【表紙】 社会福祉NOW キャリアパスを活かした 人材育成・研修制度の在り方 トピックス ●豊島区民社協 コミュニティソーシャルワークフォーラム ●平成28年度国予算案・平成28年度東京都予算原案 連載 社会福祉法人の社会貢献・地域貢献J (社福)東京武尊会(青梅市) ●学習と食事の両面で地域の親子の支援をする 明日の福祉を切り拓く NPO法人Ubdobe 岡勇樹さん ●エンターテインメントの力で福祉に新しい風を吹かせる 北海道 羅臼 スケソウダラは毎年10月〜2月頃まで漁が行われ、 メスの卵はタラコとして、 オスの精巣はタチとしても有名だ。 【NOW】 キャリアパスを活かした 人材育成・研修制度の在り方 少子高齢化が 急速に進行する中、 今後福祉分野は大きく担い手の 裾野を広げていく必要があります。 一方で、福祉人材の確保難はきわめて 深刻な状況にあり、このままでは従来の サービス水準を維持することすら 困難になりかねないと危惧されます。これに対して 国は総合的な人材確保対策を打ち出し、 人材の量的確保と質的確保を両輪として 「量と質の好循環」の確立をめざすとしています。 職員の育成が人材の定着と確保にもつながる。 そうした福祉事業所における キャリアパス構築へのアプローチを考えます。 キャリアパスは職員へのメッセージ 平成27年2月、国の社会保障審議会福祉部会が「2025年に向けた介護人材の確保〜量と質の好循環の確立に向けて〜」をとりまとめました。 それによると、現在の施策を継続するだけでは2025年には38万人の介護人材が不足するとの見通しを示した上で、@参入促進(新たな人材の確保)、A労働環境・処遇の改善、B資質の向上の3つのアプローチによる総合的な政策対応を図るとしています。このうち、「労働環境・処遇の改善」に関する取組みの中には『将来の見通しを持って働き続けるためのキャリアパスの整備』が位置づけられています。 ここで「キャリアパス」とは、それぞれの事業所において職位(職務上の身分、職能資格)や職階(役職名、ポスト)ごとに求められる職務内容や昇格・昇進の要件、給与等を定めたしくみを指します。これが明確になっていることにより、職員は自らの職業人生の中で目標と見通しを持ってモチベーション高く働き続けることが可能となります。そして当然のことながら、福祉事業所においては質の高いサービスを実現できるスキルやそれを支える組織をマネジメントできる能力が”キャリアアップ“の必須要件でなければなりません。 こうしたしくみを整備することにより、事業所として質の高いサービスを実現するために職員に日々成長することを期待しているとの大切なメッセージを送ることになります。 職員からすれば、自らのスキルを磨き、また組織全体の成長に努めることが評価されるということは大きな励みになります。そして、そうした努力が利用者の満足や幸せにつながることで働きがいと自己実現が図られ、長く前向きに働き続けるための動機づけになります。さらに、そのように職員が生き生きとやりがいをもって働き続けられ、利用者にも感謝される職場は、新たな人材も集まりやすいといえます。これが福祉事業所がめざすべきキャリアパスを活かした「量と質の好循環」の考え方です。 制度は現場で活かされているか 福祉分野におけるキャリアパスの考え方は、実は平成19年の国の告示「福祉人材確保指針」の中ですでに示されています。また22年には介護職員処遇改善交付金(現在は加算)の中で、いわゆる「キャリアパス要件」が設定されました。 【要件T】職位、職責、職務内容等に応じた勤務条件や賃金体系等を定めること。 【要件U】職員の資質向上の目標・計画を立て研修の機会を確保すること。 事業所はこれらの要件を満たすことによって職員の処遇(給与等)改善に充てる報酬が加算されます。さらに、東京都では「保育士等キャリアアップ補助」も導入されています。 しかし、現状においてこうした国や東京都の方針や施策が果たしてどこまで事業所の現場に浸透し、実をあげているかは疑問もあります。 たとえば、福祉施設介護職員の平均勤続年数は5・5年、保育士は5・6年と全産業平均(11・9年)の半分にも満たない状況にあります(25年厚生労働省雇用動態調査、24年社会福祉施設等調査)。 また、介護職員に聞いた「過去働いていた介護の仕事を辞めた理由」は、『法人・事業所の理念や運営のあり方に不満があった』が23%と上位を占め、『収入が少なかった』(18%)や『結婚・出産・育児のため』(9%)を大きく上まわっています(26年介護労働安定センター調べ)。 一方で、人材育成の取組みとして『教育・研修計画を立てている』事業者は55%にとどまり、『能力の向上が認められた者は配置や処遇に反映している』と答えた事業者は29%に過ぎません(同)。 こうした状況からは、せっかくの奨励制度がありながらそれを現場で十分に活かせていない実態が見えてきます。それでは、キャリアパスのしくみと人材育成・研修制度を有効に機能させ、サービスの質の向上と人材の定着・確保の実をあげている取組みにはどのようなものがあるのでしょうか。 研修により成長とキャリアプランを 社会福祉法人武蔵野(東京都武蔵野市)は、平成4年に設立された法人で、300名を超える職員が障害者・児童サービスおよび高齢者サービスを幅広く展開しています。 武蔵野では、事業の拡充につれて法人としての一体感を高めることや、職員の育成、優れた人材の確保といった課題に直面しました。そこで5年前にプロジェクトチームを立ち上げ、人材育成の強化に取組んできました。 その特徴としては、職員に求められるスキル(専門性)とマネジメント(組織性)の両面を明示した等級制度を構築し、それに人事考課を含めた評価・目標管理制度をリンクさせていることがあげられます。そして評価・目標管理にあたっては、資格取得や研修への参加、OJTを含めた人材育成への取組みが重視されています。 研修制度に関しては、専門性を培う研修と組織性を培う研修を両輪とし、法人共通では組織研修と部門を超えた専門研修(権利擁護やリスクマネジメント等)を行っています。また、事業ごとの専門研修は各部門や事業所ごとに実施しています。このうち法人共通の組織研修は、初級・中級・主任・係長級・施設長の階層ごとに実施し、東京都福祉人材センター研修室が実施する『キャリアパス対応生涯研修課程』(以下「生涯研修課程」とする)の各課程にも参加しているとのことでした。 新任職員に対するOJTにはとくに力を入れ、OJTリーダー(いわゆるメンター)によるきめ細かな指導と支援が行われています。OJTリーダー向けの研修も半年ごとに行われ、外部のスーパーバイザーから指導を受けています。 武蔵野では、新卒等の若い職員の採用にも力を入れていますが、こうした取組みの成果もあり、近年ひとりの退職者もなく、職員はモチベーション高く働き続けていると言います。 研修担当の後藤明宏施設長は「地域社会に役立つという法人の基本理念を実現していくためにも、職員は一体感を持って同じ方向性ですすんでいかなければならない。そのためには人事制度や研修制度を通して職員に働きかけることが大切」と述べます。