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アクティブ福祉 Digital特集

「地域における福祉・介護人材確保の取り組み」

新型コロナウイルス(以下、コロナ)の流行からおよそ3年が経過し、この間、高齢者福祉業界における地域での人材採用活動は影響を受けています。本特集では、施設長会等により自治体単位での就職イベントなどを実施している地域の施設の採用担当者によるオンライン座談会を通じて、コロナ禍がもたらした影響と、今後取り組むべきことをお伝えします。
※本座談会は令和4年12月26日にオンラインで開催されました。発言や肩書は当時の状況に基づきます。

参加者(敬称略)

佐藤 朋巳(さとう ともみ)

デイサービス博水の郷 センター長、特別養護老人ホーム博水の郷 副施設長

川井 真幸(かわい まさゆき)

特別養護老人ホーム第二光陽苑 施設長

関澤 孝文(せきざわ たかふみ)

特別養護老人ホームひのでホーム 広報戦略課 マネジャー

進行:島﨑 勝弘(しまざき かつひろ)

養護老人ホーム浅川ホーム 施設長

 


オンライン座談会の様子
 

コロナ禍による採用活動への影響

――採用活動に対するコロナ禍の影響をお聞かせください。

佐藤 朋巳氏

佐藤 以前は各地方を回って採用活動をしていましたが、コロナ禍により地方からの採用数は減少しました。職場見学もオンラインで行うことが多く、現場を直接見学していただく機会が少なくなり、就職希望者への説明が行き届かなくなったと感じます。

川井 利用者の生活空間をすべて見てもらうことが難しく、職員がケアを行う姿も見せづらくなりました。また、採用前のマッチングが十分でなかったことが原因で、入職後に離職につながってしまったケースも出てきています。

関澤 コロナ禍以前に重点を置いていた新卒採用では、福祉を志す学生の総数が減少しており苦戦しています。また、中途採用活動への弱みが浮き彫りになったとも感じます。学生はオンライン環境への適応が早く、リアルの見学前にオンライン見学をするという流れが出来ています。それに対応するべく、カメラやマイクなどの環境整備を行いました。

島﨑 以前は求職者がアクセスしやすい会場を借りて法人の就職説明会を行っていましたが、コロナ禍で現在は休止しています。また、施設見学がしづらくなった代替として、オンライン用の施設紹介PRビデオの制作もしましたが、実際の見学と比べると求職者もイメージがつきづらい印象です。リアルに代わる手段を今後も探す必要性を感じています。

地域で競合する施設種別に対するPRポイントを

――各法人の地域における特性や課題についてお聞かせください。

​佐藤 世田谷区は都内でもアクセスが良く人が集まりやすいエリアですが、その反面地域に有料老人ホームなどの競合施設が多く存在し、人材の取り合いになります。競合施設に負けないよう、区と協働して社会福祉法人による就職フェアを開催するなどしています。

関澤さん

川井 真幸氏

川井 練馬区は特養や老健、有料老人ホームなど、高齢者事業者が数多くあるため、職員、利用者とも事業者間で取り合いとなっている状況です。また、地域の利用者を地域の職員で支えたいという意向もあり、介護のお仕事イベント「#FACT(ファクト)」を通じて特養への関心を広げる場としていきます。

関澤 日の出町は人口のわりに施設が多いエリアです。しかし、高齢化率は全国平均よりも高く採用活動では苦労するため、採用エリアを近隣の自治体まで広げています。近隣の施設とも協力して、地域を盛り上げられるよう合同で就職フェアなどを開催しています。

島﨑 八王子市も人口に比例して施設が多く、社会福祉法人以外の施設が多くあり、人材確保が難しい状況です。そのため、地域の法人で連携して社会福祉法人のPRを行うようにしています。地域特性として隣接する山梨県や神奈川県からの入職者も多く、両県で就職フェアが実施される際には出展しています。

地域での福祉就職フェアとその開催のための工夫・連携

――各地域で行っている就職フェアの内容や開催の工夫、地域での連携などについてお聞かせください。

佐藤 世田谷区は福祉人材の実態調査や確保について課題を抱えていたこともあり、区と共催でイベントを実施しました。集客が最大の課題で、初回はチラシの配布や学校へ案内をしたものの、来場者は10名程度で満足いく結果とはなりませんでした。2年目はハローワークと協働し来場者は100人を超え、3年目は地域の学校に各施設が声をかけ140人となりました。有料老人ホームなど他の施設種別との違いを前面に出し、結果にもつながっていると感じます。昨年からは近隣施設と連携した独自のイベントを実施、また、東京労働局との連携も予定しています。

川井 2019年に練馬区の施設長会で人材確保の方策を議論しイベントの準備をしていましたが、コロナの影響で中止となりました。2020年には改めてコロナ禍における開催形式を模索し、イベント会場に法人職員が集い、タブレットで各施設をつなぎ来場者がオンライン見学を行う形式で実施。感染の影響から当年は10名程度の来場でしたが、翌年、翌々年は自治体とハローワークと共催することで40名程度が来場しました。

コンテンツとして、現場職員の取り組みを紹介する座談会を実施。また、入職のきっかけ、仕事内容、給与、1か月の生活リズムなど何でもざっくばらんに聞ける相談コーナーを設けました。今後も現場の声を発信できる企画を継続したいと思います。

