【表紙】 つなげる笑顔の かけはし 沖縄県 伊是名島 大漁のアカハタや虹色の魚が美しい。 休日は夕暮れどきにあちこちで 浜辺のバーベキューがはじまるのだ。 【もくじ】 社会福祉NOW 生きづらさを抱え、孤立しがちな人を包摂し、共に支え合える地域社会のあり方について~触法障害者等への支援の現状と課題より~ み〜つけた 社会福祉法人いたるセンター「パン工房PukuPuku」(杉並区) トピックス 第15回静岡県内外の災害ボランティアによる救援活動のための図上訓練 ふだんの役割から一歩はみ出そう!~誰もが担い手になれる「しずおか」を目指して~ 主催:特定非営利活動法人 静岡県ボランティア協会 福祉職が語る 成年後見制度の現状と課題に向き合いながら 法学博士・早稲田大学名誉教授 田山輝明さん 【NOW】 生きづらさを抱え、孤立しがちな人を包摂し、共に支え合える地域社会のあり方について ~触法障害者等への支援の現状と課題より~ 東京都社会福祉協議会では、幅広く、かつ東京の地域特性に根差した観点から、地域福祉の推進に必要な取組みや施策のあり方を検討し、提案することを目的として、地域福祉推進委員会の下にワーキングを設置しています。令和元年8月に設置されたワーキングでは「生きづらさを抱え、孤立しがちな人を包摂し、共に支え合える地域社会のあり方について」をテーマに、委員やゲストスピーカーによる各機関の取組みを報告していただき、それぞれの分野の現状と課題や今後への期待と取組みの方向性を整理してきました。今号では、その1つ「触法障害者等に対する支援の課題や取組み内容」についてお伝えします。 東社協地域福祉推進検討ワーキングの取組み 東社協地域福祉推進検討ワーキング(以下、「ワーキング」)では、平成29~30年度に「東京らしい”地域共生社会づくり”のあり方」を検討し、平成31年3月に、その内容を「最終まとめ」として提起しました(福祉広報2019年5月号No.725参照)。ここで提起したことを推進していくため、次のテーマを「生きづらさを抱え、孤立しがちな人を包摂し、共に支え合える地域社会のあり方について」とし、令和元年8月から新たなワーキングを立ち上げ、検討をすすめています。 新たなテーマ設定にあたっての基本的な視点は次のとおりです。 1 東京らしい地域共生社会づくりに向けて「東京モデル」(社会福祉法人の地域公益ネットワーク活動、民生児童委員協議会、地域福祉コーディネーターの協働による地域づくり)の具体化を含め、関係機関が密接に連携・協働する推進体制を検討することが必要である。 2 住民主体による地域づくりを推進する取組み(地域支援)を重視することに加え、孤立や排除、ひきこもり等、地域で生きづらさを抱える人々を住民や関係者が協働して支え、地域社会に包摂する取組み(個別支援)も重視し、相互の連携と相乗効果をめざすことが有効である。 3 右記の取組みを検討にするにあたっては、生活困窮者自立支援制度や住宅セーフティネット(居住支援)制度等、関連する施策の動向をふまえるとともに、都内の先駆的・開拓的な取組みに学ぶ視点を重視することが必要である。 令和元年度は、これらの視点のもと、関連する制度や取組みを通じて「生きづらさを抱えた方」の現状や課題を把握することを目的に、各分野の委員やゲストスピーカーによる報告を行ってきました。 ここでは、それらの報告の一つ「触法障害者等に対する支援の課題や取組み内容」についてお伝えします。ワーキングの委員である社会福祉法人武蔵野会理事長の高橋信夫さんの報告に加え、府中刑務所分類審議室福祉専門官の桑原行恵さんと特定非営利活動法人日本障害者協議会理事の赤平守さんをゲストスピーカーとしてお呼びし、それぞれの取組みや現状についてお話をしていただきました。 触法障害者等に対する支援の課題や取組み内容 〈触法障害者等の現状と課題〉 全国的に受刑者数は減少傾向にあるにもかかわらず、再犯者数は減っていません。そして、高齢者、障害者、疾患を抱えている受刑者は増えています。しかし、そういった受刑者の多くが、福祉の制度、サービスをよく理解しておらず、福祉的支援を拒否する人も見られます。支援者として関わってみると、もっと早くに福祉的支援につながっていればと思う受刑者は多いですが、中には障害者手帳を取っても就職しづらいなどマイナスにしかならない、福祉施設は自由がないと感じている人もいます。 軽微な犯罪を繰り返している再犯者の中には、子どもの頃からずっと障害を見過ごされてきた人もいます。家庭では虐待を受け、学校ではいじめを受け、学校にきちんと通っていない人も少なくありません。何度も挫折や失敗を繰り返しているため、自己肯定感や自分で立ち直ろうという意欲を失くし、諦めの意識が高くなってしまいます。貧困に陥ることも多く、犯罪の内容も万引きや無銭飲食など、所持金がないことが原因になっている場合が多く見られます。 このような犯罪を繰り返し、何度も裁判を受けているのに、障害があることを誰にも気づかれず、ただ、怠惰であるために犯罪を繰り返していると思われて、そのたびに刑罰を科されてしまいます。その結果、「どうしてこの人が刑務所にいるのか」と思われる人、社会から隔絶されることがかえってマイナスになると思われる人が刑務所にいるという状況を生み出しています。さらに、刑務所では、言われたことに従うのが模範的な良い受刑者とされているため、自分の意思や主体性を持ちにくい環境になっています。そのため、軽度の障害特性や課題が表に出づらく、ますます障害が見過ごされてしまうことがあります。 〈刑務所における福祉的支援〉 平成21年度から、全国的に刑務所に福祉専門官が配置され、出所後の生活を支えるための福祉的支援が行われるようになりました。福祉専門官は、支援が必要な受刑者の課題を分析し、所内外の各部署や機関との調整を行います。受刑者は、行政機関により住民票が職権消除(※)されている場合も多く、帰住先の住所の設定から支援することもあります。