【表紙】 社会福祉NOW 特別区児童相談所の設置の経緯と現状 ~先行3区の特徴と取組み~ 【連載】コロナ禍でも日常を守るために ~緊急事態宣言期間を中心とした福祉施設・事業所の取組み~ 日常生活を継続しながら感染症対策を追加する〜(社福)新栄会 更生施設・宿所提供施設 ふじみ コロナ禍で改めて利用者の持つ力に気づく〜北区社会福祉協議会 権利擁護センター「あんしん北」 福祉のおしごと通信 利用者の方たちからの 小さな「ありがとう」を大切にしたい 社会福祉法人はるび 特別養護老人ホーム「はるびの郷」介護職員 小林健太さん 長野県 白馬村 地蔵の頭1676メートル、 石を積み上げたケルンが そのまま地蔵堂となっている。 北アルプスの絶景を楽しめ、 地元の子供達にも格好の遊び場だ。 【NOW】 特別区児童相談所の 設置の経緯と現状 ~先行3区の特徴と取組み~ 家族形態の変化や地域のつながりの希薄化など、子どもや家庭を取り巻く環境は大きく変化し、その抱える問題も複雑化・多様化しています。また、令和元年度中に全国215か所の児童相談所(以下、児相)が児童虐待相談として対応した件数は19万3千780件(速報値)で過去最多となり、児童虐待を防止する体制を強化していくことが求められています。 そのような中、平成28年5月に児童福祉法が改正されたことにより、特別区が児相を設置できるようになりました。都内では、令和2年4月に世田谷区と江戸川区が、次いで7月には荒川区が設置しました。今後19区がこれに続く予定です。今号では特別区児相設置の経緯と現状、ならびに先行した3区の特徴と取組みについてお伝えします。 ◆児童相談所とは 児相は、児童福祉法に基づいて設置された児童福祉の専門の相談機関です。原則18歳未満の子どもおよびその家庭に関する相談に応じ、問題解決に必要な指導、援助、措置を行います。児童福祉司、児童心理司、医師、保健師等の専門職が、虐待や養育困難、不登校、障害、非行等の相談、里親の相談等に対応します。 相談に対しては、受理し、調査・診断等を専門的に行い、援助方針を決定します。必要に応じ専門機関へのつなぎや、専門職による継続的な治療プログラム、カウンセリング等も行います。また、緊急な保護や、保護による行動観察、短期入所指導の必要がある場合には「一時保護」を行います。そのほかに、里親制度の推進や「療育手帳(東京都では愛の手帳)」の判定等を行っています。 ◆児童福祉法改正と特別区児相設置の動き 児相の設置は、都道府県(指定都市を含む)に義務が課されています。これに加え、平成16年11月の児童福祉法改正により、政令で指定された市も児相を設置できることになりました。これにより、子育て支援から要保護児童対策までの一貫した児童福祉施策や、中核市は保健所設置市でもあるため、保健と児童福祉行政の一体的な展開が可能となることなどに期待がされています。しかし、設置市はこれまで金沢市と横須賀市、明石市の3市にとどまっています。 平成28年5月の児童福祉法改正により特別区(※1)にも児相を設置できることとなりました。一般の市町村と同じ基礎自治体であり、特別区の多くが中核市と同等の人口規模を有していることなどからです。法改正を受け、東京23区のうち22区が設置の意向を示し、令和2年4月に世田谷区と江戸川区が、7月に荒川区が設置しました。特別区での児相設置がすすむ背景について、東京都福祉保健局少子社会対策部事業調整担当課長の宿岩雅弘さんは「平成28年の法改正以前から都と特別区の間では、さまざまな行政分野の事務の連携と分担について幅広の議論がなされてきた。その議論の中でも、児相を特別区が担いたいという意見があがるなど、特別区において児相設置に関する検討がなされてきた」と話します。 なお、東京都の特色として、区市町村が設置する「子供家庭支援センター(以下、子家セン)」は子どもと家庭に関する総合相談窓口として、都児相は専門性の高い困難事例等の対応窓口として、互いに連携しながら児童相談を行ってきました。先行して児相を設置した3区においては、それぞれの区が地域に合った児童相談体制を構築しています。 今号では、先行3区の各児相の特徴や、取組みなどについて聞きました。 開設を機に、児童福祉行政を再構築 ~世田谷区児童相談所~ 世田谷区は、平成3年度より、地域行政制度(※2)を導入し、28の出張所、5つの総合支所、本庁という体制のもと、地域住民に身近な行政サービスを実施しています。子育て支援や母子保健については、子家センが中心となって取り組んできました。また、平成28年4月から、児童養護施設や里親等の元を巣立った若者の進学や社会的自立を応援する「せたがや若者フェアスタート事業」として、給付型奨学金・住宅支援・居場所支援を実施するなど、児童福祉に関する事業に積極的に取り組んできた経緯があります。児相の開設について、所長の土橋俊彦さんは「妊娠から出産、保育・幼児教育、学校教育までの一貫した支援を実現するため、開設に向けて取組みをすすめることになった」と話します。また、副所長の河島貴子さんは「地域行政制度を取り入れている世田谷区にとって、児童相談所の開設にあたって子家センと一元的な運用により運営していくという流れは自然だった」と話します。 ◆準備期から職員と共に児相を創り上げる 開設にあたって、さまざまな工夫のうえ人材確保やケースの引継ぎを行いました。人材確保については平成30年度から本格的に動き出し、庁内公募等も行い、開設1年前には必要な職員の約85%を専任配置できました。土橋さんは「専任配置の職員がいたことで、運営上のマニュアルや、建物改修にあたっての内装等のデザイン等、職員の力で一から創り上げることができた。自分たちで創り上げたという愛着や団結力が生まれたことは大きい」と強調します。都の世田谷児相からのケースや業務の引継ぎには、半年程度の期間を設けました。区内5つのエリアごとに担当を割り振り、担当エリアの複数の職員で1つのケースを引き継ぐ体制をとりました。土橋さんは「ケースの引継ぎは大変だということを想定していたため、職員を多く配置した。複数の職員が1つのケースを共有することで、勉強の機会としても活用した」と話します。 ◆「のりしろ型」支援の推進と窓口の一本化 児相の運営にあたっては、これまで子育て支援や母子保健の土台を築いてきた5つの子家センの形を基本にしながら、有機的に連携できるしくみを構築する必要があったと言います。