【表紙】 岡山県 総社市 備中国分寺五重塔の西側には 一面に菜の花畑が広がる 開花の季節は絶好の撮影スポットだ 社会福祉NOW 重層的支援体制整備事業を活用して ~地域住民の抱える複雑化・複合化した課題への対応力を高める~ トピックス ボランティア・市民活動の「連携・協働」を考える ~コロナ禍を乗り越え、楽しく活動を進め、よりよい地域をつくる~ 「広がれボランティアの輪」連絡会議 【連載】地域における多文化共生のいま⑧ 地域に暮らす外国人は共に活動する仲間、パートナー 公益財団法人 武蔵野市国際交流協会 み〜つけた 罪に問われた障害のある人と、ゆるやかにつながる居場所 【NOW】 重層的支援体制整備事業を活用して ~地域住民の抱える複雑化・複合化した課題への対応力を高める~  令和3年度から始まった「重層的支援体制整備事業」は、地域住民の複雑化・複合化した課題に対して、【図】のような①具体的な課題解決をめざすアプローチ、②つながり続けることをめざすアプローチを地域につくり上げる事業です。  東社協地域福祉部では、「重層的支援体制整備事業に向けた社協の取組み方策プロジェクト」を設置し、実施地区のヒアリングを重ねながら地域の対応力を高めるための方策を検討しています。本号では、実施地区の取組みをもとに、同事業のポイントを紹介します。 地域住民の抱える「複雑化・複合化した課題」とは、一つの世帯に複数の課題が存在している状態です。例えば、高齢の親と障害のある子の二人世帯で、親が入院して要介護状態になったため、今後の生活について地域包括支援センターに相談のあったケース。また、ゴミの問題で近隣から相談があり、地域福祉コーディネーターがその家を訪問してみると、世帯が地域から孤立している上、世帯の構成員それぞれが課題を抱えていることがわかった、といったケースになります。これらのケースは従来の属性別の支援では、対応が困難となりがちです。 八王子市では、令和3年4月から「重層的支援体制整備事業」を実施するに先立ち、各所管がそれまで対応してきた「複雑化・複合化した課題がある」と思われる事例を集めて、同事業で新しく創設される「多機関協働事業」ではどのようなケースにどう対応すべきかを整理しました。集めた事例は次の4つに分けられました。 ①相談を受け付けた機関だけでは解決できないが、他の機関の協力を得て解決することが実際にできた事例 ▼これは機関同士の連携が既にできているものです。こうした連携を増やし、多様な課題に対応できるようにしていく必要があります。 ②主訴が多岐にわたり、相談を受けた機関だけでは解決できず他の機関の関わりが必要と思われるが、他の機関との役割分担ができず、解決に結び付かなかった事例 ▼こういったケースは、多機関で集まって各機関の関わりを整理して、①のようにできるようにしていく必要があります。 ③相談者の主訴をもとに状況を把握してみると、本人の課題だけでなく世帯の課題も含まれ、解決の方向性が世帯の再構築にある事例 ▼多機関協働事業になじみそうです。 ④本人以外から相談が入り、支援に向けた検討から始めなければならない事例や制度の狭間にあり対応できる機関がはっきりしない事例 ▼多機関協働事業になじみそうです。 相談支援の「のりしろ」を広げる 令和3年4月から改正社会福祉法が施行し、「重層的支援体制整備事業」が始まっています。同事業は区市町村の手上げによる任意事業で、東京都内では、令和3年度から世田谷区と八王子市の2つの自治体が取り組んでいます。4年度からは、さらに墨田区、中野区、立川市、狛江市、西東京市での実施が予定されています(※)。 この事業は、【表】に掲げる事業を一体的に実施することによって、①断らない相談支援、②参加支援、③地域づくりに向けた支援、の3つを地域で重層的に展開する事業です。【表】にあるように、「包括的相談支援事業」に位置づけられるのは、地域包括支援センターや子ども家庭支援センター、障害者相談支援事業所、生活困窮者の自立相談支援窓口などで、これらは既に各分野にある機関です。既存事業に加えた役割には、相談者の属性や世代、相談内容に関わらず相談を受けとめ、自らだけでは解決できない場合に他の機関と連携したり、多機関協働事業へとつなぐ役割が期待されます。冒頭のような「複雑化・複合化した課題」への対応力を高めるためには、各機関が「のりしろ」を広げて多様な相談を受けとめることが必要となります。また、八王子市では、9つのエリアごとに配置している社協のCSW(=地域福祉コーディネーター)も包括的相談支援の一翼を担います。世田谷区でも、平成28年度から身近な地区にまちづくりセンター、地域包括支援センター、社協の三者が連携した「福祉の相談窓口」を設けており(現在、28地区)、引き続き包括的相談支援を実施していくことが期待されます。 【表】の「地域づくり事業」も同様に既存の財源を活かしたものです。既存のしくみを土台に、世代や属性を超えて地域の多様な主体がつながる場づくり、そして、生きづらさを許容できる地域にしていくため、地域住民の理解を高めていくことが必要となります。 多機関協働事業で、支援力を高める 新たな機能に位置づけられる3つの事業の一つが「多機関協働事業」です。多機関協働事業には、一つの包括的相談支援事業の窓口では対応が難しいケースがつながってきます。ただ、困難事例を持ち込めばそこで解決してもらえるわけではありません。困難な事例は誰がやっても困難。多機関がお互いに持つ支援のノウハウを共有し、協働で支援の道筋を調整することがこの事業の特徴です。 多機関協働事業では、「重層的支援会議」と「支援会議」の2つの会議体が設けられます。