また、障害者手帳の取得や介護保険、年金などの手続きの支援もします。満期釈放者には、釈放の2~3か月前から社会保障制度等の福祉的支援に関する教育プログラムも実施しています。 支援の1つ「特別調整」では、後述する地域生活定着支援センター等の機関と連携して、出所後の福祉施設への入所や生活保護等の手続きを支援します。特別調整の対象者は、(1)高齢(おおむね65歳以上)または身体障害、知的障害もしくは精神障害があること、(2)釈放後の住居がないこと、(3)福祉サービス等を受ける必要があると認められること、(4)円滑な社会復帰のために特別調整の対象とすることが相当と認められること、(5)特別調整を希望していること、(6)個人情報の提供に同意していることの全てを満たす者となっています。多くの対象者が、これまで福祉の制度やサービス等につながっていないため、障害者手帳の有無は条件にしていません。特別調整による支援には時間がかかり、刑期満了から遡って6か月以上ないと調整が困難です。しかし、福祉専門官に話が回ってきた段階では、残りの期間が短い人も多く、その場合は「独自調整」を行います。独自調整では、帰住先の確保や福祉事務所との連絡調整を刑務所がダイレクトに行います。 刑務所内でも、福祉的な支援には本人の同意が必要ですが、対人不信感の強さや福祉的な支援を理解できないなどの理由で、同意が取れないケースも多いことが課題になっています。また、特別調整や独自調整の対象ではない人の中にも、支援が必要な人はいます。医療の対象でもなく、どの福祉分野でも対象にならないという、いわゆる制度の狭間に陥っている人も多く、どこにもつながらなかったために、最終的に刑務所に来ることになってしまったと思われる受刑者も少なくありません。そのような受刑者は、結局、出所後もつなぎ先が見当たらないという課題を抱えることになります。 〈刑務所出所後の支援〉 刑務所出所後に司法と福祉をつないで、出所者の地域での生活を支援するのが「地域生活定着支援センター(以下、センター)」です。センターで支援をするのは「特別調整」と「一般調整」の対象者です。「一般調整」とは、帰住先はあるものの、先に説明した特別調整の条件のうち、(1)高齢(おおむね65歳以上)または身体障害、知的障害もしくは精神障害があること、および(3)福祉サービス等を受ける必要があると認められることに該当する者とされています。センターの業務は、(1)刑務所出所後に必要な福祉サービスのニーズを確認し、施設等のあっせんや福祉サービスの利用申請の支援を行う「コーディネート業務」、(2)出所者を受け入れた施設へ必要な助言等を行う「フォローアップ業務」、(3)刑務所出所者の福祉サービスの利用に関して、本人または関係者からの相談に応じ、福祉的な支援が必要な出所者には、引き続き助言等を行う「相談支援業務」の3つからなります。 触法障害者等の刑務所出所後の支援の課題として、障害があるにも関わらず、本来入所することが望ましいと考えられる障害者支援施設に入所する出所者は少なく、更生保護施設や無料低額宿泊所など、一時的な入所施設につなげることが多いことがあげられます。福祉施設側の理解がなかなかすすまず、出所者を受け入れてくれる施設が増えないのが現状です。 一方で、積極的に触法障害者等の支援に取り組んでいる施設もあります。「社会福祉法人武蔵野会」では、平成21年頃から入所施設での触法障害者の受け入れを始め、平成25年度から、東京都の地域生活定着支援センターと連携して、出所してきた障害者の支援にあたっています。支援していく上でまず大切なことは「本人理解」にあります。しかし、入所してくる触法障害者の履歴は刑務所における履歴がほとんどで、それ以外の本人の歴史を知ることがとても難しいのが現状です。再犯防止だけを目的にした支援は、本人にとって心地よい居場所にはならず、また再犯をしてしまうことになりかねません。支援をしながら本人のことを理解するよう努め、信頼関係を構築していくことで、結果的に再犯防止につながります。 〈触法障害者等の支援に期待されること〉 再犯を繰り返す障害者には、刑務所出所時の出口支援とともに、裁判時などの入口支援も必要です。刑務所への入所回数が二桁に上る人もいて、刑を科すことだけでは再犯防止にならないことは明らかです。司法関係者に障害のことをもっと理解してもらい、再犯をしないために本当に必要な支援を考えることが重要です。 また、これまで、自分の人生を自分で選択する機会に恵まれなかった触法障害者等の意思決定支援はとても大切です。意思決定支援ができるようになるためには、まず、信頼関係を構築することが必要です。その前提として、支援者には、目の前の触法障害者がどのような状況下で生きてきたのか、その人の生活の歴史を知る努力をし、障害者であるとか犯罪者である前に、一人の人間として捉え、理解していくことが求められます。そして、失敗してもまたつながっていくことを繰り返し、本人が”自分で生きようとする力”をつけていける支援が必要とされています。 さらに、予防も含めて、専門職も関わった上で、いかに地域の理解を広げ、出所後の生活環境を整備していくかが大切です。しかし、触法障害者等の問題は、顕在化すると理解者とともに誤解する人、排除しようとする人も増えていくのも現実です。地域で触法障害者等を受け入れるためには、地域とつながり、地域と一緒に何ができるのか考えていくことが重要であり、地域の人が理解し、考える時間も必要です。 「生きづらさを抱えた方」の支援の方向性 令和元年度のワーキングでは、触法障害者等に関するテーマのほかに「ひきこもり」「不登校等」「8050等、複合課題のある世帯」「ひとり親家庭と母子生活支援施設」「社会的養護」についての報告を行いました。それぞれ、支援の対象者や関わっている機関は異なり、抱えている課題もさまざまですが、共通した方向性も見えており、いくつかキーワードをあげてみます。 (1)専門機関間の連携や機関同士の理解 住民と同様に、専門職、専門機関も守備範囲を超えると、気になることがあってもつなぐ先が分からないということが課題になっています。専門機関がお互いの機能を十分に理解する機会や横につながるネットワークが必要です。そして、福祉関係機関同士だけではなく、教育機関や司法機関とのつながりも重要です。 (2)当事者の力を活かす 例えば、ひきこもり状態にある方の支援では、専門職と、かつて当事者であったピアサポーターがチームで行うことが有効だと言われています。「生きづらさを抱えている方」の問題を社会化するためには、当事者や家族が発信し、実態を明らかにすることが必要であり、それが適切な解決への道しるべになります。 (3)地域の居場所とネットワーク 地域には、ひきこもり状態や不登校の人でも、触法障害者でも、高齢者でもひとり親家庭の親子でも、誰でも受け入れてくれる安心できる居場所が必要です。専門職や専門機関はスポット的な関わりにならざるを得ません。隠れたニーズやリスクの芽に早く気づき、本人に寄り添い、状況を把握、発信するために、地域のネットワークで見守る体制が求められています。 (4)予防的な関わり 虐待等何か事が起きた後の支援も重要ですが、起きる前の予防的な関わりに力を入れることも重要です。なぜ「生きづらさを抱えた方」の虐待や犯罪等の深刻な問題を未然に防げなかったのかを検証し、予防として支援できることは何かを考えていくことが求められています。 ●     ●     ● ワーキングでは引き続き、生活困窮者自立相談支援機関からの報告をはじめ、関連する制度や取組みを通じて「生きづらさを抱えた方」の現状や課題を把握し、検討をすすめます。そして主に「専門職ができること」と「地域のつながりによりできること」の2つの視点から整理をし、「生きづらさを抱え、孤立しがちな人を包摂し、共に支え合える地域社会のあり方」を提起する予定です。 【みーつけた】 「本物のおいしい焼きたてのパンを届けたい」 社会福祉法人いたるセンター「パン工房PukuPuku」(杉並区) パン工房PukuPuku(運営:社会福祉法人いたるセンター) 杉並区南荻窪4-1-15(JR荻窪駅より徒歩10分、環状八号線沿い) 営業時間:9:00~19:00(定休日:日曜・一部祝日) 電話:03-6795-5695 ホームページ http://www.itarucenter.com/11_pukupuku/index.html ※営業時間が変更になることもあります。詳細は電話にてご確認ください。 「パン工房PukuPuku(運営:社会福祉法人いたるセンター)」は、平成21年に環状八号線沿いの杉並区南荻窪にオープンしました。区内唯一の就労継続支援A型事業所として、利用者の自立に向け就労スキルの向上と地域社会で生活していくための社会性を身につけることに重点を置いています。また、いきいきと働ける環境を整備し、事業を通して社会に貢献している実感が得られるよう支援しています。定員は20名で、主に知的障害のある利用者が、スタッフと共にパンの製造・販売に従事しています。10年以上製造に携わる利用者の方は「パンづくりは楽しい!」と話します。 パンづくりは毎朝5時から始まり、朝6時台に焼きはじめます。10時すぎには焼き上がり、お店は焼きたてのパンの香りでいっぱいになります。最も多くパンが並ぶお昼の時間帯には、店内はお客さんでにぎわいます。平日はお年寄りや子ども連れの方が多く、土曜日には家族で訪れるお客さんもいます。 お客さんに焼きたてのパンを いたるセンターでは、創立当時「いたるパン」というパンの製造事業を行っていました。利用者が通所施設に滞在する時間に合わせてパンをつくっていたため、朝食やランチといったお客さんの食べたい時間帯に焼きたてのパンを提供することができず、一般のパン屋さんと競争することが難しかったと言います。 そのような「いたるパン」から得た教訓を活かし、さらにオンリーワンのパンをつくることをめざしました。厳選小麦100%、天然酵母100%、塩やバターも天然で良質な素材を使用し、長時間熟成してイーストフードや添加物不使用。おいしいことはもちろん、子どもにも安心して食べてもらえるパンとして、安心・安全にもこだわりました。 「本物のおいしい焼きたてのパンを届けたい」「地域のお客さんに愛され親しまれるお店をつくりたい」という想いが「パン工房PukuPuku」の誕生するきっかけとなりました。 おいしさの秘密 「パン工房PukuPuku」では、低温で約12時間かけて発酵させた、天然酵母100%のパンをつくっています。発酵中の酵母が”ぷくぷくっ”と泡を出す様子から店名がつけられました。お米と小麦で昔ながらの製法を用いて培養した「ホシノ天然酵母」を使用し、保存料やイーストフード等は一切使用していません。安心とおいしさの秘密は、店名の由来となった酵母の”ぷくぷくっ”にありました。 地域に愛されるパン 令和元年6月からは、杉並区立のすべての保育園へ給食用とおやつのパンを納品しています。保育園からは「パンがおいしくなった」との声もいただき好評です。保育園への納品が確立したことで、受注生産のため安定した生産体制を組めるようになりました。オープンしてから約10年間、地域で安心・安全なおいしいパンづくりを継続してきたことが実を結びました。保育園への安定した納品のため、お店のカフェスペースをキッチンスペースへと改装し、生産体制の強化を図っています。 その他にも、幼稚園や高齢者施設への納品も増えてきています。外販活動では利用者自らが現場に立って販売活動を行っています。区役所や地域のイベントへの出店・出品も積極的に行い、地域のさまざまな団体との交流も深めてきました。また、障害者施設の自主生産品の購入機会を提供する「ハッピースマイルフェスタ(※1)」に参加し、都心のビジネス街での販売も継続しています。 就労支援の充実を 生食パンなどの高級品の販売実績も伸びてきています。