【表紙】 鹿児島県 与路島 奄美大島の先の先にある与路島へは古仁屋港から1日一便の船で渡る。 欠航もしばしば、離島中の離島なのだ。 だからこそ島民の送迎はあったかい。 社会福祉NOW 東京の多様性を活かした地域共生社会を一歩前へ~東社協の新たな中期計画を策定 【連載】地域における多文化共生のいま⑨ 団地の住民それぞれが力を発揮できるコミュニティづくりをめざして NPO法人ASIAN COMMUNITY TAKASHIMADAIRA トピックス 子どもたちに必要なものは? 区立児童相談所の意義と地域に求められる支援 NPO法人めぐろ子ども支援ネットワーク 福祉のおしごと通信 常に小さなサインに気がつける支援者になりたい 社会福祉法人村山苑 救護施設村山荘 援助員 筒井 たえさん 【NOW】 東京の多様性を活かした地域共生社会を一歩前へ~東社協の新たな中期計画を策定 東社協では、「令和4~6(2022~2024)年度 東社協中期計画」を策定しました。新たな計画は、前期「平成31年度(2019年度)からの3か年 東社協中期計画」の成果をふまえ、取組みを強化しながら継続し、推進するものです。新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大の影響が今後も続くことが想定される中で、東社協のめざすビジョンと役割、課題等をふまえ、取組みの方向性に沿って、重点事業をはじめとした各事業に取り組みます。 東京の多様性を活かしながら、めざす“地域共生社会”づくりに向け、さらに“一歩前へ“と推進すべく、さまざまな福祉施設や団体、関係者の皆様とのネットワークを通じ、活かし、連携・協働することを大切に取り組んでいきます。 「地域共生社会」づくりをさらに推進 東社協では、令和4年度からの新たな3か年に向け「令和4~6(2022~2024)年度 東社協中期計画」を策定しました。策定の前提として、コロナ禍を通じて顕在化したさまざまな地域課題や人口減少社会での福祉人材不足の見込み、災害への対応、重層的支援体制整備事業の創設、SDGsの視点など、社会情勢や制度施策等の状況をふまえました。加えて、東京都や全社協等の各種計画、東社協内の動向や計画、提言の内容もふまえ検討をすすめました。 策定過程では、主に東社協総合企画委員会より助言を受けました。また、地域福祉推進委員会や施設部会連絡会、社協部会などのほか、「福祉広報(令和3年11月号)」でも検討内容をお伝えしました。それらからの多数の貴重なご意見も参考に、とりまとめています。 「東京の多様性を活かした"地域共生社会づくり"の推進」を共通目標に掲げた前期計画の目標や取組みの方向性を継続し、これまでの成果をふまえ、「東京の多様性を活かした"地域共生社会"を一歩前へ」をキャッチフレーズに、さらなる取組み推進に努めます。 東社協のビジョンと役割は前期計画を継続 今期計画では、前期計画の「めざすべき地域社会の姿」と「東社協の5つの基本的な役割」を継続します。「めざすべき地域社会の姿」には「東京の多様性を活かし、それぞれの地域生活課題を主体的に解決できる地域社会」を引き続き掲げます。また、このビジョンを実現するために東社協が果たすべき基本的な役割を「安心・安全と権利擁護、自立生活支援の推進」「福祉水準の向上を支える基盤の強化」「ネットワークの構築・協働と幅広い参加の促進」「取組みの支援と普及」「情報発信と提言」の5つとしています。 長期および3か年の「取組みの方向性」を定め、これに沿って15の「重点事業」を選定 東社協のビジョンと役割、課題や内部・外部環境をふまえた取組みを推進するため、新たに長期およびこの3か年の「取組みの方向性」を定めました。その上で、「重点事業」として、これまでの取組みをもとに、「取組みの方向性」に合致し、到達目標の具体的な設定が可能な事業の中から15本を選定しました(「取組みの方向性」「重点事業」の内容は【図】参照)。 前期計画期間中は、社会全体が新型コロナ感染拡大の影響を大きく受けました。コロナ禍で、交流機会の減少など日常生活の長期にわたる変化による高齢者・障害者・子どもへの影響、ぎりぎりで生活する世帯の不安定な状況など、これまで十分把握されていなかった課題、地域活動の担い手と活動への影響、情報格差など、さまざまな課題が顕在化しています(※)。 こうした地域課題の解決に向けては、重層的支援体制整備事業等の動向やしくみと、権利擁護の視点もふまえた社協の「地域づくりをすすめるコーディネーター」の活動推進が重要だと考えています。また、社会福祉法人の地域ネットワークの機能・活動支援等を通じ、地域公益活動のより一層の推進が必要と捉えています。同時に、把握した課題を共有し、その解決に向け、社会福祉法人(の地域ネットワーク)や民生児童委員(協議会)等の多様な関係者が連携・協働して解決をめざす取組みを推進することが、重点事業の大きな柱となっています(【図】重点事業①②⑥⑦⑧等に関連)。さらに、企業ボランティアの推進、地域福祉活動とボランティア活動の連携強化等により、幅広い市民参加・多様な主体の協働をすすめます(⑨⑩)。 また、厳しい状況が続く福祉人材の確保・育成・定着に関し、転職者等の未経験者を福祉職場に積極的に導き、外国人も含め誰もが働きやすい職場づくりをめざすための現在の修学資金貸付事業や研修等の取組みをさらに推進しつつ、実態調査等を行っていきます(③④⑤)。 あわせて、コロナ禍もふまえた災害・感染症等に対応する「危機に強い福祉現場」づくりと災害ボランティア活動の推進(⑪⑫⑬)、社会福祉の幅広い理解促進(⑭⑮)にも努めます。 