【表紙】 大分県 男の子の健やかな成長と出世を願って飾られるこいのぼり。 大空を悠々と泳ぐように大きく元気に育ちますように。 【もくじ】 社会福祉NOW 第二期成年後見制度利用促進基本計画で求められる視点 公益社団法人日本社会福祉士会理事 厚生労働省成年後見制度利用促進専門家会議委員 星野 美子さん 【連載】地域における多文化共生のいま⑩ 言葉が違うとしてもみんな同じ地域で暮らす住民 NPO法人アデイアベバ・エチオピア協会 明日の福祉を切り拓く 夢中になれるアートや学びを、子どもたちの「生きる力」に 認定NPO法人スマイリングホスピタルジャパン代表理事 松本 惠里さん 【NOW】 第二期成年後見制度利用促進基本計画で求められる視点 2022年度から2026年度までを工程期間とする第二期成年後見制度利用促進基本計画が本年度から実施されています。 今号では、計画に関する検討を行う成年後見制度利用促進専門家会議の委員でもある社会福祉士の星野美子さんに、第二期計画の概要や第一期計画から新たに盛り込まれた視点等についてご寄稿いただきました。 公益社団法人日本社会福祉士会理事 厚生労働省成年後見制度利用促進専門家会議委員 星野 美子 さん 成年後見制度利用促進基本計画(以下、基本計画)は、2016年に制定された成年後見制度利用の促進に関する法律(以下、利用促進法)に基づき2017年度から2021年度までを最初の計画の期間として、全国どの地域でも、成年後見制度を必要とする人がみな安心して利用できるような体制を目指して策定されたものです。これに沿って今日まで、各地域で中核機関を設置するなどの体制整備がすすめられてきました。 しかし一方で、「後見人等が意思決定支援や身上保護を重視しない状況であっても、後見人等を簡単に交代してもらえない」「制度や相談先等の周知が未だ不十分である」というような指摘もあります。権利擁護支援の地域連携ネットワークなどの体制整備の取組みが、小規模町村等において大幅に遅れている実態もあります。 高齢化はいよいよ本格化するとともに、地域では「8050問題」といわれるように高齢者や障害者に対する支援だけでは解決できないような複合的なニーズへの支援体制が求められ、国は重層的支援体制整備事業を創設し、各地域で取組みがすすみ始めています。このような課題に丁寧に対応し、全国どこに住んでいても、「支援を必要とする人が、地域社会に参加し、共に自立した生活を送る」ことが当たり前となるような、権利擁護支援の地域連携ネットワークの一層の充実を図る必要があります。 そうした趣旨で、2022年度を始期とする第二期基本計画に何をどう盛り込むかについて、成年後見制度利用促進専門家会議(以下、専門家会議)で検討がすすめられ、2022年3月25日に第二期基本計画が閣議決定されました。この計画は、2022年度から2026年度までの5年間を工程期間とし、中間年度にあたる2024年度には専門家会議において各施策の進捗状況をふまえ、個別の課題の整理・検討を行うことになっています。 1 第二期基本計画の概要 第二期基本計画のサブタイトルは、「尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加を図る権利擁護支援の推進」とされました。そして、基本的な考え方として、以下のようにまとめられました。 (1)地域共生社会の実現に向けた権利擁護支援の推進  第二期基本計画では、地域共生社会について、「地域共生社会は、制度・分野の枠や「支える側」と「支えられる側」という従来の関係を超えて、住み慣れた地域において、人と人、人と社会がつながり、すべての住民が、障害の有無にかかわらず尊厳のある本人らしい生活を継続することができるよう、社会全体で支え合いながら、共に地域を創っていくことを目指すものである。」と記述されました。 〝成年後見制度利用促進〟という言葉から、利用促進法を「成年後見制度の利用者を増やすこと」、「首長申立を活性化させること」と捉えている方は少なくないと思われます。しかし、基本計画の基本的考え方として、地域共生社会を実現するために、権利擁護支援を推進していくこと、成年後見制度はその中のしくみの一つであることが、明示されたことは大きなことです。成年後見制度を使うことが目的ではなく(成年後見制度ありきではなく)その人のめざす暮らしを支えるひとつのしくみとしてこの制度が役割を果たすことができるよう、地域の体制を整備することが目的なのです。 (2)成年後見制度の運用改善等 権利擁護支援のひとつのツールとして、また、先述の目的を達成するために制度が活用されるためには、現在の成年後見制度の運用をさらに改善させていくことが大事であり、基本計画では運用改善等について、以下のことに取り組むとされました。 ① 本人の自己決定権を尊重し、意思決定支援・身上保護も重視した制度の運用とする。 ② 成年後見制度を利用することの本人にとっての必要性や、制度以外の権利擁護支援による対応の可能性についても考慮し、連携体制を整備する。 ③ 成年後見制度以外の権利擁護支援策を総合的に充実する。 ④ 任意後見制度や補助・保佐類型が利用されるための取組みをすすめる。 ⑤ 不正防止等の方策を推進する。 (3)司法による権利擁護支援などを身近なものにするしくみづくり 権利擁護支援が必要となる対象者には、本人を中心にした支援・活動である意思決定支援が前提である一方、重篤な権利侵害(虐待、消費者被害等)への回復支援をすすめる上では家庭裁判所や法律専門職の迅速かつ強力な関与が求められます。その実質が担保されることによって、本来求められる尊厳のある本人らしい生活の継続と、地域社会への参加が図られると考えます。