しかし、現在の厨房は狭く、厨房機器の配置が思いどおりにならないことや、導線の悪さ、手仕事が主流で機械化できないこと等が課題としてあげられています。施設長代理の池田史暢さんは「就労支援をどのように取り組むか、毎週ミーティングで話している。作業性をどうやってアップさせるかの話は尽きない」と話します。利用者がのびのびと活動し、就労スキルを向上させることも無理なくできるようにするため、製造現場の移転や再整備も計画されています。 今後は、就労に困難を抱える方のための新たな枠組みとなる「ソーシャルファーム」の認証制度(※2)が都で導入されることを受け、法人として参画・挑戦していくことも視野に入れています。 就労支援を充実させ、障害のある方の自己実現の場としての確立をめざし、「パン工房PukuPuku」の取組みはこれからも続きます。 (※1)https://grouphappysmile.wixsite.com/happysmile (※2)「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例(令和元年12月制定)」 CAP 作業風景 1番人気の「PukuPuku食パン」 【トピックス】 第15回静岡県内外の災害ボランティアによる救援活動のための図上訓練 ふだんの役割から一歩はみ出そう! ~誰もが担い手になれる「しずおか」を目指して~ 2月21日(金)・22日(土)、静岡県静岡市において、静岡県内外の災害ボランティアによる救援活動のための図上訓練(以下、訓練)が行われました。今年で15回目となり、毎年、県内外から300名程度の参加があります。今年も294名の参加がありました。 「つながり」を意識した静岡式図上訓練 南海トラフ地震による揺れとそれに伴う津波などにより、静岡県では多数の市町が被災することが予想されています。また、災害時には、県内外のさまざまな立場の民間組織などによる支援が入ることが想定されています。そのため、訓練は市町域、県域、県外との「つながり」を意識した支援体制をつくることを目的として実施してきました。 この訓練は「ワークショップ型訓練」を行っていることが特徴です。与えられた課題の解決策を検討する中で、問題と問題を抱えている地域への理解を深め、予防やネットワークづくりなどを広く考える訓練となっています。また、県外の関係者にも多く参加を呼びかけ、広域災害時の「受援」も意識しています。「(1)地域を知る」、「(2)地域に起こると思われる被害を予測する」、「(3)被災者が何を求めるのか、またその被災者が求めるものが時間の経過とともにどう変わっていくのかを過去の災害の教訓から学ぶ」ことで、地域理解を深め「受援力」を高めることもめざしています。 訓練の内容は訓練の企画・運営を行うワーキンググループ(以下、WG)が企画しています。今回は行政、社会福祉協議会(以下、社協)、子育て支援団体、外国人支援団体、障害者支援団体、災害ボランティア団体、企業、東京ボランティア・市民活動センターなどから30名がWGに参加しました。企画の段階からさまざまな立場の人が参加し、多様な考え方が訓練に反映されることで、災害時のスムーズな連携につなげることを狙いとしています。 訓練の参加者には県内外プレイヤー、ビジターの枠があります。プレイヤー参加者は与えられたグループワークを行い、他の参加者とつながりを深めます。ビジター参加者はより多くの分野の人に参加してもらうために設けられた参加枠です。ビジター参加者は図上訓練の企画意図や経緯、事例報告者の追加報告を聞いたり、プレイヤーのワークを見学するなど、訓練の全体を見渡すプログラムが用意されていました。 全体プログラム まず初めにプレイヤーもビジターも含めた全参加者で、今回の訓練は「『様々な担い手を理解』し、自分たちのできる範囲を広げて『一歩はみだすこと』」をテーマにしていることを確認しました。 続いて、静岡県職員から県内の地震被害想定について説明がありました。南海トラフ地震では最大震度7が想定されること、上下水道は復旧までに約4週かかること、地震が発生する時間帯によって想定される被害規模が異なることなどが説明されました。その上で「さまざまな被災者支援の場面では、行政とボランティア等が協力・連携し合うことが望まれる」ことが示されました。  さらに、静岡県社協から県内の連携支援体制について説明がありました。災害時のボランティアの受入れ体制として「静岡県災害ボランティア本部・情報センター」(以下、センター)が広域拠点として設置され、市町災害ボランティア本部などと連携しながら支援することが想定されています。センターには市町の災害ボランティア本部を巡回し、その活動を支援する「市町支援チーム」の設置も予定しています。構成メンバーは、県社協職員、県ボランティア協会職員、ブロック派遣社協職員などが想定されていることが説明されました。 プログラム1 その後、プレイヤー プログラム1「地域の困りごとと多様な担い手の理解」が行われました。プレイヤー参加者には「発災後〇日」「誰が」「どこで」「何に困っているか」が書かれた「困りごとカード」が配られました。参加者はそれらを「自団体でできること」(青い付箋を貼る)「他団体と繋がればできること」(黄色い付箋を貼る)「対応できないこと」に机上で分類しました。次に、対応できないこととして出されたカードについて、他団体と連携すれば対応できることをグループごとに議論し、対応できることがあれば黄色い付箋を貼っていきました。最後に全体で共有を行い、対応できる困りごとがグループごとに異なることを確認しました。このプログラムでは、多様な担い手がいてもなお現状の役割だけでは「対応できない困りごとがある」ことに気づくことが目的でした。プレイヤー参加者からは「アレルギーのある人はどうするか。普段から医療と連携しておくことが大切ではないか」などの意見が出されました。 カードに色別の付箋を貼り、分類して並べることで「自団体でできること、連携してできることなど誰でも支援の担い手になれる」「現状では対応できない課題がある」ことが可視化されました。 