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アクティブ福祉 Digitalうわさの施設

東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。
今回は、「アクティブ福祉in東京’22」で優秀賞を受賞した南陽園にお話を伺いました。

2022年開催 第17回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉 in 東京‘22」
テーマC「地域包括ケア・地域貢献・地域共生社会」優秀賞

第17回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉 in 東京 ’22」『テーマC』優秀賞 社会福祉法人浴風会 南陽園 手作り布マスクとお手玉からつながる地域の輪

コロナ禍で地域交流の機会が少なくなる中、ご利用者手作りの布マスクとお手玉を地域に提供した南陽園。
コロナ禍をプラスに転化したことや視点を変えた地域とのかかわり方が評価され「アクティブ福祉’22」で優秀賞を獲得しました。
今回は、発表者である機能訓練指導員の鶴田 崇(つるた たかし)さんにお話を伺いました。

【主題】手作り布マスクとお手玉からつながる地域の輪
【副題】心の距離が縮まる中で見えてきた地域が果たす役割

 

 

 

――本研究はご利用者の作品から地域交流を促す素晴らしい発表だと感じました。研究のきっかけをお聞かせください。

コロナ禍の初期に施設でマスクが不足した際に、機能訓練の作業の一つとして、ご利用者にマスクの手作りにご協力いただいたことが最初のきっかけです。施設内でご利用者や職員の分が充足したのちに、施設外にもお届けするようになりました。作業に参加される方も多く、これまでに合計1000枚ほど作成しました。

 

――作業活動はご利用者の生きがいになると思います。作業活動に参加してもらうための工夫はありますか。

元々は機能訓練への参加を促すために、運動の後で楽しい活動をしましょうと始めた作業活動ですので、ご利用者が楽しめる作業を選ぶことを重視しています。
また、作業工程を細分化しご利用者の能力に応じて作業を割り振ることで多くの方が参加できるようにしており、作品が完成すると全員でうれしさを共有できます。

 

――作業の割り振りはどのようにしていますか。

例えばマスクであれば型線を引く、布を切る、色の組み合わせを考えるといったように工程にあわせて分割をしていますが、人によってやりたい作業やできる作業は異なります。
まずは実際にやってもらって、反応を見ながら、多種の作業を提示して楽しんでいただける作業を選んでもらうことが大事だと思います。

 

――施設内の職員とはどのように連携していますか。

ご利用者それぞれの好きなことや活動的な時間帯など、介護職が日常の中で得る生活に即した情報を随時共有するようにしています。また、職員からご利用者へ、感謝の言葉を意識的に多くかけてもらえたことも意欲を高めることにつながり、とてもありがたかったです。

 

――普段、職員から利用者の方に「ありがとう」と言える機会はあまりないので、新しい形のコミュニケーションが増えたのかなと感じます。作品作りのテーマはどのように決めていますか。

第一にご利用者の意見を大事にしています。また、当施設では地域とのつながりが深く、地域の方から作品づくりに使える素材を提供いただくことが多くあります。ご利用者の希望と提供素材を結び付け、つくる作品を考えることが多いですね。

 

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< 取材の様子 左:博水の郷 番本鷹也さん(東京ケアリーダーズ)
        右:南陽園 鶴田 崇さん >

 

――今回の研究で大変だったことはありますか。

継続こそが最も大事だと考えており、日常の業務の延長として周囲の力を借りて取り組みました。そのため、本研究では大変と感じることはありませんでした。

 

――作業をしているときのご利用者の様子はいかがでしたか。

作業中も楽しそうな様子でしたが、本研究ではその先に作品を届ける相手がいることが従来の活動と異なるポイントです。マスクを受け取った方が喜んでくださると、ご利用者もそれに対して普段とは異なる雰囲気のうれしそうな表情を見せてくださり、これに生きがいを感じるとおっしゃられる方もいました。

 

――ご利用者の社会参加にもなっていますね。受け取られた方々の反応はいかがでしたか。

ボランティアの方や近隣の商店街や施設、保育園、小学校などに配布しましたが、「こんなにすばらしい作品をご利用者の方がつくられたんだ」ととても驚かれます。コロナ禍が落ち着いたころお礼にいらっしゃったり、お手紙やお礼の品を頂いたりしたこともありました。

 

――ホームページでも活動は紹介されており、ご利用者のご家族も生活の様子が垣間見えて安心されると感じました。作品づくりはいつごろから始めましたか。

およそ10年前からスタートしています。以前は運動がメインでしたが、それだけでは満足されない場面もあり、休憩時間にパズルや塗り絵を始めたことがきっかけです。気づくと没頭されていることもあり、次第に活動の種類が増えていきました。

 

――受賞に対し、周囲の反応はいかがでしたか。

ご利用者と一緒に取り組んだ発表でしたので、表彰式には3名のご利用者に一緒に出ていただきましたが、とても喜んでいただけました。記念品の「アクティブル」くんのぬいぐるみは皆様の部屋に飾ってあります。

 

――今回の研究から見えてきたことをお聞かせください。

コロナ禍となりクラブ活動などが休止し、月間のスケジュールが一時期真っ白になりました。施設はボランティアの方々に対して「手伝っていただく」という受け身の姿勢でいたことを強く感じ、今だからこそ施設側から何かできないかと考えました。
取り組みを続けたことで、現在では双方向の活動やコミュニケーションが生まれ、地域との関係もより深くなったと感じます。今後もこうした活動を続けたいと思います。

お話を伺い、地域との交流や社会参加、地域公益活動のモデルケースとなる発表だと感じます。ご利用者、ボランティア、職員のすべてが主体的に活動する関係性を作り上げることは、私も見習っていきたいと思います。また、継続性を重視し過度な負担をかけずに発展させていくことは、私の所属する施設でも実践できればと思います。本日はありがとうございました。

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<施設の前で>

 

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*鶴田さんのインタビュー動画も含む、大会ダイジェスト版動画こちらこのリンクは別ウィンドウで開きますから

 

社会福祉法人浴風会 南陽園

所在地:〒168-0071 東京都杉並区高井戸西1-12-1  ℡:03-3334-2159

  • 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ 番本 鷹也(ばんもとたかや)さん(博水の郷)
  • 記録・編集:東京新聞 木下 聡文
  • 南陽園ホームページこのリンクは別ウィンドウで開きます

2023年8月(アクティブ福祉 第54号掲載)

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