社会福祉の課題の解決や福祉サービス向上などを目的として幅広い活動を行っています

災害関連情報

MENU

ホーム > 地域のニーズにこたえる > 社会福祉法人による取組み > 居場所づくり > 人への信頼感を回復するかかわり

社会福祉法人による取組み

  • 居場所づくり
  • 地域との連携
  • 学習支援

 

人への信頼感を回復するかかわり

社会福祉法人新宿区社会福祉事業団 母子生活支援施設かしわヴィレッジ(新宿区)

かしわヴィレッジの様子

母子生活支援施設かしわヴィレッジは、退所した子どもや地域の子どもたちを対象に無料学習塾「かしわ塾」を開催しています。職員とともに大学生ボランティアが子どもに寄り添い学習をサポートしています。また、退所者や地域の子どもが集まり同じ食事を食べる「ちゃーはんの会」を開催しています。退所後も遊びに来たくなる施設をめざし、人とのつながりを通して「人間関係って捨てたもんじゃない」と伝えています。

平成28年5月27日掲載

母子生活支援施設かしわヴィレッジは、退所した子どもや地域の子どもたちを対象に無料学習塾「かしわ塾」を開催しています。職員とともに大学生ボランティアが子どもに寄り添い学習をサポートしています。また、退所者や地域の子どもが集まり同じ食事を食べる「ちゃーはんの会」を開催しています。退所後も遊びに来たくなる施設をめざし、人とのつながりを通して「人間関係って捨てたもんじゃない」と伝えています。

かしわ塾の様子

人への信頼を回復していく支援

母子生活支援施設に入所する子どもの多くは、虐待された経験や、親のDV場面を目撃しています。人生の初期に親との関係につまずき、他者を信頼し頼るという体験をしていない子どもが多くいます。それでも子どもたちは、「家族から大切にされたい、愛されたい」という気持ちを根底には持っています。かしわヴィレッジ施設長の渋谷行成さんは「濃密な人間関係で起きた出来事は、濃密な人間関係の中でしか癒されない」と話します。入所する前の子どもたちは、失敗が許されない生活環境にいました。失敗すると暴力を振るわれたり、無視されてきたのです。母子生活支援施設の2年間の生活や退所後のかかわりの中で、成功もするけど失敗もする、それでも自分を受け入れてくれる人間関係を育んでもらう、その積み重ねを経ることで人への信頼を回復していきます。

また、渋谷さんは「DVを目撃した子どもは『親を守ることができなかった』という負い目を抱え、自己肯定感を持ちにくくなる」と話します。「大切な人さえを守ることができなかった弱い自分」という気持ちをDVを目撃した子どもは感じるのです。「子どもが大人(母親)を守れないのは仕方ないことだが、子どもはそうは思わない。大切な人を守れなかった気持ちはずっと続き、人生最大の辛いできごと」と渋谷さんは、子どもが感じる気持ちを代弁します。

高校進学を支える無料学習塾「かしわ塾」

かしわヴィレッジでは、原則2年間で自立をめざしています。入所中は、アットホームな環境のなかで「人とつながる」ことの心地良さや喜びを体験するとともに、人間不信・大人不信を払拭しています。しかし、その短い期間で、虐待された経験やDVを目撃した経験からくる影響やこころの傷を癒すのは難しく、退所した後も継続した支援が必要です。渋谷さんは「社会に出てつまずいたときに帰って来られる場所と頼れる場所をつくりたい」と考えていました。その想いから、すべての子どもたちに高校進学の選択肢を与えることを目標に、平成7年から、毎週水曜日の夜と土曜日の午後に中学生以上を対象とした無料学習塾を開催しています。平成18年に「かしわ塾」と正式に命名しました。なお、小学生は学童クラブで支援しています。

参加者は、退所した子ども、緊急一時保護で入所している子どもです。それ以外にも、福祉事務所等から紹介された地域で厳しい環境に置かれている子どもたちも参加しています。地域にも支援が必要な厳しい家庭環境で生きている子どもたちがいるのです。現在27名が登録し、年間延べ1,500人が参加しています。

「かしわ塾」の特徴は、職員とともに大学生ボランティアが子どもに寄り添い学習をサポートしていることです。大学生ボランティアは、子どもたちにとって身近な将来のイメージモデルであり、受験の苦労を一緒に乗り越えてくれる大事な大人でもあります。一緒に苦労を経験することで人を信頼する経験を積んでいます。

