東京の高齢者福祉の発展と、福祉サービスの質の向上を目指して活動します。

東京都高齢者福祉施設協議会

東社協トップページへ

お問い合わせ福祉部高齢担当

電話:03-3268-7172
FAX:03-3268-0635

ホーム > 業種別部会 > 東京都高齢者福祉施設協議会 > 広報誌・タブロイド判 > 機関誌「アクティブ福祉」デジタル > うわさの施設 > 「アクティブ福祉 in 東京'25」第8分科会優秀賞 社会福祉法人常盤会 調布市地域包括支援センター ときわぎ国領  当事者の想いを逐語録としてまとめた「わたしの想い」プロジェクトの効果

アクティブ福祉 Digitalうわさの施設

東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。
今回は、「アクティブ福祉in東京'25」で優秀賞を受賞された調布市地域包括支援センター ときわぎ国領のお二人にお話を伺いました。

2025年開催 第20回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉 in 東京‘25」
第8分科会「次世代を見据えた人材採用・育成・定着/広報戦略」優秀賞

「アクティブ福祉 in 東京'25」第8分科会優秀賞 社会福祉法人常盤会 調布市地域包括支援センター ときわぎ国領  当事者の想いを逐語録としてまとめた「わたしの想い」プロジェクトの効果

地域在住の認知症当事者やご家族の声を逐語録の冊子「わたしの想い」として制作・製本した調布市地域包括支援センター ときわぎ国領。すべての福祉施設・事業所の方に自分ごととして伝わるよう、発表でも工夫を重ねたことが評価され、「アクティブ福祉’25」で優秀賞を獲得しました。今回は、発表者である社会福祉士で介護支援専門員の小嶋 泰之(こじま やすゆき)さんと道脇 絢子(みちわき あやこ)さんにお話を伺いました。

 

 

当事者の想いを逐語録としてまとめた「わたしの想い」プロジェクトの効果 ~住民の気持ちに寄り添う支援と地域の醸成~

 
冊子「わたしの想い」Vol.1~3

 

――冊子「わたしの想い」は、現在Vol.1〜3までつくられています。Vol.1は一人暮らしを継続する認知症当事者の方、Vol.2は家族介護者、Vol.3は家族に先立たれた方に焦点を当てた対談形式で、ときわぎ国領さん内で制作・製本まで行っています。今回のプロジェクトが始まったきっかけを教えてください。

道脇 もともと地域で認知症サポーター養成講座の普及・啓発を行っていましたが、当事者の方の声は今一つ伝えきれていませんでした。するとコロナ禍となり、人を介さない取り組みの一環として、長年私たちに協力くださり、地元でもイキイキされている認知症当事者のお二人に対談をお願いしたところ、ご快諾いただきました。

 

         

      <取材の様子>左から ときわぎ国領  社会福祉士・介護支援専門員 道脇絢子さん、小嶋泰之さん

 

――昔からお付き合いのある住民の方なので、形にしやすい部分があったのですね。

小嶋 そうですね。私と道脇がときわぎ国領に来て10年、他の職員6名も長く地域に関わっています。信頼関係を長年築いた方に、皆さんお話しいただけたのが大きかったと思います。

――「わたしの想い」の制作にあたり、特にこだわった点を教えてください。

小嶋 このような取材ですと、話は簡潔にまとめられることが多いですよね。しかし実際伺っていると、話した方の想いは喋り方、語尾、間の一つひとつに宿ると感じていたので、どうしても話を端折れない。だから逐語録として、その方の言葉をそのまま残すことにこだわりました。

道脇 ご協力くださる方は、「何でも聞いてくれていいよ」「自分の経験を活かしてほしい」という想いで応じてくださっていました。なので、ありがたいことに「都合の悪い部分をカットしてほしい」というご要望もなかったのです。

――ご家族や認知症当事者の方にとっては、自分の経験が役に立つとうれしいですし、冊子という形になることで一つの社会参加になります。ちなみに、Vol.3でACP(アドバンス・ケア・プランニング)をテーマにした理由は何だったのでしょうか?

小嶋 我々がカバーするエリアは築60年の団地・多摩川住宅があり、調布市の中でも一二を争う高齢者の多い地区です。また、戸建ての住宅地は自治会がない場所もあり、そうなると「個人の介護は個人の課題」になりがちです。

Vol.1を読めば「認知症になっても地域で生活が続けられる」ことがわかり、Vol.3を読むと「最期のことを早めに考えておいた方がいい」ことがわかる。認知症当事者、家族介護者ときて、3冊目はさまざまな方向に広げられると思いました。

<取材の様子>左から サン・サン赤坂 鈴木理恵さん(東京ケアリーダーズ)、ときわぎ国領 道脇さん、小嶋さん

 

――包括は福祉の最初の入口で、非常に忙しいイメージがあります。その中でも冊子をつくり続けるモチベーションはどこからくるのでしょう?