そして「こうした取組みによって個々の職員が法人の一員であるという自覚が高まっている。今後はさらなる職員の成長とキャリアアップを期待している」と話します。 武蔵野が運営するワークセンター大地の主任である大石千笑子さんは、法人の研修体系の一環として上述の生涯研修課程の「中堅職員重点強化研修」に昨年10月に参加しました。大石さんは「これまで後輩の指導をあまり意識することなく、職員は自分で学ぶものだと思っていた。業務上の失敗も個人の資質のせいにしてきた。この研修に参加して職員の育て方や、チームワークを活かし同じ方向性で仕事をすすめることの重要性を学ぶことができた」と話します。 また同じく5月に「初任者研修」に参加した松下真也さんは、「入職してはじめての研修だったが分かりやすいプログラムが用意されており、グループワーク等を通じて自分の足りないところをしっかり振り返ることができた。こうした外部研修への参加を含め、武蔵野は研修が充実しており職員が成長する環境が整っている。今の部署で力を付けて、将来的には相談援助の業務を担いたい」と抱負を語ります。 人材育成は利用者支援そのもの 尾崎眞三さん(ルーテル学院大学非常勤講師)は、武蔵野でOJTリーダーのスーパーバイザーを担い、生涯研修課程でも講師を勤めています。 尾崎さんは「人材育成に力を入れることは利用者支援そのものだ」と福祉事業所における人材育成の重要性を強調します。その上で、「自分の将来を描けない職員に利用者の未来や幸福を描くことはできない。したがって人材育成を通じて職員がキャリアデザインを描き目標をもって仕事にあたれるようにすること。そのためには事業所の経営理念と期待する職員像を改めて明確にすることが大切だ」と話します。 キャリアパスの構築が職員の成長とサービスの向上をもたらし、働きがいのある魅力的な職場づくりにつながる。人材確保難が叫ばれる今こそ、福祉分野における意欲的な取組みが望まれます。 *の2課程は東京独自の特別研修。 それ以外の4課程は 全国社会福祉協議会が開発した 全国共通の課程。 【トピックス】 このまちで みんなと生きてゆく 豊島区民社協 コミュニティ ソーシャルワーク フォーラム 27年12月12日・13日 平成27年12月12日(土)、13日(日)、としまセンタースクエアと大正大学にて、豊島区と豊島区民社協主催「このまちでみんなと生きてゆく〜コミュニティソーシャルワーク・フォーラム〜」が開催されました。 1日目は、豊島区長で豊島区民社協名誉会長の高野之夫さんと、東北福祉大学大学院教授の大橋謙策さんより基調講演がありました。2日目は3つの分科会に分かれてシンポジウム形式で行われました。 豊島区のコミュニティソーシャルワーカー(以下CSW)は全8圏域に2名ずつ、計16名配置され、区内22か所の区民ひろば*を拠点に活動しています。CSWとして地域のニーズを収集したり、地域資源の把握を行うのは、社会福祉士の資格を持つ社協職員です。社協のネットワークを活用することで、広域の問題や複合的な問題にも取組むことができ、地域住民や関係機関と協働で地域づくりをしています。高野さんは「CSWの活躍により、地域の福祉コミュニティが構築され、新たな支え合いの基盤ができていく。今後もそれぞれの地域特性に合ったしくみづくりをすすめていきたい」と話しました。 個の問題を地域の問題として ―第一分科会「コミュニティソーシャルワークによる支えあいのしくみづくり」 大阪府豊中市社協では、平成16年に市と社協が協働で地域福祉計画を策定しました。校区福祉委員会に住民による『なんでも相談窓口』の設置をすすめるとともに、そのバックアップ、セーフティネットの体制づくりなどの役割として、CSWの配置を計画に位置づけています。豊中市社協地域福祉課長の勝部麗子さんは、「CSWは制度にはまらないニーズの発見力・解決力を高め、この10年で地域のちょっと気になるという声から35の協働プロジェクトができてきている」とCSWの取組みを報告しました。 埼玉県飯能市のなぐり広場は、安心して暮らせる地域をめざす個人、ボランティアグループ、民児協、自治連名栗支部が連携し、学び合う・楽しみあう・支え合う多様な活動を展開しています。住民として社協の検討会や活動計画策定に積極的に関わり、旧村ごとに住民組織をつくる計画を策定しています。代表の松原恒也さんは「自分たちのやりたい活動ができる地区社協にするため、社協とパートナーシップ協定で対等な関係にした」と話しました。 香川県琴平町社協は、自治会から福祉委員を委嘱し、地域住民とともに、発見・見守り・支援のしくみをつくっています。琴平町社協事務局長の越智和子さんは、「職員は住民とのキャッチボールから、地域の中のしくみや場づくりを行う役割。住民の声・知恵から、社協は何ができるか、何をしなければいけないか学ばせてもらっている」と報告しました。 コーディネーターを務めた文京学院大学人間学部准教授の中島修さんは、「地域の歴史や社会情勢の変化をふまえ、個の問題をいかに地域の問題として伝えていくか、それが地域の中に包摂をつくっていく」とまとめました。 CSWの人材育成に力を ―第2分科会「CSWの人材育成」 沖縄県浦添市社協は、沖縄県社協と協働で「CSW研究会」を立ち上げ、養成プログラムをつくっています。スーパーバイザー会議やワーカー連絡会へ職員を派遣し、県社協の運営に協力しつつ、自社協のCSWの育成にもつなげています。 豊島区民社協はCSWが増える中で、OJT(全員ミーティングや事例検討会議、大学教授によるスーパーバイザー会議等)、OFF-JTやSDS(地元大学院の科目履修や外部研修への参加)に積極的に取組む等、人材育成の体制づくりに力を入れています。 日本社会事業大学准教授の菱沼幹男さんは「コミュニティソーシャルワークはチームアプローチであり、CSWを配置すればできる実践ではなく、横断的連携を促進するしくみが重要。また、地域生活支援のスキルとして、地域アセスメント、特に地域全体のニーズ把握が弱い。今後は個別事例に即して地域支援を考える研修が必要」と人材育成の視点について指摘しました。 コーディネーターの大正大学名誉教授、石川到覚さんは、「コミュニティソーシャルワークの機能が期待される中、人材育成により一層力を入れていくことが必要」とまとめました。 役割を固定化せず、 元気なときは支え手側に ―第3分科会「社会的孤立を防ぎ地域力を高めるコミュニティソーシャルワークの展開」 秋田県藤里町社協会長の菊池まゆみさんは、「藤里町は、働く世代の10人に1人がひきこもっている実態を把握した。彼らを弱者としてではなく地域の担い手として捉え、地域で働ける場を提供している」と報告しました。 全国ひきこもりKHJ親の会代表の池田佳世さんは、「中年の引きこもりが増えている中、当事者同士が集い話し合う『ひきこもり大学』を開催している」と報告しました。 豊島区民生児童委員協議会会長の寺田晃弘さんは、「民生児童委員が区民ひろばでサロンを開催し、地域住民が話し合える場づくりをしている。さくら班は特養で開催し、地域の高齢者に加え、特養利用者や家族も参加している」と報告しました。 