前者は、情報共有に本人が同意した上で開かれる会議です。一方、後者の「支援会議」は社会福祉法に新たに法定化された会議体で、守秘義務を設けることで、関係機関が気になるケースについて他の機関と積極的に情報を共有できます。これまでも地域には要保護児童対策地域協議会、介護保険制度、生活困窮者自立支援制度において守秘義務をかけることで開催に本人同意を必要としない会議体が法定化されていますが、この「支援会議」では分野を特定せず幅広いニーズに対応できることが期待されます。 世田谷区の場合、多機関協働事業を活用して令和4年4月から「ひきこもり相談窓口(仮称)」を設置する予定です。若者総合支援センター、就労支援機関、社協が受託している生活困窮者自立相談支援センターの三者を中心とした多機関協働により、ひきこもり支援を強化しようとしています。 社会福祉法人の地域公益活動にも期待 もう一つの新たな機能である「アウトリーチ等を通じた継続的支援事業」は、支援が届いていない人に支援を届けたり、本人との継続的な関わりを持つために丁寧な働きかけを行う取組みが想定されています。早急さよりも時間をかけた支援になります。そういった支援のあり方への共通理解が必要となってきます。 新たな機能の三つ目が「参加支援事業」です。就労に限らず幅広い参加支援のメニューをつくっていくことが必要です。大切なのは対象者を既存の受け皿に当てはめるのではなく、当事者の参加を得てオーダーメイドの活動の場づくりをすすめていくことになります。 なお、厚生労働省は令和3年3月31日に「重層的支援体制整備事業における社会福祉法人による『地域における公益的な取組』等の推進について」を通知しています。社会参加に向けた支援を展開する際には、社会福祉法人の地域における公益的な取組みや地域の社会福祉法人のネットワークと連携した多様な場づくりをすすめていくことが考えられます。また、令和4年度からは「成年後見制度利用促進基本計画」の第二期が始まります。権利擁護支援のための地域連携ネットワークとの連携も期待されます。 さらに、実施市町村は『重層的支援体制整備事業実施計画』の策定に努めるとされています。計画づくりのプロセスも大切になりそうです。 ●     ●     ● 継続的な関わりをつくること。人と人とのつながりそのものが、セーフティネットの基盤となることでしょう。そして、コロナ禍で地域に表出している課題を地域に可視化し、継続的な関わりをつくっていくことに重層的支援体制整備事業を活用していくことが期待されます。 (※)令和5年度以降の実施を想定した「移行準備事業」には、令和4年度は中央区、品川区、目黒区、大田区、杉並区、豊島区、江戸川区、三鷹市、青梅市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、国分寺市、国立市、多摩市の17自治体が取り組む予定となっている。 【トピックス】 ボランティア・市民活動の「連携・協働」を考える~コロナ禍を乗り越え、楽しく活動を進め、よりよい地域をつくる~ ▼ 主催:「広がれボランティアの輪」連絡会議 令和4年2月2日(水)、「広がれボランティアの輪」連絡会議による勉強会が開催されました。オンラインで行われた今回の勉強会には、全国から約140名が参加しました。 「ボランティア・市民活動における連携・協働を考える」 はじめに、日本大学文理学部社会福祉学科教授の諏訪徹さんによる基調講演が行われました。 日本において、連携・協働が公に意識されるようになったのは、NPOやボランティアセクターの力が発揮された阪神・淡路大震災がきっかけですが、地域では、その以前から祭りの実行委員会やボランティア団体の連絡会などの場で実践されてきたといいます。現在、協働はさまざまな形で広がっています。その一例として、地元の企業と社協、福祉施設がつながり、羽毛製品を回収して新たな商品に生まれ変わらせる循環のしくみづくりと、障害者の地域での就労機会の開発に取り組む活動が紹介されました。都内でも、社会福祉法人の連携と協働による地域公益活動(「地域ネットワーク」)がすすめられ、現在51区市町村で取り組まれています。 諏訪さんは、連携・協働は必須ではないと前置きした上で「連携・協働により新しいアイデアや資源がもたらされ、新しい視野や気づきが得られる。活動の広がりや発展には重要な要素」とその意義を語り、【図】のようなコツを示しました。 コロナ禍においては、中断せざるを得なかった活動も少なくありません。そのような中で、その時にできることを考え続けたり、離れていながらも一緒に取り組んだりしながら連携・協働のあり方も少しずつ変化しているといいます。 事例から学ぶこれからの連携・協働 続いて、認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸(以下、CS神戸)理事長の中村順子さんと、(一社)ふらっとカフェ鎌倉代表理事の渡邉公子さんによる事例紹介が行われました。 中間支援組織として活動するCS神戸は、阪神・淡路大震災をきっかけにコミュニティにおけるつながりづくりに取り組んでいます。震災の教訓として、中村さんは「『身内だけでなくみんなのために』という視点を持つことと、『助けられるだけでなく自身にできることを行動にうつす』ことが社会とのつながりの基盤となる」と話します。コロナ禍でも、つながりを絶やさないよう試行錯誤しながら活動を続ける団体があるといいます。中村さんは「中でも居場所はつながりの切り札といえる。実際に利用する人からは、知り合いが増え、お互いを気にかける機会も増えたという声が多く、特に災害時にはこのつながりが助けになる」と言います。 