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アクティブ福祉 Digitalうわさの施設

東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。

2025年開催 第20回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉 in 東京‘25」
第7分科会「科学的介護の実践・生産性向上の取り組み、地域包括ケア・地域貢献・地域共生社会」優秀賞

「アクティブ福祉 in 東京'25」第7分科会優秀賞 社会福祉法人響会 好日苑 介護ロボット等を活用して「持ち上げない介護」の実践による生産性向上の取り組み

次世代のICT機器を導入しノーリフティングケアを通じた自立支援やご利用者の望みを叶えることを実践した特別養護老人ホーム好日苑。長期にわたる一貫した研究や一人ひとりのご利用者のニーズに合わせたイノベーションなどが評価され、「アクティブ福祉’25」で優秀賞を獲得しました。今回は、発表者である渡邊 千尋(わたなべ ちひろ)さんと佐々木 綾子(ささき あやこ)さんにお話を伺いました。

 

 

介護ロボット等を活用して「持ち上げない介護」の実践による生産性向上の取り組み
入居者の穏やかな暮らしの実現と介護職員の腰痛予防と改善に向けて

 
<取材の様子>左から渡邊 千尋さん、佐々木 綾子さん、東京ケアリーダーズ 芝山 玲さん

――介護職にとって腰痛は職業病の一つで、離職の要因にもなります。「持ち上げない介護」実践のための委員会を立ち上げたきっかけを教えてください。

渡邊 前任委員長がノーリフティングケア講習に参加し、当施設でも実践したいと委員会を立ち上げました。その後「ノーリフト宣言」を合言葉に取り組みを進めました。

――私の所属施設ではシートやタオルで移乗を行っていますが、介護機器を利用したボディメカニクスの実践でご利用者の苦痛が軽減され笑顔が増えることに感銘を受けました。導入した機器の特長をお聞かせください。

佐々木 立ち上がりの補助機器を二点導入しました。一つ目は比較的手軽に行える分ご利用者の脚力を要します。二つ目は少し手間はかかりますが、脚力が衰えていても使用できます。どちらもご利用者の下肢の残存能力を要するので、機能維持目的にも使用できます。また、全介助の方にも対応した抱き上げ型の移乗機器を1点導入。車いすへの移乗もでき、体の大きな方にも対応できます。

――今回の取り組みで工夫したことをお聞かせください。

渡邊 目標の共有と機器利用の浸透が難しかったです。研修の度に機器を利用する根拠やメリットを一貫して伝え続け、従来のやり方でよいという考え方にならないようにしました。また、使い方を見える化するため、写真や動画も用いて研修を行いました。

――人にものを伝えていくのは本当に大変ですよね。伝え方の工夫はありますか?

渡邊 全体研修の場での発信だと反対意見が出ることが多いので、味方になってくれそうな職員から個別にアプローチして動いてもらった方が広まりやすいと感じました。
この取り組みが職員・利用者の負担を減らすために必要になるという自信が背景にあり、所々で職員の意識を感じられたからこそ、長期間にわたって取り組んでこれたと思います。

佐々木 二人介助が一人でできるようになることによる待ち時間の減少や腰の負担が軽減など、使うと楽だという実感が生まれたんだと思います。以前は私たちからこれを使ってほしいという発信をしていたのが、今では現場の方から機器利用の提案を頂くなど、前向きな意見の比重が増えてきました。

 
<立ち上がり補助機器体験の様子>

――職員が前向きに考えられるようになったのはお二人の努力の成果ですね機器導入でネックとなる予算の問題はどうすれば解決しやすいでしょうか。

渡邊 意思決定では費用対効果なども意識するので、根拠に基づく意見を提示することが必要です。また、10個のうち1つが通ればいいイメージで数多く提案することが導入につながると思います。

佐々木 まずはレンタルで試してみましょうという提案の仕方もあります。他施設含む過去の事例や報告を提案に盛り込むと説得力が生まれると思います。

――私の施設では導入した機器が準備の手間などを理由に使われなくなることがありますが、こんなときはどのように解決すればよいでしょうか。

佐々木 短期間の機器利用で体に変化が出るようなことはまずなくて、年単位の長い目で見ていかないと効果を実感できないと思います。地道にこの人に使うとこういう効果が出るよということを説明し続けながら使い続けるのが一番の近道だと思います。

――お話しいただいたことを施設でも広めていきたいと思います。取り組みに対する職員の反応はいかがでしたか。

渡邊 どうしたら職員の興味を引けるか常に考え、初回は筆記テスト、ボディメカニクスなどのコーナーに分けてスタンプラリーを行う参加型の研修にしました。楽しみながら学べたようで、このような体験型の研修の方が職員の反応がいいと感じます。

――ご利用者の反応はいかがでしたか。

佐々木 最初は怖い、嫌だという方もいましたが、慣れてくると積極的に使ってもらえるようになりました。また、尿意を示せず失禁する方が、時間を決めて機器を使いトイレ誘導を続けたことで、尿意が示せるようになり失禁がなくなりました。また、機器を利用するうちに自力で立ち上がりができるようになった方もいました。

――今後の課題と目標をお聞かせください。

渡邊 職員による取り組みへの温度差は今もあり、機器が使われないケースもありますので、引き続き使用を促す発信をしていきたいです。

佐々木 理学療法士は一人しかおらず全員を同時に見ることは難しいので、評価と検討や機器の取り扱いについて、現場の方のできることを増やしていきたいと思います。

――今後研究を行う施設へのアドバイスをお願いします。

渡邊 人を巻き込むことと継続することが大切です。効果の見えやすいものもあれば、数カ月、1年かけて諦めずにやり続けることでじわじわ効果がでるものもあります。中心となるメンバーが熱量を持って関り、目的を常に意識して、皆に伝えてやっていきたいという想いが大事だと思います。

佐々木 現場の介護職員は発表の機会が少なく研究発表に抵抗感があるかもしれません。尻込みするかもしれませんが、何がやりたいかの軸さえあれば十分だと思いますので臆せず取り組んでください。

――恥ずかしながらこれまでノーリフティングケアを知らずに働いてきたので、お話のすべてが新しく刺激をもらいました。地道な活動が実を結んで花開いたことが素敵で、ぜひ私の施設でもやりたいと思います。また、お話を通じて感じる施設の雰囲気がよく、否定的な意見があっても受け止めて実践しようという姿勢がすばらしいと思いました。本日はありがとうございました。

 

社会福祉法人響会 特別養護老人ホーム好日苑 

所在地:〒145-0064 東京都大田区上池台5-7-1                    
電話:03-3748-6193
  • 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ 芝山 玲さん(あかね苑)
  • 記録・編集:東京新聞 木下 聡文

2025年12月(アクティブ福祉 第63号掲載)

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