また、当法人の取り組みですが、次世代の福祉を担う小中学生に向けて、施設での体験学習や車いすの使用方法などを紹介する出張授業などを、現場の職員が行っています。

細野 真代氏

関澤 孝文氏

関澤 日の出町では立地の関係で都心での採用活動が成果につながりづらいという状況を鑑みて、医療・保育・障害などの分野とも連動した福祉全体の地域就職イベントとして「日の出町ハートワークフェア」を2017年にスタートし、3年間開催しました。運営メンバーは人材確保への課題をリアルに感じている現場の担当者で構成しています。

イベントのコンセプトとして、つながる、伝える、種をまくの三つを掲げています。それぞれ横の福祉サービスのつながり、現場からの自分たちの言葉の発信、小中学生などの未来の福祉を担う方へ福祉の仕事を知ってもらうアプローチを示しています。日の出町で働き生活することのPRを第一目標として、採用に直結させることは二次的な目的としています。

会場は日ごろから人が集まるイオンモール日の出に、地域福祉のイベントとしてホールを特別料金にてお貸し頂きました。モール内ポスタージャック、芸能人のトークイベント、車いす体験や子どもが楽しめるブースなど、集客対策を行いました。2019年には職種ごとにまとめた求人カードを469枚配布し、実際に採用につながったというケースもありました。

島﨑 八王子の各施設では自治体やハローワークと協働して就職説明会を開催することが多くなり、一定の来場もあり採用に結びついています。集客ではポスティングを行っていますが、即自的に効果が出なくても1年後に応募や問い合わせがあるなど、地域性があるのか長期的に見た反響がよいと感じます。また、傾向として福祉系の学校以外の学生の採用が増加しています。

イベント実施予算確保のための各所との協調

――イベント実施のための予算はどのように工面していますか?

川井 収入の面では、今年度は地域活動助成金として高齢協の補助で10万円、法人参加費として高齢協会員は5千円、その他は1万円としました。その他、必要に応じてブロック会活動費を活用させていただいております。会場については練馬区で準備をいただき、また、準備の段階では区役所の一室を会議(打ち合わせ)や準備室として提供いただきました。

佐藤 初期の支出については、オリジナル着ぐるみの作成や集客のためのかき氷などの企画で費用がかさみました。このほか座談会やゲストへの謝礼やチラシ関連で費用が掛かっていますが、会場は自治体に提供いただいています。参加費としては、1法人1万円程度です。

德山 滋久氏

島﨑 勝弘氏

島﨑 イベントを立ち上げる際には多くの費用が必要でしたが、その後は自治体やハローワークとの連携で会場費が抑えられました。そのほかポスティングなどもありますが、現在ではそれほど費用はかかっていません。

関澤 日の出町では手弁当でのイベント運営ですが、パンフレットの作成などで支出があります。コロナ禍以前は参加法人の出展費は5万円でしたが、各法人の規模や種別によってその負担感が違い、見直しの必要を感じています。

 

若手職員も巻き込み、施設・地域全体で採用への意識向上を

――採用活動に関する今後の方針、取り組みをお聞かせください。

佐藤 求職者とお会いして話すことが採用につながりますので、その機会を増やす取り組みを行っていきます。また、学校の教員とのつながりを強化し、生徒が進路に悩んだ際の選択肢として福祉を提示いただけるようにしていきたいと思います。また、若手職員の意見や発想を取り入れて、彼らの仕事観を発信できる機会を作っていきます。

実は介護職を志しているという方は多くいるはずだと思います。そういう方が訪問しやすい仕組みを作り、イベント開催回数を増やすことで就職につなげて行けると思います。

川井 特養独自のプロジェクトとして「#FACT」と題した具体的な業務内容など特養の事実を広く伝えていく取り組みを進めています。現在は20法人が参画、うち7法人が実行委員となり、施設長・現場職員で企画を進めています。モチベーションのある若い職員が中心となって実施してほしいという期待もあり、実行委員の入れ替えや事務員や相談員など介護職以外の方も関われる形を構想しています。職員間の情報共有や交流の場として継続して実施していきたいと考えています。

また、次世代を担う小中学生などに対し、介護のイメージアップにつながる取り組みを実施していきます。

関澤 就職イベントは予算が必要で頻繁には開催できず、人が来るかどうか不安定なところもありますので、それだけではなく別のアプローチも並行して行う必要があります。求職者は新卒、キャリア採用、他業界からの転職者など様々な方がおり、それぞれの特性を理解しそれに応じた媒体や見せ方が必要です。

また、数多ある社会福祉法人の中から当法人を選んでもらうために工夫が必要です。現在では世間で広く利用されているSNSや動画を起点として、最も重要なアプローチである施設での対面でのコンタクトにつなげられる流れを作っていきたいと思います。また、採用担当だけでなく、法人の職員全員が採用への意識をもって取り組む必要があると感じています。

島﨑 職場として選ばれるには、多くの方に知ってもらい興味を持ってもらう必要があります。そのために、広報誌やチラシ配布に取り組んでいます。また、行政、ハローワークと良好な関係を築き、地域の方々とのつながりを大切にすることで、ここで働きたいと思われるような発信を続けていきます。

また今後も高齢協の活動を通じ、都内の各地域の工夫などを情報交換・共有しながら、人材確保に努めていければと思います。本日はありがとうございました。
 

「福祉・介護のおしごとフェアinせたがや」(2022年度) チラシ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「福祉・介護のおしごとフェアinせたがや」(2022年度)の様子①

「福祉・介護のおしごとフェアinせたがや」(2022年度)の様子②

 

「練馬区介護のお仕事イベント #FACT」(2022年度)チラシ

 

 

コロナ禍前に実施していた「日の出町ハートワークフェア2018」チラシ

 

 

 

 

2023年2月(アクティブ福祉 第52号掲載)

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