なお、新型コロナの影響をふまえた緊急小口資金および総合支援資金の特例貸付は、重点事業ではなく、「国の方針等に基づき、必要な体制を整備し着実に実施する事業」と位置づけ、長期にわたる適正な債権管理等を行っています。 重点事業を中心に取組みを可視化し推進 事業の着実な実行を支える東社協の法人基盤の強化は「東社協の役割を果たす人材の育成・活用と環境の整備」「マネジメント力を高める組織運営基盤・方法の強化」の2つの重点目標によりすすめます。また、重点事業や各事業の事業推進に向けては、「部室の中期目標」を定めました。 今期計画の計画期間中は、重点事業を中心に、総合企画委員会において推進評価を受けながら、取組み状況を可視化します。また、取組みにあたっては、事業間や部室間の協働を推進し、東社協内外のネットワークを活かし、必要に応じて新たなネットワークをつくることを重視しながらすすめます。 計画の推進には、幅広い関係者の皆様によるご理解とご協力が不可欠です。東社協では、地域共生社会づくりに向け、新たな3か年も皆様とともに積極的に取組みを推進していきます。 (※)東社協地域福祉部実施「重層的支援体制整備事業に関わる取組みおよびコロナ禍における地域課題に関する状況 区市町村社協アンケート」 調査結果(https://www.tcsw.tvac.or.jp/chosa/documents/2021.9chiikichousa.pdf)より 【図】「取組みの方向性」と「重点事業」 【連載】9 地域における多文化共生のいま~東京で暮らす外国にルーツのある方たちをとりまくさまざまな活動・現状と課題~ 日本に住む外国にルーツのある方は、言葉や文化、生活習慣の違いなどから、普段の暮らしや地域住民との関係の中でさまざまな困りごとを抱えています。これを解決するために、都内では日本語教室や学習支援、相談支援、外国にルーツのある方と地域住民が相互理解を深めるための交流など、多くの取組みが行われています。 本連載では、同じ地域に暮らす一員である彼らの日常生活のサポートや住民同士の交流を深める取組みを紹介し、多文化共生をすすめる各地域での活動から見える現状や課題を発信していきます。今号では、大規模団地の日本人住民と外国籍住民の相互理解や交流をすすめる活動を行う団体の取組みを紹介します。 団地の住民それぞれが力を発揮できるコミュニティづくりをめざしてNPO法人ASIAN COMMUNITY TAKASHIMADAIRA NPO法人ASIAN COMMUNITY TAKASHIMADAIRA(以下、高島平ACT。代表理事 爲房裕一郎さん)は、東京都板橋区にある高島平二丁目、三丁目団地で、外国籍住民とともに、地域で多様性と柔軟性を持ったコミュニティを築くことを目的に、団地内で日本語教室などの活動を行っている。 *NPO法人高島平ACT ホームページ:http://act-takashimadaira.tokyo/ 毎週土曜日に行っている初級日本語教室の様子 高島平団地は、賃貸住宅が約8千200戸、分譲住宅が約2千戸の大規模団地で、1972年より入居が始まりました。高島平ACTは、高島平二丁目、三丁目団地に外国籍住民が増加する中で、日本人住民との共生や相互理解を目的に、2011年に設立されました。設立からしばらくは、日本語教室や多文化講座、クリスマス会、外国籍住民を対象にした相談活動などを行っていました。2014年~2017年には、高齢者や外国籍住民のくつろぎの場として、団地内の商店街にコミュニティスペースをオープンしました。 その後、本格的な活動は一時休止していましたが、日本語教室と外国籍住民の相談活動は継続して実施していました。2020年に再始動し、現在は、外国籍住民を含む4名の運営メンバーを中心に、三丁目団地の集会所で、これまでの日本語教室や多文化講座の開催に加えて、スマホ講座なども行っています。 住民たちが持つ力を発揮してもらいたい 日本語教室は、毎週土曜日に開催しています。主に団地に住む高齢者が講師となり、5~6名の外国籍住民に初級日本語支援をしています。学生ボランティアが講師として活動に参加することもあります。 高島平ACT理事の吉成勝男さんは「高齢者は、日本で生活するために必要な言葉を教えるだけでなく、長年の経験や知識も伝えられている。高齢者が持つ力を発揮することができ、役割が生まれる」と言います。さらに「日本語教室に参加した中国人女性から『日本を訪れて日本人とこれほど近くで親しく話をしたのは初めて』と言われたことがあり、とても印象に残っている」と話します。 多文化講座は、板橋区の職員や大学教授らを招き、地域の高齢化や多文化化などをテーマにしています。 スマホ講座では、外国籍住民が講師となり、高齢者にスマホの初歩的な使い方を丁寧に教えています。団地の外国籍住民の中には、ITエンジニアの方もおり、毎回好評だといいます。吉成さんは「外国籍住民にも持っている力がある。スマホ講座が、彼らが持つ力を発揮できる一歩となったら良い。ゆくゆくは、コミュニティをつくる担い手になってくれたら嬉しい」と言います。 外国籍住民と日本人住民、双方向の関係性が広がってほしい 高島平三丁目団地自治会の役員も務めている吉成さんは「高島平ACTの活動を続ける中で、日本人住民の外国籍住民に対する偏見などの否定的な感情と、外国籍住民の『日本人は自分たちのことを受け入れてくれない』といった感情の間に『距離』や『すれ違い』を感じることがあった」と言います。