児相と5つの子家センとの月1回の合同会議を実施するほか、子家センと児相が担当者レベルで連携できるよう、所内組織をエリア担当ごとに分け、専任の職員を配置しました。連携体制のひとつとして、世田谷区では「のりしろ型」支援を展開しています。「のりしろ型」支援とは、子家センと児相の両機関の職員がチームとなり、1つのケースについて日常から情報共有を行い、必要に応じて協働で支援する世田谷区独自の体制です。これによって虐待等の要保護児童等の早期発見・早期対応を意識した支援を展開することができます。 その他、これまで5つの子家センと都児相で受けていた虐待等の通告窓口について区民向けのフリーダイヤルを開設し、児相に一本化しました。専門機関である児相で一括して通告を受理し、初動対応の一時的方針の判断を行う体制とすることで、より適切な支援につなげることが可能となりました。 ◆枠組みを超えた経験を通じて総合力を高める 今後について、土橋さんは「ようやく8か月が経った。今は、とにかく経験を蓄積し、職員の質を高めていきたい」と話します。河島さんは「連携は相手の立場や役割を知るところからはじまる。将来的には区内の人事異動等を通してさまざまな職場を経験することにより、子どもの育ちや将来像を見据えた支援ができる人材が育てば良いと思っている」と話しました。 事件をきっかけに、いち早く開設を ~江戸川区児童相談所~ 江戸川区がいち早く児相設置に向けて動いたきっかけは、区内で平成22年1月に起きた小学校1年生男児の虐待による死亡事件でした。区では独自に事件を検証し、機関同士の連携の不十分さにより、この家庭が機関のはざまに落ち、結果として支援が十分に届かなかったことが分かりました。これを抜本的に解決するには「児相を区に設置し、区が児童相談行政の責任を持てる体制が必要」と考え、都や他区と検討を重ねてきました。そして法改正を受け江戸川区は設置を表明し、平成29年4月に開設準備担当課を設置、3年後の開設を目標としました。 人材については、子家センの職員を児相職員として確保するとともに、新卒者や経験者の職員採用を行いました。また、育成のために児相設置を見越した時点から、他の自治体の児相への職員派遣を積極的に行いました。人材確保について江戸川区児童相談所相談課長の木村浩之さんは「採用のほかにも区職員の中からの発掘も必要。開設にあたっての区職員向け勉強会には毎回100人以上が参加し、アンケートでは児相で勤務を希望する声も聞かれた」と話します。 そして、開設1年前からは、各児相に派遣していた職員を江戸川区を管轄する都の江東児相に集約してケースワークをしながら引継ぎを行ってきました。木村さんは「ケース数が多く、引継ぎは困難を極めた。追加で職員を派遣し、開設までに全てのケースの引継ぎを完了できた」と振り返ります。 ◆江戸川区児相の3つの「一元化」 江戸川区ではこれまで3つの「一元化」の実現をめざしてきました。1つめは「指揮系統の一元化」です。先述の痛ましい事件の教訓から、江戸川区では子家センと児相の二元体制を一機関に集約することが命題でした。開設後は子家セン機能を持つ課と児相機能を持つ課が連携して迅速かつ、きめ細やかに対応しています。2つめは「支援対応の一元化」です。基礎自治体であることを活かし、母子保健や子育て支援、学校教育、そして地域住民や関係団体と連携を強化し虐待の発生を防止します。3つめは「窓口の一元化」です。以前は、子家セン、虐待専用ダイヤル、江東児相、189(※3)の4つの電話番号があり、相談者からは分かりづらい状況がありました。現在は189のほかは、総合相談窓口の電話番号の1つのみとし、児童に関するあらゆる相談を受け付けています。また、建物の1階には地域交流スペースが設けられ、子育てひろばや里親相談会等を行っています。 里親支援は、フォスタリング機関事業(※4)を社会福祉法人へ委託し包括的支援に取り組んでいます。また、児童養護施設が区内に無かったため、区有地を活用し設置をすすめました。現在、令和3年4月の開設に向けて準備中です。 ◆子どもの権利を擁護する一時保護所 新築した区児相内に設置された一時保護所は、子どもの権利を最大限擁護できる施設をめざしました。多数の個室、家庭用ユニットバスを男女4基ずつ設置しました。また、意見箱を置いたり、月1回子どもたちだけの会議の場を設けるなど、子どもが意見を出しやすい工夫をしています。木村さんは「身近な地域の一時保護所なので、今後は子どもが在学する学校の先生との連携にも取り組んでいきたい」と話します。 ◆〝地域力〟で虐待防止に取り組む 区に児相が設置され、学校等の地域の関係団体とのつながりが密になりました。相談課が事務局を担う要保護児童対策地域協議会に地域の校長先生も出席するなど、より近い関係が築けています。地域との連携を強化し、虐待の数を減らしていくことが大きな目標です。 木村さんは「現在の江戸川区児相が完成形だとは思わない。柔軟に形を変えながら、江戸川区らしい相談体制・支援のあり方を確立していきたい。江戸川区は〝地域力〟が自慢で、地域の皆さんが力を貸してくれる。児童虐待の防止にも、この〝地域力〟を活かして取組みをすすめていきたい」と今後の展望について話します。 地域と関係を築き、開かれたセンターに ~荒川区子ども家庭総合センター (荒川区児童相談所)~ 荒川区では「荒川区の子どもは荒川区で守る」という理念のもと、令和2年4月に「子ども家庭総合センター」を開設しました。開設当初は、これまで子家センが担っていた業務を引き継ぐ形で開始し、児相業務は7月から開始しました。副所長の小堀明美さんは「4月から6月までの3か月間は区職員を都の北児相に派遣し、ケースの引継ぎ期間とした。4月に人事異動があった後に、職員が確実にケースを引き継ぐ体制を整えることができた」と振り返ります。開設にあたって新築した建物は木材や丸みのあるデザインを採用し、温かみのある雰囲気をつくっています。また、名称には〝児童相談所〟を掲げていません。小堀さんは「区民が気軽に相談できるよう名称にもこだわった」と言います。 ◆予防的支援の推進と関係機関との連携強化 「子ども家庭総合センター」は、同一自治体において一貫した支援が行えるメリットを最大限に活かせるよう、子家セン機能、児相機能および一児保護所を一体的な組織の中で運営しています。小堀さんは「これまでは、関係機関との連携には物理的な時間を要していたが、区内に児相が設置されてからは、内線一本で保健師等と情報共有ができるようになった。健診の情報や特定妊婦の情報等、必要な情報を素早く共有できるようになったため、早期発見・早期支援につながっている。