うわさの施設
東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。
今回は、「アクティブ福祉in東京’24」で優秀賞を受賞した TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会にお話を伺いました。
2024年開催 第19回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉in東京'24」
第2会場「次世代を見据えた人材・育成・定着」 優秀賞
「アクティブ福祉in東京'24」第2会場優秀賞 TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会 複数法人の協働による就職フェアの開催
10法人の主に採用担当者が連携し、就職フェアを実施した「TOKYOの未来を創る社会福祉法人」。介護業界全体の発展を目指す新たな形の取り組みが評価され、「アクティブ福祉’24」で優秀賞を獲得しました。今回は、同協力会に参画された下記の皆さんにお話を伺いました。
(社福)三交会 片桐恵子(かたぎり けいこ)さん 役割:チラシ・SNS等広報
(社福)ファミリー 内山彰吾(うちやま しょうご)さん 役割:座談会等の企画
(社福)大三島育徳会 佐藤朋巳(さいとう ともみ)さん 役割:発起人・集客
(社福)泉陽会 平本穣(ひらもと じょう)さん 役割:発起人・集客
(社福)ウエルガーデン 横須賀英一(よこすか えいいち)さん 役割:企画進行等
<取材の様子>
左から成田雲乃さん(東京ケアリーダーズ)、片桐恵子さん、内山彰吾さん、佐藤朋巳さん、横須賀英一さん、平本穣さん
――この度は受賞おめでとうございます。今回の研究のきっかけをお聞かせください。
佐藤 人材人材不足は東社協会員施設の共通の課題ですが、各法人で就職フェアに出展しても採用につながりにくい状況がありました。就職フェアは出展に費用がかかるため自分たちで開催しようと、つながりのある法人へ声掛けしたことがきっかけです。
片桐 最初は来場者が少なく落ち込みましたが、毎回次回に向けた改善点を話し合い、就職フェアを形作りました。小規模だからこそ、手作り感や温かみ、そして話しやすい雰囲気づくりを大切にしています。連携するハローワークなどの団体にも具体的にこのような「良い介護」を目指していると本気で伝え、集客に協力いただけました。
――本取り組みの成果、反響についてお聞かせください。
内山 もちろん時期や地域性による各法人の差はありますが、ダイレクトに採用につながっています。回を重ねるごとに集客は増えていますし、介護食の試食コーナーや先輩職員の面談コーナーは列ができ、福祉に興味を持ってもらえたと思います。
横須賀 大手の就職フェアだと多くの企業も参加しており、介護分野に関する興味が高まりにくいこともありますが、小規模だからこその安心感が来場者・法人共にあったように感じます。実際に就職した方は座談会がよかったというコメントもありました。
――多くの法人と連携するにあたり心がけたことはありますか?
平本 10法人それぞれ様々な取り組みをしているので、どこかが主導するのではなく対等な立場で意見交換をしました。会議は隔月でしたが、意見が分かれてもお互い尊重して目標に向かうことができたと思います。共通理念は介護業界に人が入り定着することですので、各法人が自施設の人材充足だけを目指すのではなく、来場者の希望を聞いて別の施設を紹介することもありました。横のつながりによる関係だからこそできたことですね。
――採用だけを目的として良い点だけPRをすると、現実とのギャップが生じ、入職後に退職につながることがあります。そうなると育成にかけた時間も無駄と捉えられかねません。業界全体の発展を目指すことはとても大切だと思います。そのモチベーションの源はどのようなものでしたか。
内山 事業に対するコストが大きいと大きな成果を求められるプレッシャーが強くなりますが、この取り組みは仲間内で行うので比較的低コストだったことはプラスに働いたと思います。トップダウンがなくフラットな関係のため、様々な意見が出やすかったですね。自身の想いをこの場を借りて実践できるのは、成長の場にもなると感じていました。
佐藤 表向きには人材獲得が目標ですが、裏では人柄を知る法人の方々と一緒に新しいことに取り組むとどんなものができるのだろうというワクワク感もありました。
――アクティブ福祉ではケアリーダーズもケアトークコーナーを担当しましたが、今後も福祉に興味を持っていただける発信活動ができればと思います。受賞の感想と周囲の反応をお聞かせください。
片桐 元々は過去にもアクティブ福祉で受賞した世田谷区の就職フェアをベースに、範囲を広げた新たな形として今回取り組みましたが、それが形になり、さらに賞という形で認められうれしく思いました。発表を通じて、自法人の職員に対して採用担当がどんな取り組みをしているか知ってもらえたかなと思います。
平本 他の施設から参画希望のお声を頂きます。出展数を増やすことにはメリットデメリットがありますが、個人的にはこうした法人間連携の就職フェアが、各地でそれぞれの特色を出しながら散発的に開催されるようになるといいと思います。
内山 講演やメディアの取材依頼などもあり、認知度が上がって協力したいというお声がけも頂きます。こうした方々との協働にも取り組みたいと思います。また、本イベントでは他の就職フェアではあまり見られない、出展法人の職員同士が話し合う光景が見られ、その際に採用担当を褒めていただけることがあり、ありがたく感じました。
――施設の中にはときにネガティブな発言を繰り返す職員がいて、新入職員がそれを聞くと不安になると思います。そんなとき、ケアリーダーズを含む研修会など横のつながりで苦労や解決策を共有できると、安心感や逃げずに頑張ろうという気持ちが湧いてきますね。今後の目標をお聞かせください。
内山 集客は今も課題であり、ハローワークや福祉人材センターとの連携を通じて強化したいと思います。転職の来場者が多いのですが、新たに福祉を志す学生へのPRも課題です。
片桐 長期的には就職フェアにとどまらず、小学校や中学校まで巻き込んで、将来の仕事に福祉の仕事を選択肢に加えてもらえる仕組みを考えたいですね。
佐藤 私たちは連携推進法人ではありませんが、10法人による合同・交換研修や合同災害対策など新たな取り組み案も上がっています。一般社団法人設立も視野に入れ、協力し合える活動を広げていきたいと思います。
――合同・交換研修は、どこの施設で働いても一定の苦労がある事、同じことに悩む人がいることがわかり、新しい視点も持てそうですね。
内山 そうですね、職員の定着も大きな課題で、人材交流はその解決手段になりうると思います。ただ、大変だという話で終わるとよくないので、良いところも共有して帰れるような仕掛けづくりが必要だと思います。
――今後、こうした活動を目指す方々へアドバイスをお願いします。
横須賀 このような団体が増え、切磋琢磨しながら業界を盛り上げていければと思います。発起人がいないとできませんので、ぜひ自ら進んで手をあげていただきたいです。
佐藤 法人の枠にとらわれず、困ったことがあれば助け合える関係が大事だと思います。
――私自身も介護業界への入職者増加を目標に掲げ、施設でも採用活動をしていますが、本日対談に参加された採用担当の先輩方の、将来に胸がときめくようなビジョンや実際の活動について学べたことは、非常に貴重な機会だったと感じています。本日はありがとうございました。
<就職フェアの様子>
TOKYOの未来を創る社会福祉法人協力会
社会福祉法人ウエルガーデン、社会福祉法人大三島育徳会、社会福祉法人三交会、社会福祉法人サンフレンズ、社会福祉法人親和福祉会、社会福祉法人泉陽会、社会福祉法人東京弘済会、社会福祉法人東京都福祉事業協会、社会福祉法人ファミリー、社会福祉法人マザアス
- 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ 成田 雲乃さん(癒しの里南千住)
- 記録・編集:東京新聞 木下 聡文
2025年2月(アクティブ福祉 第60号掲載)