コーディネーターの大正大学人間学部社会福祉学科教授、神山裕美さんは、「支援する側、される側の役割を固定化せず、困ったときは気軽に頼み、元気なときは支え手側に回ることが大切」とまとめました。 主催した豊島区民社協地域相談支援課課長の大竹宏和さんは、今後の豊島区におけるコミュニティソーシャルワークの実践について「この地域の誰もが、人間としての尊厳が守られ暮らしていける社会を住民とともにつくっていけるかが最大の課題」と話します。 今後も各地域におけるコミュニティソーシャルワークの実践と全国的な広がりが期待されます。 *豊島区民ひろば 年齢や使用目的によって制限のあった、ことぶきの家や児童館などの既存の施設を、 年齢を問わず誰でも参加できる、地域の多様な活動の拠点として再編されたもの。 現在小学校区単位で設置されている。 平成28年度国および東京都予算案固まる 平成28年度国予算案 平成27年12月24日、平成28年度の国予算案が閣議決定されました。社会保障関係費は1.4%増に収められました。厚生労働省予算案は「女性・若者等の活躍推進」「健康長寿社会の実現」の大きく2つが目標となっています。 認知症高齢者の関係では、「認知症医療介護・連携の枠組み構築のためのモデル事業」「市民後見人育成・活用推進事業」が新規に盛り込まれています。 生活困窮者の自立支援については、子どもの貧困対策とひとり親家庭対策として、「子どもの学習支援事業の充実強化」「多子・ひとり親世帯等への保育料軽減の強化(幼児教育の段階的無償化等)」を位置づけたほか、「生活困窮者等の就農訓練・中間的就労の推進」が新規に盛り込まれました。 さらに、地域の福祉サービスに係る新たなシステムの構築として、地域の中核的な相談支援機関に包括的相談支援推進員を配置する「多機関の協働による包括的支援体制構築事業」の創設とモデル実施が新規に盛り込まれたほか、「子育て世代包括支援センターの箇所数増による全国展開」が位置づけられています。 この他に「子育て中の介護従事者への負担軽減の取組みの推進」「社会福祉法人における経営労務管理の改善に向けた支援」「農福連携による障害者の就農促進」などが新規事業となっています。 また、27年度補正予算案には、「生活困窮世帯の子どもに対する教育支援資金の拡充」「児童養護施設退所者等に対する自立支援資金の貸付」「待機児童解消加速化プランの前倒し」「保育人材確保のための取組みの推進」「離職した介護人材の届出システムの構築」が盛り込まれました。 平成28年度東京都予算原案 1月15日、28年度東京都予算の知事原案が発表されました。5年連続の税収増で、福祉と保健は5.0%増、22日に発表された復活予算案を合わせると5.4%増です。7つの重点配分施策には「保育・介護・医療人材の確保」「学びや仕事に意欲ある人々を支援する取組み」「障害者就業支援」の3つが位置付けられています。 高齢社会対策では、「暮らしの場における看取り支援事業」「認知症の人の在宅生活継続を支援するケアモデル事業」「特養整備促進に向けた調査検討事業」「特養の建物自己所有要件緩和に伴う新たな整備費補助」、低所得高齢者等の「地域居住支援モデル事業」等が新規事業となっています。 少子社会対策では、子どもに学習支援や食事の提供等を行う居場所を創設する区市町村に対して補助を行う「子供の居場所創設事業」「子ども・若者貧困研究センターと連携した調査研究」、家庭的養護を推進するための「グループホーム・ファミリーホーム設置促進事業」「児童養護施設退所者等に対するすまい確保支援事業」等が新規事業です。 障害者施策の推進では、「共生社会実現に向けた障害者理解促進事業」、都庁に就労経験を積む拠点を置く「東京チャレンジオフィス」「災害時こころのケア体制整備事業」「医療機関との連携による障害者就労促進事業」が新規事業に盛り込まれています。 福祉人材対策では、福祉人材の確保・育成・定着に向けた「福祉人材総合支援事業」が盛り込まれているほか、「介護職員宿舎借上げ支援事業」が新規事業となっています。 また、2020年の東京五輪後の地域社会も見据えた「ボランティアの気運醸成・育成支援」も重点施策に位置づけられています。 【マンスリー】2015年12月26日〜2016年1月25日 子どもの貧困対策 まとまる ●子どもの貧困対策会議は、ひとり親家庭・多子世帯等の自立を応援するとともに、児童虐待防止対策の強化についてまとめた「すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト」を公表した。自立援助ホームの対象年齢は大学などに通う場合、22歳になる年度末までの利用をめざす。また、児童養護施設等退所者のアフターケア事業の実施地域を拡大し、生活費や家賃相当額の貸付けを行うことで自立を後押しする。児童福祉法などの改正法案を28年通常国会に提出する方針。(12/21) ●障害者虐待、福祉施設従事者からの虐待が増加 ●厚生労働省は、「平成26年度都道府県・市区町村における障害者虐待への対応状況等」の調査結果を公表した。養護者による障害者虐待の相談・通報件数が前年より減少する一方、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の相談・通報件数は増加した。             (12/22) ●都における有料老人ホーム設置運営指導指針が改正 ●都福祉保健局は、都における有料老人ホームの状況等及び厚生労働省が定める標準指針の改正をふまえ、東京都有料老人ホーム設置運営指導指針を改正した。サービス付き高齢者向け住宅のうち老人福祉法で定める有料老人ホームの定義に該当するものを指針の適用対象に追加するなど。一部を除いて28年4月1日より適用。   (12/22) ●年金受給障害者の年間賃金、50万以下が半数 ●障害年金を受取りながら仕事をしている人の半数近くは年間の賃金が50万円に届かないことが、厚生労働省がまとめた障害年金受給者実態調査で分かった。             (12/25) ●世田谷区 重度の障害児や病児への保育を開始予定 ●世田谷区は28年10月から、重度の障害のある子どもや医療ケアが必要な子どもを預かる保育サービスを始める。新たに実施する「居宅訪問型保育」と「重症心身障害児施設」を整備し連携させる。居宅訪問型保育では家での保育が受けられ、重症心身障害者施設での療育と組み合わせて利用できる。               (1/7) ●多様な視点から介護の仕事を検討 ●「介護のシゴト 魅力向上懇談会」の初会合が厚生労働省で行われた。一億総活躍社会に向けた特別養護老人ホーム等の大幅整備も考慮し、2020年度(平成32年)までに約25万人の介護人材の確保が必要であると、最新の推計を明らかにした。今後、介護人材確保のための対策を総合的・計画的に推進するための検討が行われる予定。  (1/12) ●東京都オリンピック・パラリンピック教育開始 ●東京都教育委員会は、28年度から5年間、都内すべての公立の幼稚園、小学校、義務教育学校、中等教育学校、高等学校及び特別支援学校を対象に、「東京都オリンピック・パラリンピック教育」を実施する。