小嶋 確かに忙しいですし、困難なケースもたくさんあります。包括は自治会や民生委員さんからもたらされた心配な方の情報をもとに、先手先手で動いてこそ存在意義がある。だから「忙しいことはよいこと」と前向きに捉えています。「この間、動いてくださってありがとうございました」という住民の方からの一言が、やっぱり自分の力になりますね。

道脇 今回「アクティブ福祉 in 東京’25」で発表するにあたって、改めて「わたしの想い」で対談してくださった方に話を伺うと、「みんなにこの冊子のことをもっと知らせたいんだよ」とおっしゃるんです。そういう熱い声を聞くことで、自分たちの仕事の意義とかやり甲斐を再確認できましたね。

――「アクティブ福祉 in 東京’25」に参加した思いは、改めてどのようなところにありましたか?

小嶋 「アクティブ福祉」の参加は5回目でしたが、特養の方が数多く発表される中で、包括の私はいつも会場がアウェーに感じていました。介護は、お家に住まれていた方がやがて施設に入所する命のバトンリレーです。ですので、包括の取り組みとしてお話ししながらも、特養やデイの方も応用できて、介護に携わるすべての方がつながれる発表として昇華できたとき、初めて「アクティブ福祉」がアウェーでなくなった気がしました。

「わたしの想い」は、住民の方の主体的な動きを掬い上げたことでできた冊子です。実際に、在宅と施設を結ぶバトンの役割を果たせていたらうれしいですし、「やはり当事者の思いは大事だな」と、他の施設や事業所の方も感じていただけたらもっとうれしいですね。


〈製本の様子〉左から ときわぎ国領 道脇さん、小嶋さん

――今後、特養やデイにお勤めの方が「わたしの想い」を応用するとしたら、どのようにすればよいでしょうか。アドバイスがあればお聞かせください。

道脇 「わたしの想い」は、1万字以上あるボリュームのある冊子です。なので、そのままマネをするのではなく、初めは施設のお便りなどで、当事者の方々や職員同士の思いを気軽に載せてみてはいかがでしょうか。私たちも一つずつ取り組むことで大きな収穫を得られたので、忙しい中、ちょっとだけ頑張ることで新たな発見が得られると思います。

――今後の目標や課題をお聞かせください。

道脇 一つ目は、読者アンケートを取ることです。「わたしの想い」は事業所お手製のため、現状100部程度しかつくっていません。今の配布先は、地域ケア会議やケアラーカフェ。ご覧になっているのは、ケアマネさんや民生委員さん、行政の保健師さんや一部福祉関係者、地域関係者です。読者の方はどこが響いて、冊子の中身をどう活かしたいか。次号はどうしてほしいか。そこもきちんと調査したいです。

二つ目は、配布先を増やすことです。現状、WEBのプラットフォームであるnoteにも公開していますが、実際の冊子を図書館、クリニックの待合室、薬局にも置きたいです。通常業務と並行して行うのは大変ですが、このプロジェクトはさらに進めたいですし、進めないといけないと思います。一度動き始めたら、皆さんからの期待も大きいので、もう止められないですね(笑)。

 

――ときわぎ国領さんの「元気なうちに最期はどうしていきたいかを住民の方に考えていただく活動」は、施設で働く身としては先を行く提案にも感じましたし、画期的だと思いました。また「わたしの想い」を実際に読ませていただいて感じたのは、「介護職の皆さんにオススメしたい」ということ。介護の技術を学ぶことと同じぐらい大事な当事者の想い。そこを理解してから介護に当たることで、ケアの質ががらりと変わっていく気がしました。

本日はありがとうございました。


〈施設前での1枚〉左から サン・サン赤坂 鈴木理恵さん(東京ケアリーダーズ)、ときわぎ国領 道脇さん、小嶋さん

 

社会福祉法人常盤会 調布市地域包括支援センター ときわぎ国領

所在地:〒182-0022 東京都調布市国領町7-32-2 デュスモン国領101                     
電話:050-5540-0860
  • 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ 鈴木 理恵さん(サン・サン赤坂)
  • 記録・編集:横山 由希路

2025年8月(アクティブ福祉 第62号掲載)

機関誌

機関誌

一般