また、学校や保育所等の関係機関の中には、以前一緒に働いたことがある職員もおり、顔が見え、スムーズに連携がとれるようになったと感じる」と話します。 ◆潤沢な職員配置による手厚い支援 人材の確保については、児相の設置を見据え、数年前から計画的に福祉職の採用をすすめていました。その結果、国の基準よりもはるかに余裕をもって職員を確保できました。小堀さんは「一人あたりのケース数に余裕を持たせることができた。また、荒川区は自転車があれば30分程度で行き来できるコンパクトな区。都の北児相では、距離が遠いことから月に1回程度しか訪問できなかったケースも、複数回訪問できるようになり、手厚い支援が可能となった」と話します。 荒川区の一時保護所は、家庭的な雰囲気となるよう生活空間をユニット形式としています。小堀さんは「一時保護所に従事する職員も十分に配置しており、子どもたちと丁寧に関係を築く環境を整えている」と話します。 ◆複雑・多様なケースに対応できる人材の育成 荒川区に児相が設置されたことは、地域住民にも影響を与えています。小堀さんは「荒川区には下町気質の住民が多いことから、住民や関係機関との関係性を築きやすいという強みがある。開設以前から児相の設置について地域住民にしっかりと周知していたことが功を奏したのか〝気がかりなことは児相に〟という意識が地域住民の中で芽生えつつあり、地域住民からの通告や相談等も多い。今後も地域にとって開かれた場所となるよう、積極的に周知していきたい」と話します。続けて「新型コロナの影響で職員研修がほぼ中止になり、研修を十分に受けられないまま現場に出ざるを得ない職員もいた。現在定期的に実施している事例検討やロールプレイ等のセンター内研修を充実させ、複雑・多様なケースにも対応できる職員の育成に引き続き力を入れていきたい。また、積極的なアウトリーチを意識し、声を上げられずに困っているなど、支援を必要とする方に子ども家庭総合センターの存在を知ってもらいたい」と話しました。 ●     ●     ● 3区が児相を設置したことによる新しい課題もあります。都福祉保健局の宿岩さんは「これまで都児相のみであった設置主体が増えたことにより、一時保護所の空き状況の共有方法や、児童養護施設等が行う措置費の請求手続きが複雑化したことなどがあげられる。ケースの引継ぎ方法についても、区からの派遣職員の数や期間等、3区それぞれに違いがあった。その経験もふまえ、今後の都と区の連携のあり方について検討が必要」と話します。 また、人材確保や用地等の課題から開設予定を延期する区も出てきています。特に人材については、平成31年3月の児童福祉法施行令改正により、児童福祉司の配置基準が人口4万人あたり1人から3万人あたり1人となるなど、さらなる体制の強化も求められています。宿岩さんは「人材確保は都と区に共通する大きな課題。異動や退職もある。また、採用後にすぐ即戦力になれるわけではないため、丁寧に育成していく必要がある。厳しい状況ではあるが、質と量を確保していくことが重要」と話します。 令和3年度には港区と中野区が設置予定とし、17区が順次これに続きます。今後、身近な地域である特別区に児相が設置され、子家センをはじめ、保健所や地域の関係機関との連携を一層円滑に行うなど、きめ細かな支援を展開することにより、支援が必要な子どもや家庭の早期発見、児童虐待の未然防止につながっていくことが期待されます。 (右から) 東京都福祉保健局少子社会対策部 事業調整担当課長 宿岩 雅弘さん 家庭支援課 課長代理 布施 裕司さん (※1)全国で現時点では東京23区のみ (左から) 世田谷区児童相談所 所 長 土橋 俊彦さん 副所長 河島 貴子さん 世田谷区児童相談所 (※2)都市としての一体性を保ちながら、住民自治の実をあげるため、区内を適正な地域に区分して地域の行政拠点を設置し、これを中核として総合的な行政サービスやまちづくりを実施するしくみ(せたがや自治政策研究所『地域行政の推進に関する研究 令和元年度報告書』より) 江戸川区 児童相談所 相談課長 木村 浩之さん 江戸川区児童相談所 (※3)児童相談所に通告・相談ができる全国共通の電話番号 (※4)児童福祉法第11条第1項第2号に掲げる業務に相当する、里親のリクルートおよびアセスメント、登録前、登録後および委託後における里親に対する研修、子どもと里親家庭のマッチング、里親養育への支援(未委託期間中および委託解除後のフォローを含む。)をフォスタリング業務といい、一連のフォスタリング業務を包括的に実施する機関をフォスタリング機関という。 荒川区子ども家庭 総合センター (荒川区児童相談所) 副所長 小堀 明美さん 荒川区子ども家庭総合センター (荒川区児童相談所) 【マンスリー】2020.12.26-2021.1.25 1/7 緊急事態宣言を再発出 政府は、新型コロナの感染を減少傾向に転じさせるため東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県に「緊急事態宣言」を発出。同月13日には、栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県を追加することを決定。いずれも期間は2月7日までの1か月間を予定(2月1日現在)。 12/24 「新たな児童相談のあり方について」を提言 都児童福祉審議会は「新たな児童相談のあり方について」を都に提言した。提言では、児童虐待の未然防止や早期対応を抜本的に強化するための具体的な施策の方向性を示している。 1/8 「社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度利活用に関する検討会 報告書」を公表 厚労省は、社会保障に係る31資格におけるマイナンバー制度の利活用に関し、届け出の簡素化およびオンライン化、マイナポータルを活用した資格保有の証明、提示等の論点についての有識者の意見や、今後の対応や課題をまとめた報告書を公表。社会保障に係る資格におけるマイナンバー制度との情報連携に関して、必要な対応をすすめる方針。 【連載】7 コロナ禍でも日常を守るために ~緊急事態宣言期間を中心とした福祉施設・事業所の取組み~  新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染拡大の影響により、福祉施設・事業所には利用者の命・生活、職員の安心・安全を守るため、これまで以上に厳しい感染症対策が求められています。