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アクティブ福祉 Digitalうわさの施設

東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。
今回は、「アクティブ福祉in東京’24」で優秀賞を受賞した世田谷区あんしんすこやかセンターにお話を伺いました。

2024年開催 第19回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉in東京'24」
第1会場「地域包括ケア・地域貢献・地域共生社会」 優秀賞

「アクティブ福祉in東京'24」第1会場優秀賞 社会福祉法人奉優会 世田谷区代沢あんしんすこやかセンター 法人後見受任への挑戦

法人による成年後見の枠組みを外部の組織と連携してつくりあげた代沢あんしんすこやかセンター。前例の少ない新しい取り組み評価され、「アクティブ福祉’24」で優秀賞を獲得しました。
今回は、発表者である社会福祉士の川口有美子(かわぐち ゆみこ)さんと内藤麻里(ないとう まり)さんにお話を伺いました。

【主題】法人後見受任への挑戦
【副題】福祉ニーズに対応した法人後見事業の実現

 

                      

――この度は受賞おめでとうございます。今回の研究のきっかけをお聞かせください。

川口 20年近く前に地域包括支援センター(以下「包括」)で、在宅の認知症の方が財産処分をできず、後見人を探すことに時間を要するケースを目の当たりにしました。成年後見制度を身近に利用できればと思っていましたが、すぐに実現には至りませんでした。

内藤 後見人を増やそうという国の成年後見制度の計画の変更や、社会福祉法人による社会貢献に対する期待向上など、2021年に再度取り組む機運が高まりました。そこから3年かけ、ようやく1件受任できたことで今回研究としてまとめました。

――社会福祉法人が法人後見を進める困難はどのようなことがありましたか。

内藤 様々なリスクがあります。例えば個人だと家族等が後見人となるため社会的な納得度は得やすいのですが、法人だと施設が利益を出すための誘導をするのではないかと家庭裁判所(以下「家裁」)に捉えられかねません。他にも法的トラブル発生時の対応へ不安、包括の事業領域と重なる部分の分別など、諸々ありました。また、法人後見の枠組み自体が未整備であったことも課題でした。

――それをどのように解決されましたか。

内藤 まずは知識を得るために後見人に関する本を読み、社会福祉法人による全国の事例やそのマニュアルから学びました。また、区の成年後見センターに仕組みを教えていただき、お金を降ろす人と渡す人、本人に直接関わる人と事務をする人をそれぞれ分けた方がよいなどのアドバイスも頂きました。

川口 法人全体で弁護士の先生との勉強会等を実施しました。私たちは片付けはできても、そこで証券を見つけたときなどに財産を処理することは慣れていないため、どう対応するかは専門家の意見を仰いでいます。数多くの会議を重ね、いろいろとご支援いただいたことで、地域に向けた本活動を実現できたと感じています。

<取材の様子>左から 内藤 麻里さん、川口 有美子さん、番本 鷹也さん(東京ケアリーダーズ)

――外部組織との連携についてお聞かせください。

川口 まずは区の社会福祉協議会に相談しました。法人後見人は前例のないケースでしたが、普段から連携して地域の皆様の困りごとを解決している顔の見える関係もあって、連携はスムーズに進みました。

内藤 対象者と法人が直接やり取りをすることはリスクがあるため、区や成年後見センターと調整を重ねて枠組みをしっかりと固めました。例えば、法的に難しいケース(資産家、相続が複雑等)を避け、対象者の選定は区の住民調整会議など外部が判断する等です。これにより家裁のOKにつながりました。

――法人内ではどのような調整を行いましたか。

川口 以前からチームで議論をしましたが、リスク回避を重視しすぎて行き詰まったため、一度メンバーを解散し再編成しました。立ち上げではポジティブな方が必要で、取り組みがスタートしてからは慎重派の方が必要と思います。また、法人全体が集まる場や管理職研修などでの活動周知により、法人の後押しを得られたと思います。

内藤 事例研究会や、家裁の書類提出対応なども行いました。家裁は私たちの「やりたい」という想いとは別の、法律的な尺度で考えるため、その部分でも苦労しました。例えば成年後見を任せるに足る(≒不祥事を起こさない)信頼の審理のために、経営状況や役員情報、全部事項証明書等の提出が求められ、慣れない作業に戸惑いました。

――実際に法人貢献に取り組み、どのようなことが見えてきましたか。

内藤 障害の方の法人後見を受任し、毎月1回以上訪問しています。家族交流が少なく未払いの公共料金の整理など、私たちも慣れていなくて大変で、最初は障害の支援者の方に相談しながら進めました。活動、生活、障害、家族それぞれの支援を役割分担したチームで取り組んでいます。本人の想いを一緒に実現できればと思いますし、それが私たちの学びにもなっています。

――今回の取り組みの周囲の反応をお聞かせください。

川口 成年後見センターはこれまで顔なじみでもあり好意的でしたが、法人が成年後見に取り組みたいということには驚いたようでした。

内藤 ただ、法人後見人については前例がなかったため、社協以外の法人が行うことの是非から議論し枠組みを作るまでには2年ほどかかりました。議論の中で、弁護士から法律の観点で思いがけないアドバイスも多々頂き、勉強になりました。
このほか、HPに法人後見人の取り組みを載せると、採用時にそれに興味を持って応募したという方もいました。

――今後の展望をお聞かせください。

川口 団塊世代が後期高齢者を迎え、団塊ジュニア世代の介護離職が増える可能性があります。弁護士だけでは人数的に対応しきれない中、身近な権利擁護の枠組みがあれば介護離職の減少につなげられるのではないかと思います。

――この取り組みをどのように発展させていきたいですか。

内藤 現在は障害の案件を受けていますが、高齢や他の分野にも取り組みたいです。また、少しずつ案件を増やし、その中で若い職員がやりがいを感じ学んでもらえればと思います。権利擁護は担い手不足でハードルも高いですが、ゆくゆくは当法人に留まらず、全国の社会福祉法人の権利擁護のモデルケースになれればと思います。

――0から1の取り組みを作ることは多くの壁がありますが、外部と連携してそれを乗り越えられたことに深い敬意を表します。今後、後見人制度自体に法人後見のカテゴリが加わる将来があると感じます。本日は大変勉強になり、ありがとうございました。

                     

                     <取材時、事業所建物前での1枚>

 

社会福祉法人奉優会 世田谷区代沢あんしんすこやかセンター(代沢地域包括支援センター)

所在地:〒155-0032 東京都世田谷区代沢5-1-15  電話:03-5432-0533

2024年11月(アクティブ福祉 第59号掲載)

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