(※) 2 第一期基本計画からさらに強調されたこと、新たに盛り込まれた視点 (1)意思決定支援のさらなる浸透 権利擁護支援の重要な要素として、第二期基本計画では「意思決定支援」が明確に位置づけられることとなりました。単に成年後見制度の利用につなげるため、ということではなく、「尊厳のある本人らしい生活を継続することができる社会の実現にも適う」と、普遍的価値を絡めて、普及・浸透の必要性を強く訴えるものとなっています。 施策としては、後見等の担い手にとどまらず、保健、医療、福祉、介護、金融等幅広い関係者や地域住民に意思決定支援の重要性や考え方が浸透するように、研修等を通じた継続的な普及・啓発を行うこととされたほか、「権利擁護支援総合アドバイザー」の育成と活用に取り組むことも盛り込まれました。このアドバイザーは、後見事務に精通した専門職を対象として養成され、都道府県による市町村への「多層的」な支援体制の一翼を担い、市町村に対する必要な助言を行うことが期待されています。 (2)適切な後見人等の選任・交代の推進 意思決定支援の浸透がすすめば、後見人等による不適切な事務は相当解消されることが見込まれます。その際には、家庭裁判所においても意思決定支援をふまえた後見事務について理解が深まり、認識が共有されて、「本人にとってふさわしい後見人等」を選任するために、中核機関等で検討された結果を尊重して後見人等が選任されることや、選任後もモニタリングの場面において、後見人等に対する解任や辞任以外の理由による交代がスムーズにすすむようになることが、大いに期待されます。 (3)権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりの具体化 第一期基本計画では、7つの場面を上流・中流・下流と分けて整理されたものが、第二期基本計画では3つの場面に整理されました。すなわち、「①権利擁護支援の検討に関する場面=成年後見制度の利用前」、「②成年後見制度の利用の開始までの場面=申立ての準備から後見人等の選任まで」、「③成年後見制度の利用開始後に関する場面=後見人等の選任後」とし、それぞれを「支援機能」のあり方から、「権利擁護の相談支援機能」、「権利擁護支援チームの形成支援機能」、「権利擁護支援チームの自立支援機能」とされています。 これは、成年後見制度ありきで相談を受けるのではないこと、また、従来マッチングといわれてきた受任調整について、後見人等が選任されればよいのではなく、後見人等を含んだチームの形成を支援すること、モニタリングにおいては、チームが自立することを支援すること、と具体的にその機能が示されています。いずれの場面においても、社会福祉士や福祉関係者による福祉的視点からの関与が、大いに求められているものと考えられます。 (4)都道府県の役割 新たに盛り込まれた視点として大事なことは、これらの中核機関の役割を区市町村が遂行していくために、都道府県・都道府県社会福祉協議会が果たす役割と責務について強調されていることです。(1)で述べた権利擁護総合支援アドバイザーも、都道府県(都道府県社会福祉協議会)に置かれることが想定されています。 3 福祉関係者に求められる意思決定支援とチーム形成 このように、第二期基本計画は、その理念をそれぞれの地域で実現させていくためのさまざまな施策が盛り込まれたものとなっています。社会福祉士や福祉関係者には、これらを実践していくにあたり、意思決定支援やチーム形成ということに取り組む促進者となることが求められます。 わが国でこれまで公表された意思決定支援に関わるガイドラインは、複数存在しますが、意思決定支援のプロセスのあり方について、「本人が意思決定の主体であり、支援を行う前提としての環境整備、チーム支援、適切な情報提供等が重要である」という点で共通しているといえます。 第一期基本計画を受け、2019年5月以降、最高裁判所、厚生労働省および専門職団体(日本弁護士連合会、成年後見センター・リーガルサポート、日本社会福祉士会)をメンバーとしたワーキング・グループで、意思決定支援に関わる指針の策定に向けた議論が始まり、私も社会福祉士の一人として参加させていただきました。「本人を中心に置くということは、単に物理的なことではない」、「本人の意思決定は、後見人等を含めた支援関係者の関与のあり方から大きな影響を受け、支援関係者自身も本人とのやりとりから影響を受け、本人のみならず支援者自身の変化も促される」、「チームとはただ関係者が集まることではない」、「本人を含めたチームによる話し合いの準備で大切なのは、本人自身の準備である」といった視点を伝え続けてきました。そして、2020年10月に『意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン』が公表され、第二期基本計画はこのガイドラインを含め、これまで複数提示されてきた意思決定支援に関わるガイドラインを整理、周知していくことを施策として打ち出しています。 本人の意思決定を支援するチームの構成メンバーは、公的なサービス提供事業所や提供者だけではなく、本人を支える親族はもちろん、本人の友人・知人、インフォーマルな立場で本人に関与している人々です。すなわち、本人をよく知り、理解すること、コミュニケーションの方法を工夫すること、家族関係や支援者との人間関係、話しやすい環境設定などに配慮すること、本人が理解できる形での情報提供を行うこと、意思や感情の引き出し方を工夫することなどに力を発揮できるメンバーが必要になります。決して、後見人一人でできることではありません。また、親族や本人の近くで本人を長く支えてきた支援者がいたとしても、これらを実行するためには、一人では不可能であり、チームとしての関わりが求められるのです。「意思決定支援は支援者側の支援力によっても、その結果に大きな影響を及ぼす」ことを忘れてはならないと思います。 