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アクティブ福祉 Digitalうわさの施設

東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。今回は、「アクティブ福祉in東京’22」の優秀賞を受賞した第三南陽園にお話を伺いました。

2022年開催 第17回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉 in 東京‘22」
テーマB「日常ケア・認知症ケアの向上」優秀賞

社会福祉法人浴風会 特別養護老人ホーム第三南陽園 自立支援の視点でケアを行うことでコミュニケーションの本質的な力を実感した研究

ご利用者主体の寄り添う姿勢を徹底し、自立支援の介護の質を向上させる研究を行った第三南陽園。職員のご利用者に対する意識の高さと業務改善への取り組みが評価され、「アクティブ福祉’22」で優秀賞を獲得しました。

今回は、発表者である介護職員の菅祐一朗さんと機能訓練指導員の吉田晶美さんにお話を伺いました。※肩書は当時

【主題】自立支援の視点でケアを行うことでコミュニケーションの本質的な力を実感した研究
【副題】ご利用者主体の寄り添う姿勢と支援を目指して

 

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左から 東京ケアリーダーズ 針谷和貴さん、第三南陽園 吉田晶美さん、菅祐一朗さん

――今回の取り組みのきっかけをお聞かせください。

 自立支援は介護の基本ですが、それが施設で徹底できているかということに疑問もありました。スムーズな業務進行のために、自立支援の優先度が低くなってしまう傾向があったからです。この傾向を改善するために、機能訓練指導員を中心とした自立支援を徹底して行うための会議を設けるようにしました。

――取り組みにおいて、チームワークで心がけたことはありますか。

吉田 月一回開かれる機能訓練委員会では、移乗や動作獲得の対象者の状況確認や対応策を検討し、その内容を介護職の方々に周知するよう努めています。また、新人職員に対して介護のための体の動かし方の研修などもしています。

 自立支援に関する対応を全介護職員で統一できるように、情報を共有しました。また、自立支援は取り組み事項としての優先度が低くなりがちだったのですが、それを引き上げる方針を共有することで、施設内の意識改革に取り組みました。

――今回の取り組みでの工夫をお聞かせください。

吉田 情報共有のために移乗や起き上がりなどの注意点をまとめた動画を作成。視聴しやすくするため短い動画にこだわり、1分程度の尺で編集しました。また、動作獲得チェックシートを掲示し、ふとした時に介助手法を思い出せるようにしました。

――動画を使うことは情報共有にとても有効そうですね。自立支援では言葉遣いや身振りを意識されたそうですが、具体的にはどのような表現を意識しましたか。

吉田 言葉遣いでは、例えば職員が主体の「起こしますよ」ではなく、ご利用者が主体の「起きますよ」という表現を徹底。また、動作の習得に必要な手や足の使い方などを身振りで伝えるようにしています。動きたい方向にご利用者の視線が向かうと体の動きもスムーズになるので、視線の誘導も意識しています。

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◀職員の意識づけのための掲示物

 

――取り組みの結果、施設ではどのような変化がありましたか。

吉田 ご利用者は動作の獲得により生活の幅を広げようとする姿勢が、職員はご利用者の持つ力に気付こうとする姿勢がみられるようになりました。これらが好循環し、施設の活気につながっています。また、介助量やリスクの軽減にもつながっています。

 研究が生活に反映され、職員からの言葉はご利用者に寄り添うものが多くなりました。また、ご利用者の自立の促進は職員の自信やモチベーションにつながっています。

――自発的な動作を待つことに職員が苦慮するという訴えがあったそうですが、その点にはどのように対応しますか。

菅 動作を待つことの苦慮の根源は、今この時間に意味があるかという疑問だと思います。その疑問の解消には、意味があることだという認識が必要です。その認識をもたらすために、成功事例を積み重ねていくことが必要だと考えています。

――意志・感情の表出が難しい方の変化の汲み取りはどのようにしていますか。

菅 普段と違う声や表情がみられたときに、それがどんな感情から来るものか経験から推察します。わずかな変化に気付くためには普段の様子の徹底的な理解が必要です。

――今後の課題と目標をお聞かせください。

 自立支援の優先度をさらに上げたいと思います。また、意思や感情の表出が難しい方に対し、ちょっとした表情やしぐさから意思をくみ取れるようになりたいと思います。

吉田 今回の活動の中で、ご利用者の変化が職員のやる気にもつながりました。今後も利用者主体の寄り添う姿勢を持てるように関わり方を工夫して、利用者がもっと積極的に取り組めるようになったらいいなと思います。

――私自身、業務の中でどうしてもスピードを求めてしまい、結果焦ってミスをしてしまうこともあったと思います。介護の質を向上するために悩んでいたことの一つの答えが、今回の研究に見られると感じます。私自身も本研究を参考にして取り組んでいきたいと思います。本日はありがとうございました。

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第三南陽園さんのインタビュー動画を含む大会ダイジェスト版動画は こちらこのリンクは別ウィンドウで開きます

第三南陽園さんの研究発表の抄録はこちらこのリンクは別ウィンドウで開きます

 

社会福祉法人浴風会 特別養護老人ホーム第三南陽園

所在地:〒168-0071 東京都杉並区高井戸西1-12-1  電話:03-3334-2193

  • 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ 針谷 和貴さん(新町光陽苑)
  • 記録・編集:東京新聞 木下 聡文
  • 第三南陽園ホームページこのリンクは別ウィンドウで開きます

2023年6月(アクティブ福祉 第53号掲載)

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