多岐にわたる活動から得た知見として、中村さんは「つながりやすい社会は自然に生まれるものではない。個人も組織も少しずつ努力して、共助の意識を育てていかなければいけない」と語ります。 食を通じた居場所づくりに取り組むふらっとカフェ鎌倉は、寄附による食材と協力店舗の定休日を利用して、地域の誰もが参加できる移動式食堂を運営しています。コロナ禍では、フードパントリーにも力を入れ、市と連携しながらひとり親家庭約10世帯への配布を始めました。令和3年には、毎月ひとり親だけでなく生活困窮世帯など約40世帯に食糧を届け、個別要請にも応えています。渡邉さんは「届け先の家族構成や環境を考えながら詰め合わせ、自然な見守りや関係づくりを継続できるようにしている」と、活動での意識を語ります。続けて「誰でも気軽に関われる環境づくりを行うことで地域の参加者の輪や特色が生まれる。また、地域の方や他団体の得意分野を活かした企画によって活動の多様性が生まれている」と、連携・協働する活動の中で大切にしていることを示します。 最後に、参加者によるグループ討議が行われました。「連携・協働の取り組みの実際」「どのような連携・協働をめざすか」をテーマに、これからのボランティア・市民活動における連携・協働について活発な意見交換が行われました。 令和4年度国および東京都予算案固まる 令和4年度国予算案 令和4年度の国予算案は令和3年12月24日に閣議決定されました。社会保障関係費は3年度から1.2%の増となっています。 介護・障害福祉職員の処遇改善については、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(3年11月19日閣議決定)に基づき、収入を3%程度(月額9,000円相当)引き上げるための措置が4年2月から前倒しで実施されているところです。10月以降については臨時の報酬改定を行い、上記と同様の措置を講じることが政府において決定されています。児童養護施設や保育所等の職員も同様の収入引上げ措置があります(保育所等における収入引上げは内閣府に計上)。 安心で質の高い介護サービスの確保については、都道府県人材センターに「介護助手等普及推進員(仮称)」を配置して人材の掘り起こしを行い介護の周辺業務を担う人材の確保を促進する「介護助手等の普及を通じた多様な就労の促進」や、地域包括ケア推進のための「地域づくりの加速化のための市町村に対する伴走的支援等の実施」が新たに盛り込まれています。 子育て家庭や女性への包括的な支援体制の構築については、「ヤングケアラーを福祉サービスにつなぐコーディネーターの配置や実態調査・研修等支援体制の強化」において、自治体の先進的な取組みの支援や当事者団体・支援団体のネットワークづくりの支援をします。また、困難な問題を抱える女性への支援体制の充実・強化を図るための「官・民の協働による支援の推進」が新規事業です。 児童虐待防止対策・社会的養育の迅速かつ強力な推進については、「子ども食堂や子どもへの宅食等を行う民間団体等も含めた地域における見守り体制の強化」に新たに取り組みます。 成年後見制度の利用促進については、市民後見人や福祉・司法の関係者を対象とする研修実施や、多様な主体が参画する連携・協力体制づくりのモデル的な取組みを行う「意思決定支援の推進等による権利擁護支援の強化」が新規事業です。 令和4年度東京都予算案 令和4年1月28日、東京都は令和4年度の予算案を発表しました。「福祉と保健」は、新型コロナ対策や、「受験生チャレンジ支援貸付事業」の拡充などにより、前年度比31.8%増です。 高齢社会対策では、処遇改善を行う介護事業所に対し必要な経費を支援する「介護職員処遇改善支援事業」、インターンシップからマッチング、就業、定着までの一貫した支援によって未経験者の介護分野への入職・定着を促進する「介護の仕事就業促進事業」、「高齢者の健康づくりに資するスマートウォッチ等デジタル機器活用事業」、「人生100年時代社会参加マッチング事業」などが新規の予算となっています。 少子社会対策では、妊娠期から就学前の時期の家庭に寄り添い、安心した子育て環境を整備する「とうきょう子育て応援パートナー事業」、「東京ユースヘルスケア推進事業」、小学生の放課後の居場所として認証保育所を活用する「認証保育所における学齢児の受入れ」、「チャットボットによる子育て支援情報の発信」、「学童クラブ待機児童対策提案型事業」、施設職員等によるアフターケアのために、近隣アパートを借り上げて退所者等に提供する施設等に補助をする「社会的養護施設退所者等への支援」などが新たに位置づけられました。 障害者施策推進では、医療的ケア児が適切な支援を受けられるようにするため、相談支援や情報提供のほか、支援人材の養成を行う「医療的ケア児支援センター事業」、放課後等デイサービスの支援の質向上のための「都型放課後等デイサービス事業」、「地域生活支援拠点整備に向けた障害者(児)ショートステイ受入体制支援事業」、「在宅レスパイト・就労等支援事業」などが新たに盛り込まれました。 また、低所得者に塾費用や受験料を貸し付ける「受験生チャレンジ支援貸付事業」は、コロナ禍において生活に困窮する世帯への支援強化として収入要件が緩和され、対象が拡大されました。 【マンスリー】2022.1.26 - 2.25 2/4 「令和3年7月からの一連の豪雨災害を踏まえた避難のあり方について 報告書」を公表 内閣府に設置された「令和3年7月からの一連の豪雨災害を踏まえた避難に関する検討会」は、「令和3年7月からの一連の豪雨災害を踏まえた避難のあり方について 報告書」を公表した。