プログラム2 2日目は、平成30年に発生した西日本の豪雨災害で被災した倉敷市、倉敷市社協の職員から他団体との連携の動きや課題となった点などについての報告から始まりました。続いて令和元年に発生した令和元年東日本台風(台風第19号)で被災した住民の罹災証明書の交付申請支援を行った静岡県行政書士会の報告がありました。 これをふまえたプレイヤーのワークでは、自団体でできること以外の「困りごと」を選び、日頃取り組んでいること、災害時に取り組むこと、支援の届かない困りごとに対しての工夫を考えました。これは、プログラム2の目的である「一歩はみ出すことの可能性を考える」ことにつながっています。ワーク参加者からは「自宅が全壊して受験勉強ができない高校3年生に対しては大学生がボランティアで教える。場所がなければ高齢者施設等で空き部屋を借りて勉強し、多世代交流を図る」といったアイディアが出ました。 ◆ 2日間の総括として、常葉大学社会環境学部准教授の小村隆史さんより「初心者にも参加しやすく、深堀りしがいのある訓練だった。困りごとカードを氷山の一角として捉え、より課題を深堀りしていってほしい」とコメントがありました。 CAP プレイヤー参加者ワークの様子 全体講義の様子 ビジター訓練参加者の様子 【63 福祉職が語る】 成年後見制度の現状と課題に向き合いながら 法学博士・早稲田大学名誉教授 田山輝明 〈経歴〉 昭和53年 早稲田大学法学部教授 平成10年 早稲田大学法学部長 平成14年 早稲田大学副総長・常任理事 一社)多摩南部成年後見センター理事長 公社)杉並区成年後見センター理事長 一社)比較後見法制研究所理事長 平成12年~東社協 福祉サービス運営適正化委員会苦情解決合議体委員長 平成16年~東社協 福祉サービス運営適正化委員会委員長 平成17年~全社協 地域福祉権利擁護に関する検討委員会委員長 私が「福祉」の分野に研究者として初めて関与したのは、平成2年に当時の東京都福祉局が設置した「精神薄弱者・痴呆性高齢者擁護機関検討委員会」でした。この委員会は、判断能力が十分でない方たちが豊かで安定した地域生活が送れるよう、権利擁護体制の整備を図ることを目的としていました。最終報告(平成3年7月)の直前まで、後に東社協会長となられた金平輝子氏も委員長として関わっていました。私は、当時の民法の「禁治産制度」の専門家として呼んでいただいたと理解していますが、この委員会では、私は「お役に立つ」というよりも、もっぱら勉強をさせていただきました。 「権利擁護センターすてっぷ」の設立と役割 平成3年11月、東京における判断能力が十分でない方たちのための権利擁護機関「東京精神薄弱者・痴呆性高齢者権利擁護センター/愛称:権利擁護センターすてっぷ」(以下、すてっぷ)が東社協に設置され、私も「すてっぷ」の権利擁護委員として活動することになりました。権利擁護委員長は、元札幌高裁長官の野田愛子先生でした。「知的障害者の権利宣言(国連・1971)」等に添った権利擁護機関として設立し、日本の禁治産制度の改正を検討するために、欧米の成年後見制度の研究と検討も重ねました。この成果は、『新しい成年後見制度をめざして』(平成5年・東社協発行)に詳しく書かれています。また、野田先生を団長としてイギリス、ドイツ、オーストリアの法制度の実地調査を実施し、私も調査団の一員として現地に赴きました。特に、既に民法改正を済ませていたドイツとオーストリアの改正の方向は参考になりました。 「すてっぷ」は「意思能力が十分でない人々の社会生活を支援するために」専門相談員による相談援助や連絡調整等さまざまな活動をしてきました。これらの人々が安心して社会生活を送れるような社会的システムを創設するために、法律や制度の改正も広く社会に訴えました。真にノーマライゼーションが実現されるための啓発活動を積極的に展開しました。その後、禁治産制度は成年後見制度に転換され、制度の理念は根本的に転換されました。 この他にも、「すてっぷ」は「本人」との契約関係を前提にして、「生活アシスタント」を通じて日常生活の援助も行いました。知的障害者等の方々に契約内容を理解していただくために、印刷物などは可能な限り「わかりやすい言葉」で「ひらがな」を多く用いるなどさまざまな努力をしました。当時、厚生省の障害福祉課長の浅野史郎氏にも注目していただき、私は、「すてっぷ」の専門相談員で大学の同窓生でもある長谷川泰造弁護士とともに浅野氏の「勉強会」に招かれました。このようにして、「すてっぷ」の取組みは全国に知られるようになりました。 地域福祉権利擁護事業 その後、平成11年に福祉サービスの利用手続きや日常的な金銭管理等の「お手伝い」をする「地域福祉権利擁護事業」がスタートしました。利用契約は、本人にとっては、利用料を負担する点を除けば、不利になる点はありません。サービスの内容につき時間をかけてでも理解できる方であれば、この「お手伝い」の利用が可能です。この点では、法定代理権(他人による決定)を前提とする成年後見制度よりは、望ましい制度です。もちろん利用を可能とする判断能力を有しない方については、成年後見制度の利用が必要になります。 この制度は、できる限り、利用者の方の身近な場所にあることが望ましいので、区市町村ごとにこのような機関を設置することを前提にして、平成13年に「すてっぷ」は任務を終えました。 障害者権利条約が求めているもの 日本でも、平成26年に障害者権利条約が批准されました。第12条が提示している「支援つき意思決定制度」の趣旨は、本人意思の尊重の下で、本人が支援者を拒否でき、さらに、法的能力の行使に関連する措置が、(1)利益相反を回避し、不当な影響を排除し、(2)本人の状況の変化に適合し、(3)後見制度等の利用をできるだけ短期間にし、(4)その利用の必要性につき定期的に審査がなされることです。 