うわさの施設
東京都高齢者福祉施設協議会の数ある会員(約1200施設・事業所)のうち、表彰や推薦など、名誉ある経験をもつ施設を紹介するコーナー。毎回‘うわさ’の施設を東京ケアリーダーズが訪問し、お話を伺います。
今回は、「アクティブ福祉in東京'23」で優秀賞を受賞した調布市地域包括支援センターときわぎ国領にお話を伺いました。
2023年開催 第18回高齢者福祉実践・研究大会「アクティブ福祉 in 東京‘23」
第3会場「地域包括ケア・地域貢献・地域共生社会」優秀賞
「アクティブ福祉 in 東京'23」第3会場優秀賞 社会福祉法人常盤会 調布市地域包括支援センターときわぎ国領 コロナ禍における高齢者の見えないSOSへのアウトリーチ
コロナ禍により減少した地域とのつながりの再強化を行う研究を行った、調布市地域包括支援センターときわぎ国領。調布市が任命する地域ボランティアの「広報協力員」と協働し、地域への発信力を高めた取り組みが評価され、「アクティブ福祉’23」で優秀賞を獲得しました。
今回は、発表者である社会福祉士の小嶋 泰之(こじま やすゆき)さんにお話を伺いました。 ※肩書は当時
【主題】コロナ禍における高齢者の見えないSOSへのアウトリーチ
【副題】地域包括支援センターと住民の橋渡し役「広報協力員」との協働
――地域包括支援センター(以下「包括」)で行う業務についてお聞かせください。
地域の方に向けて、総合相談支援、介護予防や地域で暮らし続けるための支援、権利擁護などを主に行い、必要に応じて行政、医療機関、介護事業所等におつなぎします。一人一人異なる悩み事に対し、私たちが一緒に考え、解決のお手伝いをします。
――包括で行う見守りの概要をお聞かせください。
当包括では調布市見守りネットワーク「みまもっと」の委託先として、地域でお困りごとを抱える皆様の見守り事業を行っています。高齢者とご家族の相談窓口である包括をより多くの市民に知っていただくため、顔の見える関係を構築するPR活動が必要でした。
――従来のPR活動はどのようなことをしていましたか。
地域に向けてのチラシの配布であったり、認知症や介護に関する講座を開催したり、地域の祭りでの出展なども行います。また民生児童委員や高齢者サークルの代表など、地域との関りの深い方で構成されるボランティアの「広報協力員(以下、「協力員」)」の力を借り、お困りの高齢者が身近にいらしたら、包括に連絡をしていただくよう地域に発信し続けています。
――協力員についてお聞かせください。
地域ボランティアとして自治体に任命されますが、地域の団地で食事会を開催したり、サークルを運営したり、引っ越してきた方への声掛け、困っている方への訪問など、日頃から「見守り」への意識が高い方々です。自治会や管理組合の役員をされている方もいます。買い物が大変とか、歩きづらそうという方がいる、という気づきがあれば、包括にご連絡を頂きます。
左:東京ケアリーダーズ 井出 日向子さん、
右:調布市地域包括支援センターときわぎ国領 小嶋 泰之さん
――今回の研究のきっかけをお聞かせください。
コロナ禍による外出自粛により、高齢者の地域のコミュニティが軒並み中止され、つながりが断たれました。包括からのアプローチも難しくなり、どのように地域で困っている方に支援を届ければよいか考えたことがきっかけでした。
――高齢者のつながりが無くなったことによる影響はどのようなものがありましたか。
外出自粛による体力や筋力の低下と、人との交流機会の減少による認知症と思われる様子の増加、いわゆるフレイル状態の高齢者の増加が地域の大きな課題となっています。この対策のため、協力員の力を借りて今まで以上に困りごとを抱える地域の高齢者への直接のコンタクトに力を入れました。
――研究における取り組みをお聞かせください。
コロナ禍以前の協力員は4名ほどでしたが、地域とのつながりを強化するため自治会役員、マンション理事、元介護職員などに直接お声掛けをして、新たに13名の方に協力員となっていただきました。
――協力員が増えたことにより、どのような活動ができるようになりましたか。
回覧板や団地の掲示板などで包括の広報誌をPRしていただき、地域での包括の認知度を高めました。講座の際には会場設営や検温、消毒などでご協力いただきました。
――今回の取り組みではどのような工夫をされましたか。
協力員は60~70代の方が大半です。ゆくゆくは、要介護状態となる可能性のある方々でもあります。そうした方に福祉を自分事だととらえていただき、包括の認知度を高めていただくよう工夫しました。
――取り組みで大変だったことはありますか。
包括は担当地域の人口によって職員数が決まります。包括の認知度が上がるにつれ相談件数が増えます。成果である一方、職員の負担は増しているため、迅速な対応、職員間での連携、そして地域の関係者や医療機関・介護事業所との積極的な連携が求められています。
――外部と円滑に連携するために心がけていることは?
地域の人間関係の情報を共有したり、相談事に対してしっかり行動したり、つないだ後もフォローをしたりすることで、互いに頼り合える関係を築いています。
――協力員の中には認知症の当事者の方もいるとのことです。
協力員を担っていただいている軽度認知障害の方は、時に日にちを忘れることもありますが、自立して一人暮らしができています。当事者の感覚で生活状況や治療の体験談などを話していただけるので、活動を通じて、地域の方への認知症への不安軽減にもつながっています。
――本人の気づきを含む当事者の声はとても大事ですね。
協力員の方と私たちが一緒に様々なことを勉強することが大事だと思います。そうした中で、地域のトレンドや課題を共有することができます。
――受賞の感想をお聞かせください。
実は今回で「アクティブ福祉in東京」へは3回目の応募です。応募のきっかけは、包括の活動を発信したい、また、包括での私の取り組みを形にしたいと思ったことでした。受賞という形で評価されたことは、取り組みの方向性は間違っていないという自信になりました。
――今後発表される方へのアドバイスをお願いします。
初回の応募では研究をまとめきれなかったことや緊張して時間オーバーしたことが反省点でした。それらの改善が今回の受賞につながりましたので、推敲も大事だと思います。他の包括の活動も学びたいので、包括の発表が増えると嬉しいですね。
――受賞の際、周囲の反応はいかがでしたか。
広報誌に受賞の報告を載せると、協力員からはお祝いのお言葉を頂きました。受賞は協力員の協力あってこそのものですので、折を見て報告会も開きたいです。
――今後の目標をお聞かせください。
引き続き地域住民にプラスとなり得る取り組みを実践していきたいです。今年は地域活動の再開によりコロナフレイルやコロナ鬱が表面化すると考えているため、その対策にも取り組んでいきます。
――包括の業務は初めて知る部分が多く、取材させていただき、大変勉強になりました。ボランティアや当事者の方の声は本当に大事だと思います。活動を発信し利用者を増やす取り組みはとてもすてきだと感じました。本日はありがとうございました。
*「アクティブ福祉in東京’23」の受賞結果・抄録はこちらから
社会福祉法人常盤会 調布市地域包括支援センターときわぎ国領
所在地:〒182-0022 東京都調布市国領町7-32-2デュスモン国領101 電話:050-5540-0860
- 取材:東京都高齢者福祉施設協議会 東京ケアリーダーズ 井出 日向子さん(シャローム東久留米)
- 記録・編集:東京新聞 木下 聡文
- 調布市地域包括支援センターときわぎ国領ホームページ
2024年2月(アクティブ福祉 第56号掲載)