報告書では、一連の豪雨における住民の避難行動や市町村による避難情報の発令等における課題の要因分析を行い、市町村の実態や意見もふまえ、必要と考えられる対策が示されている。 1/28 「パラスポーツスタートガイド」 ホームページを開設 都オリンピック・パラリンピック準備局は、パラスポーツの裾野拡大を目的として、競技スポーツを始めたり、周囲の方が勧めたりするきっかけとなるよう、パラスポーツの魅力や内容、ルール等を紹介する「パラスポーツスタートガイド」を開設。競技紹介や選手へのインタビュー記事等を掲載している。 ▼「パラスポーツスタートガイド」ホームページ https://parasports-start.tokyo 2/1 「障害者虐待防止の研修のためのガイドブック」を発行 全国社会福祉協議会は「障害者虐待防止の研修のためのガイドブック」をとりまとめた。平成25年3月に「暫定版」として作成した「障害者虐待防止の研修のためのガイドブック」を、その後の障害者権利条約の批准や関係法令の改正、施設・事業所における体制整備の強化等の制度改正をふまえ、内容の見直しを行い、新たに発行した。 ▼「障害者虐待防止の研修のためのガイドブック」 https://www.shakyo.or.jp/tsuite/jigyo/research/2021/220201guide/book.pdf 2/14 「健やか親子21」ホームページをリニューアル 厚生労働省は「健やか親子21」ホームページをリニューアル。令和元年12月に施行された成育基本法についての解説を加えたほか、妊娠・出産・子育て期等の各ライフステージに応じて、参考となるデータや資料をまとめている。 ▼「健やか親子21」ホームページ https://sukoyaka21.mhlw.go.jp 【連載】8 地域における多文化共生のいま ~東京で暮らす外国にルーツのある方たちをとりまくさまざまな活動・現状と課題~ 日本に住む外国にルーツのある方は、言葉や文化、生活習慣の違いなどから、普段の暮らしや地域住民との関係の中でさまざまな困りごとを抱えています。これを解決するために、都内では日本語教室や学習支援、相談支援、外国にルーツのある方と地域住民が相互理解を深めるための交流など、多くの取組みが行われています。 本連載では、同じ地域に暮らす一員である彼らの日常生活のサポートや住民同士の交流を深める取組みを紹介し、多文化共生をすすめる各地域での活動から見える現状や課題を発信していきます。 今号では、地域に暮らす外国人と日本人の交流のために活動している国際交流協会の取組みを紹介します。 地域に暮らす外国人は共に活動する仲間、パートナー 公益財団法人 武蔵野市国際交流協会 1989年設立。 さまざまな文化、習慣を持った人々が互いに尊重し、共生していく多文化共生社会の実現に向けて、外国人は支援を受ける存在だけではなく、共に活動をすすめる担い手、パートナーとして認識し、幅広い活動に取り組む。 *ホームページ:https://mia.gr.jp 国際交流協会は地域に暮らす外国人と日本人の交流の促進を目的として、都内の22区市に設置されています(2022年2月現在)。 武蔵野市では平和問題懇談会の提言に基づき、1989年、市民主体の武蔵野市国際交流協会(以下、協会)が設立されました。武蔵野市民と世界の人々との幅広い交流促進をめざし、国際平和に寄与する開かれたまちづくりを目的としています。 「活動を共にする仲間」として 協会は会員制度を設けており、約1000人が登録しています。そのうち外国人会員は約600人です。 協会では、日本語教室、防災事業、多文化の紹介イベントの開催、ボランティア活動の推進など、多岐にわたる約40の事業に取り組んでいます。そのうち複数の事業で、設立当時の「市民主体」の理念のもと、会員となっているボランティアが自主的に企画や運営を行っています。「活動を共にする仲間、パートナー」として、外国人会員もそれら事業に主体的に携わっています。 事務局長の竹内邦憲さんは「他の国際交流協会に比べると、私たちの事業数は多いと思う。それもあり、本会の事業に参加してくれた外国人には、その事業にだけ参加してもらうのではなく、他の事業や地域のイベント等に関わってもらえるように積極的に促すことを心がけている」と話します。例えば日本語教室に来た外国人に料理が得意な方がいれば、料理教室の講師となってもらうこともあります。「『支援されるだけでなく、何かできることがあるはずだ』という視点を職員、ボランティアとも持っている。つながりをつくっていく仕掛けづくりをするのが私たちの特色の一つ」と話します。 コロナ禍で「相談」と「通訳派遣依頼」が増加 協会で行う事業の一つに「多言語相談・情報提供窓口」があります。外国人本人や支援団体等から相談を受け、内容により、協会が実施する専門家相談や通訳派遣、関係団体等の支援につなげています。 新型コロナ感染拡大後は、特に相談件数が増えました。2019年度は相談件数が330件だったのに対し、2020年度は356件でした。 本人からの相談は「今生活に困っている」「本国に帰りたいが帰れない」「仕事がなくなってしまった」など、多岐にわたります。中には在留資格や婚姻関係の解消などの専門的な相談や、市外、都外に住む外国人からの相談もあります。「このような相談があった際は、その人に最も適した地域や相談機関を紹介することが私たちの役割。弁護士などの専門家や相談機関等のつなぎ先を必ず紹介するようにしている」と竹内さんは話します。 通訳派遣については、近年、都内全域の児童相談所からの依頼が多くなっています。