東京の高齢者福祉の発展と、福祉サービスの質の向上を目指して活動します。

東京都高齢者福祉施設協議会

東社協トップページへ

お問い合わせ福祉部高齢担当

電話:03-3268-7172
FAX:03-3268-0635

ホーム > 業種別部会 > 東京都高齢者福祉施設協議会 > 広報誌・タブロイド判 > 機関誌「アクティブ福祉」デジタル > うわさの施設 > 「アクティブ福祉in東京'24」第7会場優秀賞 社会福祉法人三交会 青葉台さくら苑 独自の「日本語教育プログラム」の開発 ~国家資格取得を目指して~

アクティブ福祉 Digitalうわさの施設

東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。
今回は、「アクティブ福祉in東京’24」で優秀賞を受賞した青葉台さくら苑にお話を伺いました。

2024年開催 第19回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉in東京'24」
第7会場「次世代を見据えた人材・育成・定着」 優秀賞

「アクティブ福祉in東京'24」第7会場優秀賞 社会福祉法人三交会 青葉台さくら苑 独自の「日本語教育プログラム」の開発 ~国家資格取得を目指して~

外国人就労者向けに独自の日本語教育プログラムを策定した青葉台さくら苑。現場業務に即したカリキュラムや国家試験対策などが評価され、「アクティブ福祉’24」で優秀賞を獲得しました。今回は、発表者である介護職で人材対策室外国人材教育担当の守安祐文(もりやす まさふみ)さんにお話を伺いました。

 

左から吉岡聖さん(東京ケアリーダーズ)、守安祐文さん

 

――この度は受賞おめでとうございます。今回の研究を始めた背景をお聞かせください。

当施設では4年前に初めて外国の方の入職を受け入れました。私の前職が留学生を対象とした日本語講師だったことから、介護現場での日本語教育を任せていただいたことがきっかけです。

――構築された独自の日本語プログラムはどのようなものでしたか。

「生活」「介護の仕事」「日本語能力試験(JLPT)対策」の三つの柱を軸に構成されています。来日後最初の3カ月程度は「生活」に重点を置き、電車の乗り方や病院のかかり方などを伝えました。それに並行して「介護の仕事」で必要となる日本語、例えば利用者の不調を報告できる、インシデント記録が書けるなどレベルごとの学習到達基準を作成し学習を促しました。そして、実際にその業務ができるかどうかで達成度を測るようにしました。

――試験対策についてはどのような取り組みをされましたか。

日本語能力試験対策は就労1年目以降に開始し、介護福祉士国家試験の問題を読み解くための言語知識の習得に重点を置きました。また、その頃には外国人材の方が職場で中核的なメンバーとなっており、全員集まることが困難となっていたため、国家試験対策として試験対策のYouTube動画を作成し、各々が自由な時間に学べるようにしました。

――今回の研究で最も工夫したことをお聞かせください。

学んだ日本語が介護現場業務と結びつきやすいように工夫しました。例えば「~んです」という日本語表現は何か理由があることを説明したいときに使うものですが、「薬を飲んでくれないんです」というような実際に発生しうる場面を設定し、教室外でも使う練習ができるようにしました。

――学ぶ方のモチベーションはどのように維持しましたか?

楽しい授業を心がけ、リラックスしたムード作りを大切にしました。また、日本語の学びの中で現在の生活や業務についての不安を聞く「お悩み相談室」のような要素を組み込みました。

――ある意味では外国人材のメンタルケアの場になっていたのですね。研究で大変だったことをお聞かせください。

従来の日本語教育の枠組みは留学生を対象としたもので、生活や就労を目的とした教育には十分に注力されていませんでした。令和3年に文化庁は「日本語教育の参照枠」を打ち出し方向性を定めたものの、「誰が」「どのように」という具体的な視点が欠けていました。この点については試行錯誤をしましたが、学習内容や目標設定、評価方法などのカリキュラムを作り上げることはやりがいがありました。また、YouTube動画の作成は初めてで、作業に時間に多くの時間を費やしました。

――カリキュラムではどのような先行研究を参考にしましたか。

「日本語教育の参照枠」に加え、介護の日本語の評価基準は早稲田大学の「ワセダバンドスケール(介護版)」を参考にし、青葉台さくら苑での業務に対応させた「さくら苑バンドスケール」を作成しました。また、近年日本語教育に取り入れられている、知識ではなく活動に注目する「Can-do」の考え方も参考にしています。

――取り組みに対するご利用者や職員からの反応はいかがでしたか。

ご利用者からは外国人職員に対し「日本人だと思っていた」という声があがりました。職員からは日本語の上達に対する驚きの声が多く寄せられました。

――受賞の感想や周囲の反応をお聞かせください。

日本語教育に取り組んできた結果が目に見える形で評価されたことをうれしく思います。また、他の事業所から研究についての問い合わせもいただきました。

――今後の目標をお聞かせください。

現在はそれぞれの事業所で独自に日本語教育に取り組んでいますが、その標準となるような教育プログラムを作成することが目標です。現在、スケールのアップグレードに取り組んでいますし、これを基に楽しめる日本語授業を誰もが実施できる教材の開発にも取り組みたいと思います。

――目標達成のために、どのような活動を考えていますか。

特養だけでなく、ショートステイや訪問介護等で必要とされる日本語を組み込み、さらに介護福祉士養成施設や日本語教育機関などとも連携し、普遍的に使える教材としていきたいと思います。全国版という意味合いでは、方言についても対応させる必要があると感じています。

――日本語教育を実践して退職してしまうケースが見受けられる中、楽しく学べて現場に対応できるというのはとても重要だと思います。また、日本人の新人職員に対しても使えるものとなるかもしれませんね。今後研究活動を行う施設へのアドバイスがあればお聞かせください。

外部の日本語講師では現実の介護業務に即した教育が難しい場合があるため、施設内に専任の日本語教育担当者の配置があると教育の充実につながると思います。施設の特性や業務に即した「現場で求められる日本語」をつきつめるとよいでしょう。

――私自身これまでの勤務経験で、日本語教育は難しいと感じることはしばしばありましたが、施設の業務時間外に動画で学べる形は素晴らしいと思います。また、日本語教育がモチベーションを保つ場になることもとてもよいと思いました。自発的に日本語教育に取り組んでいきたいと思います。本日はありがとうございました。


<取材の様子>

 

社会福祉法人三交会 青葉台さくら苑

所在地:〒153-0042 東京都目黒区青葉台3-21-6

  • 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ 吉岡 聖さん(白十字ホーム)
  • 記録・編集:東京新聞 木下 聡文
  • 青葉台さくら苑ホームページこのリンクは別ウィンドウで開きます

2025年2月(アクティブ福祉 第60号掲載)

機関誌

機関誌

一般