うわさの施設
東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験を持つ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが取材します。今回は、高齢者福祉施設での日常のさまざまな場面にスポットライトを当てながら、介護の魅力を発信する「東京の介護ってすばらしいグランプリ(以下、東すば)」2023において、レシピ部門の最優秀賞を獲得した東京弘済園の調理師の宇野剛さんと栄養士の田中浩代さんにお話を伺いました。
2023年度開催 「東京の介護ってすばらしいグランプリ2023」『レシピ部門』最優秀賞
東京の介護ってすばらしいグランプリ2023 レシピ部門 最優秀賞 作品名:華やか豆乳担々鍋(社会福祉法人東京弘済園・宇野剛さん)
2023年の東すばレシピ部門では、華やかな見た目からのワクワク感や細かい細工・気配り、野菜を楽しく食べられそうな点が評価された当作品が最優秀賞を受賞しました。
<東京の介護ってすばらしいグランプリ2023 レシピ部門 最優秀賞受賞作品「華やか豆乳担々鍋」>
レシピはこちら
「東京の介護ってすばらしいグランプリ2023」特設サイト
――この度は受賞おめでとうございます。周囲の反応はいかがでしたか。
宇野 とても光栄で、うれしくなりました。周囲では介護職として働く同級生から電話を頂きました。おそらくYouTubeで見てくれたようです。
――色とりどりでとても素敵な作品ですね。作品のコンセプトをお聞かせください。
宇野 華やかな見た目を意識して、ふだんのメニューにない特別感を出しました。多色の彩を表現できるように食材を選び、食材に様々な細工を施しました。
――細工をしようと思ったきっかけはありますか。
宇野 以前はうどん料理店で勤めており、飾り切りはもともと得意分野でした。日ごろの盛り付けでも、たとえばトマトを串切りにするか細かくしてかけるかなど、一つ一つ意識しています。
――高齢者の食べやすさや栄養面への配慮をお聞かせください。
宇野 食べやすくなるよう鍋に入れる食材は事前にすべて火を通すようにしています。また、豆乳ベースでさっぱりとさせ、食材の長さや厚みも調節しました。野菜をたっぷり使い、鶏肉のうまみを引き出したくて丁寧に出汁を取りました。
――私の所属施設の調理師は、豆乳を使用したことに対し「なるほど」とコメントしていました。施設内での反響はいかがでしたか。
田中 きれいで素敵で、行事食にとてもよいという声がありました。当法人では複数の施設に食事を提供しており、利用者の状態により食形態が異なるので、調理法をアレンジして提供しています。
――メニュー提供時のご利用者の反応はいかがでしたか。
田中 女性の方は鮮やかな彩やヘルシーな豆乳スープを喜ぶ方が多くいらっしゃいました。食材が多くボリュームもあるので、男性の方にも満足いただけたようです。
<取材の様子>左から 東京弘済園 栄養士 田中浩代さん、調理師 宇野剛さん、港区立高齢者在宅サービスセンターサン・サン赤坂 鈴木理恵さん(東京ケアリーダーズ)
――日々の献立、調理で職員やご利用者から意見をいただくことはありますか。
田中 食堂が厨房に隣接しているので、食事帰りのご利用者に要望を頂いたり、職員から伝え聞いたりしています。
――職種間での連携はどのように行っていますか。
田中 ふだんの食事は栄養士が、行事食は調理師が原案を考えます。メニューが決まると介護職と相談して代替食の方のアレンジを考えます。食べてもらうことがもっとも重要ですので、たとえばこれは食べにくそう、これはスパイスが効きすぎているなど、ご利用者の状況を考慮した意見をもらいます。
――細やかな意見交換がすばらしいと思います。日常の調理での工夫をお聞かせください。
宇野 代替食では食材や調理法は変えても見た目は同じになるようにしています。ご利用者の食事能力に応じてたとえばキャベツならゆでと千切り、揚げ物なら大体5工程の調理方法を行うなどしています。
――とてもやさしいこだわりにあふれていますね。
田中 食材のサイズ感は重要で、一口大という表現一つでも現場と相談を重ねてサイズを決めています。さらに食材によって調整し、危険を回避しています。刻み食は細かすぎると口内でばらけるためとろみをつけることもあります。ご利用者の食事の残存能力を失わないよう提供方法は調整します。
<食堂での1枚>
――メニュー作りでの工夫はありますか。
田中 いつも同じメニューだと飽きるので、話題となるような食材を選んだりします。先日ガパオライスに挑戦しました。甘めのアレンジをしたものの、ナンプラーが受け入れられるか不安でしたが、提供時に調味料の説明も行いとても喜んでもらえました。
宇野 全国の郷土料理にも挑戦しており、二年半かけて国内全都道府県のご当地メニューを提供しました。食材の取り寄せが難しいこともあり、代替素材を使うこともありました。地方ごとに人気投票を行い、反響があったメニューは常設化もしています。この企画も話題になりました。
――献立を見るだけでも楽しそうですし、認知症の方の楽しみ・刺激にもなりますね。このほか挑戦的な取組みはありますか。
田中 てんぷらは刻もうとするとかなり難しく一時提供を休止していましたが、職員からの要望を受け、素揚げの素材に天かすを乗せることで近しい食感を再現しました。シュウマイは時間がたつと硬くなるので、逆さまにして餡をかける工夫をしたこともあります。
宇野 難しいリクエストもアイデアで解決できることもあり、それを達成したときに職員が嬉しそうに驚く顔を見ることはモチベーションになりますね。
――グランプリに応募する方へアドバイスをお願いします。
宇野 召し上がる方の状態を考慮してメニューを作ることが大事だと思います。見た目では他に見られない目新しいものがいいと思います。食器の選定も大切ですね。
――今後の目標をお聞かせください。
宇野 新しいことにチャレンジしていきたいです。近々ではそば打ちの実演をできたらとも思っています。
田中 過去にはおでん会や握り寿司などの実演企画もしていましたがコロナで難しくなりました。それに代わるものを考えていきたいです。
――ご利用者を食事で楽しませるための多様な発想に感銘を受けました。また、栄養士だけでなく調理師や現場の介護職の意見を形にしていることがとてもすごいと思います。チャレンジ精神が要望の実現につながると思いますので、私も現場で前向きな姿勢で日々邁進します。本日はありがとうございました。
<取材時、施設前での1枚>
社会福祉法人東京弘済園
所在地:〒181-0013 東京都三鷹市下連雀5-2-5 電話:0422-43-3319
- 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ 鈴木理恵さん(港区立高齢者在宅サービスセンターサン・サン赤坂)
- 記録・編集:東京新聞 木下 聡文
- 社会福祉法人東京弘済園 ホームページ
2024年8月(アクティブ福祉 第58号掲載)