特に国による緊急事態宣言および東京都による緊急事態措置期間中(令和2年4月7日~5月25日)は、各施設等において新たな感染症に配慮しつつ、利用者の日常をいかに守るか苦心し、工夫を重ねていた時期でした。令和3年に入ってもなお感染拡大の状況が続き、東京では1月8日より2度目の緊急事態宣言期間に入りました。  本連載では、令和2年4、5月の緊急事態宣言期間を中心に、福祉施設・事業所が未知の感染症にどのように向き合い、利用者の生活を守る工夫や取組みをしてきたのかを発信していきます。今回は、更生施設と、社会福祉協議会(以下、社協)の地域福祉権利擁護事業について取材しました。 *今回、紹介する事例のさらに詳しい内容は、本会の「ふくし実践事例ポータル」でご覧になれます。 (http://fukushi-portal.tokyo/) 日常生活を継続しながら 感染症対策を追加する 〜(社福)新栄会 更生施設・宿所 提供施設 ふじみ 更生施設について  更生施設は、心身上の理由から、一人では在宅生活が難しい生活保護受給者が入所し、生活指導や軽作業を通じて、在宅生活をめざすための施設です。都内には11か所あり、うち単身女性を対象とする施設は3か所です。その一つが、社会福祉法人新栄会が運営する更生施設 ふじみ(以下、ふじみ)です。宿所提供施設も併設・運営しています。  入所される方の年代は10代から高齢の方まで幅広く、最近では精神科病院から地域生活に戻る前に更生施設に入り、在宅生活が可能か見極めるケースが多くあります。 非常事態時は日頃のつながりが大事  ふじみでは、日頃の感染症対策として、インフルエンザなどの感染症にかかった方のための特別室を用意しています。マスク、防護服、使い捨て手袋などは一通り揃えており、感染症マニュアルに従って対応します。更生施設は看護師が必置のため、感染症が発生すれば看護師を中心に対応することになっています。  令和2年2月の新型コロナの感染拡大以降は、従来のマニュアルとは別に、新型コロナ専用のものを作成しました。  感染対策等に関する情報は随時、都や東社協の更生福祉部会等から得ました。また、月に一度の区内社会福祉法人連絡会や3か月に一度の都内更生施設の施設長会で、リスク管理の方法や感染対策物品の調達ルート等について情報共有しました。  こうした他施設との情報交換について、施設長の八木武寛さんは「種別に関わらず、他の施設も同様の対策を行っていることが分かり、安心感を持てた。2月頃、業者からの感染対策物品の入荷が未定の中、社会福祉法人連絡会の情報提供や法人内での融通などにより、急場をしのげた。このような非常事態にこそ、日頃の付き合いが大事だと思った」と振り返ります。 行事はほぼ中止  新型コロナが流行し始めてからは、利用者に手洗い、手指消毒の徹底を伝えるための掲示物を玄関やエレベーターに貼り出しました。掲示物には難しい言葉や漢字を使わず、シンプルに伝えることを意識しました。  月1回ほど行っていたバス旅行や料理教室等の行事は、ほとんど中止としました。しかしそうした中でも、大道芸のパフォーマーを呼び、距離を取って見る催しを行うなど、利用者の楽しみが減らないよう職員が工夫しています。利用者からは「職員がよくやってくれている」という声も多くあります。 緩やかにこれまでの生活を続ける  職員の出勤体制も工夫しました。3月から、日勤班と夜勤班の2班体制に分け、どちらかに感染者が出ても施設の運営が続けられるよう交代して出勤する体制をつくりました。  しかし、業務が回しづらく、心身の負担が増えたなどの理由から、4月半ばで終了しました。以降は、感染対策をより徹底した上で、従来の体制で業務を行うことにしました。  コロナ禍での施設の生活について、八木さんは「更生施設は利用者の生活の場。厳しい制限と、それによって溜まるストレスを考えた時、緩やかに制限するところはしながら、これまでと変わらぬ生活を維持する方が良いのではないかと考えた」と言います。生活リズムを整えるなど、日頃から一人での生活をめざした助言や支援を行っており、そこに感染対策も加える形での支援を意識しています。  新型コロナは、それまでの仕事のやり方を見直すきっかけにもなったと言います。  「これまでは『職種ごとに職員がいるので、それぞれがその仕事内容を分かっていれば良い』という雰囲気があった。しかし、班編成等を考える中で、誰が出勤できなくなっても施設を継続するためには、人の仕事を〝お節介する〟必要があると気づいた」と言います。  今後は、昨今のオンライン化の流れを受けて、関係者会議等の場面で、職員や利用者が使えるよう、タブレット端末を用意するなどの環境整備を急いでいます。 コロナ禍で改めて 利用者の持つ力に気づく 〜北区社会福祉協議会 権利擁護センター「あんしん北」  地域福祉権利擁護事業(以下、地権事業※1)は、認知症高齢者や知的障害者、精神障害者等で、一人での判断が難しい方を対象に、契約に基づき福祉サービスの利用援助や日常的金銭管理等を行い、地域生活を支援する事業です。  東京都北区では、北区社協の権利擁護センター「あんしん北」(以下、あんしん北)で地権事業を実施しています。令和2年12月末時点の利用者(契約者)は44人です。 令和2年2月頃より支援調整を開始  地権事業では、「専門員」がアセスメントや契約等を行います。支援計画に基づく利用者宅や金融機関等での支援は、多くの場合、地域住民である「生活支援員」が担っています。  あんしん北では、2年2月頃より、高齢の方も多い生活支援員に、コロナ禍での活動継続の意向確認を行いました。感染への不安から活動休止を希望する生活支援員もおり、意向に応じて個別に調整を図りました。加えて2月中旬以降は、関係機関との会議や研修は全て中止としました。  3月25日から全国の社協で、新型コロナの影響で減収や失業された方等への特例貸付が始まり、北区社協にも相談や申請が殺到しました。全部署から貸付担当に常時職員を出す中、残る職員が、貸付の応援と並行して地権業務に当たりました。 命を最優先に支援を一時休止・縮小  3月末、東社協は地権事業について「必要不可欠な支援は確実に継続することを前提に、可能な範囲で支援の縮小や効率化、一時休止等を検討」するよう各社協に通知しました※2。  あんしん北では同様の方針で事前調整を始めており、利用者の持つ力や福祉サービスの利用状況、家族の状況等を考慮し、個別に当面の対応を決めていきました。