意思決定支援の場面において、支援を受ける対象が本人であることは皆が共有していることですが、その本人が客体ではなく主体であると視点を切り替えると、気づかされることがあります。 【図】の左側では周辺の支援者だけがチームを構成しており、本人のためによかれと思って支援をしているのですが、本人がその場にいても本人の気持ちに寄り添えず結果として本人不在、支援者本位になってしまうことを表しています。どうしてそのようなことになってしまうかといえば、本人が参加していても「課題を抱える本人」つまり、「課題=本人」と見てしまっていて、本人に変化を促すことで課題を解決しようとしてしまっている可能性があります。つまり、課題の捉え方が支援者主体となっていることが多いといえます。 【図】の右側では、チームの一員、チームメンバーとして本人を捉え、位置づけを見直し、支援者とともに同じテーブルにつき、課題を本人から切り離し、課題だけではなく状況や状態も中心において、共にそれについて話し合っていきます。そうすることによって、本人は課題に対して意向をもち、どうしたいか、どうしたくないかを考え、表現する人として存在することになります。 チームとは、ただ単に本人に関係する支援者が集まることだけでは構築できません。本人とともに共通の目的に向かって共同作業を行う集団がチームであり、初めからチームができているわけではないのです。本人も一緒に意見を出し合い、時にはぶつかり、認め合い、協力してやり遂げる過程を通してチームとして成長していくのです。 4 第二期基本計画実現に向けて職能団体や関係機関、地域に期待される役割 職能団体や関係機関は、その地域における重要な社会資源としてその役割をそれぞれの地域での実践で果たしていくことが求められます。そのために必要なことを一言でいえば、この基本計画を理解し実践に取り組む人材を育成することでしょう。 社会福祉士の専門性は、実践をふまえて意思決定支援への理解を本人や周囲の関係者に伝達すること、そして本人主体で支援の方針を検討することを促進することです。その専門性が活用されるためには、成年後見制度が必要と判断された後から関わるのではなく、早期の相談の段階から第三者的・客観的立場で関わることが重要で、このような実践を行う専門職は、制度につながった後にも定期的にモニタリングを行う際に参画し、方針の変更の検討を促していくことができることになります。 後見人等の担い手を育成している専門職団体は、チームの一員としての後見人等を養成・支援しているのだという意識変革を持ち、地域の中核機関等とともに対応する体制をつくっていくことが重要です。これまで専門職は後見人等を受任するというミクロレベルの実践に注力してきました。これからはミクロレベルの実践を活かし、地域というメゾレベル、国の政策というマクロレベルにつなげていくことが大いに期待されています。また、地域においても専門職の役割を固定化したものととらえず、地域づくりの一員と捉え直していくことをお願いしたいものです。 (※)参考:第二期計画における地域共生社会実現に向けた権利擁護支援の推進 https://www.mhlw.go.jp/content/000913650.pdf (厚生労働省社会・援護局地域福祉課成年後見制度利用促進室) 【マンスリー】2022.3.26 - 4.25 4/8 「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」の調査結果を公表 内閣官房は、日本における孤独・孤立の実態を把握するため、「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」を実施し、その調査結果を公表した。 孤独感やその継続期間、これまでに経験したライフイベント、社会や他人とのかかわり方の満足度に関する「孤独に関する事項」や、外出頻度や外出目的、行動範囲などの「孤立に関する事項」などについて調査を行った。 3/25 男性のための悩み相談を強化 東京都は令和4年4月から、東京ウィメンズプラザにおける「男性のための悩み相談」の対応日数を、従来の週3日から週4日に増やし、男性相談の強化を図る。 〈相談日時〉 毎週月曜日・水曜日・木曜日:午後5時00分から午後8時00分まで 毎週土曜日:午後2時00分から午後5時00分まで (ただし、祝日および年末年始は除く) 〈相談電話番号〉03-3400-5313 3/29 若者向けの性や妊娠などの健康相談支援サイト「スマート保健相談室」を公開 厚生労働省は、若者向けの健康相談支援サイト「スマート保健相談室」を公開。SNSの普及などにより性に関するさまざまな情報がある中、男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を促すプレコンセプションケアを推進するため、からだや性・妊娠などに関する正しい情報や相談窓口などを紹介する。 「スマート保健相談室」 https://youth.mhlw.go.jp/ 4/22 「災害から地域の人びとを守るために~災害福祉支援活動の強化に向けた検討会報告書~」を公表 全国社会福祉協議会は、「災害から地域の人びとを守るために~災害福祉支援活動の強化に向けた検討会報告書~」を公表した。 令和3年8月に全国社会福祉協議会が設置した「災害福祉支援活動の強化に向けた検討会」において、被災者が何を求めているかという被災者ニーズを中核に、検討が行われてきた。報告書では、「平時から災害に備え、被災者への寄り添い支援をしてくことが重要であること」などを提言するとともに、災害救助法等を改正し、「福祉」の位置づけの明確化を図るよう提言している。 【連載】10 地域における多文化共生のいま~東京で暮らす外国にルーツのある方たちをとりまくさまざまな活動・現状と課題~ 日本に住む外国にルーツのある方は、言葉や文化、生活習慣の違いなどから、普段の暮らしや地域住民との関係の中でさまざまな困りごとを抱えています。