協会では、自前で養成した語学ボランティアと呼んでいる通訳者を派遣しています。2020年の緊急事態宣言期間は派遣中止としたため、2020年度は2019年度と比べ派遣件数自体は減少しています。しかし実際には依頼は多く寄せられていて、2021年度はさらに急増している状況です。 事業の周知にも力を入れています。市役所の担当課を通じて、通訳派遣や翻訳ができることを市役所内に改めて周知しています。市役所としても、ワクチン接種や子育て等の相談、多言語対応に苦慮しており、市役所への派遣件数も増えています。ほかにも保育園や児童相談施設等の福祉施設からも派遣依頼があります。 社会福祉協議会との連携 コロナ禍で経済活動が滞り、生活に困窮する人が増加したことから、2020年3月より全国の社会福祉協議会で新型コロナの影響を受けた方への生活福祉資金特例貸付が始まりました。協会でも外国人住民の申請の手助けのため、武蔵野市民社会福祉協議会(以下、市民社協)と連携して対応しました。 また、協会と市民社協は、それぞれ市と災害時の支援に関する協定を結んでいました。そのため、年1回の災害ボランティアセンター運営訓練で関わるなどのつながりを持っていました。また、ボランティアの募集や希望者からの問い合わせに関して協会とボランティアセンター武蔵野は連絡を取りあってきました。今回これまでのつながりを活かし、連携に至りました。 協会では、言葉遣いが難しい重要事項説明書などの申請書類をやさしい日本語に訳して、市民社協に提供しました。また、特例貸付の申請件数が急増し、市民社協の窓口がパンク寸前だった2020年5月頃には、通訳支援を必要とする申請者の相談受付の手伝いも行いました。 これらの経緯もあり、現在協会は、市民社協との連携に一層力を入れて取り組んでいます。具体的な取組みとして、2020年の語学ボランティアの研修で市民社協に講師を依頼しました。市民社協、語学ボランティアとも互いの存在をより知るため、「市民社協の事業・活動」をテーマとして実施しました。 「現在もそうだが、これから先、外国人も子育てなど何らかの福祉のサポートが必要になる人が増えるはず。そのため、市民社協と何か一緒にできないか、協力できないかということを、ボランティアに考えてもらうことを狙いとして研修を行った」と竹内さんは言います。 また、協会のチラシを作成して市民社協にも置いてもらうことで、協会に相談できることを広め、協会の認知度をさらに高めようと取り組んでいます。 「支援する」「支援される」という垣根をなくしたい 竹内さんは多文化共生の今後について「外国人は決して支援されるだけの人ではない。どうしても教える存在と思ってしまいがちだが、ボランティアを含め『逆に私たちが教えてもらうんだ』という意識を心掛けて活動している。その考え方は福祉と通じるものがあるはず」と話します。続けて「日本人も外国人に『支援されている』という視点を持っても良いと思う」と話します。協会の日本語教室には、市内の特別養護老人ホームで働く外国人も参加しており、その施設でお世話になっている日本人もいるからです。 「外国人は言葉の壁を越えられれば、もっと日本で活躍できると思う。『支援している』『支援されている』では、お互いに垣根ができてしまう。協会の活動を通してそのような垣根をなくしていきたい」と語ります。 武蔵野市国際交流協会スタッフの皆さん 中央が事務局長の竹内さん 専門家に相談している様子 語学ボランティア研修(市民社協について)の様子 【東社協発】 保育部会において「LGBTへの理解とこれからの共生社会に向けて」をテーマに研修を開催しました  東社協保育部会では標記をテーマに、元渋谷区の男女平等・ダイバーシティ推進担当課長の永田龍太郎さんを講師に招き、令和4年1月に研修を開催しました。研修は、第一部のオンデマンド配信による講義と第二部の講義内容をふまえたグループワークや質疑応答を含む学習会の二部構成です。  講師の永田さんは渋谷区に勤める以前、20年近く宣伝広報の業務に従事され、前職で自身がゲイだとカミングアウトしたことをきっかけに、社内外に向けたLGBTQ政策のプロジェクトリーダーを務められました。その縁もあり、日本初の同性パートナーシップ制度を導入した渋谷区でLGBTQインクルージョン推進を担う職員として、2021年9月まで任期付き職員として勤められました。  第一部では、LGBTQの基礎知識や当事者の方々が抱えやすい課題、またそれに対して社会・周囲の人たち一人ひとりが心掛けるべきことなどの講義がありました。  LGBTQとは、性自認や性的志向を表す「LGBT」に、性的マイノリティを包括する表現として「Q(クエスチョニング、クイア)」を合わせた言葉です。LGBTQの子どもたちが自分の性のアイデンティティを認識し始めるのは早くて幼児期頃からといいます。認識していく中で「周りとは違う」「自分と同じような人はいないようなので、おかしいと思われないように隠していかなければいけない」など孤立や孤独を深めていき、自尊心が弱くなりやすいとのことです。そのような時に家族や学校、周りの人が、お互いに多様性を尊重しあう意識を持つことで「自分は自分のまま、ここにいてもいい」と思えることが、広い視点で見ていくと、地域課題の解決のきっかけにつながっていくそうです。  第二部では役職ごとに分かれ、これまで参加者自身が経験した本テーマに関連する事例やそこから考えられたこと、疑問点についてグループワークを行いました。  LGBTQのみならず、さまざまな多様性を尊重し合いながら生活することの大切さに改めて気づかされた研修となりました。 