例えば、あんしん北で通帳を預かっている場合は一旦返して本人管理としたり、一度に払い戻す生活費を増額した上で、訪問回数を減らすなどとしました※3。  あんしん北センター長の飯野加代子さんは、「区内では大半の福祉サービスが継続されたこともあり、この時点では感染を防ぎ、命を守ることを最優先に、原則として一定期間、支援を休止することを前提に対応を決めた」と言います。利用者へは担当専門員から丁寧に説明や相談を行い、理解を得ていきました。  4月からは生活支援員の活動を全面休止しました。代わりに生活支援員への「ニュースレター」を発行し、随時情報を伝えるよう工夫しました。  利用者への訪問ができない中でも、専門員は定期的に本人や家族へ電話したり、ケアマネジャーや通所先と連携し、生活状況の把握に努めました。 感染予防に配慮して事業を再開  5月末以降、都や東社協の方針等を参考に作成した事業再開計画等に基づき、利用者への支援を段階的に再開し、9月には生活支援員による支援に全面的に戻しました。マニュアルを作成し、支援時に使用する消毒液や手袋等を入れた「感染予防セット」を生活支援員に配付し、感染予防に配慮した支援を行っています。  主任の田村佳奈子さんは「これまで自力での通帳や生活費の管理は難しいと見立てていた方が、数か月間、ご自身の力で対応された例もあった。非常事態の下で、利用者の持つ力や支援内容を改めて見直す機会にもなった」と言います。  あんしん北では、地権事業だけでなく、成年後見制度の利用支援、区民や関係機関等への両制度の普及啓発等の役割も担っています。10月以降は、研修会や講座も実施方法を工夫し再開しました。会場開催の場合は、事前申込みとヘルスチェックシートの持参を必須とするなど、感染防止を徹底しています。工夫を重ね、現在は、受付時点で各参加者の座席を記録し、仮に開催後に発症者等が判明した場合も、その方の周囲の参加者を特定できるようにしています。  飯野さんは「北区社協全体が『コロナ禍でも区民・利用者のためにできることを考え実行する』という方針でいる。今後もこの姿勢で取り組んでいきたい」と話します。 更生施設・ 宿所提供施設 ふじみ 施設長 八木 武寛さん ※1:地域福祉権利擁護事業は、全国的には「日常生活自立支援事業」の事業名で実施されている。東京では事業創設当時の「地域福祉権利擁護事業」の名称にて現在も事業を実施。 ※2:東社協からは令和2年2月25日以降、随時、通知「地域福祉権利擁護事業における新型コロナウイルスへの対応について」を都内各社協に発出。この時点の通知は第2弾(2年3月26日発出)。3年1月13日現在で計5回発出。 ※3:利用者一人ひとりの状況に応じて、「月何回何曜日に、A銀行のB口座より何円を代理で払い戻す」等の支援計画を作成し、契約している。通帳紛失等が懸念される方等の場合、社協にて通帳を預かる計画とする場合もある。 北区社協権利擁護センター「あんしん北」職員の皆さん (撮影当日、在宅勤務中の方も画面上で参加) 【東社協発】 コロナ禍の中で求められる寄附とは 東京善意銀行「社会福祉施設・事業所の寄附希望アンケート」より  コロナ禍が寄附を希望する社会福祉施設にどのような影響を与えるのか―東京善意銀行(以下、善意銀行)では令和2年7月、都内社会福祉施設や事業者を対象に寄附希望アンケートを実施しました。  このアンケートは、寄附者の意向と施設の要望がつながり、寄附が迅速に届くよう毎年行っています。今回は、こうした目的に加えて、コロナ禍で求められる寄附について尋ねました。(調査票の配布先は都内2440事業所。回答率は77・7%) 衛生用品の希望が最多  アンケートの結果から、施設が求める寄附にコロナ禍が影響を与えている様子が浮き彫りになりました。  共同生活の場でもある施設では、消毒液やマスクなどの衛生用品は不可欠です。普段は定期的な購入や備蓄分で間に合うため、寄附を希望する割合もあまり高くはないのですが、今回のアンケートでは、最も希望が多い物品にあげられました。【表1】この背景には、コロナ禍で使用量が急増したことや、利用者への生活支援の一環として施設の備蓄を配布したこと、品薄で一時的に入手困難になったことがあると見られます。  これに関連して、コロナ禍が拡大した昨年前半の確保状況を尋ねたところ、マスクについては63・3%の施設が、消毒液については71・3%の施設が「やや不十分だった」「まったく不十分だった」と回答しました。「衛生用品は本当に入手できず逼迫した状況だった」(高齢者施設・多摩地域)、「すべての衛生物品が不足して購入も欠品でままならなかった」(高齢者施設・23区)などのコメントから、深刻な事態に直面していた現場の様子もうかがえます。  これらの施設に、不足した衛生用品をどのように確保したのかを尋ねたところ、マスクについては41・6%の施設が、消毒液については66・0%の施設が「購入した」と回答しています。一方、政府や自治体の備蓄分が臨時に供出されたことを受け、「国や自治体からの支給を受けた」と回答した施設もありました。(マスクで40・3%、消毒液で22・0%)なお、マスク不足のために「使用量を減らして対応した」施設の割合も11・6%を数えました。 コロナ禍でも生活を豊かにする寄附を  コロナ禍は、施設と寄附者がつながる大切なコミュニケーションの場づくりにも影響を与えています。  寄附の受入れに生じる影響を尋ねたところ、「寄附の受領場所や贈呈式会場に行くことができない可能性がある」(64・5%)、「寄附物品を活用するイベント・行事を縮小または中止する可能性がある」(64・4%)、「施設内での寄附の贈呈式を開催することができない可能性がある」(57・0%)の順に回答がありました。  寄せられたコメントには、感染拡大防止で外出や行事開催ができない状況を反映した要望も目立ちました。「外出の制限がある中、施設内のイベントやレクリエーションに使える寄贈がありがたい」(児童関連施設・23区)、「コンサートやスポーツ観戦を楽しみにしている利用者がたくさんいる」(障害関連施設・23区)、「見通しの持てない状況が続くが、利用者の方が喜ぶサプライズな寄附を期待している」(障害関連施設・23区)など、コロナ禍の長期化で室内での生活を余儀なくされる中、そうした時間を豊かにするための寄附やプログラムを求めている姿が浮かび上がりました。  今回の結果を受け、善意銀行では、長期化するコロナ禍の中で、寄附の要望がどのように変化していくのかを注視するとともに、普段の生活に求められる寄附の内容にも幅広い理解が得られるよう取り組んでまいります。 