これを解決するために、都内では日本語教室や学習支援、相談支援、外国にルーツのある方と地域住民が相互理解を深めるための交流など、多くの取組みが行われています。 本連載では、同じ地域に暮らす一員である彼らの日常生活のサポートや住民同士の交流を深める取組みを紹介し、多文化共生をすすめる各地域での活動から見える現状や課題を発信していきます。 今号では、主に在日エチオピア人の生活支援活動や日本人との交流事業などを行う団体の取組みを紹介します。 言葉が違うとしてもみんな同じ地域で暮らす住民 NPO法人アデイアベバ・エチオピア協会 東京都葛飾区で在日エチオピア人の生活や就労に関する支援事業のほか、日本とエチオピアの文化交流事業を行っている団体。2009年から活動を開始し、2010年にNPO法人化。理事長のウォールデマリアム・アベベ・ザウガさんをはじめ、エチオピア人や日本人の5名の理事がスタッフとして関わっている。 *NPO法人アデイアベバ・エチオピア協会ホームページ https://adeyabebaethiopia.webs.com/ 理事 アベベ・サレシラシェ・アマレさん 東京都在住のエチオピア人は、2022年1月1日時点で、185人。そのうち102人が葛飾区に住んでいます(※)。NPO法人アデイアベバ・エチオピア協会(以下、協会)で理事を務めるアベベ・サレシラシェ・アマレさんは、1996年に留学生として来日しました。 事業の内容 協会は、主に5つの事業を行っています。一つ目は、在日エチオピア人のネットワークづくり事業です。日本全国にいる在日エチオピア人のネットワークを形成し、災害時の避難場所や、仕事の情報など、さまざまな情報を届けています。ほかにも、自転車のルールが改定された時には、アムハラ語に翻訳をしてFacebookで拡散しました。アベベ・サレシラシェさんは「投稿してみると『変わっていたなんて知らなかった』と反応があった」と言います。 二つ目は、在日エチオピア人の人権・生活・就労支援事業です。家を探したり、病院に同行して通訳をしたり、食料や生活用品に困っている人への支援をしたりしています。協会だけのサポートにとどまらず、他団体につなぐこともあります。 あわせて、毎週日曜日に協会の事務所で日本語支援も実施しており、5名程度が参加しています。エチオピアから来た中学生には、学校だけでは日本語支援が十分ではなかったので、協会でもサポートをしたことがあります。その子は高校の入学試験に無事合格し、春から高校生になりました。他団体とも連携しており、他区で活動をしている団体につないだ学生は、そこで日本語を学び、専門学校に進学することができました。アベベ・サレシラシェさんは「分からなかった日本語がだんだんと分かるようになって、さまざまな道にすすんでいる姿を見ると、活動をやっていて良かったと思える」と話します。 三つ目は、エチオピアと日本の文化・スポーツ交流事業です。新型コロナが流行してからは実施できていませんが、毎年3回、交流会を開催していました。エチオピアの正月である9月と、日本の正月の1月、そして5月に、エチオピアの料理をつくったり、ダンスやコーヒーセレモニーなどを披露したりしていました。当初はエチオピア人だけだったのが、最近は参加者の約6割が日本人で、多い時には100人ほどが参加することもありました。 地域のお祭りやイベントにも参加したり、大学のイベントでエチオピアの歌やショーを披露したりしたこともあります。事務所がある葛飾区四ツ木の町内会にも所属しています。地域の盆踊りに参加し、その際にはエチオピアの歌で盆踊りをしました。 アベベ・サレシラシェさんは「このような交流の場があることで、多くの日本人とつながっているという気持ちを持つことができている。この地域の日本人住民の皆さんは、ここに住んでいるエチオピア人のことを知ってくれているので、地域の一員として生活ができている」と、交流事業の大切さを話します。また、さまざまな団体とつながることもでき、「現在は新型コロナの影響でほとんどのイベントが中止となっているが、これからも地域住民やボランティアの方、他団体とつながり続けられたら良いと思っている」と言います。 四つ目は、エチオピア本国の人権・貧困層支援事業で、エチオピアの子どもたちに、鉛筆や、修理した車いすを送っています。衛生面や教育面での支援をより手厚くできるよう、計画しています。 五つ目は、日本とエチオピアの企業紹介事業で、今後取組みを強化していく予定です。 活動の中で感じること この活動をしていて良かったと感じるのは、「日本で暮らすエチオピア人が誰にも相談できないことを、私たちを信頼して相談してくれること。もっと頑張っていこうという活動のエネルギーになっている」と、アベベ・サレシラシェさんは言います。 一方で、協会のスタッフは普段は別の仕事をしているため、迅速なサポートができないことがあります。アベベ・サレシラシェさんは「『どうしてすぐに助けてくれないのか』と思われることもある。常にスタッフが事務所にいるわけではないので、大変なこともあるが、できる限り仕事の休みなどを調整して対応していきたいと思っている」と、活動への思いを話します。 お互いに歩み寄る 協会が文化・スポーツ交流事業に取り組む一番の目的は、「日本の社会でエチオピア人が日本人と一緒に暮らしていくため」です。アベベ・サレシラシェさんは「私たちのような団体を『エチオピアコミュニティ』と表現されることもあるが、そうは思っていない。コミュニティと固定することなく、日本人住民と同じ地域社会に住んでいるという気持ちでいる」と言います。続けて「コミュニティという固定された場所だけでは、暮らしている国の言葉や文化を学ぶことができず、普段の生活でさまざまな問題が増えてしまう。