『福祉広報』 広告料金プラン変更のお知らせ 『福祉広報』では、令和4年4月号以降の広告掲載につきまして、広告料金プランを「スポット型掲載」に統一いたします。 新料金プラン スポット掲載型(1回:1号分のみ) (1)1コマタイプ:30,800円(28,000円+税) (2)2コマタイプ:61,600円(56,000円+税) ※1社年間6回まで 広告掲載を希望の場合は、東社協ホームページから「月刊『福祉広報』広告掲載申込書」をダウンロードの上、メールまたはFAXにて下記問い合わせ先までお送りください。 問合せ:総務部企画担当 TEL 03-3268-7171 FAX 03-3268-7433 メール:kouhou@tcsw.tvac.or.jp 【広告募集要領】 https://www.tcsw.tvac.or.jp/ad/koho.html 東社協出版物 事務局窓口での対面販売終了のお知らせ 新型コロナウイルス感染症対策のため、長らく東社協事務局窓口での東社協出版物の対面販売を中止していましたが、この度、令和4年3月31日(木)をもって事務局窓口での出版物の対面販売を終了とさせていただきます。 皆様にはご不便をおかけいたしますが、今後は、通信販売等による販売方法を充実させて、利便性の向上を図ってまいります。 ご理解の程、よろしくお願い申し上げます。 問合せ:総務部企画担当図書係 TEL 03-3268-7185 【東社協HP 福祉の本コーナー】 https://www.tcsw.tvac.or.jp/php/contents/book.php 【み〜つけた】 罪に問われた障害のある人と、ゆるやかにつながる居場所 TSpace(ティースペース)は、「罪」に問われた障害のある人と運営メンバーなど誰もが「支援する・される」という関係性を超えて、気軽に立ち寄ることのできる居場所です。2019年より活動を始め、2か月に1回程度、バーベキューや、鍋を囲みながら、集まった人同士で交流をするイベントを行っています。コロナ禍においては、ボードゲームなどを中心に開催しています。参加者は10人ほどで、多い時には20人以上が集まることもあります。 主催する一般社団法人東京TSネットは、2013年に発足した、主に触法障害者への支援を行う団体です。「罪」の背景をひもとき、障害のある人と地域をつなげ、誰もが共に生きることのできる社会の実現をめざし、活動しています。弁護士や社会福祉士が中心となり、司法と福祉の双方から、生きづらさを抱える触法障害者たちの地域での暮らしに寄り添い、支援しています。主な活動として、福祉的支援が必要だと思われる被疑者・被告人を支援する「更生支援コーディネーター」養成や、セミナーや研修の実施、コミュニティづくりなどを行っています。 TSpaceを始めたきっかけ 障害の特性から犯罪に巻き込まれやすい方や、社会での生きづらさから「罪」を犯してしまった方は、いずれ再びその生きづらい社会に戻ることとなります。メンバーの多くが、弁護士としての役割が終わると関わりが途絶えてしまうことが多く、どうにかつながることはできないかという課題意識を持っていました。 TSpaceメンバーの一人で弁護士の長谷川翼さんは「担当していた方に、土日は何をして過ごしているのか尋ねると、何も答えが返ってこなかったことがあった。そのような方が過ごせる場所があったら良いと感じた」と、自身の経験を話します。そこで、地域での再出発後も、社会の中でゆるやかにつながることができる場として、TSpaceを始めました。長谷川さんは「フラットに話しができる場所は、ありそうでなかった。TSpaceに来て、時間を共有することで、人との関係が広がるきっかけになったら嬉しい」と言います。 その人がその人らしくいられる場所 TSpaceでは、お互いを「さん」付けで呼び合います。弁護士や社会福祉士などの支援していた側と、支援されていた側の枠組みを外して、誰もが対等な関係で過ごすことを大切にしています。「同じ時間や空間を過ごす人がいることで、社会とのつながりを感じてもらうことに意味があるのでは」と、同メンバーで弁護士の山田恵太さんは話します。 長谷川さんは「もともと『弁護士と依頼者』という関係でしかなかったのが、TSpaceがあることで、その後もその方の生活を知ることができる。そして、この場所で楽しそうに話している姿を見て、人間関係が広がっていっているように感じられる」と、TSpaceの活動意義について話します。続けて「『人間関係を広げていく=社会に出て、地域で暮らしていく』ということではないか。それを体験できるのもTSpaceの魅力の一つだと思う」と言います。 試行錯誤しながら、誰もが気軽に参加できる場になるように TSpace開催後には、運営メンバーで反省会をし、来てくれる方々にどうしたら楽しんでもらえるかを考えています。ボードゲームをするだけでなく、ほっと一息つけるようなレスパイト席を設けたり、話したい人が話せるような雰囲気をつくったりするなど、居心地の良い空間づくりを心がけています。 今後の活動について、長谷川さんは「TSpaceに来て時間を共有して家に帰るというように、ゆるくつながることができる場所としてあり続けたい」、山田さんは「規模を大きくすることを第一の目的にはしていないが、この活動に興味を持ってくれたさまざまな人が気軽に参加できるようになったら良い」と言います。 さらに、同メンバーで弁護士の中田雅久さんは「来たいと思った時に来てくれたら嬉しい」、社会福祉士の大嶋美千代さんも「学生に参加してもらえるのも嬉しい。ここでは枠を外してみんな対等に接することができる」と話します。 