大学生が勉強を教えているかしわ塾の様子
大学生が勉強を教えているかしわ塾の様子

高校なんか行かなくてもいい

「高校なんて行かなくてもいい。高校なんて行っても意味がない」と話す子どももいます。しかし、そう話す子どもたちの多くは、本当は自分も高校へ行きたいと思っているのです。言葉の背景には「お金が払えない家庭環境」「学力の低さへの不安」などがあります。かしわ塾では、そのような子どもたちに対して、「かしわ塾は費用がかからないこと」「参加した子どもたち全員が都立高校に受かっていること」を丁寧に伝えています。すると、高校進学を諦めていた気持ちが「やってみようかな」と変化していきます。

また、中学校卒の就職は厳しく、就職できたとしても辞めてしまう人が多いのが現状です。子どもたちの可能性を広げ、貧困に陥らないためにもかしわ塾は機能しています。さらに、高校中退を食い止めるために、大学受験をめざす高校生も受け入れています。渋谷さんは「『高校になってもかしわ塾に通いたい』という声があったのがきっかけ。高校に通っている子どもたちを継続して見守ることが必要」と話します。

大学受験をめざす子どもたちも参加しており、勉強を教える側の人材が不足していることが課題です。大学生ボランティアは試験期間や実習があると長期間休むこともあります。渋谷さんは「学校の先生や、先生OBやOGにかかわってもらうしくみがあるといい」と話します。

かしわ塾参加延べ数

 年度

かしわ塾参加者

平成23年度

1309名(延べ数)

平成24年度

1708名(延べ数)

平成25年度

1602名(延べ数)

平成26年度

1316名(延べ数)

かしわ塾高校・大学合格者数

 年度

合格者人数

平成23年度

高校4名、大学0名

平成24年度

高校2名、大学3名

平成25年度

高校8名、大学3名

平成26年度

高校5名、大学1名

皆で同じ食事を食べる「ちゃーはんの会」

かしわヴィレッジでは、もうひとつの取組みも行っています。毎週月曜日の夜に子どもたちが集まり、同じ食事を食べる「ちゃーはんの会」を数年前から開催しています。午後4時頃から子どもたちは、かしわヴィレッジの集会室に集まります。小学生の学習指導を手伝ったり一緒に遊んだりする子どももいれば、集会室には入らずゲームをしながら、「ちゃーはんの会」が始まるのを待っている子どももいます。学童保育が終わる6時になるのを待って「ちゃーはんの会」が始まります。それから、渋谷さんが作った料理を囲んで、特別なことは何もしない、なんとなく語り合うという時間を過ごしています。ただそれだけのために10名程の思春期の子どもたちが、1時間もかけてかしわヴィレッジに通ってきます。その中には、長い間ひきこもり状態や不登校の子どももおり、この場所がなかったら、部屋から一歩も出ることもなく、唯一の外出が「ちゃーはんの会」への出席だという子どももいます。

「ちゃーはんの会」は、ひきこもりだったA君(かしわヴィレッジの退所者)を部屋から誘い出すために、皆でA君の家の近くのラーメン屋さんへ行き、「近くのラーメン屋さんに皆でいるからおいでよ」と誘ったのが始まりでした。その店で一番安かったチャーハンを7人前頼んだことから、「ちゃーはんの会」と呼ばれるようになりました。その後は施設で手作りの料理を囲んで、なんとなく語り合う時間を過ごしています。

ちゃーはんの会の様子
皆で同じ時間を過ごすちゃーはんの会。食事をしながら話すひととき

部屋でも学校でもない場所

参加している子どもたちは、かしわヴィレッジや「ちゃーはんの会」のことを非常に大切にしています。その想いはとても強く、子どもたちは、仲間の突然の引越しや職員の結婚等、施設や仲間に何かあった時には、律義に駆けつけてきます。何かあったら駆けつける、それは所属感とも言えます。その律義さは、どこにも所属していないことへの不安感から、必死にどこかに所属していることを証明しているようにも映ります。不登校やひきこもりの子どもたちの多くは、「どこにも所属していないことへの不安」と「所属することへの不安」を心の中に同居させています。ひきこもり状態から抜け出せない部屋か学校(社会)の二者択一ではなく、その間に存在する場所で、ふたつの不安の軽減を図っています。「ちゃーはんの会」に集まる10名程の子どもたちにとって、部屋でも学校でもない場所として、人とのつながりに慣れていく場所として存在しています。