例えば、団地内で粗大ごみの不法投棄が問題になると「外国人が捨てたに違いない」と、決めつけてしまう住民が以前は少なくありませんでした。しかし、徐々に「日本人でもいろいろな人がいるから」といった声があがることも多くなってきたといいます。「団地内での地道な活動でも、続けていくことで少しずつ意識が変わってきている。日本語教室やスマホ講座等での交流を通じて、日本人住民と外国籍住民が近くで接すると、『助ける・助けられる』関係が生まれ、地域コミュニティを良くすることができると確信している」と、吉成さんは話します。 また、自治会との連携が欠かせませんが、外国籍住民との交流や関係性づくりをすすめる中での課題もあります。日本人の現役世代や若い世代と同じように、外国籍住民も、昼間は働いていたり、ほかに良い土地があれば引っ越したりするため、自治会に参加することへの関心は薄いといいます。しかし、吉成さんは「一時的なつながりや引っ越しなどで入れ替わりがあるとしても、同じ地域の住民としてコミュニティの結束性をどう維持していけるか、考えていく必要がある。住民たちそれぞれの思いを調整して、多くの人が自分たちの力を発揮できるようにしていくことが大切」と、団地での活動の役割を語ります。そして「いつか、自治会役員のメンバーに外国籍住民も入ってくれるような地域になっていってほしい」と期待しています。 今後の活動について 高島平ACTでは、高齢者に向けて、「相続」や「金銭管理」といった金融をテーマにした講座を開催することを計画しています。また、外国籍住民の中には、中国籍の方も多くいます。両親が中国人で、日本で生活する場合は、子どもは日本語と中国語が話せることが多いですが、日本人と中国人の親を持つ子どもは、どうしても日本語中心の生活となり、中国語や中国の文化が分からないといった状況になることがあります。そのような家庭に向けて、子どもには親などが中国語を教え、親には団地の高齢者が日本語を教える教室の開催も検討しています。吉成さんは「試験的にさまざまなイベントを実施してみて、興味を持ってもらえたものや評判の良かったものをさらにより良いものにしていきたい」と、今後の活動について話します。 大勢の住民が一堂に集まることが難しい状況ですが、オンライン会議ツールを併用しながら、感染症対策をしっかりと行った上で、さまざまなイベントを企画していく予定です。 さらに、ほかのNPO法人とも連携し、海外の文化や音楽を紹介する活動や場をつくることも構想しています。「私たちと同じように団地の中で外国籍住民との関係づくりに悩んでいる団体や、すでに先駆的な取組みをしているNPO法人とも交流をしていけたら」と、連携を活かした活動への期待を話します。 誰もが参加しやすいコミュニティをめざす 「高島平団地という、限られた小さな地域でも、『多様性』を受け入れたり、『寛容さ』を持ってさまざまな住民や文化と接したりすることが大切。この地域でのコミュニティを継続させ、外国籍住民が入りやすいコミュニティをつくっていきたいと思っている。そうすることで、高齢者などの日本人住民にも刺激となり、地域の活性化にもつながる」と、吉成さんは、外国籍住民の力と一緒に地域コミュニティをつくりあげていくことの大切さを話します。 スマホ講座の様子。日本語教室を受講している外国籍の生徒が高齢者にスマホの操作方法を教える 多文化講座の様子。司会を務めるのは、高島平ACT運営メンバーの李さん 【トピックス】 子どもたちに必要なものは?区立児童相談所の意義と地域に求められる支援 ▼ 主催:NPO法人めぐろ子ども支援ネットワーク 令和4年3月5日(土)、標記をテーマに、NPO法人めぐろ子ども支援ネットワークによるフォーラムが開催されました。児童福祉司の経験も持つ明星大学教授の川松亮さんから、児童相談所(以下、児相)の役割と、地域に求められる子ども支援について講義が行われました。 地域の中の児童相談所 児相は、平成28年の児童福祉法改正により特別区にも設置可能となったことで、令和4年3月現在、都内14か所に設置されています。児相では、虐待だけでなく、養育困難、障害、非行、育てづらさなど18歳未満の子どもに関するさまざまな相談援助を行っています。中でも、子どもを守るための「一時保護機能」や「措置機能(在宅指導、里親委託、児童福祉施設入所措置等)」などの権限を持つことが特徴です。令和2年度、東京都では相談全体の50%近くが、虐待に関する相談といいます(※1)。 先行して設置された特別区児相には、児相と子ども家庭支援センターのワンストップ受理体制の整備や学校との連携強化など、それぞれに特色があります。川松さんは「区が有する子育て支援機能と児相による子どもの保護や法的対応、専門的ソーシャルワークを重ね合わせた相談対応が可能となるだろう」と期待を話します。一方、全国の児相が対応した虐待相談のうち、施設入所等に至る事例は2・6%であり、残りの約97%は在宅支援であるといいます(※2)。その状況もふまえ、「児相はあくまで地域の子どもを地域で育てるシステムの一つ。要保護児童対策地域協議会(以下、要対協)がネットワークとして成熟していなければ十分な支援体制は構築できない」と、地域の支援基盤の重要性を語ります。 のりしろを重ね合わせる支援 川松さんは虐待相談で関わる家族は、【図】のようにさまざまな状況が重なっていることが多いといいます。そのため「保護者の状況や家庭の生活そのものが安定するためのサポートを地域で行い、その上に子どもへの心理的なケアや保護者が適切な養育スキルを身につけ、親子関係を改善していくための支援を積み重ねる必要がある」と話します。