支援つき意思決定制度は、「個人の意思と選好」に第一義的重要性を与え、人権規範を尊重するさまざまな支援の選択肢から成り、自律に関する権利を含むすべての権利と、虐待および不適切な扱いからの自由に関する権利を保護するものです。 欧米諸国においても、最近では、「最善の利益(ベストインタレスト)」よりも本人の「意思と選好の最善の解釈」が強調されています。成年後見制度に関連する仕事に携わる人には、ぜひ国際的な潮流にも目を向けていただきたいと思います。 私が代表を務めている「比較後見法制研究所」では、月に一回、国内外の成年後見に関する研究会を行っています。また、年に一度、海外の研究者の方をお招きして公開講演会も行っています。福祉分野の方たちの参加もあります。関心のある方は大歓迎、ホームページをご覧下さい。 【比較後見法制研究所ホームページ】https://www.hikaku-kouken.or.jp/ 【マンスリー】福祉のできごと 2020.3.26-4.25 ※対象期間外のできごとを掲載させていただく場合もあります 4/7 pick up 緊急事態宣言を発出 政府は、新型コロナウイルス感染症について、全国的かつ急速的な蔓延による国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと判断し、緊急事態宣言を発出した。期間は5月6日までの1か月間とし、国民に対し人との接触機会を最低7割から8割削減することをめざし、外出自粛を要請した。発出当初は7都府県が対象であったが4月16日には対象区域を全都道府県に拡大した。 3/30 「多様な性について知るBOOK」等を作成 東京都は、多様な性についての理解をすすめていくため、「多様な性について知るBOOK」および「職員のための性自認及び性的指向に関するハンドブック」の2冊の啓発冊子を作成した。冊子については都総務局人権部ホームページに掲載している。 〈東京都総務局人権部〉 https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/10jinken/tobira/16.html 3/31 埼玉県で「ケアラー支援条例」が施行 埼玉県は、親族、友人その他身近な人に対して、無償で介護、看護等日常生活上の世話その他の援助を提供する「ケアラー」の支援に関する施策の基本となる事項を「埼玉県ケアラー支援条例」で定めた。条例では、ケアラーの支援に関する県の責務をはじめ、教育関係機関に対してはヤングケアラーに関わる可能性の認識と教育の機会の確保、支援の必要性の把握等について明記している。 4/1 高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施が開始 「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険等の一部を改正する法律」の施行に伴い、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施が始まった。75歳以上の高齢者に対する保健事業を区市町村が介護保険の地域支援事業等と一体的に実施し、高齢者の心身の多様な課題に対応し、きめ細かな支援を実施することがねらい。 4/10 東京都が緊急事態措置等の取りまとめを公表 東京都は、政府の緊急事態宣言を受け、「新型コロナウイルス感染拡大防止のための東京都における緊急事態措置等」を取りまとめた。5月6日までの期間、都民に対しては不要不急の外出自粛を要請し、事業者に対しては施設の使用停止および催物の開催の停止要請を行うことが示された。 【東社協発】 ユースケのつぶやきコーナー 「私たちが中学生に伝えたい福祉の魅力 福祉施設における中学生の職場体験受入れハンドブック」解説動画を公開したよ!  東社協では、福祉施設自身が身近な地域での福祉への理解を広げるために、福祉の魅力を発信することを支えることを目的に平成29年度に「福祉の魅力可視化プロジェクト」を設置しました。プロジェクトでは、過去の調査結果(参考:福祉広報 平成29年3月号社会福祉NOW)から特に中学生の職場体験を福祉施設が受け入れる場面に着目し、施設が受入れの場面で活用することができるツールおよびハンドブックを作成しました。  平成30年度にはこのハンドブックをさらに視覚的に分かりやすく改訂しました。そして、ハンドブックをより活用していただくために、令和元年度プロジェクトでは解説動画を作成しました。  解説動画では、ユースケ(福祉の魅力を伝えるナビゲーター)が登場し、ハンドブックの構成や中学生の職場体験の概要、福祉の現場で働く職員が感じる福祉の魅力などを解説しています。さらに、実際に職場体験で活用できるツールや資料の使い方について、ユースケと中学生のやりとりを通じて、イメージを膨らませることができます。  中学生の職場体験をより良いものにするために、ぜひハンドブックと解説動画を活用してください。 ▼解説動画は東社協ホームページ内「ユースのページ」で公開しています。 https://www.tcsw.tvac.or.jp/youth/tsutaetai/03.html ▼ハンドブックはこちらから購入できます。 https://www.tcsw.tvac.or.jp/php/contents/book.php?key=400101 ▼ハンドブック、解説動画内で紹介しているツールは下記ページからダウンロードできます。 https://www.tcsw.tvac.or.jp/youth/tsutaetai/miryoku.html 東社協総務部企画担当では、Facebookで東社協のセミナーや研修の報告、出版物、社会福祉法人の取組みなどさまざまな情報を毎週発信しています。ぜひご覧ください。