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アクティブ福祉 Digitalうわさの施設

東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。
今回は、「アクティブ福祉in東京’23」で優秀賞を受賞した足立新生苑にお話しを伺いました。

2023年開催 第18回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉in東京'23」
第4会場「次世代を見据えた人材採用・育成・定着/広報戦略」 優秀賞

「アクティブ福祉in東京’23」第4会場優秀賞 社会福祉法人聖風会 足立新生苑 外国人介護人材が安心して働ける職場環境づくり

外国人材の受け入れに際し、生活にまで寄り添ったきめ細やかなサポートや研修を構築した足立新生苑。細かく段階を踏んだ研修を具体的に構築した点が評価され「アクティブ福祉’23」で優秀賞を獲得しました。
今回は、発表者である介護係長の小嶋知美(こじま ともみ)さんと星野龍一(ほしの りゅういち)さんにお話を伺いました。※肩書は当時

【主題】外国人介護人材が安心して働ける職場環境づくり
【副題】チームで支えていく仕組みについて

 

       

左から 博水の郷 番本鷹也さん(東京ケアリーダーズ)、足立新生苑 小嶋知美さん、星野龍一さん、泰山 ルオン ティ ニュンさん(東京ケアリーダーズ)

 

――(ニュン)研究を始めた経緯をお聞かせください。

星野 研究以前は外国籍職員の育成マニュアルはなく、個々の職員の裁量で日本人職員と同様の指導をしていましたが、言葉や文化の違いを踏まえ、どのような育成が効果的だろうかと考え、研究を始めました。また、外国人職員の増加により人材不足の課題が少しずつ解消しており、その成果をまとめようとしたこともきっかけの一つです。

――(ニュン)私自身も来日して2年ですが、介護の業務上では最初は戸惑いもあり、わからないことを勉強する中では施設のサポートもありました。外国籍職員の受け入れではどのようなことが課題でしたか。

小嶋 まず、会話や記録などの日本語でのコミュニケーションに不安があります。また、日本人職員と同等の指導をしてよいのか、本人の困りごと事に対してどうフォローするかなどにも苦慮しました。ニュンさんは不安に感じていたことはありましたか。

――(ニュン)私はレベルの高い日本の介護を学ぶことや賃金、趣味のアニメを楽しむことを主な目的に来日しましたが、一番の不安は言語でした。また、介護の現場で実際に働くと、学んだことと異なる場面があることにも困惑しました。日本人とベトナム人では気質や生活習慣が異なる事にも戸惑いました。

小嶋 ベトナムの方は賑やかで明るい方が多いですね。各国で気質は異なると思いますので、それを踏まえたコミュニケーションが必要だと思います。

――(番本)ベトナムの方は日本人より近所づきあいが盛んで、いつの間にか地域の高齢者と仲良くなっていたということもありますね。今回の研究で工夫したところをお聞かせください。

小嶋 来日して間もないアルバイトの職員には、業務上の研修だけでなく、自宅の周辺施設の案内、ゴミ出し、ネット環境、交通機関、病院のかかり方など生活基盤を整えるためのサポートを行いました。

星野 日本人の文化にふれてもらうため自宅に招き、日本特有の調理器具・調理方法や外国人には物珍しい物干し竿などを見てもらったり、生活に必要なものを一緒に買いに行ったりすることもしました。

――(ニュン)手厚い生活支援がありがたいですね。研究ではどのようなことが大変でしたか。

星野 やはり言葉の壁と文化の違いですね。私たちの指導が理解できているか確認を行っても、実は少しとらえ方が違っていることがしばしばあり、しっかり理解してもらうためには時間がかかります。文化の面では、対人の距離感の近さは外国の方の魅力でもありますが、日本人には踏み込みすぎだと感じる場面もありました。

――(番本)外国籍の職員は私たちの仕事を真似して学ぶので、私たち自身がちゃんと見本になれるよう襟を正すことが必要ですね。簡単な言葉でも伝わらないこともあるので、伝わりやすい言葉の研究の必要もあると思います。本研究での工夫をお聞かせください。

