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アクティブ福祉 Digitalうわさの施設

東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。
今回は、「アクティブ福祉in東京'23」で優秀賞を受賞した特別養護老人ホームうきま幸朋苑にお話を伺いました。

2023年開催 第18回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉 in 東京‘23」
第2会場「科学的介護の実践・生産性向上の取り組み」優秀賞

「アクティブ福祉in東京’23」第2会場優秀賞 社会福祉法人こうほうえん 特別養護老人ホームうきま幸朋苑 手すり付きターンテーブル導入によりトイレ排泄の安全性向上と介助者の負担軽減を目指した研究

狭い空間であるトイレでの適切な移乗を行うためのターンテーブルを導入した、特別養護老人ホームうきま幸朋苑。
ご利用者と職員双方の負担を軽減した取り組みが評価され、「アクティブ福祉’23」で優秀賞を獲得しました。
今回は、発表者である作業療法士の幸村 優美(こうむら ゆみ)さんにお話を伺いました。 ※肩書は当時

【主題】手すり付きターンテーブル導入によりトイレ排泄の安全性向上と介助者の負担軽減を目指した研究
【副題】双方にやさしいトイレ支援

 

――この度は受賞おめでとうございます。はじめに、今回の研究を始めたきっかけをお聞かせください。

取引先から手すり付きターンテーブルをご紹介いただき、デモ機の使用期間中に良好な結果につながりそうだと感じたことから研究を開始しました。

――福祉機器の導入は、普段どのような流れでされていますか。

取引先からの紹介のほか、国際福祉機器展などの展示会で検討します。導入基準には、ご利用者への好影響や介助人数や時間の軽減などの検証、コストダウンなどがあります。

――今回の研究では、移乗での無理な姿勢の低減を目標の一つにしていますが、本研究における定義をお聞かせください。

当施設のトイレでは便座の横に洗面台があり、介助者が体を自由に動かせない要因となっていました。しばしば腰痛の原因となる前傾姿勢やその状態での捻転が見られたため、その状態を無理な姿勢と設定しました。

――私の所属する施設でも同様の問題があり、ターンテーブルを活用できそうだと感じました。本研究での工夫をお聞かせください。

ジャイロセンサーを使用して、介助者が前傾姿勢となる要因を抽出しました。結果、ズボンのゴムが緩く着脱の際に床に落ちること、洗面台が近いため車いすのブレーキを外したり位置を微調整したりするときに前傾姿勢となることがわかりました。

――研究で大変だったことがあればお聞かせください。

まとめの過程が大変でした。効果は出ていましたが、どう表現すれば伝わりやすくなるかということに苦心し、何度も読み返して修正しました。

 

取材当日の様子1(左:荒井裕介さん(東京ケアリーダーズ)、右:幸村優美さん)

 

――本研究における多職種での連携をお聞かせください。

ご利用者の動作能力や負担がかからないかを現場の介護職員と相談し、対象の方を決めました。取り組みの際、対象の方の調子や覚醒状態を確認してもらっています。ターンテーブル使用時にがたつきが出ることがあり、その安全策も共有しました。

――今回の研究における4名の対象者はどのように選定されましたか。

立位がある程度保持できる方で、方向転換のときの足踏みができない=片足立ちにできない方にご協力いただきました。

――便座に座った時の姿勢の変化はどのようなものでしたか。

導入前、手すりをもって斜めに座っていることがあり、便座上で坐骨が滑ることがありましたが、ターンテーブルの導入により滑りが無くなり姿勢が安定しました。

――取り組みに対するご利用者、職員の反応はいかがでしたか。

トイレに対する恐怖感を感じていたご利用者は、ターンテーブルの使用に対し、初回こそ戸惑いを感じたものの、1週間後には自力でトイレに座れるようになり、恐怖感がなくなったようです。職員は排泄介助が楽になったという声が多くあがりました。

――普段から多職種の連携を取りやすくするために心がけていることはありますか。

介護職員から移乗や手足の動作、姿勢の崩れなどの相談があったときにはなるべく早く対応しています。また、相談しやすくなるような対応や言葉遣いを心がけています。

――リハビリで力を入れていることはありますか。

リハビリを週1回20分行うよりも、生活内にリハビリの要素を落とし込んだ方が効果が上がると感じますので、能力に応じてできるだけ手引きでトイレに行く、少しの距離でも歩いてもらうといったことを心がけています。

――作業療法士のようなリハビリ職が、介護職に持ってほしいと思う視点をお聞かせください。

例えば転倒の予兆に最初に気付きやすいのは介護職だと思います。少しのふらつき、脚の力が入りにくい、食事量の減少など、そうした気づきを共有してもらえれば多職種で連携しやすく、生活を続けられる福祉用具の提案もできますので、そうした視点を持っていただければよりよい介助につながると思います。

ターンテーブルの検証を行う共同研究者の持吉孝郎さん(医務係長)と幸村さん

 

――受賞の感想と周囲の反応をお聞かせください。

研究では、初めて使う器具でしたが現場の介護職員が前向きに使用してくれて、協力的な環境に恵まれていると感じました。また、受賞により施設内でこの取り組みが注目され、他のフロアでも前傾姿勢での捻転に対する意識ができ、ターンテーブルを使用したいという意見も出るようになりました。

――法人内の視野が広がることはとても大事ですね。今回の研究から見えてきた課題と、今後の目標についてお聞かせください。

立位を取りづらい方のトイレの支援を考えています。また、当施設では半数以上の職員が腰痛を抱えていて、抱え上げる移乗では前傾姿勢での捻転があるので、それを低減できる方策を検討しています。

――うきま幸朋苑ではノーリフティング推進委員会を設置していると伺いましたが、どのような取り組みをされていますか。

法人内各事業所のリハビリ職や介護職で構成され、ノーリフティング100%を目標に活動しています。当施設では現在ノーリフティング達成率が93%ですが、ご利用者の希望や能力に応じ、様々な福祉用具の導入や使用・介助方法の指導で達成したいと思います。

――今後研究活動を行う施設へアドバイスをお願いします。

研究という言葉は敷居が高いように感じますが、日々の実践の積み重ねを分析してまとめることで十分研究として成り立つと思いますので、多くの方に取り組んでほしいと思います。

――排泄介助は介護の基本の一つですが、慣れてくると利用者の支援の部分に目が向かなくなることがあると思います。そうした時は再度振り返り、能力を引き出すような介助を考えたいと思いました。また、生活に対するOTの視点が伝わりとても勉強になりました。本日はありがとうございました。

 

*「アクティブ福祉in東京’23」の受賞結果・抄録はこちらこのリンクは別ウィンドウで開きますから

 

取材当日の様子(施設の前で)

 

社会福祉法人こうほうえん 特別養護老人ホームうきま幸朋苑

 所在地:〒115-0051東京都北区浮間5-13-1   電話:03-5914-1331

  • 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ  荒井 裕介さん(あかね苑)
  • 記録・編集:東京新聞 木下 聡文
  • うきま幸朋苑ホームページこのリンクは別ウィンドウで開きます

2024年2月(アクティブ福祉 第56号掲載)

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