共生・共助社会の実現に向け、子どもたちのボランティアマインドや障害者理解などを育むためのプロジェクトなどを計画している。 (1/14) 【連載】 学習と食事の両面で 地域の親子の 支援をする 社会福祉法人東京武尊会の取組み 社会福祉法人東京武尊会では、 平成27年1月から「武尊塾」を運営し、 意欲があっても学習塾に通えない小中学生を対象に、 無料の学習支援と、低額での食事の提供を実施しています。 本号では、 地域と協力して子どもたちへの支援を行う、 社会福祉法人による地域貢献の取組みを ご紹介します。 17時をすぎると、東青梅駅から徒歩10分の距離にある東京武尊会館に、学校や部活を終えた小中学生が次々とやってきます。外遊びや部活で汚れた靴をはきかえ、名簿に記入すると、2階の学習室へ。広々とした室内では、大きな机でみんなと一緒に宿題をする子、壁沿いの一人用の机で黙々と試験勉強をする子など、それぞれ思い思いに学習に取組んでいます。学習支援のボランティアとして来ている講師たちは、子どもたちの隣に座ってその様子を見守っており、時折ていねいに質問に答えています。そこにはまるで自宅の居間のような、家庭的な雰囲気が広がっています。 地域の子どもたちへの支援が 将来、地域全体の福祉につながる 無料の学習指導塾「武尊塾」は、学習意欲がありながら、さまざまな事情で塾に通えない子どもたちのため、社会福祉法人東京武尊会によって開設されました。平成27年1月以来、月曜日と木曜日の週2回、17時から21時まで、主に子どもたちへの学習支援と、食事の提供を行っています。 開設のきっかけについて、同法人の事務局長を務め、武尊塾の塾長でもある野村大悟さんは、「当法人は主に高齢者向け事業に取組んできたが、地域の高齢者を支えるのは、地域の若者や子どもたちだ。経済的な事情で塾に通えない子どもたちに、教育・食事をセットにした支援を行うことで、子育て世代の負担を軽減し、子どもたちの将来をより安定したものにすることができる。それがひいては高齢者を含め、地域全体の福祉に貢献することになる」と説明します。 そのため、東京武尊会は無料の学習塾であること、食事の提供を同時に行うことにこだわり、社会貢献活動として事業をはじめたのです。 学習と食事の両面で 親子を支援する 学習支援は、主に17時から19時まで行われています。講師は全員ボランティアで、近所に住む85歳の元教員、学校の授業がきっかけで来てくれるようになった高校生など、世代も所属もさまざまです。勤務が終わった後にやってくる法人の職員もいます。野村さんは、「ここで勉強する習慣をつけることで、学力の向上が期待できる。また、勉強だけではなく、相談や雑談ができる大人がいることは、孤立しがちな状況の子どもたちにとって大切なことだ」と話します。学習は、子どもたちがそれぞれ持ってくる宿題やテキストをもとに指導するという形式で行われ、寄附でよせられた本や参考書、パソコン等の設備も充実しており、子どもたちの学習に一役買っています。 19時からは夕食の時間です。調理ボランティアが1階の食堂で一から手づくりしたものを、希望する家庭の子どもに300円で提供しています。寄附で毎月届けられるお米や、地元の農家の方にいただいた野菜をたっぷり使って、近くに住む現役の料理人や主婦の方が、15時頃から準備してくれています。冷凍食品などの既製品は使わず、季節を感じられるような献立を心がけています。通っている子どもたちのなかには、保護者が食事の時間に帰って来なかったり、料理をつくらないという家庭も多く、野村さんは「できるだけ人の手がかかったものを食べ、人と食卓を囲む楽しさを知ったり、食事のマナーを学んでほしい」と言います。また、調理ボランティアにとっても、子どもたちの笑顔がかえってくるこの活動は大きな生きがいになっています。 食後には、勉強が終わった子どもから卓球やボードゲーム等で遊ぶ、レクリエーションの時間も設けられています。広い部屋に3台の卓球台が設置され、子どもたちが室内でも思い切り身体を動かせるような配慮がされています。休日や夏休みには、農業体験や合宿、介護施設へのボランティア等のプログラムを実施しており、大変好評です。 地域と協力して 子どもたちを育てたい 実際に事業をはじめるにあたり、子どもたちが集まるのか、ボランティアが確保できるのか等、多くの不安がありました。そこで、事前にパンフレットを青梅市内に配付したり、青梅市の部署に働きかけて施設においてもらったりと、広報活動にも力をいれてきました。口コミで知ってボランティアや寄附を希望する方も多く、現在では89名がボランティアとして活動に携わっています。野村さんは「今まで法人として地域に密着して事業を行ってきたことが、住民との信頼関係につながり、塾を運営する上で大いに助けられている。また、武尊塾がきっかけで法人を知ったという方も多く、この活動を通して、ますます地域とのつながりが深まることを期待している」と、地域と協力して支援活動を行う意義を強調しました。 また、職員の熱意に支えられている面も大きいと言います。法人の総務部長であり、副塾長を務める俵谷昌嗣さんは、「社会福祉法人は営利が最終的な目的ではない。職員には、社会福祉法人の所属であるという誇りをもって、社会貢献活動にも積極的に参加してほしいと考えている」と話しました。 利用登録人数は、活動をはじめた平成27年1月末時点では24名でしたが、12月末には56名にまで増加しました。その半数はひとり親家庭で育っています。市の生活保護課から紹介されてくる子どももおり、「ひとり親世帯が生活に困難を抱えがちであることは知識として知っていたものの、実際に事業を行ってみると、地域には本当に困っている子育て世帯、ひとり親世帯が多くあることがわかり、驚くと同時に、支援の必要性を強く感じた」と野村さんは言います。 学習室で騒いでしまうなど、他の子どもたちと一緒に過ごすのが難しい子どももいます。一時は退塾してもらうという選択肢も考えましたが、野村さんは、「ここで私たちがその子を突き放しては、本当に居場所がなくなってしまう。社会貢献という無償の活動だからと言って、簡単に支援をあきらめてはいけないと思っている。中学3年生でこの塾を卒業するまで、支援を続けて行きたい」と話しました。 野村さんは、「子どもたちには、支援してくれる人たちへの感謝の気持ちをしっかり持てるようになってほしい。そしてここを卒業して高校生、大学生になった時、地域を支える側になってくれたら、それ以上の喜びはない」と、地域に寄り添って活動を続けていく決意を語りました。 社会福祉法人 東京武尊会 平成22年7月に設立認可。 特別養護老人ホーム、地域包括支援センター、 障がい者グループホーム等の事業を実施し、 8つの施設を運営している。地域社会との交流を大切にし、 住民の理解と参加・協力を得られる、 地域に根ざした福祉拠点を目指している。 〒198-0042 東京都青梅市東青梅3-22-4(法人本部事務局) TEL:0428-20-0770 FAX:0428-20-0775 学習室では、それぞれのペースで勉強できます。 この日のメニューは、近くの農家さんがくれた大きな 大根をたっぷり使った豚汁と太巻き、いなり寿司です。 