https://www.facebook.com/soumu.kikaku.toushakyo/ 新型コロナウイルス感染症に伴う東社協からのお知らせ ・本会では政府による「緊急事態宣言」、および、都知事による「緊急事態措置」の間、感染拡大防止のために一部業務の縮小や窓口時間の短縮などの対応を行っております。今後も状況に応じて同様の対応を延長する可能性があります。  本会事業の変更等の情報につきましては、ホームページに随時、情報を掲載してまいりますので、ご参照いただきますようお願いいたします。 ・新型コロナウイルス感染症の影響による休業や失業で、生活資金にお困りの方々に向けた緊急小口資金・総合支援資金の特例貸付を、3月25日(水)より実施しています。  特例貸付の詳細については、本会ホームページをご参照ください。  ※ご相談・お申込みの窓口は、お住まいの区市町村にある社会福祉協議会です。  東社協ホームページ https://www.tcsw.tvac.or.jp/ 【アンテナ】 助成金 子どもの体験活動・読書活動 令和2年度助成(二次募集) [郵送申請]6月16日(火)消印有効 ※持参する場合、17時まで [電子申請]6月30日(火)17時まで 子どもの健全な育成を目的に子どもの体験活動や読書活動の振興に取り組む非営利団体等※法人格を有しないが、活動を実施するための体制が整っていると認められる団体も可 活動を実施するために真に必要な経費(謝金、旅費、雑役務費、その他の経費)として、限度額50万円 所定の申請書類に必要事項を記入し郵送またはホームページにて※直接窓口に持参可 国立青少年教育振興機構 子どもゆめ基金部助成課 〒151-0052 渋谷区代々木神園町3-1 0120-579-081 yume@niye.go.jp https://yumekikin.niye.go.jp/ 海外研修事業 6月30日(火)必着 社会福祉法人またはNPO法人に所属し、障害福祉サービス等に従事しており、海外の障害者福祉等から学ぶべき課題を持ち、意欲的に挑戦する方。原則実務経験5年以上で25歳~60歳の所属法人代表者の推薦を得た方 8名程度 2021年4月から米シカゴでの10日間の合同研修の後、個別研修等 1名当たり3か月コース200万円以内、1か月コース100万円以内 ※助成金は所属法人を通じて支給 所定の申請書類に必要事項を記入し郵送 (社福)清水基金 海外研修係 〒103-0027 中央区日本橋3-12-2 朝日ビルヂング3階 03-3273-3503 03-3273-3505 https://www.shimizu-kikin.or.jp/about_business/oversea/ 松の花基金 8月末日必着 知的障害児(者)の福祉向上を目的とする営利を目的としない事業・調査研究等 ※原則として社会福祉法人、公益法人 年間総額500万円程度 所定の申請書類に必要事項を記入し郵送 (社福)松の花基金 〒103-0004 中央区東日本橋1-7-2 長坂ビル 03-5848-3645 03-3861-8529 http://matsunohana.jp/grant.html その他 24時間テレビ特別仕様福祉車両寄贈申込 5月20日(水)必着 非営利の民間団体または身体障害者認定、要支援1・2、要介護1認定を受けている個人 ※同一法人・グループ内での複数の申込みがあった場合や、2015年度以降に「24時間テレビ」から新車の贈呈を受けている団体・個人は対象外 リフト付きバス、スロープ付自動車、福祉サポート車、訪問入浴車、電動車椅子の贈呈 所定の申請書類に必要事項を記入し郵送 日本テレビ「24時間テレビ」 〒105-7444 港区東新橋1-6-1 [福祉車両・電動車椅子申込の場合]福祉車両係 [福祉サポート車申込の場合]福祉サポート車係 http://www.24hourtv.or.jp/welfare/detail.html 第14回 よみうり子育て応援大賞 6月10日(水)必着 子育てに関連した実践活動に取り組んでいる国内の民間グループや団体。活動年数やメンバー数は問わない 実績および、活動の独自性を評価する「大賞」(賞金200万円、1団体)と、将来性や支援の必要性を重視する「奨励賞」(賞金100万円、2団体)。別に、応募団体の中から選考委員特別賞(賞金20万円)を選ぶ 所定の応募用紙に必要事項を記入し、郵送、FAX、メールにて 読売新聞大阪本社「よみうり子育て応援団大賞」事務局 〒530-8551 大阪府大阪市北区野崎町5-9 06-6881-7228 06-6881-7229 taisyo@yomiuri.com https://info.yomiuri.co.jp/contest/lfmd/kosodate.html 【資料ガイド】 施策・会議資料 ■「外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議」報告書(文部科学省/3月) ■「令和元年度 共助社会づくりを進めるための検討会」検討結果報告(都生活文化局/3月) ■「第20回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会」資料(厚生労働省/4月) 調査結果 ■社会意識に関する世論調査(令和2年1月調査)(内閣府/3月) ■平成30年国民健康・栄養調査報告(厚生労働省/3月) ■外国人の子供の就学状況等調査結果(確定値)(文部科学省/3月) ■家庭における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用に関する調査結果(都都民安全推進本部/4月) その他 ■「全社協 福祉ビジョン2020 ともに生きる豊かな地域社会の実現をめざして」(全国社会福祉協議会/2月) ■手引き「児童虐待への対応のポイント~見守り・気づき・つなぐために~」(令和2年3月改訂版)(文部科学省/3月) ■パンフレット「食べて元気にフレイル予防」(厚生労働省/4月) ■新型コロナウイルス感染疑い発生時の対応フロー図及び対応チェックリスト(東京都新型コロナウイルス感染症対策医療介護福祉サービス等連携連絡会/4月) 【本】 こんなことに気づいてあげて ~暴力・虐待を防ぐためにあなたにできること~ 東社協では、暴力・虐待を防ぐために地域でできることを考えられるよう、本書を作成いたしました。