東京善意銀行にはコロナ禍でも寄附の申し出が相次いでいる (写真は施設に寄附されるマスク) 【ユースケのつぶやき】 もう「ふくし実践事例ポータル」は ご覧いただけましたか? 令和2年12月号に同封した令和2年度福祉広報読者アンケートへのご協力ありがとうございました。 アンケートの結果では、「社会福祉NOW」や「Topics」の記事が好評でした! 皆様からいただいた貴重なご意見を、今後の福祉広報のさらなる充実と改善に活かしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ♦   ♦   ♦ さっそくですが、アンケートでもお聞きした「ふくし実践事例ポータル」サイトについてご紹介させてください! ここでは、福祉にかかわる実践事例等を紹介しています。 各地域で社会福祉を目的として活動するさまざまな団体の実践事例や、災害対応に関する取組み事例がデータベース化されています。 これらの事例を、皆様の現在の活動や今後の新しい活動の参考として活用していただけると嬉しいです! 活動の 参考になるもの がほしい! 福祉の 実践事例が 知りたい! 福祉広報で 読んだ記事を もう一度読みたい! 皆様のご希望にお応えすることのできるサイトとなっています。随時更新中ですので、ぜひ一度ご覧になってみてください!    ▼  ▼  ▼ 「ふくし実践事例ポータル」 http://fukushi-portal.tokyo/ 「ふくし実践事例ポータル」の紹介ページ http://fukushi-portal.tokyo/pages/about/ 【寄附のカタチ】東京善意銀行への寄附をご紹介します。(不定期掲載) 寄附で届けるワクワクおやつ 株式会社スナックミー  スナックミーでは、素材にこだわり、環境問題やフードロスに配慮したおやつづくりに取り組んでいます。こうした製品づくりだけにとどまらず、他にも社会のためにできることを考える中、東京善意銀行を通して子どもたちの施設へのおやつの寄附を始めました。  「皆様にとても喜ばれていることが分かり寄附を続けている。各地の生産者が心を込めたお菓子で、ワクワクするおやつの時間を過ごしてほしい」(広報・地曳さん) 「おやつを通した楽しみやワクワク感を大事にしたい」と話す スナックミーの皆さん 東京善意銀行では、社会福祉施設等への寄附のご相談を承っております。 ●千代田区神田駿河台1-8-11 東京YWCA会館3階  ☎03-5283-6890 zen-i@tcsw.tvac.or.jp 【福祉のおしごと】 利用者の方たちからの 小さな「ありがとう」を大切にしたい 特別養護老人ホーム「はるびの郷」で介護職員として働く 小林健太さんにお話をうかがいました。 小林健太さん Kenta Kobayashi 社会福祉法人はるび  特別養護老人ホーム 「はるびの郷」介護職員 就職活動中に出会った介護の仕事 大学時代の専攻は経済学でした。4年生の就職活動では、同じ学部の人たちは、いわゆる一般企業をめざしていました。私は、自分がそのような職業に就いている姿を想像することができず、何をしたいのかが分からないまま時間が過ぎていきました。 当時、祖母が認知症で施設に入所していて、時々面会に行っていました。就職活動で悶々とする中、それまでは気にとめていなかったのですが、「祖母の世話をしてくれている方たちがこんなにいるんだ、こういう仕事もあるのか」と初めて気がつきました。 「介護の仕事をしてみてもいいかな」と思うようになり、卒業間近に、実家のある県内の福祉・介護の仕事の合同説明会に参加しました。さまざまな職種の求人があって驚きました。福祉のことを学んだこともなく、無資格でも働けるのか心配していましたが、働きながら経験を積むことで資格取得を支援してもらえると聞き、応募に前向きになりました。 多くの求人の中から、地元の新設のケアハウスに介護職として就職しました。 ケアハウスで働きながら、「介護職員初任者研修」の受講を皮切りに資格を取得し、介護福祉士の国家試験にも合格することができました。 資格を取得し、仕事の経験も重ねていましたが、知識や経験を自分の仕事に活かし切れていないことをもどかしく感じていました。私以外はベテラン職員ばかりで、キャリアも世代も違う中、気軽に質問することもできませんでした。本当にこのようなやり方で良いのか、どうしたらベテランの方たちのような介護ができるのか、いつも一人で悩みました。 年月を経て、自分にも後輩ができて、後輩を指導する立場になりました。一生懸命に指導に当たるのですが、その都度、自身の経験では足りていないと思いました。そこで思い切って6年間働いたケアハウスを退職しました。 「はるびの郷」で出会った介護の魅力 介護の仕事は自分に向いていると思っています。次も介護の仕事をしたいと思い、都内の特別養護老人ホームに面接に行きました。今の施設に就職したいと思ったのは、面接時に介護係長さんが、「何か所か面接に行って自分で良いと思うところに決めなさい、その中でうちの施設を選んでくれたら、その時は後悔させません」と言い切ってくれたからです。自信のあるその言葉に引き寄せられました。 特別養護老人ホームで働いてみると、さまざまな場面でケアハウスとはやり方が違うため戸惑いました。利用者の方たちの要介護度も違うので、介護の内容も違います。それでも私が戸惑っている時には、必ず誰かが声をかけてくれました。分からないことがあれば本当は自分から聞かなくてはいけないのでしょうが、新入りの自分を周囲が気にかけてくれていることがとてもよく分かり、嬉しかったです。 食事や入浴・排せつといった日常生活支援の場面でも、当初は先輩たちが少しずつ手伝ってくれて、利用者の方たちからの信頼を感じられるようになるまで支えてもらいました。分からないことも常に論理的・体系的に説明してもらえて、徐々に介護の仕事の魅力に気づき、同時に、「介護はチームでやるものなんだ」と学びました。メンバーの動きを意識しながら、自分の役割を考えることもできるようになりました。チームプレーの中で自分の成長を感じることができる今の職場の風土に感謝しています。 これからの自分の姿を思い描く 介護の仕事は、利用者の方たちの人生の重要な局面で活躍して大きな「ありがとう」をもらうようなことはないですが、日常生活の中で、利用者の方たちから小さな「ありがとう」をたくさんいただけることが何よりの喜びです。