ただし、それには時間がかかるため「問題が大きくなる前に発見し、早期に支援につなげることが最も大切」と強調します。 また、川松さんは、子育て困難の背景として社会的な孤立があることを指摘します。身近に頼れる人がいない家庭にとって、地域の社会資源は大きな役割を果たします。「間口が広く、隙間のニーズにも柔軟に対応できる民間団体があると、一時保護のような大きな事態になる前に支援する手立てが増える」と話します。 しかし、支援に拒否的、消極的な家庭も存在します。川松さんは「親自身の成育歴の不利やSOSを出して助けられた体験の乏しさが背景にあることも少なくない」と話し、「直截的な助言ではなく、まずは受けとめて状況の理解から始めることが必要。『人に頼って良い』ことを保護者に伝え、地域で家族機能を補完していけると良い」と、支援の姿勢を話します。さらに「信頼できる大人との出会いや情緒的なサポートは、子どもの健全な成長にとっても欠かせないものであり、将来における虐待の連鎖を止める要因ともなる」と、地域の大人全体で見守る重要性を語ります。 川松さんは、複合的な困難を抱える家庭を支援するためには、一つの機関では限界があり、地域の関係機関がチームとして動くことが不可欠といいます。「支援者が協働するためのネットワークである要対協は、関係機関や支援者が『自分たちはこの家庭に何ができるか』を考えていく場。つながりづらい家庭は、すでにつながりのある機関が一緒に窓口に行くなど、『のりしろ』を重ね合わせるように協働していくことが大切ではないか」と投げかけます。 (※1)東京都「東京都児童相談所のしおり2021年版」 区児相(世田谷区、江戸川区、荒川区)は含まず。 (※2)厚生労働省「平成28年改正法からの動向」 第27回社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会資料 【図】フォーラム資料から抜粋 【おしごと通信】 常に小さなサインに気がつける支援者になりたい 救護施設「村山荘」で働いて3年目になる筒井たえさんに、現在のお仕事に就くまでの経緯や利用者、職場の方々との関わりへの思いなどについて、伺いました。 関わってみたかった福祉業界へ 学生の頃から「将来は人の役に立つ仕事がしてみたい」と思っていました。高校卒業後はバスガイドとして働きはじめ、事務職や営業職などさまざまな職種を経験しました。その間、福祉業界への就職を考えたタイミングは何度かありましたが、体調面での不安や周りから「腰を悪くするよ」と言われていたこともあり、ためらっていました。 転居をきっかけに仕事を探していたところ、現在の職場で生活支援の仕事の求人を見つけて、この仕事なら自分もできるかもと思い、応募しました。 切り口を変える面白さ 救護施設には、相談員、調理師、看護師等さまざまな職種の職員がおり、その中で私は援助員として働いています。援助員は、利用者の買い物や生活費の管理等、日々の生活のお手伝いをしています。 福祉は未経験ということもあり、入職する前「利用者さんの小さなサインを見抜けるだろうか」と、とても不安に思ったことを覚えています。入職した後に感染拡大した新型コロナの影響も大きく、常に緊張の連続でした。 しかし、その中でも福祉の仕事の面白さを見つけました。それは、切り口を変えるだけで小さな発見がいくつもあることです。新型コロナ感染拡大後、知的障害のある利用者さんがご飯を全く食べなくなってしまいました。ほかの職員と話し合い、器を弁当箱から食器へ変更するなど、あの手この手で工夫しました。その結果、少しでも食べてくれた時は嬉しかったです。ほかにも「お風呂行きましょう」では動かない利用者さんが「入浴しましょう」と声をかけるとすんなり行ってくれるなど、伝え方を変えるだけで反応が変わることがあり、そこがこの仕事のやりがいのあるところだと感じています。「今日はどんな風に伝えてみようかな?」と思いながら、出勤しています。 柔らかい雰囲気の職場 これまでの職場で苦労した分、入職前は人間関係も不安でした。しかし、今の職場は柔らかい雰囲気の方が多く、風通しがとても良いです。そして新任職員からでも提案しやすい環境です。 例えば、トイレ掃除はこれまで午前中に業者が行っていましたが、午後には汚くなってしまいます。「自分たちで綺麗にする習慣があっても良いのではないか」と提案したところ、日中活動の一環として掃除が加わりました。掃除をした利用者さんへ1週間に1回の表彰も行っており、今ではいつも綺麗になっています。 働く上で大事なメンタルケア 福祉の仕事は自分のメンタルが安定していないと小さなサインが見抜けないと思います。それは利用者さんへの支援は職員のメンタルにより左右されると思った経験があるからです。 ある大柄な男性の利用者さんの真横にいた際、怒鳴られたことがありました。私に対して怒鳴ったのではなかったのですが、その利用者さんのそばに行くと緊張してしまった時期がありました。主任に率直に相談し、一時期ほかの職員が関わるように配慮してくれました。「仕事だから我慢しなければ」という気持ちもありましたが、無理して関わっていたらストレスを抱えて辛くなっていただろうし、相手にも私が無理していることが伝わってしまうと思いました。それはお互いのためにも良くなく、仕切り直すための時間と距離をもらえて良かったと思った経験でした。そして、そのことを言える環境にも感謝しています。 こんなに楽しいと思わなかった 営業職時代の経験から、素の自分はふとした時に出てしまうので常に正直であろうと思い、「相手を尊敬する」「挨拶をする」「常に小さなことに気づけるようにする」ことを心がけてきました。