調理ボランティアのみなさんは 15時から夕食の準備をしています。 Nomura Daigo 野村大悟 東京武尊会 事務局長、 武尊塾塾長(右) Tawaraya Masatsugu 俵谷昌嗣 東京武尊会 総務部長、 武尊塾副塾長(左) 【東社協発】 在宅福祉サービス部会情報交換会 東社協在宅福祉サービス部会※では、平成27年12月10日(木)に、27年度第2回情報交換会「リレートーク 再考!!住民参加型在宅福祉サービス団体の役割と課題」を開催しました。「人」(担い手や後継者不足)と「財源」(補助金等の状況)に課題を抱えながらも、住民目線で、お互いの助け合いで暮らしやすい地域や社会を創ること等の理念を大切に活動している団体が、社会状況や制度・施策が大きく動いている今、感じている課題や今後の展開などについて情報交換を行いました。 ●担い手確保のための働く環境づくり 生活協同組合東京高齢協は、仕事をすることが最も積極的な社会参加、生きがい活動であるという理念で活動しています。専務理事・代表理事の田尻孝二さんからは、「介護保険事業への参入を契機に、それまでの助け合い活動などの『生きがい就労』から、雇用契約に基づく『仕事』へと働き方が変化した」と近年の状況について説明がありました。そして、常に介護保険と比べられる生活支援サービスや住民参加型在宅福祉サービスについて、「担い手確保のため、楽しく充実感が持てる仕事、働く環境をどう整備していけるか法人の努力が問われる」と課題提起がありました。 ●身近な地域で、きめ細かな相談支援 品川区社協では、平成4年から有償在宅福祉サービス「さわやかサービス」を実施しています。相互支援室室長の布施恵美子さんは「介護保険制度導入や改正頃から、徐々にボランティアや利用会員の意識の変化を感じてきた」と話します。そのような中、ボランティア入門・養成講座へ参加した地域活動に関心ある方に働きかけをしたり、職員が地域のイベントに顔を出し、「何かやりたい」という思いを持った地域の人とつながることなどで、担い手の増加につなげてきました。 品川区社協では、地域の中の身近な相談窓口の開設を順次進めています。行政が設置する「地域センター」の中に、社協職員が常駐し相談を受ける「支え愛・ホッとステーション」を設置し、さわやかサービスと連携を密にして相談支援を実施しています。現在6か所で事業実施しており、28年度中に9か所に増やす予定です。そして、今後、区内全13地区に展開させる予定です。より身近な地域に相談拠点があることで、近隣の助け合いなどが広がりを持って展開されることが期待されています。 ●ニーズを支えるサービスの重み 特定非営利活動法人たすけあいグループひまわりは、小平市を活動エリアとする団体です。理事長の達下伸子さんは、「生活に欠かせないニーズは人によって違う。ひまわりでは支援内容に差をつけず、一律の利用料で、高齢者、障害者、親子、ターミナルケア中の方など、さまざまな方を支援している」と話します。他の制度や営利企業の家事援助サービス等と比べて”利用料が安い“という理由での利用相談も増えていますが、「住民の助け合いの手がなければ生活できない人のために利用料を安価に設定している。単に『安いから利用したい』という相談はお断りするなど、信念を貫く活動をしている」と言います。 担い手不足と財源の課題は大きく、この間の都や市の補助金の減額の動向を受けて、その都度団体としての方向性を考えて来ました。また、助け合いの活動を必要とする方を支えるために、介護保険や障害者総合支援法等の制度事業を実施し、その収入を助け合いの活動に充てています。助け合い事業と制度事業でヘルパーの待遇を一律に保つための検討を今後行う予定です。 ●家族の困りごとを丸ごと支援する 練馬区で活動する「子ども支援ぽれぽれ」ケアワーカーの川合碧さんと理事長は、20歳代の頃に児童養護施設の職員として出会った仲間です。主要なメンバーには、施設職員の後輩が多く、あらゆる困難な状況に対応できることを強みとしています。活動内容は、制度では到底できない、柔軟で利用者に寄り添ったものです。 三つ子を出産した母が産後うつ状態となった際の子育てや家事全般の支援、親が入院した子どもへ付き添い病院へ行く、父子家庭の重度障害をもつ未就学児の日中預かり等、子どもと家族を丸ごと包み込むような支援を行っています。依頼があれば、支援対象は親子にとどまりません。震災に不安を感じた高齢者や、手術後の方からの緊急の依頼等にも対応してきました。「助成金が減額にならないか、ワーカーも高齢化しつつあり健康状態等の悩みがあるのが課題」と話します。 ●食を通じたつながりづくり、支えあい 支えあう会みのりは、生活の基本である食を通じて、支えあいを大切に稲城市で活動しています。前理事長(現副理事長)の石田惇子さんは、「配食サービスに営利企業が参入し、コンビニ等での安価なお弁当の販売がすすんでいることで、みのりに支払う会費や配食の利用料(1食620円)が高いという声がある」と現在の課題について説明します。しかし、みのり配食サービスは、食事が届くだけでなく、同じ地域に住む人と顔見知りになって、気にかけてもらう安心感が持てるものなので、価格だけで比べてほしくないという思いがあります。また、「ボランティアのリーダー層の担い手がなかなかいない事、新たな活動拠点の整備等も課題」だと言います。今後は、より小さいエリアを対象にした会食会の実施や、好評の居場所づくりをさらに展開させていきたい意向です。 今般の介護保険制度改正の中では、要支援者に提供される多様なサービスの一つとして、住民やボランティアによる活動も期待されています。今後、住民の生活そのものを支援し、暮らしの質を高める地道な活動が、地域に根づいていくことが期待されます。 ※在宅福祉サービス部会 「住民参加型」「会員制」「有償制(非営利)」「多様な運営主体」等を特徴に、有償家事援助サービスなどの住民同士の支え合い活動を進める団体が所属する部会。 第3回東京都民生委員・児童委員 チャリティーコンサート 東京都民生児童委員連合会では、平成23年4月より東日本大震災で被災された遺児・孤児たちを支援するための「東日本大震災子ども応援募金」活動を推進しています。また、併せて民生委員・児童委員を広く都民の方に知っていただくために、各地区で任意で編成されている民生児童委員の合唱隊が一堂に会し、合唱チャリティーコンサートを開催します。 ▼日時 2月24日(水)11時〜16時(10時半開場) ▼入場料 無料(入退場自由) ▼会場 文京シビック大ホール ▼その他 会場ロビーでは、都民連のキャラクター「ミンジー」グッズの販売(15時まで)や募金活動を行います。 ▼問合せ先 東京都民生児童委員連合会 TEL 03(3235)1163   http://www.tominjiren.com/ 福祉職員キャリアパス対応生涯研修課程 平成28年度 初任者研修のご案内 ▼研修目的‥初任者として必要な役割行動を遂行するための基本を習得するとともに、キャリアアップの方向を考えます。 ▼主催‥東京都社会福祉協議会  東京都福祉人材センター研修室 ▼対象‥概ね入職2年以内の方  〔新卒者コース〕新規学卒者、もしくは社会人経験のない方  @5月11日12日、A5月24日25日、B6月7日8日、C6月21日22日  〔既卒者コース〕社会人経験があり、現時点で法人内で新任職員としての役割が期待される方  @4月26日27日、A5月17日18日、B6月1日2日、C6月14日15日  ※各日2日間とも10時〜17時 ▼講師‥「全社協福祉職員キャリアパス対応生涯研修課程」指導者養成研修課程修了者 ▼会場‥東京都社会福祉保健医療研修センター(〒112|0006文京区小日向4|1|6) ▼受講料‥1万5千円(2日分) ▼定員‥ 70〜100名(回で異なる) ▼申込方法‥研修受付システム「けんとくん」でお申込みください。 ▼問合せ先 https://www.shakyo-sys.jp/kensyu/tokyo/ 【ゆーすけ】 介護職員のマネジメント研修を開催したよ! ●東京都高齢者福祉施設協議会 職員研修委員会 介護職員研修委員会では、12月16日(水)、会員施設に所属する介護職員や相談員、施設長などを対象に、人間関係や職場の雰囲気、求める理想と現実のギャップなど、課題に取組む意欲を失わないためどのようなマネジメントを行っていけばよいかを考える研修会、「職員を輝かせるためのマネジメント手法を考える!〜みんなの『やりたい!』を実現させるために〜」を開催しました。  社会福祉法人ウエルガーデン・ウエルガーデン伊興園施設長の杉本浩司さんを講師に、これまでの自身の経験やウエルガーデン伊興園を例に、介護の在り方や目標達成のプロセス、リーダーシップについてなどの理論的なお話から、グループワークを通して参加者同士で考え、意見交換をするなど、盛り沢山な内容の研修会となりました。 東京都社会福祉大会を開催したよ! ●東京都、東京都共同募金会、東社協の主催により、東京都社会福祉大会を12月18日(金)に開催しました。東京の社会福祉の発展に功績のあった832名(団体)に、東京都社会福祉大会知事感謝状、福祉のまちづくり功労者に対する知事感謝状、東京都共同募金会会長表彰状、東社協会長表彰状・感謝状が贈呈されました。  明星学園中学校・高等学校 和太鼓部による迫力ある演奏が、大会に華を添えました。 【明日の福祉】 エンターテインメントの力で 福祉に新しい風を 吹かせる NPO法人「Ubdobe(ウブドベ)」代表理事を務める岡勇樹さんは、福祉業界の課題をエンターテインメントの力で解決しようと「Ubdobe」を設立。現在全国に10支部を持つ。 Oka Yuki 岡勇樹 1981年生まれ。若者向けのイベントに医療・福祉の要素を入れ込み、業界に無縁な人たちを巻き込みながら、福祉業界の課題を「音楽×アート×医療・福祉を通じてあらゆる人々の積極的参加を推進することで解決しよう」と活動しています。 「福祉業界に人が集まらない」とか「人気のない業界」とよく言われますが、イメージが悪いことが課題ではなく、イメージが悪いと思っている人がいることが、今の福祉業界の課題だと私は感じています。また、オリジナリティやエゴイズムを持っているにも関わらず、打ち出さない人が多い業界とも感じます。いつまでも外側のイメージのせいにしているのは、いいわけをしているだけだと思います。 母と祖父の病気がきっかけ 学生時代、毎日のようにクラブに通い、飲み歩いてばかりいたある時、母を癌で亡くしました。その後、間もなく祖父が認知症になりました。祖父に色々な音楽を聞かせていると、1曲だけ反応がありました。そこから音楽療法に興味を持ち、音楽療法が学べる専門学校に入学しました。 その後はホームペルパーやガイドヘルパーを経験しました。訪問介護をやってみると、母と祖父の病気や専門学校の授業で訪問演奏をした時に感じた、利用者が隔離されている印象や、親身になってもらえず放っておかれている印象は偏見で、介護の仕事は自分次第でおもしろくできることに気がつきました。それから今まで見てきた差別や偏見を変えていくためには、福祉業界と無縁な人たちに話を聞いてもらいたい、見てもらいたいと思うようになりました。そして平成20年に任意団体として「Ubdobe」を設立し、2年後にNPO法人となりました。 音楽×アート×医療・福祉 踊って学べる音楽イベント「SOCiAL FUNK!」では、ちょっとした間に医療や福祉の話をしています。昔の自分のようなクラブにいる若者に、母が亡くなった癌という病気について伝えたいと思い、はじめました。医療・福祉に興味のない若者が自分から情報を得ようとすることはまずありません。それなら、自分が好きな場所にたまたま医療・福祉の情報があったという結果があればよいと思いました。ライブ目当てに来てくれた方に「来て良かった」と言ってもらえたときは、本当にうれしいです。 「コドモミュージック&アートフェスティバル」は、子どもたちは主催者側であり、アーティスト。「障害児=哀れな子」に見られていると感じていて、そのイメージを変えたかったのがきっかけで生まれたイベントです。子どもたちはステージで演奏するミュージシャンの音楽に合わせて、ライブペインティングをします。会場の装飾も子どもたちの作品です。ミュージシャンと子どもたちが同じステージで対等にパフォーマンスしているところを、ミュージシャン目当てで来ている人に見てもらい、何かを感じてほしいです。 福祉業界の外側だけを変えるのではなく、内部を活性化し、現場を元気にするイベントが「WellCON」です。トークゲストを呼び、ワールドカフェで意見交換し、フリータイムで交流する3部構成です。福祉の現場で働いている人は、施設という壁に囲まれた中にずっといて、「介護職って出会いがない」という仲間の声で思いつきました。医療・福祉従事者や学生、経営者などが所属や役職を超えて繋がれるようなイベントになっています。 自分はまだ何も達成していない 自分の活動はまだまだ物足りないと感じています。今年の目標は全国に世界一おもしろい拠点をつくることです。そこは若者も高齢者も障害者も誰でも自由に通えて、好きなことができて、色々な人がぐちゃぐちゃになって遊べる。そこがその人たちの居場所になっていってほしい。拠点づくりが落ち着いたら、海外の福祉にも目を向けて、カンボジアやタイ、幼少期を過ごした北米などで何かはじめてみたいです。 もし、介護の仕事で無理をしている人がいたら、無理をしすぎて二度とやりたくない仕事になってしまうよりは、自分に合う職場を探す旅をするのもいいと思います。それが福祉の職場でなくても、自分が楽しめる環境であれば、それでいいと思います。興味の有無に関わらず、福祉は自分次第でおもしろくなるということは皆に伝えていきたいです。自分の接し方や考え方で相手の人生を変えたりできるのは、他の仕事にはない魅力だと思っています。 