うわさの施設
東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験を持つ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが取材します。今回は、高齢者福祉施設での日常のさまざまな場面にスポットライトを当てながら、介護の魅力を発信する「東京の介護ってすばらしいグランプリ(以下、東すば)」2021において、コラム部門の最優秀賞を獲得した特別養護老人ホーム駒場苑の川添桃子(かわぞえももこ)さんにお話を伺いました。
東京の介護ってすばらしいグランプリ2021 コラム部門最優秀賞
東京の介護ってすばらしいグランプリ2021 コラム部門 最優秀賞 作品名:ファンレター(駒場苑・川添桃子さん)
2021年の東すばコラム部門では、ファンレターという形式の目新しさ、少し苦手なご利用者を理解し支えようとする姿勢などが評価された当作品が最優秀賞を受賞しました。
――作品を拝読し、介護職では誰しもが共感するようなエピソードだと共感しました。施設にしばしばおられる一見気難しい方との関わりを通じて、自身が得られたものがファンレターから伝わります。はじめに、応募のきっかけをお聞かせください。
元々文章を書くことが好きで、介護に関するエッセイコンテストなどにも応募していました。その流れで今回の東すばにも挑戦しました。また、東京ケアリーダーズの活動も気になっていて、自身でも東京の介護を盛り上げたいとも思っていました。
――この作品が生まれるまでの経緯をお聞かせください。
最初にテーマを考えた時に、これまで駒場苑で働く中で作品に書かせていただいた女性が印象的でしたので、その方について書くことにしました。また、表現で目新しさを出すために、その方を応援したいという気持ちを込めたファンレターという切り口を考えました。
――この作品に続きがあるとしたら、どんなメッセージを送りますか。
その方のファンになり、最期までお世話をさせていただいた経験が駒場苑の一員としてのキャリアを形作っていると思います。今はもうお亡くなりになりましたが、今もその方が入居していた部屋に行くと厳しい言葉ながらも応援されているような感覚があります。そんな思いを言葉にしたいです。
――受賞されたことについて、周囲の反響はいかがでしたか。
作品を読んだ職員の視点から見たその方の様子をお話しいただくことがあり、その方の新たな一面を知ることができたことが個人的にうれしかったです。作品がフロア間の交流のきっかけにもなり、法人全体のケアの向上につながったのではないかとも思います。
――文章を書くときに心がけていることはありますか。
自分の想いだけで書くと話にまとまりがでないため、説明的な部分と感情的な部分のバランスを取るようにしています。介護関係のSNSでは個人の愚痴で終わる発信が多く見られ、介護のイメージを自分から下げているとも感じますので、自分の発信では楽しかった、ほっこりしたというポジティブな発信・書き方を心がけています。
――駒場苑に入職したきっかけをお聞かせください。
元々有料老人ホームで働いていましたが、新たな環境で学ぶことにより成長したいと考えていました。そんな中で当施設長のSNSを見かけ、ここで働くことで様々なことを学べると感じたことがきっかけです。
――特養で働いてみて感じたことはありますか。
ご利用者それぞれに、入居までの様々な人生のストーリーがあると感じます。そういった方々を福祉の面から支える使命感があり、やりがいがあります。できるだけ長く現場に立ち、ご利用者を支えていきたいと思います。
――介護職として感じていることをお聞かせください。
自身や家族、周囲の人々が老いること、認知症になることは悪いことだけではなく、そこから始まるポジティブな要素もあると思います。例えば認知症の方に対して、どのような価値観を大事にしているだろう、どうしたら楽しく過ごしてもらえるだろうといった知りたい気持ちがわいてくるといったものです。
――駒場苑の特徴や施設での取り組みをお聞かせください。
介護のコツを短歌の形でまとめた書籍「介護百人一首」をクラウドファンディングで出版するなど、発信力、フットワークの良さが特徴です。私自身もアクティブ福祉での発表やHPでの外部への発信など様々なチャレンジの機会をいただいています。
――今後どのようなことを発信していきたいですか。
少しずつ改善されていますが、今も介護は単純作業がメインで、暗いイメージを持たれていると感じます。それに対し、介護が楽しく素敵なことがたくさんあり、学会発表や外部への発信など様々なことに挑戦出来て知的好奇心を刺激される仕事で、世間の方が想像するよりも深くて広い面白い業界だと伝えていきたいと思います。
――お話を伺い、介護についての思いを同じくする方がいらっしゃることをうれしく思います。ご利用者の人生歴も多種多様で、その方に合わせた介護ももちろん多種多様です。それを考えていくことが介護の醍醐味の一つだと感じました。本日はありがとうございました。
駒場苑 川添 桃子さん 高橋 雅之さん(東京ケアリーダーズ)
★川添さんの作品も含む、『「東すば」2021コラム部門受賞作品集』はこちらから!
https://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/kourei/documents/koramu.pdf
★「東京の介護ってすばらしいグランプリ」については、以下ページにて概要等ご覧いただけます。
https://www.tcsw.tvac.or.jp/bukai/kourei/grandprix.html
▶取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ 高橋 雅之(みたか紫水園)
▶記録・編集:東京新聞 木下 聡文
社会福祉法人愛隣会 特別養護老人ホーム駒場苑
所在地:〒153-8516 東京都目黒区大橋2-19-1 ℡:(03)3485-9823
駒場苑ホームページ
2023年2月(アクティブ福祉 第52号掲載)