実際に、私自身も葛飾区のお祭りやイベントに参加して、多くのことを学んだ」と話します。 外国人が家を借りる時、「外国人」という理由で断られることがまだあるといいます。アベベ・サレシラシェさんは「契約についてや、入居後に守るべきルールなどをそもそも理解できないのではなく、言葉のせいで分からないだけかもしれない。気を付けてほしいことについてのブックレットを英語や多言語で作成するなど、少しの工夫と労力で解決できることもあると思う」と指摘します。続けて「そのようなブックレットがすでにあるとしたら、実際に外国人と接する現場で活用してもらえるようになってほしい」と言います。 また、「日本語支援を行っている団体はたくさんあるが、難民申請中の人などを対象にした支援は少ないように感じている。申請中の彼らは仕事に就けず、空いている時間が多い。そのような彼らに対して日本語支援をすることができれば、申請が通った後の生活がよりスムーズになるのではないか」と、アベベ・サレシラシェさんは言います。 「お互いに理解しようとする」「一緒に暮らしていく」には言葉の問題はつきものです。しかし、アベベ・サレシラシェさんは「『言葉の壁』と言われがちだが、私は『言葉のカーテン』だと思っている。壁ではないので、オープンにすることができる。言葉がすべて分からなくても、それぞれの国の料理や文化、スポーツを通じて交流し続けることで、分かり合えるようになる。そのような舞台をつくれるよう、これからも活動を続けていきたい」と、今後の意気込みを話します。 (※)東京都「東京都の統計 外国人人口」(令和4年) https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/gaikoku/2022/ga22ef0300.pdf 交流会で出したエチオピアの伝統料理 地域のお祭りに参加した時の様子 【東社協発】 研修受付システム「けんとくん」にご登録ください! 東京都福祉人材センター研修室(以下、研修室)では、都民を対象とする都内に所在地がある事業所(「都外施設」を含む)を対象として、さまざまな研修を実施しています。新型コロナの感染状況に関わらず受講しやすいよう講義・個人ワーク中心の研修は「収録型WEB研修」で実施します。配信期間中は、毎日24時間、複数回、途中からでも視聴することができるので、事業所やご自身の都合に合わせて受講可能な研修スタイルです。また、グループワークを含む研修は、Zoomを活用して実施します。  研修を受講するには、研修受付システム「けんとくん」に事業所登録を行う必要があります。登録された事業所には、最新のご案内がメールで届きますので、まずは、「けんとくん」のトップ画面の「新規団体登録」をクリックし、ご登録いただきますようお願いいたします。 「けんとくん」トップ画面 「新規団体登録」をクリック https://www.kentokun.jp/ 研修室の「令和4年度研修日程一覧」は東社協ホームページでご案内しています! 令和4年度に実施する研修のテーマや募集・実施時期について、「東社協ホームページ」でご案内していますのでご覧ください。 「東社協ホームページ」研修事業のページから「令和4年度研修日程一覧」をクリック https://www.tcsw.tvac.or.jp/activity/kensyu/ 【お問合せ】東京都福祉人材センター研修室 TEL:03-5800-3335 けんとくん 検索 東社協 新会員のご紹介 ▽東京都高齢者福祉施設協議会 フェニックス杉並 ▽保育部会 勝どきちとせ保育園/芦花の丘かたるぱ保育園/小石川ちとせ保育園/本郷ちとせ保育園/グラン仙川ちとせ保育園/文京ガーデンひかり保育園/清瀬市立第7保育園/あそびの森ゆう ▽知的発達障害部会 高砂発達支援センター/生活学館足立校/くにたち発達支援センター ▽情報連絡会員 相談支援室 かすみそう/日中サービス支援型グループホーム やえざくら/関東多胎ネット/平得わらべ保育園/宮島わらべ保育園/大南つぼみ保育園/緑町聖ヨハネケアービレッジ/世田谷区立松原けやき寮/栄光ひまわり保育園/山崎学童保育クラブ/児童デイサービス南風/児童デイサービス南風 浦安/グループホームこのみ/放課後等デイサービスみのり/ののはな保育園/府中ひばりの森保育園 施設長・先輩職員のための定着応援ハンドブックを発行しました 福祉施設・事業所の職員定着を「応援」したい。その思いを込めて本冊子を作成しました。 「令和2年度介護労働実態調査」(介護労働安定センター)によると、離職した介護職員のうち、勤続3年未満の職員が全体の約6割を占めているというデータもあり、新任職員の定着が介護業界、ひいては福祉業界全体の課題の一つであることが窺えます。 こうした状況をふまえ、東社協では、未経験者を含む「新任職員の定着支援」が人材不足解消の一助となると考えました。 冊子では、新任職員のよくある困りごと事例と解決のためのヒント、新任職員・未経験者の定着に向けて取り組んでいる施設の事例、職員の育成・定着のために活用できる制度を紹介しています。 主に福祉施設の施設長、先輩職員の皆様にお読みいただき、職員定着に向けた取組みを振り返る機会として活用していただければ幸いです。 ★好評発売中!ご注文はこちらから TEL:03-3268-7185 (総務部企画担当図書係) 東社協ホームページ「福祉の本」 福祉実践事例ポータルサイト「ふくし実践事例ポータル」随時更新! ★「福祉の実践事例が知りたい」 ★「活動のヒントになる取組みを知りたい」 http://fukushi-portal.tokyo/ 福祉広報の取材や調査研究のヒアリングなどを通じて東社協が把握した「さまざまな主体による実践事例」を紹介しています。 