これからもこの心がけを忘れずに、利用者さん一人ひとりの経歴や入所経緯、考え、希望を把握し、同じ方向を向いて前向きな支援を考えられる支援者になりたいと思います。 興味のあった福祉の仕事に今、思い切って飛び込んでみて良かったです。そして、こんなに楽しいとは正直思いませんでした。感じ方は人それぞれですが、迷っている方がいれば一歩踏み出すべきだと思います。 筒井 たえさん Tae Tsutsui 社会福祉法人村山苑救護施設村山荘援助員 職場での筒井さん 【東社協発】 令和4年度 東社協事業計画・予算 令和4年度は、新たな【東社協中期計画】の初年度です。「東京の多様性を活かし、それぞれの地域生活課題を主体的に解決できる地域共生社会」をめざし、6つの柱で各事業を推進します。 1安全・安心と権利擁護、自立生活支援の推進 ○地域福祉権利擁護事業と地域づくりをすすめるコーディネーター活動との連携の推進 ○国の「第二期成年後見制度利用促進基本計画」をふまえた活動の強化と推進 ○運営適正化委員会の円滑な委員改選と委員体制の確保 ○福祉サービス事業所における苦情解決のしくみ構築の促進 ○生活福祉資金貸付事業等の国等の関連施策改正・見直しへの適切な対応と適正な運営 ○新型コロナの影響をふまえた緊急小口資金および総合支援資金の特例貸付のための貸付事務センターの運営体制の確立 ○受験生チャレンジ支援貸付事業の制度拡充に伴う周知の強化と適正な貸付の実施 ○東日本大震災都内避難者への支援「東京都孤立化防止事業」等の実施 2福祉水準の向上を支える基盤の強化 ○研修や関連図書の発行、ホームページの活用による情報発信を通じた社会福祉法人の経営支援事業の充実 ○専任相談員や弁護士、公認会計士等による社会福祉法人・福祉施設の経営に関する相談事業の実施 ○大規模合同就職面接会「福祉の仕事フォーラム」の開催 ○身近な地域での多様な人材確保に向けた「地域密着相談面接会」の開催 ○各種修学資金貸付事業による無資格者の資格取得支援と有資格者の就労支援 ○小中高校の教員を対象に、福祉の仕事の魅力・重要性を伝える「フクシを知ろう!教員向けセミナー」の実施 ○収録型ウェブ研修やライブ型ウェブ研修等による新型コロナに対応したさまざまな研修の運営 ○従事者共済会の退職共済事業の安全な資産運用と安定した運営のため数理計算を実施し、令和2年度の制度改正以降の現行制度を検証 3ネットワークの構築・協働と幅広い参加の促進 ○東京都地域公益活動推進協議会によるコロナ禍における地域住民の生活課題の解決に向けた、社会福祉法人のつながりによる3つの力 ●つながることで地域が見える ●つながるからできることがある ●つながるから強みを生かせる を生かした事業推進 ○社会福祉法人・社協・民生児童委員による三者連携による地域課題解決に向けた取組み推進 ○大規模災害時における被災地の福祉力低減を補う「東京都災害福祉広域支援ネットワーク」の体制強化 ○新型コロナ感染発生施設への応援職員の派遣調整 ○部会と連携した施設運営力コンサルテーション事業の新規実施 ○各種業種別部会を通じた①人材の確保・育成・定着②災害時の福祉支援③地域公益活動等の推進 ○民生児童委員、民児協の活動の方向性を示した「東京版活動強化方策」に基づく活動の推進と、民生児童委員活動の普及啓発、研修等の実施 ○東京ボランティア・市民活動センターによるSNSの活用などによる情報提供機能の強化 ○企業におけるボランティア活動推進のための協働プログラムの開発とセミナーの実施 ○災害ボランティア活動の推進および復興支援事業の推進 ○東京善意銀行における寄附文化醸成と、寄附者と配分施設の交流促進 4地域の取組みの支援と普及 ○「重層的支援体制整備事業に向けた社協の取組み方策検討プロジェクト」の実施 ○「コロナ禍で顕在化した地域課題」について、令和3年度の課題整理に引き続き、対応状況の調査の実施 ○コロナ禍をふまえた区市町村地域福祉活動計画の推進・改訂を支援 ○新たに期待される役割もふまえた地域づくりをすすめるコーディネーターの養成 ○社会福祉法人の区市町村域のネットワークづくり支援と活動推進 5情報発信と提言 ○「福祉人材の確保・育成・定着に関する調査2022」の実施・提言 ○福祉の理解を促進するための情報発信力の強化 ○ホームページやSNS等の活用による分かりやすい福祉情報の発信 ○コロナ禍をふまえた開催方法による「東京都社会福祉大会」の開催 ○地域福祉推進委員会のもとで、福祉人材確保やコロナ禍における課題対応のための「提言2023」作成に向けた取組み 6東社協法人基盤の強化 ○令和4年度からの新たな【東社協中期計画】の6つの柱のもとで15の「重点事業」を中心にした進行管理 ○監査法人、監事、内部監査の三様監査実施 ○本会の「地域における公益的な取組み」の実施 「令和3年度地域福祉フォーラム 東京力×無限大」を開催しました 令和4年2月27日(日)、標記フォーラムをオンラインで開催しました。同フォーラムは、平成27年度から毎年、地域福祉に関心のある方や福祉関係者等が共に学びあう場として開催しています。令和3年度は「〝地域〟でつなぐ孤立を生まない包括的な支援とは」をテーマに開催し、130名が参加しました。 ◆誰も孤立することのない地域づくり 最初に文京学院大学教授の中島修さんが「誰も孤立することのない地域づくり」について講演しました。