的な解決策として、精神障害者の合併症ネットワークへの参加や独自のネットワークを作るなどの対策を考える必要がある”。
  4. 知的障害者の高齢虚弱化対応について、ADLが低下している方が多く入所している、特別養護老人ホームや重症心身障害者施設などの施設のサー ビス(介護予防・スローな行事)を参考にしながら、“高齢化虚弱化した方々も豊かで充実した生活が送れるようなサービス方法を提案していく必要がある”。
  5. スタッフとの連携のために、“看護師の専門性の理解をどのように進め、何を行えばよいのかを考えていく必要がある”。
  6. 医療スタッフが在籍していない施設のための、医療専門職が監修した「基本的な救急対応マニュアル」の作成が必要である。
  7. 入所時の健康診断について、“健康診断書の提出はなぜ必要なのか。どのような項目が適切で、どのくらいの有効期限が適切なのか基準づくりを行い、施設利用の際かかる保護者の負担の軽減が必要である”。
  8. 東京都社会福祉協議会保健医療スタッフ会について、“保健医療スタッフ会への協力を施設に要請しながら、今後の活動の活性化が必要である”。

 

 

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