【資料ガイド】 施策・会議資料 ●『児童虐待死亡ゼロを目指した支援のあり方について―平成26年度東京都児童福祉審議会児童虐待死亡事例等検証部会報告書』(東京都福祉保健局少子社会対策部家庭支援課/12月) ●『労働政策審議会建議「仕事と家庭の両立支援対策の充実について」』(厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課/12月) ●『平成26年度母子家庭の母及び父子家庭の父の自立支援施策の実施状況』(厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課/12月) ●『第1回これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会資料』(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部/1月) 調査結果 ●『21世紀成年者縦断調査(14年成年者調査・24年成年者調査)の概況』(厚生労働省/12月)  「平成14年成年者」と「平成24年成年者」の調査結果を比較し、「女性の結婚後の就業状況に関する世代間の違い」や、平成14年成年者の第1回から第13回までの蓄積データを用い、「夫の家事・育児時間と出産後の妻の就業状況」などの分析結果の概況。 ●『相対的貧困率等に関する調査分析結果』(厚生労働省人口動態・保健社会統計課世帯統計室/12月)  相対的貧困率が上昇している要因、両調査のサンプルの特徴、相対的貧困世帯の特徴、両調査で世帯属性ごとのサンプルのシェアを合わせた時の相対的貧困率についての調査分析結果。 ●『平成26年地域児童福祉事業等調査結果〜市町村の保育などの取組状況(平成26年10月実施)〜』(厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課/12月)  「市町村」「認可外保育施設利用世帯」「認可保育所利用世帯及び認可外保育施設」を対象として3年周期で実施している調査。本調査は平成26年10月1日に市町村へ実施した調査結果。 その他 ●『福祉・衛生 統計年報(平成26年度)』(東京都福祉保健局/12月) 【アンテナ】 助成金 JX-ENEOS奨学助成 諮\込締切 2月26日サ消印有効 誌武ャ対象 平成28年度に大学・短期大学・専門学校等への進学を予定している児童養護施設・母子生活支援施設の入所児童あるいは、退所した20歳未満の方、里親家庭に措置されている児童あるいは、措置解除後も里親家庭で同居している20歳未満の方等。 誌武ャ金額 10万円(1人あたり) 諮\込方法 所定の申請書に必要書類を添付し、郵送にて申込(児童本人による申請は不可) 諮\込・問合せ先 児童養護施設・母子生活支援施設の場合:全国社会福祉協議会児童福祉部 〒100−8980 千代田区霞が関3−3−2新霞が関ビル エ03(3581)6503 里親の場合:全国里親会 〒107−0052 港区赤坂9−1−7−857 エ03(3404)2024 講座・シンポジウム 「東京ホームタウン プロジェクト」 シンポジウム 雌時 2月18日コ14時〜17時 誌齒梶@日経ホール 賜闊 600名 試Q加対象 地域福祉の活動に取組むNPO・地域団体、地域貢献活動に関心を持つ企業・団体・個人、社会福祉協議会・行政関係者 試Q加費 無料 雌燉e 「いくつになっても、いきいきと暮らせるまちをつくる」ため、東京の未来に向けた展望を共有するシンポジウム(事例紹介、パネルディスカッション)〈パネリスト〉ねじめ正一氏(作家・詩人)、上野千鶴子氏(立命館大学特別招聘教授、東京大学名誉教授)、牧野益巳氏(日本マイクロソフト渇長室業務執行役員)、堀田聰子氏(国際医療福祉大学大学院教授) 諮\込方法 下記ホームページから申込 諮\込・問合せ先 東京ホームタウンプロジェクト事務局 http://hometown.metro.tokyo.jp/ 講演会 「日本の精神保健を外から 見れば〜イタリアの実践に学ぶ〜」 雌時 2月19日サ14時〜16時15分(13時開場) 誌齒梶@都庁第一本庁舎5階大会議場 賜闊 500名 試Q加費 無料 雌燉e 包括的精神保健システムを実践するイタリアの事例から、今後の日本における精神保健のあり方を考える講演会、〈講師〉大熊一夫氏(ジャーナリスト、元大阪大学大学院教授、元朝日新聞記者) 事竝せ先地域生活支援センターあさやけエ042(345)2077、就労支援センター北わくわくかん エ03(3598)3337、東京都精神保健・医療課エ03(5320)4464 第32回こんぼ亭 「経営者と担当者が伝える! うまくいく就労と復職の ポイント」 諮\込締切 2月19日サ 雌時 2月27日シ13時〜15時半(12時半開場) 誌齒梶@荏原文化センター 試Q加費 事前申込:3,000円(賛助会員は2,000円)、当日:3,500円 雌燉e 精神障害者雇用を積極的に行っている企業の取組みを紹介する講演、〈演者〉成澤岐代子氏(株式会社良品計画総務人事担当)、芦田庄司氏(アクテック株式会社代表取締役社長) 諮\込方法 参加費振込後、はがき、電話、FAX、又はメールにて申込 諮\込・問合せ先地域精神保健福祉機構 〒272−0031 千葉県市川市平田3−5−1トノックスビル2階 エ047(320)3870I047(320)3871 comhbotei@gmail.com 福祉住環境サミット& ウェルビーイングフェア 諮\込締切 2月24日ケ 雌時 サミット:3月5日シ12時〜18時、6日カ10時〜17時半、フェア:3月5日シ10時〜18時、6日カ10時〜16時 誌齒梶@明治学院大学白金キャンパス 試Q加費 サミット:6,000円(75歳以上・学生無料)、フェア:無料 雌燉e 〈1日目〉サミット:基調講演@「高齢者の生活に重要な公共スペースと住宅のあり方」岡本多喜子氏(明治学院大学社会学部社会福祉学科教授、日本老年行動科学会常任理事)、基調講演A「明日の暮らしを考える―被災地支援『みんなの家』、大三島の島づくりを通して―」伊東豊雄氏(株式会社伊東豊雄建築設計事務所代表取締役)、基調講演B&パネルディスカッション、〈2日目〉サミット:分科会報告&シンポジウム「個人を守る住環境から、コミュニティと共存できる住環境へ」、フェア:シニア層を始め、あらゆる年代の人々が元気でいきいき暮らせるための商品・サービス・仕組み等の展示会 諮\込方法 郵送、FAX、又は下記ホームページから申込 諮\込・問合せ先 福祉住環境アソシエーション 〒560−0026大阪府豊中市玉井町3−3−1NPO法人ユニバーサルデザイン推進協会内福祉住環境サミット事務局(申込み) I020(4664)2715(D-FAX使用)/06(6840)6889(D-FAXを使用できない場合) エ06(6844)1279 office@fj-s.net(問合せ) エ03(6868)3744 http://www.fj-s.net リハビリテーション 体育研修会 諮\込締切 2月26日サ 雌時 3月6日カ9時半〜15時 誌齒梶@国立障害者リハビリテーションセンター体育館 試Q加費 2,000円 雌燉e ワークショップ「リハビリテーション体育概論」木畑聡氏(国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局、別府重度障害者センター運動療法士長)、実技「対象者に合わせたリハビリテーション体育ゲーム」「リハビリテーション体育種目の紹介(2種目)」 