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塩川 亜紗美

ASAMI SHIOKAWA

無いことにこだわるより、可能性に目を向けてほしい
横紋筋肉腫という悪性の腫瘍ができ、顔の半分近くを切除した長男。学校や地域とかかわりながら、楽しく暮らしている塩川家の母親、亜紗美さんにお話を伺いました。

福祉広報 2015年7月号 くらし・今・ひと

 

「何なのかがわからない」ことの不安

最初は「歯が痛い」というのから始まりました。近所の小児科で診てもらっても原因はわからず、2つ、3つと病院を受診してもわからない。息子の顔に何かが起こっているのだけれど、それがいったい「何なのかがわからない」のがとても不安でした。6か所目の小児がんセンターでようやく「横紋筋肉腫」という病名がわかり、すぐに入院することになりました。原因がわからない不安が解消された代わりに、これからどうなっていくのだろうという不安が押し寄せてきました。

25時間に及ぶ大手術

抗がん剤治療を続け、ようやく手術となった時に、お医者さんから「腫瘍と一緒に目も切除するかもしれない」と言われました。手術は25時間におよび、腫瘍とともに左目も摘出されました。手術室の中で切除された左目を見た時、それはもう生きた息子の一部ではなく、単なる物に感じられて、今思えば、そこでふんぎりをつけることができたのだと思います。

周囲に理解してもらうために

数か月後、退院することが決まり「ああ、そうだ学校に通うんだ」と考えたときに感じたのは、学校に通わせることの恐怖でした。入院生活で1年近く勉強をしていませんでしたし、なにより、顔が変わってしまっていることでいじめの標的になるのではないかと思ったからです。学校の先生たちにも来ていただき、病院で会議を開いてもらいました。学校生活の不安と、闘病から学校への気持ちの切り替えがすぐにはできないという私自身の正直な気持ちを伝えました。病院も学校も、私たちの気持ちを理解してくれ、学校で全校集会を開いてもらい、病気のことについて校長先生から全校生徒へ説明していただきました。また、病院の子ども療養支援士さんに作ってもらった、長男の病気を題材にした紙芝居で、病気のことを子どもたちにより詳しく知ってもらうことができました。

大事なのは「楽しむ」こと

家族で地域の活動やイベントにも積極的に参加しています。同じマンションの人たちと一緒に、「難病の子どもとその家族へ夢を」という団体が主催するチャリティーマラソンに参加したこともあります。どのイベントでも、うちの家族が一番楽しんでいるんです。地域の人たちとかかわる中で、他人の優しさに触れて「世間って、意外と冷たくないんだな」と思うようになりました。

私自身、小学校での読み聞かせのボランティアも始めました。周りからみると、病気で大変だと思われるかもしれないですが、そんなことはなくて、私たちにとっては、今のこの生活が普通なんです。

顔を半分近く切除してしまいましたが、それにこだわって人生の選択の幅を狭めてほしくないと思っています。左目は無いけれど、右目はあるし、視野が狭くて見づらいのなら、首を動かせばいいんです。無いなら無いなりに、工夫したり、今あるもので補ったり、自分の可能性を伸ばしていけるように育っていってほしいです。

 公益社団法人難病の子どもとその家族へ夢を

全国に20万人以上いる難病と闘う子どもたちとその家族へ、対話や交流を通じて社会との繋がりを実感し、夢を持つことのできる社会づくりの実現に取組む団体。塩川さん一家も出演しているドキュメンタリー映画「Given~いま、ここ、にあるしあわせ~」が2015年秋に公開予定。
HP:http://www.yumewo.org
 TEL:03-6280-3214

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