星野 混乱を避けるため、細かく段階を踏みました。例えばアルバイトの留学生は現場にすぐには入らず、まずは日本語の小テストを行うことからはじめ、出来ることを増やしていきました。楽しんで学んでもらうため、ご利用者とのしりとりなども行いました。

――(ニュン)私も入職当初に日報を添削してもらったことが日本語の練習になりました。

星野 日報は毎日続けていて、そこで取り組みたいことを伝えてもらうと同時に日本語の添削をしています。指導では、外国籍の方が日本で働くためには日本人の2倍、3倍の勉強が必要だと厳しく言うこともありますが、外国籍の職員はそれに応えてくれ、優秀だとも感じています。

 

 

<取材の様子>

左奥:小島 知美さん
右奥:星野 龍一さん
左手前:ルオン ティ ニュンさん
右手前:番本 鷹也さん

 

 

 

 

――(番本)そのほか、研究での工夫についてお聞かせください。

星野 配属先では、研修状況に応じて、比較的負担の少ないフロアに配属するなどしました。職員間交流では、お互いの国の文化を伝えあう懇親会を持つようにしました。外国籍の職員はしばしば外国人同士でグループを形成しますが、これによって国籍を超えて遊びに行くような関係が出来ました。

小嶋 先輩外国人を新人外国人のトレーナーに任命したことにより、日本語での理解が難しいポイントのフォローを母国語で行えました。互いに安心感があったように感じます。さらに、外国籍の方には日本人新入職員のトレーナーにもなってもらいました。

――(ニュン)職員間交流やきめ細やかなフォローがうれしいですね。外国人のトレーナーがいるととてもありがたいです。本研究では職種間でどのように連携しましたか。

小嶋 混乱を避けるため、トレーナー、リーダー、主任、係長、相談員を核として情報を発信し各職種に共有しました。研修の面談は基本的にはトレーナーと外国籍の職員の2人で行いますが、重要な局面では係長も入るようにしていました。

――(ニュン)取り組みによる成果をお聞かせください。

小嶋 研修がマニュアル化されたことで、入職者の国籍に関わらず、施設全体でサポートする体制ができ、指導の意欲が高まりました。

――(ニュン)受賞の感想をお聞かせください。

星野 自分の仕事に箔がついたと感じられ、自信がつきました。いわば東京で一番ですので(笑)

――(番本)今後の目標をお聞かせください。

星野 若手職員でも外国籍の職員のトレーナーとなり、うまく教えられるような仕組みを作りたいと思います。

――(ニュン)他の施設へのアドバイスをお願いします。

星野 外国人材の受け入れは各施設で行っていますが、生活や学業まで目を届かせることが大切です。それにより、外国の方が日本で働きたくなるのかなと思います。

――取材を終えて
(ニュン)初めての取材で緊張しましたが、勉強になる事をたくさん聞けました。今後、介護業界での外国籍人材はさらに増加すると思いますので、さらなるフォローや研究を私たちが手伝えるような仕組みができるといいなと思います。
(番本)外国籍の方がケアリーダーズに加入されたことは、時代の移り変わりを感じ、一緒に取材できたことをうれしく思います。また、東京ケアリーダーズ元メンバーの星野さんにこうして取材できたこともうれしく思います。
本日はありがとうございました。

*アクティブ福祉in東京'23の受賞結果・抄録はこちらから

 

社会福祉法人聖風会 特別養護老人ホーム足立新生苑

所在地:〒121-0061 東京都足立区花畑4-39-10  電話:03-3883-7946

  • 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ ルオン ティ ニュンさん(泰山)、番本 鷹也さん(博水の郷)
  • 記録・編集:東京新聞 木下 聡文
  • 足立新生苑ホームページこのリンクは別ウィンドウで開きます

2023年12月(アクティブ福祉 第55号掲載)

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