中島さんは「誰も孤立しないためには、相談窓口を明確化し、そこでどのような支援が受けられるのかを情報発信していく、また、社会とつながるための支援を最優先する地域づくりが大切だ」と指摘しました。そして「複合化した課題には、制度の枠組みを超えた一体的な対応が不可欠。地域の社会資源を見つめ直し、できることから住民と共に取り組んでいってほしい」と話しました。 ◆地域でつなぐ切れ目のない支援 シンポジウムでは、東京都民生児童委員連合会の寺田晃弘さん、NPO法人国際活動市民中心(CINGA)の高田友佳子さん、NPO法人Learning for Allの入澤充さんにご登壇いただきました。シンポジストの3人からは、次のように報告がありました。民生児童委員は、地域住民の一人として隣人の小さな変化に気づき、身近な相談相手となり、訪問や調査から地域福祉の向上に取り組んでいること。外国人支援では、言葉の問題だけでなく、日本人と同じように生活上の課題がある一方、支援されるだけでなく、外国人が支援する側にも回ることができること。子どもの貧困問題では、支援につながりづらい状況にどう介入していくかが重要であり、地域や学校、行政、NPO等さまざまな方と連携して支援していく必要があること。それぞれの分野からの課題提起から、地域で困りごとを抱える人たちへの多方面での支援があることを学びました。また、コロナ禍でどのように活動を続けてきたかお互いに共有し、学びあう機会となりました。 今後も、多様な人材、社会資源が集まる東京における小地域福祉活動について取り上げ、さらに充実したフォーラムの開催をめざします。 シンポジウムの様子 【マンスリー】2022.2.26 - 3.25 3/25 「第二期成年後見制度利用促進基本計画」を閣議決定 政府は、「第二期成年後見制度利用促進基本計画」を閣議決定した。令和4年度から令和8年度まで、計画に基づいて施策を実施する。計画には、「成年後見制度等の見直しに向けた検討と総合的な権利擁護支援策の充実」や「尊厳のある本人らしい生活を継続するための成年後見制度の運用改善等」、「権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり」などの項目が盛り込まれている。 3/15 「ハローミライの保育士」特設サイトを開設 厚労省は、保育士の情報を発信するポータルサイト「ハローミライの保育士」を開設した。保育士の仕事に興味がある学生や保育士の資格取得をめざす方、保育の現場に復帰したい方に向けて、保育の資格や仕事の情報、地域別の保育情報などの保育に関する情報を随時更新し紹介する。 「ハローミライの保育士」 特設サイト https://www.mhlw.go.jp/hoiku-hellomirai/ 3/15 社会福祉士国家試験・精神保健福祉士国家試験の結果を公表 (公財)社会福祉振興・試験センターは、令和3年度の社会福祉士国家試験、精神保健福祉士国家試験の結果を公表した。社会福祉士国家試験の合格者は10,742人で合格率は31.1%、精神保健福祉士国家試験の合格者は4,267人で、合格率は65.6%だった。 3/17 「東京空き家ガイドブック2022」を作成 都住宅政策本部は、空き家の発生抑制や有効活用などを促進する観点から、「東京空き家ガイドブック2019(令和元年10月発行)」を改訂し、「東京空き家ガイドブック2022」を作成した。空き家の具体的な相談・解決事例を多く紹介し、空き家の活用事例などを新たに盛り込んでいる。 東京空き家ガイドブック2022 https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/akiya/shiryo_guidebook.html 4/1 中野区児童相談所を開設 中野区は「中野区児童相談所」を開設。令和3年11月に開設した子ども・若者支援センターに児童相談所機能が含まれ、子ども期から若者期の本人や家庭における課題についての専門相談や支援、措置、家庭・社会復帰までを総合的に実施する。 【寄附のカタチ】 手仕事による器を子どもたちへ手の長いおじさんプロジェクト 手仕事による器や道具に触れながら、使いたいものを選んでもらう機会を通して、子どもたちを応援したい―2011年の東日本大震災を契機に、陶器や木工、ガラスの作家有志が立ち上げたのが「手の長いおじさんプロジェクト」です。この春、児童養護施設を巣立つ子どもたちのために、都内で頒布会が開かれました。訪れた子どもたちは、皿、コップ、箸など新しい生活で使うためのお気に入りを選んでいました。会場には、14名の作家による作品が並び、代表の尾見様より直接話を聞きながら選ぶことができました。 東社協東京善意銀行では、社会福祉施設等への寄附のご相談を承っております。 ●千代田区神田駿河台1-8-11 東京YWCA会館3階  ☎03-5283-6890 zen-i@tcsw.tvac.or.jp 【アンテナ】3月31日(木)時点の情報です。感染症拡大防止のため、イベントが中止になる可能性があります。詳細は各団体にお問合わせください。 助成金 2022年度 JCI助成プログラム 4月22日(金)17時必着 1年間で最大1,000万円まで 日本のさまざまなヘルスケアに関わる社会課題に対して長期的な視点で取り組む非営利団体に対し、プロジェクトへの助成 ヘルスケアに関連した次世代を担う子ども・若者の支援 申請書類一式をメールにて提出 ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループJAPAN COMMUNITY IMPACT 助成プログラム担当 RA-MEDJPTO-JJCCJP@its.jnj.com https://www.jnj.co.jp/our-societal-impact/grant-program_2022 令和4年度 東京ウィメンズプラザ 配偶者暴力防止等民間活動 助成事業 4月28日(木)必着 (1)民間団体が行うDV被害者支援、DV対策等に係る活動を支援する自主活動、施設の安全対策等への助成(事業に係る経費の1/2以内で限度額100万円。