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アクティブ福祉 Digitalうわさの施設

東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。

2021年開催 第16回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉 in 東京‘21」優秀賞

社会福祉法人不二健育会 特別養護老人ホームケアポート板橋 厨房における食材発注ミスの撲滅

適切なフレームワークを使用して現状分析と対策立案を行い、食材発注ミスを撲滅したケアポート板橋。科学的なアプローチや研究の質の高さが評価され「アクティブ福祉’21」で優秀賞を獲得しました。

今回は、栄養課の三人、管理栄養士で栄養課管理者の三浦 ルミ(みうら るみ)さん、栄養士で現場主任の安藤 貴規(あんどう たかのり)さん、栄養士で研究リーダーの能見 純子(のうみ じゅんこ)さんにお話を伺いました。

 

TQMの手法を用いた現状分析と対策立案

――今回の取り組みのきっかけをお聞かせください。

安藤 当施設では毎年それぞれの課で年間を通じた目標を設定し、業務改善に取り組んでいます。その一環として、食材発注ミスの撲滅をテーマとして研究を行いました。

能見 日夜提供されている食事は、数多くの食材・調理工程により提供されていますが、食材発注ミスが発生すると配膳の遅れ、工程変更、再発注など、様々な不利益が生じます。本来2、3人で行う発注業務が離職などにより1人で行われていたため、体制改善に取り組みました。

――取り組みはどのように進められましたか。

三浦 当施設では例年の研究の際、トヨタなどの企業でも用いられるQCストーリーより波及したTQM(トータルクオリティマネジメント・総合品質管理)の手法を活用しています。本研究もテーマ選定、現状把握、目標設定といったTQMの流れに沿って進めました。

――発表の中では特性要因図(※下図参照)も使われていましたね。とても多くの意見が出ていたことに驚きました。


<特性要因図(フィッシュボーン図)による要因解析>

安藤 特性要因図は課内の8人程度で作成。人的・物的・環境といった様々な要素に分けて、ミスの要素を連想ゲームのような形で意見を出し合いました。そこから真の重要要因として6つに絞り込み、それぞれに対して一次から三次までの対策を考案。効果・コスト・時間の観点で点数化して実施の可否を検討し、具体的な対策に落とし込みました。

――対策はどのようなことを行いましたか。

能見 発注マニュアルを誰でも操作が出来るように更新しました。また、発注担当者の増員、担当者が発注に集中できるシフトへの調整、ダブルチェック、発注ソフトにおける単位数の統一などを行いました。

――発注業者を減らさなかった点も評価されていましたが、その理由を教えてください。

能見 ケアポート板橋では古くから地域の方に寄り添うことを大切にしており、地元の多くの業者の方々に食材を納入いただいています。それを途絶えさせたくないという想いから、発注業者の多さは発注ミスの要因からは外しました。

 

他部署の力も借りて、誰もが使える新たなマニュアルへ

――今回の取り組みで大変だったこと、それをどう解決したかをお聞かせください。

安藤 人員が不足していたことです。作業の振り分けを手探りで行いながら、人員の確保と並行して、発注システムを誰もが使えるよう操作画面の移り変わりなどをマニュアルに追加する更新をすることで乗り越えました。

――今回の研究では、施設内でどのように連携しましたか。

能見 マニュアル更新では事務職員に実際に発注システムを操作してもらい、どの部分で手間取るかを見ながら、専門用語の解説を追加するなど随時更新しました。栄養課内では日常の中で相互に情報を発信し、それを連絡ノートにまとめて意見を取りまとめています。
そうした取り組みの結果、発注ミスが0件となりました。

――受賞の感想と、周囲の感想をお願いします。

三浦 想定外の受賞で、私たちも栄養課の職員も喜んでいました。栄養課全体での努力の結果だと感じています。普段は他の職種との関りはそれほど多くありませんが、今回の発表を通じて栄養課の取り組みが伝わったのか、他部署から評価いただく声もいただきました。

 

ミス撲滅により生まれた時間で、新たな取り組みへ

――発注ミスが撲滅されたことによる波及効果はありましたか?

安藤 発注ミスの影響による提供の遅れがなくなり、介助時間に影響が出してしまうことがなくなりました。また、調理に回せる時間が増え、手作りおやつの再開や、郷土料理弁当や世界の料理などのイベント食増加につながったことにより、入所者も喜ばれました。また、Facebookで発信した際、外部から反響があったことがうれしかったです。

――介護現場にとって、食事による作業の遅れがなくなることはとてもありがたいですね。次回の取り組みテーマは決まっていますか?

安藤 いわゆる「入れ込み(配膳)」ミスの撲滅を掲げています。入所者それぞれの健康状態や趣向に沿った食事提供をしているため、ミスも出てしまうことがあります。現在それに対して各職員の意見を聞きながら特性要因図を作っているところです。
また、新たなイベント食として「日本どんぶり紀行」を考えています。

――今後の目標をお願いします。

安藤 利用者目線で献立を考え、リクエストにも応えていきたいと思います。また、新たなイベント食にも取り組んでいきたいですね。

三浦 固定観念にとらわれず、柔軟な発想で様々なことに取り組んでいきたいと思います。

――取材を通じて、ミスをなくそうとする強い気概を感じました。私の職場でもこの取り組みを発信し、ミスの減少につなげていきたいと思います。また、普段の業務では、自施設の栄養課とのコミュニケーションは少なく、どのような取り組みをしているか把握できていなかったと気づきました。お話を伺って、栄養課の考えや努力を学べたと感じます。本日はありがとうございました。

 

左からケアポート板橋 能美純子さん・三浦ルミさん、安藤貴規さん、東京ケアリーダーズ 太田開さん

 

社会福祉法人不二健育会 特別養護老人ホーム ケアポート板橋

所在地:〒174-0041 東京都板橋区舟渡3-4-8  電話:03-3969-3101

  • 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ 太田 開(おおた はるき)(白楽荘)
  • 記録・編集:東京新聞 木下 聡文
  • ケアポート板橋ホームページ

2022年9月(アクティブ福祉 第50号掲載)

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