先輩たちの姿を見ていて、「いずれ自分も利用者の方たちの精神的なケアにも携われるようになりたい」と将来の目標も見えてきました。 「きっと今の自分なら、前の職場の時の自分とは違って、おびえることなく後輩たちに自分の姿を見てもらえるんじゃないかな」と思っています。 【アンテナ】〈1月29日(金)時点の情報です。感染症拡大防止のため、イベントが中止になる可能性があります。詳細は各団体にお問合わせください。〉 助成金 洲崎福祉財団 『令和2年度下期 一般助成』 2月28日(日)消印有効 ①障害児・者の自立と福祉向上を目的とした各種活動②障害児・者に対する自助・自立の支援事業を行う関東1都6県に拠点住所(実施場所)がある非営利団体等で、令和3年6月1日から事業を開始し、令和3年11月30日(半年以内)までに終了する事業 ※難病患者及びその家族を支援している団体も対象 上限200万円(下限10万円) 所定の申請書と必要書類を郵送 (公財)洲崎福祉財団 事務局 〒103-0022 中央区日本橋室町3-2-1 日本橋室町三井タワー15階 03-6870-2019 03-6870-2119 http://www.swf.or.jp/support1/index.html 太陽生命厚生財団 2020年度助成 (1)事業助成 社会福祉向上のため、地域に根ざした地道な活動を行う地域福祉活動を目的とするボランティアグループ、NPOおよび地域公益事業・生活支援事業を行う社会福祉法人で、令和4年3月末までに完了するもの 新型コロナに関する事業助成および感染症対策の費用として10~50万円 (2)研究助成 コロナ禍での福祉事業の充実・向上のための調査、研究を行う非営利の民間団体等で、令和4年9月末までに完了するもの 50~100万円 (1)(2)共通 3月末日必着 所定の申請書と必要書類を郵送 ※申請書等を郵送で請求する場合、3月17日(水)までに請求 (公財)太陽生命厚生財団 事務局 〒143-0016 大田区大森北1-17-4 太陽生命大森ビル ・03-6674-1217 http://www.taiyolife-zaidan.or.jp/ 講座・シンポジウム 両親が働く社会における 放課後支援のあり方を考える 3月20日(土)13時~16時 東京ウィメンズ・プラザ 500円(資料・飲物代として) 100名(定員になり次第終了) ①基調講演「東京都の放課後支援の概要」、②シンポジウム「両親が働く社会における放課後支援のあり方を考える」 ※16時〜16時半 交流懇談会 電話、FAXまたはメールにて (NPO)支えあう21世紀の会 03-3372-5077 03-3372-0300 tokyo21c@m3.dion.ne.jp http://www.tokyo-senior.jp/support/ams21/ 【オンライン】第2回国立のぞみの園セミナー2020 【配信期間】3月31日(水)まで 1,000円(資料代として) ※3月19日(金)までに払込。資料は送付URLからダウンロード 「認知症を発症した知的障害者への支援について考える」をテーマに、①講義「高齢領域における認知症支援と研究の現状」、②講義「知的障害領域における認知症支援と研究の現状」、③実践報告「認知症及び認知症が疑われる知的障害者に有効な支援とは」 高齢者支援に携わる方 申込フォームにて 3月10日(水) 国立のぞみの園事業企画部研修・養成課 担当:木村、長井 027-320-1357 nozomi-seminar-01@nozomi.go.jp https://www.nozomi.go.jp/ その他 ツタエル『オキナワへいこう』 おおた自主上映会 2月23日(火・祝)13時~16時 東京工科大学蒲田キャンパス3号館10階階段教室(31001教室) 100名(定員になり次第終了) 入場料・参加費:1,000円(障害者・学生500円、中学生以下無料) ※当日会場にて支払い 精神科病院に長期入院する患者の「夢(沖縄旅行に行きたい)」を実現させることをきっかけに、「精神科病棟の長期入院」の現実をユーモラスに描いた映画『オキナワへいこう』の上映と監督とのトークイベント 申込フォーム(https://forms.gle/MicaurC2KST7F Wzc7)にて ※参加者1人につき1フォームで申込 ツタエルチカラ事務局(入戸野) 080-5076-3732 https://fb.me/e/3b5VIccZG 【資料ガイド】 会議資料 ■令和元年台風第19号等を踏まえた高齢者等の避難のあり方について(最終とりまとめ)(内閣府/12月) ■第1回障害者の就労能力等の評価の在り方に関するワーキンググループ(資料)(厚生労働省/12月) ■「新子育て安心プラン」(厚生労働省/12月) ■就職氷河期世代支援に関する行動計画2020(厚生労働省/12月) ■令和元年度東京都児童福祉審議会児童虐待死亡事例等検証部会報告書(都福祉保健局/12月) ■労働政策審議会建議「男性の育児休業取得促進策等について」(厚生労働省/1月) ■第2回障害者就労を支える人材の育成・確保に関するワーキンググループ(資料)(厚生労働省/1月) ■第1回 「労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会」資料(厚生労働省/1月) ■第26回社会保障審議会福祉部会 資料(厚生労働省/1月) ■第100回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会(資料)(厚労省/1月) 調査結果 ■令和元年国民健康・栄養調査報告書(厚生労働省/12月) ■保育分野における職業紹介事業に関するアンケート調査 集計結果(概要)(厚生労働省/12月) ■令和元年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果(厚生労働省/12月) ■平成30年度高齢期における社会保障に関する意識調査結果について(厚生労働省/12月) ■年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)令和元年(厚生労働省/12月) ■令和2年度学校基本調査(確定値)(文部科学省/12月) ■令和元年「介護サービス施設・事業所調査」(厚生労働省/1月) ■令和2年 障害者雇用状況の集計結果(厚生労働省/1月) ■令和2年度大学等卒業予定者の就職内定状況(12月1日現在)(厚生労働省/1月) ■令和2年「高年齢者の雇用状況」集計結果(厚生労働省/1月) その他 ■「不登校の子供たちへの支援のポイント」(都教育庁/1月) ■「新型コロナウイルス感染症自宅療養者向けハンドブック」(都新型コロナウイルス感染症対策本部) ■在宅酸素療法における火気の取扱いについて(厚生労働省/1月) ■令和3年度の年金額改定について(厚生労働省/1月) 【くらし】 料理を喜んでもらうことで、 私自身もまた、満たされ助けられている 練馬区にある「ウイズタイムハウス」は、暮らしに少しのサポートを必要とする方々のためのシェアハウスです。