諮\込方法 所定の申込用紙に記入の上、メール、又は電話にて申込 諮\込・問合せ先 研修会事務局(参加申込み・問合せ)山下文弥 ffbindacandyshop@yahoo.co.jp(問合せ)内藤舞 エ0279(66)2121 その他 Tokyo"Brut"展 雌時 2月17日ケ〜21日カ10時〜17時、最終日は13時まで 誌齒梶@なかのZERO西館美術ギャラリー2階 試Q加費 無料 雌燉e 都内及び近隣県の福祉施設や病院などの利用者によって作成された芸術作品の展覧会 事竝せ先 愛成会法人企画事業部 エ03(5942)7259 高齢者の住まいトラブル110番 雌時 2月15日キ10時〜16時 資樺k料 無料(通話料別途) 雌燉e 高齢者の住まいに関する問題(入居金の返還、介護事故、虐待、リフォーム詐欺等)を抱えている方を対象とした電話相談 雌d話番号 日本弁護士連合会 エ0570(073)165(ナビダイヤル) 第11回 光が丘J.CITYアート展 雌時 2月17日ケ〜23日ク10時〜17時(最終日は12時まで)誌齒梶@光が丘J.CITY1階アトリウム 雌場料 無料 雌燉e 「アートをとおして、子どもの感性と創造性を養う」をテーマにした作品展、アートワークショップ、コンサート、パン・製品販売 諮\込・問合せ先 光が丘J.CITYアート展実行委員会 エ03(5276)5132 知的障害者マラソン大会 「ジョイ・コン・パス マラソン大会」 諮\込締切 2月29日キ 雌時 3月27日カ9時半〜16時、〈受付時間〉1q・3qコース:9時〜9時半、5q・10qコース:10時〜11時半 誌齒鞄s立和田堀講演済美山運動公園陸上競技場 賜闊 1q・10qコース:各20名、3q・5qコース:各40名 試Q加対象中学生以上で出場種目の距離を安全に走れる方 試Q加費 無料(別途、各自で保険加入) 諮\込方法 はがきに、氏名・フリガナ(18歳未満の方は保護者名も)、生年月日・年齢、所属、出場種目(距離と予想・目標タイム)、住所、電話番号(保護者等への緊急連絡先)を記入し、申込 諮\込・問合せ先 東京走友塾 岩田通秀宛 〒153−0041 目黒区駒場4−5−1 【くらし】 ば めん かん もく 「場面緘黙」を 知っていますか? 特定の場面において 話ができなくなってしまう 「場面緘黙」症状を抱えながら、「声にならない声」を 発していく当事者活動をされている 入江紗代さんにご寄稿いただきました。  「     」。無口で無表情、地蔵のように固まる私。それとは逆に、過敏になっていく全身のアンテナ。閉じ込められている声が、言葉が、感情が、外に出してくれといつも叫んでいる。 ●家の外ではしゃべれない 家ではうるさい程におしゃべりでした。しかし、幼稚園や学校ではしゃべれない。大人しく人見知りの面はありましたが、別人のように固まってしまう「緘黙症状」は入園して初めて経験したと思います。自分の気持ちを出すことができない。声も出ない。雑談や人の輪に入ることができない。「ありがとう」が言えない。本来の気持ちや性格を封じられてしまう。理由も分からない苦しさ。重要な事ほど言えなくなる。それらが「場面緘黙」という症状とは知らず、私は長年苦しんできました。 ●力を発揮できない悔しさ 授業中は正しい答えが分かっているのに発言できない。人と協力することが苦手で力を発揮できない悔しさ。優しく声をかけてもらっても反応できなかったり、話せないことで腫れ物に触るかのような目で見られたりする。居たたまれず申し訳ない気持ち、話しかけられるのが怖い、さまざまな想いがどんどん膨らみ、積み重なりました。休み時間は、ただ席で固まっていました。入園前からの近所の友達とは学校でも話せました。成人して何とか人と話せるようになっても生きづらさは消えず、うつなどの心身の不調で入院したこともあります。 ●私ひとりだけではなかった 27歳の頃、「場面緘黙」という言葉を偶然インターネットで知り、私は場面緘黙症の当事者となりました。世界に私ひとりだけではなかったという衝撃、他にも私と同じような人が存在しているという安心感。そして、もっと早く知りたかったという気持ちもありましたが、今まで曖昧で八方塞がりだった悩みの輪郭を、やっと把握することができました。未だに話せない時はありますが、そんな自分を以前の様に責め過ぎない自己肯定にもつながりました。 ●人との関わりの中で 場面緘黙は社会的認知が低く、研究も進んでいません。正確な理解や支援の手も行き届いていない現状です。私は、治療的な支援だけでなく、当事者が人との関わりの中で自己実現(表現)や社会参加が達成できるような、少しずつ経験値を増やせるような、そんな足掛かりとなる機会が必要だと感じ、「かんもくの声」という名前で当事者活動を始めました。場面緘黙を知らない方に知ってもらうことも、常に意識しています。 ●私たちらしい発信の形 緘黙気質を持ちながら活動することで、時に身を削がれるような思いをすることもあります。しかし、声をあげにくいからこそ、今まで埋もれていた「声にならない声」を発していくことが必要です。また、話すことだけではなく、私たち場面緘黙当事者らしい発信の形で社会へ伝えたい。そのような模索も大切だと感じています。今の私の関心は「場面緘黙にとってのバリアフリー」です。それは、緘黙の有無を問わず、より多くの人が暮らしやすくなる社会と通じています。当事者にとって自分を理解してくれ、自然に接してもらえる人の存在は何よりも支えになります。場面緘黙への理解を求めつつも、お互いの対話を大切にできる社会を見つめていきたいと思っています。 場面緘黙症 ばめんかんもくしょう 保育園や幼稚園、学校など、特定の場面において話ができなくなってしまう不安症状。認知度が低いため誤解も多く、家庭や教育等の現場で必要な理解と支援が得られていません。改善のためには早期の個別的対応と支援が必要だと言われています。 子どもの頃の写真。 家にいる時(上)と幼稚園にて(下)。 【新刊】 介護等体験マニュアルノート 〔2015年12月改訂版〕 ●介護等体験に対する理解を助け主体的な学習を促進することを目的に、このたび改訂版を発行しました。「介護等体験の目的と概要」「介護等体験のしくみと準備」「ワークシート・各種様式」などを掲載。 ◆規格 A4判/67頁(ファイル付き) ◆定価 648円 (税込み) 平成28年度版 東社協参考人事給与制度 ●人事考課制度を含む新たな人事給与制度を導入する場合の制度策定に向けた考え方や方法を参考例として示したもので、今回、平成27年10月に示された東京都人事委員会の職員給与に関する報告と勧告を参考として給料表を改定した、「平成28年度版」を示しました。 ◆規格 A4判/134頁 ◆定価 1,080円 (税込み) 専門機関と地域住民の 協働による地域づくり 〜暴力・虐待を未然に防ぐ実践事例集〜 ●本事例集は、社会福祉施設等と地域住民の協働による暴力・虐待の未然予防の取組みを掲載しています。第1章では、暴力・虐待を未然に防ぐための5つのポイントを説明。第2章では10つの具体的な実践事例を紹介しています。 ◆規格 A4判/68頁 ◆定価 648円 (税込み)