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東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。
今回は、高齢者福祉施設での日常のさまざまな場面にスポットライトを当てながら、介護の魅力を発信する「東京の介護ってすばらしいグランプリ(以下、東すば)2024」において、レシピ部門の優秀賞を獲得した今井苑 栄養課 管理栄養士の佐竹 祐美(さたけ ゆみ)さんにお話を伺いました。

2024年開催 「東京の介護ってすばらしいグランプリ2024」『レシピ部門』優秀賞

東京の介護ってすばらしいグランプリ2024 レシピ部門 優秀賞 作品名:和風ガパオの三色丼(社会福祉法人青芳会 特別養護老人ホーム今井苑・佐竹祐美さん)

2024年の東すばレシピ部門では、タイ料理と三食丼のコラボレーションで見た目も鮮やかなメニューに取り組んだことが評価され、当作品が優秀賞を受賞しました。

受賞作品はこちら👇
「東京の介護ってすばらしいグランプリ2024」特設サイトこのリンクは別ウィンドウで開きます

 

〈受賞作品〉和風ガパオの三色丼
<受賞作品>和風ガパオの三食丼

 

――この度は受賞おめでとうございます。「和風ガパオの三色丼」は彩りも良く、エスニックな料理を和風にアレンジした意欲的なメニューです。グランプリ応募の背景をお聞かせください。

最近は、スーパーやコンビニでフォーやパッタイなど、エスニックなメニューを見かける機会が増えています。日頃から日本人のエスニック料理への興味関心が増していると感じていたのと、個人的に大手コンビニのガパオが非常においしく感じたこともあり、和食とエスニックの味を融合させることで、入居者様が食事をより楽しめるのではないかなという発想に至りました。

――発想のヒントを日常生活から得るのは面白いですね。

せっかく参加するのなら「普通のメニューじゃ面白くない」と感じていたこともありました。毎月食事に関して意見交換する給食委員会で、栄養課や介護課のスタッフからも「外国籍の職員さんの母国の料理を出したら面白いのでは?」という声も上がっていたため、自然とそういう流れになりました。

――外国籍の職員さんの存在もヒントの一つだったのですね。実際に受賞された感想や周囲の反応はいかがでしたか。

受賞の報せを聞いたときは、驚きと喜びでいっぱいでした。日々の努力が評価されたことをとてもうれしく思います。
 


〈取材の様子〉今井苑 栄養課 管理栄養士 佐竹祐美さん
 

――周りの方からの反応はいかがでしたか。

身近な職員たちから「簡単で作りやすかった」「おいしかった」とうれしい感想をたくさんいただきました。特に「肉ダネが使える」と評判で、ちょっとした夕飯のおかずやおにぎりの具材として使えそうです。

――改めてレシピの特徴を教えてください。

本格的なガパオですと、パクチーが食べれなかったり、ナンプラーが効いていたりして、苦手な方もいらっしゃると思います。そこでパクチーを大葉で、ナンプラーを醤油で代用することで、高齢者の方も食べやすい味付けに仕上げました。また白米を麦ごはんにすることで、便秘がちな利用者様も食物繊維が摂れやすいのではと感じております。

――実際に入居者様にはもうご提供になっているのでしょうか。

実は、まだご提供はできておらず、これからというところでしょうか。ただ年4回発行の施設の広報誌でガパオを取り上げていただきまして、ご家族様経由でご利用者様にも知っていただけたらうれしいです。そのほかですと、施設内では今週の献立を大きく掲示しており、今井苑のブログにも月4〜5回あるイベント食をご紹介しているので、今後もご利用者様はもちろん、ご家族様とも食を通じたコミュニケーションができればと考えております。
 


〈東京の介護ってすばらしいグランプリ2021年 レシピ部門受賞作品 「鶏団子入り 生姜であったか豆乳スープ」〉
 

――今井苑さんは毎年東すばに応募されていて、2021年には前任の管理栄養士さんが「鶏団子入り 生姜であったか豆乳スープ」で優秀賞を獲得されていますね。

豆乳スープは、実際に利用者様だけでなく職員の間でも好評だったメニューです。前任者は利用者様の意見を大切にする方だったので、実際のご意見からメニューが出来上がったのではないでしょうか。私も毎月一回、好きな主菜を選べる選択食のメニューに、利用者様の声を反映させていただいています。