東社協メールマガジン 毎週金曜日配信! ★「福祉制度や関連情報の動きを定期的にチェックしたい」 https://www.tcsw.tvac.or.jp/php/contents/mailmagazine.php 最近の福祉制度や関連情報の動向や、東社協のホームぺージ更新情報などをコンパクトにお届けしています。 【明日の福祉】 夢中になれるアートや学びを、子どもたちの「生きる力」に 松本惠里さんは、病気や障害などのために長期入院せざるを得ない子どもたちに、音楽や美術などの参加型のアートを定期的に届ける活動をしています。さらに重症心身障害児・者の在宅訪問学習支援にも力を入れています。 Eri Matsumoto 松本 惠里さん 認定NPO法人スマイリング ホスピタルジャパン代表理事 外資系銀行を経て、2005年から特別支援学校の院内学級に英語教員として勤務。2012年、現場で得た気づきから、長期入院している子どもたちにアートを届ける活動を始め、同年末に法人化。その活動は現在、全国45の病院や施設に広がっている。著書に『夢中になれる小児病棟』(英治出版)。 困難を乗り越えて教員免許を取得 私は銀行勤務を経て、子育て中に大学の通信課程で英語の教員免許を取得しました。通信課程在籍時に交通事故で重傷を負い、長期入院を強いられた時は、孤独で放り出されたような気分になり、復学をあきらめかけたこともありました。当時のレポートは手書きで、字を書くことすらままならなかったからです。しかし、大好きな子どもたちに英語を教えたいという気持ちが勝り、続けることを決心しました。 中学校の教育実習では、事故の後遺症で私の右腕が上がらないことに気づいた子どもたちが何かとかばってくれました。私が子どもたちに何かを教えたというより、子どもたちから人を支えるとはどういうことかを教わったように思います。 院内学級での経験が活動のヒントに 念願の教員となり、最初に配属されたのが病気や障害のために長期入院せざるを得ない子どもたちのための院内学級でした。そこで初めて、成長期にある子どもたちが狭い病室で一人で病気と闘っていることを目の当たりにして衝撃を受けました。同時に、なぜ幼い子どもたちがこんな思いをしなければならないのか……という怒りも湧いてきました。 院内学級では勉強のほかにも音楽鑑賞会や遠足などいろいろな活動があります。子どもたちと接していると、何かをつくっている時や歌っている時の表情が普段とまったく違うことに気が付きました。気持ちが解放されて、入院していることを忘れているのだろうなと感じました。ものづくりや音楽を中心に置いて、子どもたちと私たちとで挟み込むことで、場の空気が共有されていきます。そうすると子どもたちはとても生き生きとして自分らしくなっていき、お互いの心も通い始めます。 このような経験を重ねるうちに、子どもが主体となって、夢中でアートを楽しむような時間をたくさん提供したいと思ったのが、活動を始めたきっかけです。 生涯にわたる自信や生きる力に 子どもたちは病室で多くの時間を過ごしますが、プレイルームではアートを媒介として、ボランティアのアーティストと一緒にものづくりをしたり、ほかの子の手伝いをしたりと、他者との関わりや友達との交流が生まれます。病気になって自信を失っている子どもも多いので、自分が活躍できる場所や、人との関わりの中で支え合えるような空気が自然とできているのが良いと思っています。 ある病院では、子ども、親、医療従事者、アーティストが一緒になって、ウォールアートの共同制作をしています。病棟の壁にシンボルツリーを貼って、そこに果物のメッセージカードを貼り付けていきます。がんなどで移植が必要な場合、感染症対策のため親との面会もできず、子どもたちは長期間、一人きりで過ごさなければなりません。その環境でどれだけ頑張ったかを書き、さらに次に入ってくる子どもたちに向けてエールを書くのです。 自分の経験を活かして人の役に立てるということを、入院中だけではなく生涯にわたる自信や生きる力にしていってほしいです。また、頑張ることができたという経験が、新しい試練にぶつかった時に立ち向かっていくきっかけになったら良いと思います。 在宅のさまざまな課題にも取り組む 在宅の障害児・者にアートや学習機会を届ける活動にも取り組んでいます。特に重症心身障害の場合は、見た目の重度さのために本人の「分かる力」が過小評価されがちですが、豊かな内面を持っていますし、環境が整えばできることは多くあります。 また、学齢児などは退院後に週6時間の訪問学級がありますが、振替がないため、体調不良でお休みしてしまうとそれきりです。さらに、肢体不自由の子どもへの指導は技術が必要で、特に卒後の学習の機会がほぼないことも課題です。 在宅訪問学習支援の「学びサポート」は、学習時間の不足を補い、子どもたちの「分かる力」を信じてさらに引き出していくための活動です。現在は9名の支援員が、既存の教材を活用したり、一人ひとりの状態にあった教材を開発しています。ここでも、すべての子どもが夢中になれる仕掛けを工夫しています。 子どもたちに寄り添った活動を コロナ下では思うように病院で活動できないため、YouTubeチャンネルを開設して動画を配信しています。アーティストが工夫して、できるだけ参加型のコンテンツにしています。2021年6月からはライブ配信も始めて、5~6か所ですが双方向のやり取りができるようになりました。 これまでの活動の中で大切にしてきたことは、三方良し、ウィンウィンの関係です。ボランティアも受け入れる側も楽しく、気持ちよく活動できれば持続可能になっていくと思います。 人知れず頑張っている子どもたちに思いを寄せて、これからも活動を続けていきたいです。 病院内での活動の様子 【アンテナ】4月26日(火)時点の情報です。感染症拡大防止のため、イベントが中止になる可能性があります。