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社会福祉法人の社会貢献・地域貢献(2015年4月号)

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地域で暮らす障害者の「働く」を支える―社会福祉法人大田幸陽会の取組み

しょくいん しゃしん

佐藤功 Sato Isao
理事・事務局長(中央右)

石塚春好 Ishizuka Haruyoshi
本部事務局次長(中央左)

大迫正晴 Osako Masaharu
理事・さわやかワークセンター所長(右)

小林清一 Kobayashi Seiichi
理事・のぞみ園施設長(左)

今、社会福祉法人の社会貢献・地域貢献活動が注目されています。本連載では6回にわたり様々な分野で取組みを行っている社会福祉法人の活動をご紹介します。第1回では、障害者の就労支援の制度的枠組みができる前から20年間、地域で生活する障害者の再就職や就労の支援をすすめてきた大田幸陽会の取組みを紹介します。

社会福祉法人大田幸陽会の「さわやかワークセンター」は現在、障害者総合支援法に基づく2事業を行っています。1つは就労を希望する65歳未満の障害者で、一般企業への就職に向けた訓練等を行う就労移行支援事業(定員6名)です。もう1つは障害により企業等に就職することが困難な人に、働く場所を提供する就労継続支援B型事業(定員24名)を実施しています。

大田幸陽会は、こうした障害者の就労支援の法的枠組みができる前から、地域で暮らす障害者一人ひとりに寄り添った就労支援を行ってきました。

離職障害者支援をはじめる

大田幸陽会が設立された平成5年は、「平成不況」の最中で、法人がある大田区でも企業を辞めざるを得ない障害者が増えていました。「仕事を辞めた障害者が再び一般企業で就労できるためのUターン支援の場が必要」と考えていた大田幸陽会は、大田区と協議を重ね、翌年の平成6年に区独自の緊急対策として柔軟に事業を実施する「さわやかワークセンター」を法外の中間的就労の場として立ち上げました。

設立当初は趣旨を理解する親の会の会員が援助者となり、スタートしました。離職した障害者には、それぞれの能力に見合う仕事の量と質の確保が必要でした。そこで大田区の理解を得て、区立公園や施設の清掃作業等の一部を受託し、清掃を柱に作業を組み立てました。「障害者の再就職支援は施設内で行うだけでなく、地域に出て、地域の中で行おうという気づきがあった」と事務局長の佐藤功さんは話します。賃金も会社で雇用された際の額と大きな差が出ないように月6万円を支給しました。そして、開始から1年目には利用者9名中3名が再就労できました。

1か所で抱え込まない

当初は緊急対策として始まった離職障害者への支援でしたが、働く意欲はありながら企業を離職せざるを得なかった障害のある人たちへの就労支援のニーズは多いことがわかりました。しかし、離職障害者への支援は作業の提供だけでなく、一人ひとりのニーズに寄り添った支援、企業側との調整、再就職先の検討、就職後のフォローアップなど幅広い対応が必要でした。「親たちの草の根の力、法人職員のかかわり、区の理解、そして地域の関係者との制度を超えた結びつきが大事だった。一つの施設で抱え込まないようにしていた」と佐藤さんは話します。

また、個々の学校や施設で障害者の就職先を開拓するには限界があるため、「大田区では、区内の関係機関が連携して障害者の就労を支援する独自のネットワークづくりをしている。大田区方式と言っても良い。大田幸陽会も一員として参加している」と本部事務局次長の石塚春好さんは説明します。こうした重層的な連携を社会資源として活用することで、一機関だけではつながることのできない地域の多様な企業から仕事を受託することができ、離職障害者の就労の場を広げてきました。

事業所から積極的に提案する

さわやかワークセンターも、離職障害者の再就職支援のため、様々な工夫を行っています。例えば、利用者の再就職にあたり、週5日の勤務という企業側の求めに対し、その利用者は通院で平日1日休む必要がありました。そこで、さわやかワークセンターは区のシルバー人材センターに週1日分の仕事ができる人材を探してもらうよう調整し、利用者も希望の日数で採用され、企業側も目的を達成できました。


大田区役所1階「カフェコスモ」。さわやかワークセンターの利用者が接客や厨房に携わる。
区内の障害者施設作成のコップやトレーを使う等の連携をしている。

また、体調不良で利用者が休職した際、本人が行っていた業務を休職中は、さわやかワークセンターで受託し、他の利用者でチームを作り対応することを企業に提案しました。これにより企業は欠員なく業務を遂行でき、チームに入った利用者たちは社会で働く経験を積むことができました。休職した本人はその間、さわやかワークセンターに通って復職に向けた作業を少しずつ行い、3か月後には職場復帰できました。「私たちは企業に対して単に『仕事をください』ではなく、『このかたちで仕事をするのはどうですか』と方法も含めた提案をしている。障害のある人とともに働く方法を積極的に提案することで、本人にも企業にもプラスになるよう工夫している」とさわやかワークセンター所長の大迫正晴さんは話します。また、長年、就労支援に携わってきたのぞみ園施設長小林清一さんは、「すぐ職場に戻れる人も時間をかけて復職を目指す人もいるが、一貫して『会社で働くこと』を意識した環境づくりをしている」と話します。

こうした取組みを20年続けた結果、95名の利用者のうち63名が就労できました。「これまで築いてきた法外の支援のしくみに制度が追いつき、まず平成19年さわやかは自立支援法の下で法内化し、平成25年には就労移行支援と就労継続支援B型に多機能化した。法外事業が制度化され安定した運営を行えるようになったら、再び新たな分野に展開する。このサイクルで今後も尺取虫のように少しずつ取組みを広げていく」と大迫さんは話します。

地域を耕し、ニーズを発見する

「大田幸陽会は入所施設がないこともあり、障害のある方が地域での生活が続けられることを目的に活動している。地域の中で関わることで課題やニーズを見つけられる」と佐藤さんは話します。社会福祉法人として地域のニーズに応えるためには、障害者本人に寄り添い、本人が作る社会との接点にかかわり、住民や企業、行政等の多様な関係者に積極的に働きかけることで地域を耕し、課題解決を目指す「まさにソーシャルワークそのもの」と佐藤さんは考えます。

現在は障害者総合支援法に基づく相談支援を事業の中心に置き、制度の枠組みでは収まらない様々な地域の課題と向き合っています。今後はグループホームの増設をはじめ、高齢化する障害者とその家族に対する支援、地域で一人暮らしに近い形で生活できるサテライト型住居の展開など、アイディアを組み合わせながら次なる取組みを検討しています。

障害者支援分野は措置から契約、障害者総合支援法へと変化してきました。こうした動きの中での社会・地域貢献活動は、日頃から継続的に地域づくりに関わることにより、その地域のニーズにあった活動につながります。

 まごめこうようさい がぞう
神輿で町を練り歩く、まごめ園「まごめ幸陽祭」恒例のかっぱのパレードの様子。
大田幸陽会の施設祭りは地域の町会・関係団体が実行委員となり町ぐるみで取組む。

社会福祉法人大田幸陽会

平成5年に大田区知的障害者育成会(親の会)が母体となり設立。
現在、障害者の就労支援、生活介護、グループホーム事業、サービス付高齢者向け住宅、相談室など19施設・事業所を運営。その一事業として「さわやかワークセンター」を運営。

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月刊「福祉広報」

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