――実際にどのようなメニューを提供されているか、教えていただけますか。

いつもお肉とお魚で選べるようにしています。たとえば「サバの味噌煮」と「ロールキャベツ」、「天丼」と「牛丼」といった形です。イベント食ですと、3月まで提供していた懐かしの洋食をテーマにした「昭和食堂へようこそ」や、4月からは日本各地の郷土料理にちなんだ「花想い~笑顔ひろがるハレの日寿司」などがあります。

実際に今井苑の利用者様からは、「食事がとにかく楽しみ」という声が一番多いように感じます。私たちにとって食事とは、ただの栄養補給ではなく生活の質を高めるもので、何より楽しいものでなくてはいけません。特別な食体験を提供するために、アイデアを磨き続けることが大切だと考えています。

――特別な食体験とは、具体的にどのようなことをされているのですか。

毎月のイベント食には、必ず旅のしおりのようなパンフレットを付けています。たとえば一昨年は、「バスツアーのイベント食」をご提供しました。お食事で日本各地を旅した気分になれるように、はとバスさん監修で観光名所も記したパンフレットを添えていました。

今井苑は、委託給食会社であるグリーンヘルスケアサービスとともにイベント食を提供しています。グリーンヘルスケアサービスは、病院や保育所など介護業界以外とのお付き合いも多いことからさまざまなノウハウもあり、パンフレットも作っていただいています。いつも心強いパートナーです。
 


〈栄養士で献立について話し合う様子〉
 

――今井苑さんは東すばの公募に参加されたり、「アクティブ福祉」の研究大会で表されたりと、お忙しい中でも果敢にチャレンジされています。業務外のことにも取り組むことで、得られるメリットはどのようなところにありますでしょうか。

まず栄養課の話をすると、栄養士や調理師をメインにアイデアを出し合うことで、食に対する意識の向上につながっていると思います。また、レシピ部門以外でも、今井苑は東すばの写真部門でも入賞をしていますし、コラム部門に応募した職員もいます。施設内の誰かは参加することで自然と興味が湧きますし、職員のモチベーションアップにもつながっていると思います。

そのほかですと、今井苑は東京都社会福祉協議会のコンペに応募する機会が多いので、研究発表を通じて福祉関係者以外の方にも施設の取り組みを知っていただけるのがメリットだと思います。

――実際に福祉関係者以外の方からもお声がけいただけましたか。

はい。実際に受賞などの成果をブログで発信することによって、「頑張っているんですね」と評価いただくこともあります。また、今井苑の発信を見て実際にご入居された方もいらっしゃいますし、今回5月にもやはりブログをご覧になった方が入職されました。実際に私もブログを書いているので「見ていただいている」という手応えもありますし、採用につながっていることもうれしいですね。

――発信が直接採用に結びついているんですね。最後に、挑戦を続ける今井苑さんの今後の目標をお聞かせください。

今井苑は、食を通じて笑顔を届けることを大切にしています。ただおいしいだけでなく、食事を楽しみながら健康維持ができるよう、今後は視覚的にも楽しめるメニューを出すなど、今よりも一層特別な食体験を提供できたらと考えています。

そのような取り組みをさらに発展させるきっかけ作りとして、次回も「東京の介護ってすばらしいグランプリ」に応募したいです。

――利用者様の楽しい食体験の提供に、さまざまな挑戦をされていることに驚かされました。また、私も実際に介護施設に勤める身として昨今の食材費高騰を受けて、非常に苦慮される姿も印象的でした。今年度は利用者様の価格を一度上げられたとはおっしゃるものの、それでもお米を中心に高値で推移する中で、代わりの食材のやりくりは本当に大変なのだと思います。本日はありがとうございました。
 


〈施設前での1枚〉左から 今井苑 施設長 岸田全史さん、佐竹さん、ひのでホーム 福田 歩さん(東京ケアリーダーズ)

 

社会福祉法人青芳会 特別養護老人ホーム今井苑

所在地:〒198-0023 東京都青梅市今井2丁目1111番1号
電話:0428-31-3800
  • 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ 福田 歩さん(ひのでホーム)
  • 記録・編集:横山 由希路

2025年6月(アクティブ福祉 第61号掲載)

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