詳細は各団体にお問合わせください。 助成金 大同生命厚生事業団2022年度 活動助成 (1)シニアボランティア活動助成 シニア(満60歳以上)のボランティア活動を支援することにより、シニアのボランティア活動の振興と社会福祉の向上に寄与することを目的とする。 社会福祉の推進に役立つボランティア活動を行っているか、または行おうとするシニア(満60歳以上)が80%以上のグループ(NPO法人を含む)。ただし、過去5年以内(2017~2021年)に当財団の助成を受けたグループは除く (2)ビジネスパーソンボランティア活動助成 ビジネスパーソンのボランティア活動を支援することにより、ビジネスパーソンのボランティア活動の振興と社会福祉の向上に寄与することを目的とする。 社会福祉の推進に役立つボランティア活動を行っているか、または行おうとするビジネスパーソン(会社員、団体職員、公務員、経営者・個人事業主)が80%以上のグループ(NPO法人を含む)。ただし、過去5年以内(2017~2021年)に当財団の助成を受けたグループは除く (1)(2)共通 (1)(2)合わせて原則1000万円以内。1件原則10万円 5月25日(水)消印有効 所定の申込書を郵送 (公財)大同生命厚生事業団 事務局 〒550-0002 大阪府大阪市西区江戸堀1-2-1 大同生命大阪本社ビル内 06-6447-7101 06-6447-7102 https://www.daido-life-welfare.or.jp/ 2022年度 子ども育成支援事業 6月30日(木)必着 将来の担い手である子どもの健全な育成に向け、支援活動を過去3年以上にわたって続けていて、過去2年間に当事業団から助成を受けていない団体で、その内容が社会のニーズに応えていて、計画に実現性があるもの 上限50万円 所定の申請書と必要書類を郵送 (社福)読売光と愛の事業団・子ども育成支援係 〒100-8055 千代田区大手町1-7-1 読売新聞東京本社内 03-3217-3473 03-3217-3474 hikari-ai@yomiuri.com https://www.yomiuri-hikari.or.jp/ 第20回 配食用小型電気自動車 寄贈事業 6月10日(金)必着 高齢者向けに配食サービスを行っている民間団体に対し、配食用小型電気自動車を寄贈 以下の3つの条件を満たす団体。①高齢者を主な対象とし、原則として、1年以上継続して、週1回以上、調理・家庭への配食・友愛サービスを一貫して行っていること②法人・任意団体を問わず、非営利の民間団体であること③現在の活動を継続するにあたって、配食用の車両が不足しており、本寄贈によって運営の円滑化が見込まれること 配食用小型電気自動車1台 所定の申請書に必要事項を記入の上、都道府県・指定都市または市区町村社会福祉協議会等の推薦を受け、必要書類を添付し、推薦団体経由または直接送付 (公財)みずほ教育福祉財団福祉事業部 〒100-0005 千代田区丸の内1-6-1 丸の内センタービルディング 03-5288-5903 03-5288-3132 fjp36105@nifty.com http://www.mizuho-ewf.or.jp 清水基金2022年度助成事業 (1)NPO法人助成事業 障害者の福祉増進を目的として運営されている第二種社会福祉事業において、利用者に必要な機器・車輪・建物等のうち必要案件を満たすもの 4月時点でNPO法人設立後3年経過し、開設後1年経過した事業所で、2020年度以降、同事業において助成を受けていないNPO法人 50~700万円 (2)文化芸術活動特別助成事業 障害者の文化芸術活動(美術・演劇・音楽・舞踏等)に必要な道具・楽器・機器、活動成果をまとめた出版物等 4月時点で開設後1年経過した社会福祉法人または、4月時点でNPO法人設立後3年経過し、開設後1年経過したNPO法人で、2020年度以降、当事業の助成を受けていない法人 30~200万円 (1)(2)共通 6月30日(木)消印有効 ※郵送受付のみ 所定の申込書を6月20日(月)までに郵送または窓口で請求の上、申請 (社福)清水基金 〒103-0027 中央区日本橋3-12-2 朝日ビルヂング3階 03-3273-3503 https://www.shimizu-kikin.or.jp/ 講座・シンポジウム 第58回社会福祉セミナー 7月2日(土)、3日(日)※Zoomを使用したオンライン開催 600名(定員になり次第締切) 無料 鉄道弘済会主催・全国社会福祉協議会後援による第58回社会福祉セミナー。「社会福祉における『参加』を問い直す」を総合テーマに、藤井克徳氏(日本障害者協議会代表)による基調講演および、テーマ別に3講座が行われる 6月23日(木) HPより (公財)鉄道弘済会 社会福祉セミナー係 03-6261-2790 03-3815-8978 fukushi-seminar@kousaikai.or.jp 【資料ガイド】 会議資料 第3回生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会ワーキンググループ資料(厚生労働省/4月) 第116回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料)(厚生労働省/4月) 調査結果 「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和3年度)」の結果(速報)(文部科学省/3月) 「外国人の子供の就学状況等調査(令和3年度)」の結果(文部科学省/3月) 放課後児童クラブの安全対策に関する調査(地域計画調査)<全国的課題に関する通知>(総務省/3月) 令和2年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)(厚生労働省/3月) 「これからの特別支援教育を支える学校施設の在り方について」報告書(文部科学省/3月) 令和3年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果(厚生労働省/3月) 地域コミュニティに関する研究会報告書(総務省/4月) 「福祉サービス第三者評価事業の改善に向けて ~福祉サービス第三者評価事業のあり方に関する検討会報告書~」(全国社会福祉協議会/4月) 【くらし】 日本語と福祉が私のテーマ 都内の大学で留学生に日本語や論文の書き方を教えている中国内モンゴル自治区出身のアルタンボリグさんに、日本語や福祉を学んだきっかけ、日本の社会について感じていることを伺いました。 