これからも、感染症対策に努めながら、定期的な開催を続けていく予定です。 一般社団法人東京TSネットのメンバーと、2022年1月のTSpaceに参加したスタッフの皆さん。 TSpaceは、奇数月の最終土曜日に開催している居場所。 一般社団法人東京TSネット ホームページ:https://tokyo-ts.net 【アンテナ】2月28日(月)時点の情報です。感染症拡大防止のため、イベントが中止になる可能性があります。詳細は各団体にお問合わせください。 助成金 第39回 老後を豊かにするボランティア活動資金助成事業 5月20日(金)必着 地域において、助成の趣旨に沿った活動を行っている、個人が任意で参加する比較的小規模なボランティアグループで、グループメンバーが10~50人程度などの必要要件を満たすもの 上限10万円 活動において継続的に使用する用具・機器の購入費用 所定の申請書に必要事項を記入の上、都道府県・指定都市または市区町村社会福祉協議会の推薦を受け、直接郵送 (公財)みずほ教育福祉財団福祉事業部 〒100-0005 千代田区丸の内1-6-1 丸の内センタービルディング 03-5288-5903 03-5288-3132 fjp36105@nifty.com http://www.mizuho-ewf.or.jp 講座・シンポジウム 【オンライン】 令和3年度高齢者住宅相談員研修会 3月10日(木)10時~3月31日(木)17時※オンデマンド配信期間 4,000円 生活援助員(LSA)、サービス付き高齢者向け住宅相談員、地方公共団体担当者、民間事業者等 「高齢者福祉施策の最新動向」や「地域包括ケアシステムについて」等の講座および事例発表 3月24日(木) 申込書をFAXまたはメール (一財)高齢者住宅財団 045-943-1465 045-943-1467 lsa21@koujuuzai.or.jp https://www.koujuuzai.or.jp/eventinfo/ 20220203/ 【オンライン】 第12回ベルテール教育セミナー 「幼児期から学齢期の構造化による支援と実践~気になる子を困る子にしない為に~」 4月14日(木)10時10分~12時40分※Zoomによるライブ配信 70名 4,000円 ※修了証希望の場合はプラス500円 放課後等デイサービス職員、特別支援学校教職員、言語聴覚士、臨床心理士、公認心理士、医師、研究者、カウンセラー、コンサルタント、アドバイザー、管理者、家族の方々など児童発達支援関係者 療育現場で発達障害のアセスメントや支援に携わってきた安倍陽子氏による、ASD特性や学習スタイルの理解、コミュニケーションスキルの活用、構造化支援の実践などについての講義 4月12日(火)18時 HP上の申込フォームまたは電話、FAX、メール (一社)チャイルドライフ教育研修部 042-641-5901 042-641-5902 edu@childlife.gr.jp http://childlife.gr.jp/education/ その他 【無料電話相談会】遺言・相続110番 3月22日(火)10時~15時 無料 相続関係について、弁護士による30分程度の電話相談 第一東京弁護士会業務推進第二課 03-3595-1154 https://www.ichiben.or.jp/ 令和4年度 障害者雇用支援月間における 絵画・写真コンテスト (1)絵画コンテスト 働くすがた~今そして未来~ 働くこと、または仕事に関係のある内容のもの。応募部門は、小学校の部、中学校の部、高校・一般の部 障害のある方(プロ以外であること) (2)写真コンテスト 職場で輝く障害者~今その瞬間~ 障害のある方の仕事にスポットを当て、障害のある方が働いている姿を撮影したもの 障害の有無は問わない(プロ以外であること) (1)、(2)共通 3月1日(火)~6月15日(水)消印有効 作品に応募作品目録と作品添付票(作品の裏に貼り付け)を添付して送付(様式はHPよりダウンロード可) (独)高齢・障害・求職雇用支援機構雇用開発推進部 雇用開発課指導啓発係 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3(障害者職業総合センター内) 043-297-9515 043-297-9547 tkkike@jeed.go.jp https://www.jeed.go.jp/ 【資料ガイド】 会議資料 児童福祉施設等の感染防止対策・指導監査の在り方に関する研究会 報告書(厚生労働省/1月) 外国人雇用対策の在り方に関する検討会(第8回)会議資料(厚生労働省/2月) 令和3年度 社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会 報告書(厚生労働省/2月) 第4回生活保護制度に関する国と地方の実務者協議 資料(厚生労働省/2月) 第1回介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会 資料(厚生労働省/2月) 特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第7回)会議資料(文部科学省/2月) 第8回自殺総合対策の推進に関する有識者会議(オンライン開催・ペーパレス)資料(厚生労働省/2月) 調査結果 「都民生活に関する世論調査」結果(都生活文化局/1月) 東京2020パラリンピック競技大会後の都民意識調査の結果について(都オリンピック・パラリンピック準備局/1月) 離婚と子育てに関する世論調査(内閣府/2月) 高齢者の消費者被害等に関する調査結果(都生活文化局/2月) その他               「都と事業者との連携による高齢者等を支える地域づくり協定」に基づく取組(都福祉保健局/2月) 「女性の健康週間」特設ホームページ「みんなで知ろう。