DV被害者への同行支援事業については、助 成限度額150万円) (2)DV防止や被害者支援等に関する活動に対し、専門的な知識や経験を持つアドバイザーの派遣 東京都内に事務所(もしくは事務を行うための決まった場所)または活動拠点を有している民間団体・グループ ※事業の内容によっては都内在住又は在勤の個人でも申請可 所定の申請書と必要書類を郵送 東京ウィメンズプラザ事業推進担当 配偶者暴力防止等民間活動助成事業担当 〒150-0001 渋谷区神宮前5-53-67 03-5467-1980 03-5467-1977 S0000666@section.metro.tokyo.jp https://www.twp.metro.tokyo.lg.jp/aid/tabid/72/Default.aspx 2022年度 高齢社会助成 「地域福祉チャレンジ活動助成」 5月31日(火)消印有効 最大400万円 地域包括ケアシステムの展開と深化につながる次の5つのテーマのいずれかに該当する活動。①福祉施設や福祉・介護・リハビリテーション専門職と地域住民の協働によるインフォーマルなサービスづくりへ向けてのチャレンジ活動②認知症(若年性認知症を含む)の人、家族と住民が共に行う安心、安全に暮らせる地域づくりへ向けてのチャレンジ活動③人生の看取りまで含む生活支援につながる実践へ向けてのチャレンジ活動④高齢単身者、家族介護者を含めた複合的な生活課題に対する(家族への)支援につながる実践へ向けてのチャレンジ活動⑤高齢者、障がい者、子ども等全世代交流型の活動・就労の機会提供、社会参加づくりへ向けてのチャレンジ活動 次の2つの要件を満たしている団体(法人格の有無は問わない)。①助成テーマにチャレンジする意欲がある団体②他の団体・機関、住民組織等と協働で活動する団体 所定の申請書に記入の上、必要書類を添付して郵送 (公財)ニッセイ財団 高齢社会助成事務局 〒541-0042 大阪府大阪市中央区今橋3-1-7 日本生命今橋ビル4F 06-6204-4013 06-6204-0120 kourei-fukusi@nihonseimei-zaidan.or.jp http://nihonseimei-zaidan.or.jp 講座・シンポジウム 2022年度 第9回国内研修事業 5月13日(金)消印有効 7月7日(木)~7月8日(金)※Zoomによるオンライン研修 24名 無料 HPにて掲載予定 社会福祉法人・NPO法人に所属し、障害福祉サービスに従事している方。実務経験3年以上、上限年齢40歳程度の方。Zoomを利用したオンライン研修を受けられる方 HPより所定の書類をダウンロードの上、添付書類と合わせて郵送 (社福)清水基金 〒103-0027 中央区日本橋3-12-2朝日ビルヂング3階 03-3273-3503 03-3273-3505 https://www.shimizu-kikin.or.jp/ その他 犯罪お悩みなんでも相談 4月1日(金)~令和5年3月31日(金)※受付日・時間:火・木曜日(祝日・年末年始を除く)9時~17時 無料 社会福祉士や精神保健福祉士による犯罪の悩みに関する電話相談(TEL:03-6907-0511) 都内在住の万引きや暴力、痴漢などの犯罪行為をしてしまうご本人、そのご家族または関係者の方 不要 ※来所相談について相談員から案内する場合あり 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部都民安全課 03-5388-2265 https://www.tomin-anzen.metro.tokyo.lg.jp/chian/anshinanzen/saihan-boushi/hanzai-sodan/ 【資料ガイド】 会議資料 「社会保障教育モデル授業等に関する検討会(第4回)」資料(厚生労働省/3月) 第8回健康・医療・介護情報利活用検討会資料(厚生労働省/3月) 令和3年度全国児童福祉主管課長会議資料(厚生労働省/3月) 令和3年度全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料(厚生労働省/3月) 高齢者の特性を踏まえたサービス提供のあり方検討会 報告書(都福祉保健局/3月) コミュニティ・スクールの在り方等に関する検討会議 最終まとめ(文部科学省/3月) 特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議(第5回)配布資料(文部科学省/3月) 第209回社会保障審議会介護給付費分科会(Web会議)資料(厚生労働省/3月) 令和3年度社会・援護局関係主管課長会議資料(厚生労働省/3月) 調査結果 令和2年人口動態統計(確定数)の概況(厚生労働省/2月) 公立特別支援学校における教室不足調査の結果(令和3年10月1日現在)(文部科学省/3月) 生活保護の被保護者調査(令和2年度確定値)の結果(厚生労働省/3月) 令和2年 東京都人口動態統計年報(確定数)(都福祉保健局/3月) 令和3年中における自殺の状況(警察庁/3月) その他 ひきこもりに関する普及啓発・情報発信(都福祉保健局/3月) 【くらし】 福祉作業所の製品を通じて障害のある方と地域のつながりを結んでいく 福祉作業所の利用者が製作したバッグや雑貨、小物類などを専門に扱うオンラインのセレクトショップを運営する、NPO法人SOU代表理事の友田由香さんにお話を伺いました。 