来日のきっかけ 中国の内モンゴル自治区で生まれ、大学まで暮らしていました。外国を意識したきっかけの一つは、学校の先生をしていた父の「将来は外国に行ったり留学したりすることが普通になるだろう」という言葉でした。大学卒業後、友人の誘いや内モンゴルから日本への留学を後押しする当時の流れもあり、2002年に初めて日本に来ました。 最初の一年半は日本語学校で学びました。次の進路を担任の先生に相談した時「今後アジアにとって福祉は重要になると思うので、一つの選択肢として考えるのはどうか」とアドバイスをいただきました。加えて、小さい頃、私の家も裕福ではなかったものの、食べ物に困っている人が家に来ていました。「何でこういう状況になってしまう人がいるんだろう」と思っていたこともあり、福祉を学ぼうと決めました。 そのため日本の大学院にすすみ、貧困をテーマに研究をすすめました。 福祉と日本語への関心 大学院を卒業後、内モンゴルに戻り、大学教員として日本語とソーシャルワークを教えました。日本語はとても好きな言語なので、たくさんの人に知ってもらいたいという思いもあり、この二つの授業を持ちました。これらのテーマは今でも私の中でつながっています。 2019年に妻の仕事の関係で再来日し、現在は都内の大学で留学生に日本語能力試験対策や論文の書き方等、日本語の指導をしています。 生活者としての外国人へのサポートの充実を アジアの他の国に比べると、日本の社会保障等の福祉政策は整備されていると思います。一方で住んでいて思うことは、労働者としての外国人を受け入れる政策に比べ、生活者としての外国人へのサポートが十分整備されていないのではないか、ということです。 例えば、外国にルーツのある子どもの教育です。このテーマはとても重要だと思います。再来日した時、私には小学5年生になる子どもがいました。子どもの日本語のレベルを考えると、一つ二つ下の学年から入学できた方が子どもにとって良いと考えました。しかし、学校に問い合わせたところ「決まりなので学年を下げることはできません」と断られてしまいました。国として外国人を受け入れようとするのであれば、もう少し柔軟な対応も必要ではないかな、と感じました。 多文化社会に向けて私ができること 日本では2010年代頃から「多文化社会」という言葉がよく使われるようになりました。 今、日本は多文化社会に向けて変化する過程にいるのだと思います。そして、労働力不足等を考えると、今後、日本は外国人を受け入れざるを得なくなるでしょう。福祉の分野では多文化共生の視点を持ったソーシャルワークが必要になると思います。 また、日本では外国人の高度人材確保をすすめていますが、入社後5年程度で辞めていく人が多くなっています。その原因の一つは日本独自の決まりごとやしきたりが多く、職場や住む地域で安心して生活できていないからではないでしょうか。一住民として地域に受け入れられているという感覚があれば、この国に対して恩返しをしていこうという気持ちにつながると思います。 私は日本でたくさんの人にお世話になりました。その恩を何らかの形で返したいと思っています。私ができることは、これまでの経験を活かして、留学生や日本で安定した生活を送りたい外国人に、日本語や生活に関する悩み相談やアドバイス、地域で生きていくために必要なことを伝えていくことだと考えています。 多文化社会の実現のためには互いを尊敬し、歩み寄れるような環境づくりが必要ではないでしょうか。今できることを通して日本人と外国人の間をつなげることができたら嬉しいです。 アルタンボリグさん ゼミにて学科の学生たちと 【本】 NEW YOSUGA ~リアルな声から見えてくる介護の現場~ 本書は、東京都内の特別養護老人ホームで働く現役の介護職員を対象に実施した「介護の魅力アンケート」の回答を紹介しながら、介護の仕事の魅力を伝えるべく作成したものです。 尊厳や生命にも関わる介護の専門性の高さ、職場内や利用者とその家族など人間関係の葛藤や感動、若手の介護職員が悩み考えながら一歩ずつ前進する姿、ひたむきに高齢者と向き合う姿が浮かび上がってきます。日々邁進している現役の介護職が、自分たちの言葉で、介護の仕事の魅力を伝えます。 ◆規格 A5判/60頁 ◆発売日 2022.4.4 ◆定価 495円(本体450円+税10%) NEW 見てみよう、聞いてみよう 未来を拓く福祉のしごと 福祉を知りたい中学生や職場体験の事前・事後学習の場面など、幅広く活用できる冊子です。 特別養護老人ホームや障害者支援施設など、さまざまな福祉の分野の職場で働く職員6名に取材をし、仕事の魅力ややりがい、職場での1日の仕事内容を紹介しています。 ほかにも、職員の方々の福祉との出会いや、現在の仕事の就くまでの流れなども分かりやすくまとめました。 職場体験の事前学習の際や、中学校での福祉教育・福祉学習の副教材として、ぜひご活用ください。 ◆規格 B5判/36頁 ◆発売日 2022.4.13 ◆定価 440円(本体400円+税10%)