「ちゃーはんの会」には、虐待の影響を受けた子どもや「家での記憶は恐怖でしかない」、「ご飯の時間が最も緊張した」と言う子ども、過去にホームレス状態だった子どももいます。その中には、同じ場所に集まり、手作りの料理を食べながら、なんとなく語り合うという体験さえ、ほとんど経験してこなかった子どもたちもいます。そうした子どもたちに、「楽しい食事の時間」を体感してもらう、それが「ちゃーはんの会」のもうひとつの役割でもあります。

4割が「しつけに暴力は必要」

渋谷さんが大学生を対象として講義をした際に「しつけに暴力は必要か」と尋ねたところ、4割の大学生が「必要」と回答していました。暴力を肯定する背景には、自分自身も親や学校で暴力を受けてきた経験があるのかもしれません。「大切な親に愛されていなかったという事実を認めたくないがために、愛してくれていたからこそ、暴力を選択してまでも注意してくれた」と信じこもうとしていることも考えられます。

暴力は普通に暮らしている私たちのなかにもあるのです。渋谷さんは、「地域にも虐待やDVを目撃している子どもがたくさんいる。児童福祉施設と出会えれば、暴力を選択することがない大人や「心配」したり「期待」してくれる大人と出会うことができる。社会的な孤立から子どもたちを救うことも可能となる。しかしながら、ひとつの施設では限界があるので連携したい」と話します。

最後に渋谷さんは、「事業をすすめるにあたっては、職員を味方につけることが大事。事業の目的や想いを伝え、共感してもらうことが大切」と話しました。

かしわヴィレッジの理念

 

かしわヴィレッジがめざしているもの伝えたいもの大切にしているもの

 

1 めざしているもの「退所してからも遊びに来たくなる施設」
 

児童福祉施設の多くが「人間関係の再構築」を目標に支援を展開しています。「人間関係の再構築」を目標に掲げる以上、私たちは、退所してからも遊びに来たくなる施設=退所してからも続けたいと思ってもらえる人間関係を創出すべきだと考えます。
 

施設に対する真の評価は、利用者や子どもたちが「退所してからも遊びに来たくなる場所になっているのかで測られる・・」私たちはそう考えます。

 

2 伝えたいもの「人間関係は捨てたものではない」
 

 「繋がりのない自立とはただの孤独である・・」

 

私たちの考える自立とは、人と繋がること、人と人との繋がりの中で影響を受けたり与えたり、また頼ったり頼られたりしながら、自己実現及び自己決定をしていくことと考えています。

 

利用者の中には人間関係で深く傷ついてきた方もおります。人間関係で傷ついた「こころ」は人間関係の中でしか癒せません。利用者や子どもたちが入所前に持っていた「もう人間関係はこりごりだ(人間不信)」との思いを「人間関係は捨てたものではない」に変えていくこと、それが私たちの仕事でもあるとかしわヴィレッジでは考えています。

 

3 大切にしているもの「時間をかけて見えてくる風景」
 

時速300キロの新幹線では見えない風景があります。時速40キロの各駅停車からでしか見えない風景、効率化ではなく、時間をかけて少しずつ見えてくる風景を大切にしながら、かしわヴィレッジでは支援を展開していきます。

 

人と人とは遺伝子や血だけで繋がっているのではなく、「こころ」と「こころ」の一部分を共有して繋がっていくのです。「こころ」と「こころ」を共有する作業は効率化することはできません。私たちは「根気力」と「丁寧さ」というささやかな道具を持って、その作業にあたりたいと考えています。

 

社会福祉法人新宿区社会福祉事業団 母子生活支援施設かしわヴィレッジ

社会福祉法人新宿区社会福祉事業団
かしわヴィレッジは定員10世帯と緊急一時保護の2世帯の、日本で一番小さい母子生活支援施設。

社会福祉法人による取組み

地域のニーズにこたえる

社会貢献活動の取組み事例を募集しています

地域公益活動の普及啓発パンフレット

東京都地域公益活動推進協議会への加入申込はこちら

はたらくサポートとうきょうへの登録はこちら

ページの先頭へ