息子の存在が活動の原点 今の活動の原点には息子の存在があると思います。団体名のSOUの由来も息子の名前の一部が取り入れられています。息子は自閉症で、高等部まで特別支援学校に通っていました。卒業後は福祉作業所で、木工製品を製作しています。私自身は精神障害者の福祉作業所で、週2日ほど技術指導員として働いています。洋服やバッグ、雑貨のデザインや縫製をしていた前職の経験を活かして、革製品を利用者と一緒に製作しています。 福祉作業所には、息子が幼い頃から時々見学に行っていましたが、当時は暗い印象を抱いていました。しかし、実際に福祉作業所で働き、障害のある方たちと接すると、それまで抱いていた印象とは違った場所だと感じました。利用者の製作物一つひとつが個性的で趣があります。中には職人のような方もいます。そういった製品を地域の人にもっと知ってもらいたいと思い、仲間とセレクトショップを立ち上げることにしました。 自分の惚れ込んだ製品を選ぶ 法人立ち上げの準備のために製品を探していた平成27年秋頃、精神障害者のバレーボール大会に参加する機会があり、そこで出店されていた福祉作業所の製品を見た時「廃材を製品にしたい」という団体のコンセプトやクオリティ、デザインのすべてに圧倒されました。同時に、このようなすばらしい製品の存在は「自分たちの活動がうまくいくのではないか」との想いを強くさせました。個人的にその製品に惹かれた部分もありますが、その福祉作業所との出会いは活動を始める後押しとなる大きな出来事になりました。 現在は約20か所の福祉作業所と連携しており、ペンケースや小物入れ、トートバッグなど200点近くの製品があります。販売しているほとんどの製品は私が各地を回って実際に見たり、連絡を取ったりしながら選んでいます。自分自身が惚れ込んだ製品でないとお客様に良さが伝わらないと考えているので、製品は好みで選ぶことが多いです。製品の製作過程で、うまくつくれなかったと感じると「やりたくない」と言う方もいらっしゃいます。そういった時に、福祉作業所の職員が励まし、気持ちに寄り添いながら完成させた製品が届くと嬉しいです。 お客様の声が自信につながる SOUを設立して1年は立川商工会議所のチャレンジショップとして実店舗も運営していましたが、現在はウェブショップ、イベントでの製品販売を中心に、ワークショップも定期的に開催しています。毎回の荷物の移動は大変ですが、製品を手に取ったお客様が喜んでいる姿を見ると活動を続けて良かったと思います。少しずつですが、「障害のある方が製作しているから買う」のではなく、「製品が良いから買う」といった意識に変わってきていると感じます。 他方で、製作のクオリティと価格にズレがあると感じることもあります。私自身は製品自体に価値があり、価格を上げても良いと思っていますが、売れ残った時の在庫を心配して安い価格で販売する福祉作業所もあります。職員の方たちも多忙でなかなか販売に手が回らない部分もありますが、SOUでは製品が売れた時のお客様の声を、職員にお伝えするようにしています。何度も繰り返し伝えることで、職員の自信につながり、製品への考え方も変わってくるのかなと思います。 得意なことで障害のある方をつないでいく 製品を買った方やワークショップに立ち寄ったりした方が製品のファンになってくれたら良いなと思います。そうした方々がSNSで紹介したり、友人に教えたり、ファンになった方からの口コミで、障害のある方とのつながりが少しでも多くなれば気持ちに寄り添える社会に近づけると感じています。自分の得意なことを通じて、地域と障害のある方たちを結べる活動をこれからも続けていきたいです。 NPO法人SOU 代表理事 友田由香さん 実際に販売している製品 ◀「Souショップ」 【本】 NEW 母子福祉部会紀要 №14(令和2年度) ~社会的養護の担い手としての母子生活支援施設の役割と課題~ 母子福祉部会では、プロジェクト活動として「地域に必要とされる母子生活支援施設づくりをめざして」をテーマに、都内の母子生活支援施設の現状把握のために支援内容等についての調査を実施し、事例集を作成しました。さらに、コロナ禍での現状把握をするために行った調査の結果についても掲載しています。 ◆規格 A4判/140頁 ◆発売日 2022.3.23 ◆定価 1,980円(本体1,800円+税10%) NEW 福祉職場の新任職員・未経験者は何に悩んでいる?施設長・先輩職員のための定着応援ハンドブック 近年、福祉分野の職場には、他業種からの転職者や福祉を学んだことがない「未経験者」の参入がみられます。人材不足解消のためには、新たな人材の確保につなげる取組みが大切なことはもちろん、現在働いている人材の育成・定着の視点も重要です。未経験者を含む新任職員の「定着支援」が人材不足解消の一助になると考え、新任職員のよくある困りごととその解決のためのヒント、施設の取組み事例、施設等が利用できる制度や助成金の情報をまとめています。施設・事業所において、ぜひご活用ください。 ◆規格 B5判/52頁 ◆発売日 2022.4.4 ◆定価 440円(本体400円+税10%)