本書の事例は、都内の児童・女性のための福祉施設に入所している方の話を加工して作成しています。 編:暴力・虐待を生まない社会づくり検討委員会 ◆規格 B5判/19頁 ◆発売日 2015.4.7 ◆300円+税 暴力・虐待を経験した子どもと女性たち ~暴力・虐待を未然に防ぐアプローチに関する調査報告書~ 本書では、児童・女性のための福祉施設の利用者を対象に、暴力・虐待を経験した実態を把握する調査の結果を掲載しています。結論として、未然に防げる可能性があり、9割の施設が「地域住民にできることがある」と考えていることが明らかとなりました。この結果を基に、具体的な地域活動がはじまっています。 ◆規格 A4判/120頁 ◆発売日 2014.4.18 ◆本体 800円+税 専門機関と地域住民の協働による地域づくり ~暴力・虐待を未然に防ぐ実践事例集~ 本事例集は、社会福祉施設等と地域住民の協働による暴力・虐待の未然予防の取組みを掲載しています。 本書を通じて、地域でのさまざまな創作工夫が、より広い地域において、具体的な取組みとして参考にされることを期待しています。 ◆規格 A4判/68頁 ◆発売日 2015.12.22 ◆本体 600円+税 【くらし】 オリヒメは、生きるためのテクノロジー 「OriHime(※)」(以下、オリヒメ)は、”距離も障害も昨日までの常識を乗り越える分身ロボット”としてさまざまな場面で活躍しています。 オリヒメを介して在宅で仕事をしている伊藤祐子さんにお話を伺いました。 オリヒメに出会うまで 30年程前、交通事故に巻き込まれたことにより脊髄を損傷し、車椅子生活となりました。受傷当時、私の両親は”親が亡き後も一人で生きていけるように”とあえて厳しく私に接してくれていました。両親の後押しもあり、車椅子でも働ける場所を探しながら、ひとり暮らしを始めるようになりました。 その後、社会福祉法人での福祉用具レンタル・販売などの営業事務をはじめ、造船会社でのオペレーターや文字入力の仕事、結婚・出産を経てからは特別養護老人ホームでの受付事務などの仕事を経験してきました。家事・育児をしながらの1時間以上の電車通勤は体力的に限界がきてしまい、退職し今に至ります。 オリヒメとの出会い 退職してからは家事をして過ごすことが中心で、ほとんど自宅から出ることがなくなりました。「このまま年老いていくだけなのかも・・・」と何もかもを諦めていた時、テレビやインターネットでオリヒメの存在を知りました。オリヒメを操作するパイロットがカフェ店員となって注文をとったり、お客さんとコミュニケーションをとっている姿を見て、”やってみたいと思っていたカフェの店員が私にもできるかもしれない”と期待が高まり、オリヒメのパイロットに応募しました。 社会の中に自分の居場所ができ、コンプレックスが払拭された 念願叶ってオリヒメのパイロットに採用されてからは、生活が一変しました。在宅で過ごしていることに変わりはありませんが、社会との繋がりが大きく広がり、自分の役割、居場所ができたのです。また、収入を得ることにより、社会に貢献しているという達成感も感じられるようになりました。 障害を負ってからは、車椅子を使用していることで相手に気を遣わせてしまったり、目線が低いことで相手から見下ろされているように感じたりと、”車椅子”という見た目がコンプレックスとなっていました。オリヒメは、目に見える障害の壁を払拭してくれる存在でした。オリヒメを介して人と接している時は、自分自身が抱えているコンプレックスから解放され、自信を持って人と接することができます。それにより、対等にコミュニケーションをとることができ、今までにない充実感を感じられるようになりました。 接客の仕事が「楽しい」 令和2年2月からは、ご縁があり、NTT本社ビルでオリヒメを介して来社された方の接客対応を行っています。受付から応接室や会議室まで、オリヒメがお客さまをご案内します。お客さまとの会話はもちろん、首を動かしてお客さまの方を見たり、相槌やジェスチャーができるため、来社された方は「はじめはAIだと思っていた。遠隔操作を感じさせず、隣に存在しているように自然にコミュニケーションが取れる」と言ってくださいました。また「一緒に外で営業したり、食事をしてみたい」と言われた時はとても嬉しかったです。私自身もオリヒメを利用していて不便さを感じたことはありません。それも、ホスピタリティ溢れるエンジニアさんや職場のみなさんの理解があってのことだと感謝しています。 オリヒメは、生きるためのテクノロジー ICTの活用がすすんでいる昨今、オリヒメの可能性は無限大だと感じています。障害のある方だけでなく、子育て中の方などさまざまな理由で外出や通勤が困難な方の新たな働き方としてオリヒメが広がればよいと感じています。 オリヒメは、利用する私たちに生きる希望と自信を与えてくれています。オリヒメは、まさに”生きるためのテクノロジー”なのです。 (※)株式会社オリィ研究所 https://orylab.com/ CAP OriHime-Dを介し、お客さまを案内中 福祉広報6月号休刊のお知らせ  新型コロナウイルス感染症拡大に伴う政府による「緊急事態宣言」や都知事による「緊急事態措置」等を受け、福祉広報6月号は休刊することといたしました。7月号を6・7月合併号とさせていただきます。  何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。 ※今号の「福祉職が語る」の記事は、令和2年3月10日にインタビューを行ったものです。  また、他のコーナーについては、電話やメール、インターネットを通じての取材にご協力いただきました。