婦人科のこと~婦人科って何するところ?~」(厚生労働省/2月) 【くらし】 年齢や、障害の有無などに関わらず、多くの人に小笠原の大自然を感じてもらいたい 東京都心から南約1000kmの太平洋上に位置する自然豊かな小笠原村父島で、福祉車両を導入し、バリアフリーツアーを行う「TommyGWorld」の富田浩生さんにお話を伺いました。 憧れの地に移住、天職に出会った 北九州生まれの千葉県育ちで、自然は身近な存在でした。好きなことにはとことん没頭するタイプで、10代の頃に始めたサーフィンは、38年経った今でも続けています。22歳の頃、暖かい海でサーフィンがしたくて友達と初めて小笠原に行きました。美しい海や自然、穏やかな時間の流れに魅了され、約半年間過ごしました。その後、内地に戻って不動産業や防水工などの仕事を転々としていましたが、小笠原の景色が忘れられず、10年越しで移住を決断しました。今から約25年前、33歳の頃でした。 移住してからは、知り合いのツアー会社で20年働きました。人と話すことが好きな私にとって、まさに天職でした。趣味や仕事の経歴は私の会話の引き出しとなり、フレンドリーさが売りの「おもしろガイド:通称トミージー」として、旅行に来た方が楽しみながら小笠原の自然を感じられるツアーを心がけてきました。 福祉車両との出会い 平成29年、ツアー会社から独立し「TommyGWorld」を設立しました。私のツアーは6名までの少人数制としています。自然や、自由に暮らす生き物たちは環境の変化に敏感です。彼らを守りながら、旅行者に小笠原のありのままの姿を感じていただくには、少人数制が最適だと考えているからです。 20年以上のガイド歴を活かし「ほかのガイドがやっていないことをしたい」と模索していた時、車高の低い助手席リフトアップシート車を見つけました。その瞬間「これだ!」と思いました。平成23年に小笠原が世界自然遺産登録されて以降、高齢のお客様が増えてきたことや「身体が不自由だから小笠原旅行を諦めていた」という声を何度が耳にしたことがあったからです。私が大切にしている「多くの人に小笠原の魅力を感じてもらいたい」を叶えるには、福祉車両の導入は必須だと思いました。 ツアーを通して見えてきた 福祉課題 福祉車両を導入して3年が経ちます。これまで、バリアフリーツアーをご案内したのは3組です。バリアフリーツアーは、丸一日、旅行者の希望を伺いながら観光地を案内します。旅行者からは「足腰が弱いが、リフトアップ車のおかげで、無理なく自然を感じることができた」「車椅子からの移乗や積み下ろしがスムーズに行える車両のため、介助者の負担も少ない」などの感想をもらっています。 ツアーを通して、小笠原のバリアフリーの現状が見えてきました。内地と島を結ぶ「おがさわら丸」は完全バリアフリーで、島内にも多目的トイレや駐車場が増えてきました。一方で、自然景勝地の多くは段差や階段が多く、バリアフリー対応の宿もまだ少ない状況があります。私ができることは、移動に困難を要する方が少しでも安心して旅行を楽しんでもらえるように、島内のバリアフリー化を行政などに働きかけるとともにブログ等で積極的に発信することだと思っています。 小笠原には心のバリアフリーがある 小笠原は小さい村ですから、誰とでも顔見知りになれます。不便も多いですが、島民のあたたかな心と豊かな自然に癒されることでしょう。困ったら助け合う精神がある小笠原には、心のバリアフリーが当たり前にあると思います。 この素晴らしい自然を守りながら、島の魅力の発信とバリアフリー化への取組みを自分なりにすすめていきたいと思っています。 「TommyGWorld」ホームページ http://tommygworld.com/ ツアーで使用している福祉車両 「トミージー」こと富田浩生さん バリアフリーツアーの様子① バリアフリーツアーの様子② 【本】 身寄りのいない高齢者への支援の手引き〔改訂版〕 本書は、特別養護老人ホームや地域包括支援センター等から収集した、身寄りのいない高齢者に関する事例をもとに、80のQ&Aを掲載しています。専門的でありながら、わかりやすく支援方法を解説しています。 著者:小嶋正氏(弁護士) ◆規格 A5判/340頁 ◆発売日 2017.8.29 ◆定価:1,980円(本体1,800円+税10%) 高齢者や障害者などへのサポートマニュアル〔改訂第2版第7刷〕 本書は、一般の方に向け、地域における高齢者や障害者に対する支援方法をわかりやすく掲載しています。高齢者や障害者に対する正しい知識や適切な接客・接遇技術を学ぶきっかけにご活用ください。 ◆規格 A5判/86頁 ◆発売日 2008.3.1 ◆定価:1,047円(本体952円+税10%) 生活相談員のためのショートステイマニュアル2 ~リスクマネジメント編~【CD-ROMつき】 本書は、ショートステイに携わる相談員が最初に手に取れるよう、簡単でわかりやすいことをコンセプトに作成したマニュアルの第2弾です。利用者・家族を取り巻く状況・ニーズも多様化するとともに、施設におけるリスクマネジメントの必要性も高まっています。困難なケースでもいかに施設の安全性を確保した上でサービスを提供していくのか、日頃の生活相談員業務のヒントが詰まった1冊です。 ◆規格 A4判/122頁 ◆発売日 2018.12.17 ◆定価:1,870円(本体1,700円+税10%)