そこで入居者として暮らす博子さん(75歳)は、料理で、他の入居者や併設の事業所の方々を支えてもいます。日々の生活や、思いをお話しいただきました。 安全で、ひとりで生活できる 場を探して 入居のきっかけは、諸事情により安全な場所で一人暮らしをする必要が生じたことです。娘が地域で園芸療法のNPO法人を運営しており、その縁でウイズタイムハウスを知りました。見学で気に入り、取るものも取りあえず来ました。ここの入居者は、皆、自由に思い思いの生活をしています。一時的な滞在のつもりが、もう2年になってしまいました。 日々の生活と、夕食時のご飯と味噌汁づくりのボランティア 好きなことは、料理、園芸、登山、そして、歩くことです。毎日、買い物がてら一万歩以上は歩くようにしています。週末は山に行くことも多いです。 園芸では、庭の一部を任せてもらい、花やハーブなどを育てています。庭を挟んだ隣の家の方も植物好きで、よく植物の話をします。 女性の入居者の方とはお誕生日においしいものをつくって一緒に食べたりご飯のおすそ分けをしたりするなどの交流をしています。 入居者には高齢の方もいれば若い方もいます。一人暮らしだと、つい食事はいい加減なものになりがちです。ウイズタイムハウスでは、平日の夕食時、希望者は温かい白いごはんと味噌汁を注文することができます。私はその料理づくりをボランティアでしています。 1か月分のやりくりや献立も任せてもらっています。周囲には畑もあり、農家の方から直接、野菜を買うこともあります。毎日お味噌汁を楽しみにしてくれる方もおり、野菜をたっぷり入れ、具だくさんになるようにしています。 ウイズタイムハウスでは、新型コロナが流行する前までは月に1回、入居者やご近所の方々との親睦パーティがありました。その時も料理を手伝っていました。 私自身もまた助けられている 階下(1階)に、障害のある方の就労継続支援B型事業所があり、販売用チョコレートやランチ(兼、利用者の昼食)をつくっています。去年の夏ごろ新型コロナの影響で調理担当の職員の方が退職され困っておられました。そこで「料理好きな方が2階にいた」と、私に声がかかりました。実は私は以前、イタリアンレストランをしていたこともあります。料理は好きでつくる分には全く苦はありません。 障害のある方たちは表情がストレートです。「博子さん、おいしかったー!」と言ってくれることに、今は喜びを感じながら、仕事としてやらせてもらっています。 これまでの私の人生において、障害のある方との接点はありませんでした。ここに入居してからも、階下の利用者の方々とはあいさつをする程度でした。それが、調理の仕事に入ってからは、ただのおばあさんだった私の存在が、「おいしいものをつくってくれる人」になりました。すると、ちょっとした出来事や悩みをぽろっと話してくれるなど、今までと違った関係や交流も生まれてきました。スタッフの一員として、利用者の方が抱えてきた重たい背景などを知ることもあります。初めてそうしたことを耳にした時には、その重さに驚くとともに言葉が出ませんでした。私ができることは「ただおいしいご飯をバランス良く食べてもらうこと」しかありません。料理をつくることに心を込め、彼らの笑顔が見られれば私は満足です。この年齢で新たなことを知る勉強にもなっています。 私自身も事情を抱えています。また、最近では母が99歳で天寿を全うして安らかに亡くなりました。ここで料理をすることで、満たされている部分があります。それがなかったら、自分の問題にこだわってしまい乗り越えられていないかもしれません。自分もまた助けられていると感じています。 これから 80歳くらいまでは今の調子で生活をし、人生の最後は大好きな山の近くで過ごしたいと考えています。そのために今、足を鍛え、週末には山に行きながら、次の居場所探しをしているところです。 「ウイズタイムハウス」 ・「『高齢』『障害』『子ども』と分けるのではなく、誰もが安心して暮らすことができ、必要な時には支え合える住まいを作りたい」との思いから設立(ホームページより)。 ・一般社団法人ウイズタイムハウスが運営するシェアハウス。2018年設立。2020年より居住支援法人の指定も受ける。 ・1階には、別の法人が運営する就労支援継続B型事業所「ウイズタイム」がある。 http://withtimehouse.org/wp/ 【本】 NEW 令和2年版 社会福祉法人会計の 実務 第2編 決算編 本書は、平成29年8月発行の「平成29年4月施行省令会計基準対応 社会福祉法人会計の実務」(第4編)の改訂版です。前版以降の改正部分を反映しています。また、今年度はWEBを通じた会計決算実務研修開催に伴い、従来の4分冊から2分冊として改訂しました。本書を会計担当者の疑問や不安の解消、より適正な会計データの作成にお役立ていただき、社会福祉事業の円滑な経営にご活用ください。 著者:宮内忍氏(公認会計士) 宮内眞木子氏(税理士) ◆規格 A4判/460頁 ◆発売日 2021.1.25 ◆4,400円(本体4,000円+税) 令和2年版 社会福祉法人会計の実務 第1編 月次編 本書は、平成29年8月発行の「平成29年4月施行省令会計基準対応 社会福祉法人会計の実務」(第1~3編)の改訂版です。上記「第2編 決算編」とあわせてご活用ください。 ◆規格 A4判/542頁 ◆発売日 2020.9.25 ◆6,600円(本体6,000円+税) 社会福祉法人のための規程集 役員会等運営の実務編 フローチャート付き 本書では、社会福祉法人の役員会等の運営において実務担当者が迷いやすい点を整理し、実務の手順をフローチャートにまとめました。また、定款細則等の規程や様式例を掲載しています(CD-ROM付き)。 ◆規格 A4判/379頁 ◆発売日 2020.9.2 ◆4,400円(本体4,000円+税)