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福祉広報 2021年3月 746号 テキストデータ

【表紙】

社会福祉NOW
東日本大震災から10年
Ⅰ 被災地の施設と社協の今
Ⅱ 都内避難者支援の10年と避難者の声

【連載】コロナ禍でも日常を守るために ~緊急事態宣言期間を中心とした福祉施設・事業所の取組み~
コロナ禍での施設の生活の中にも楽しみやうるおいを提供する ~(社福)恩賜財団東京都同胞援護会 昭島荘
職員体制を再編し、感染症対策を強化する ~(社福)天童会 秋津療育園

くらし今ひと
自分にしてもらったことを、次の子どもたちにしてあげたい


千葉県 鴨川市
一面満開、
目の覚めるような菜の花畑。
心地よい風の香り、春が来た。

 

 

【NOW】

東日本大震災から10年
Ⅰ 被災地の施設と社協の今
平成23年3月11日、三陸沖を震源とする最大震度7を観測した東日本大震災から、令和3年3月で10年を迎えます。地震とそれに伴う津波は、岩手県、宮城県、福島県を中心に甚大な被害をもたらしました。死者15,899人(※1)、行方不明者2,528人、震災関連死3,767人(※2)に達する未曽有の大災害となりました。
発災後、全国各地から被災地へ多数のボランティアや応援職員が入りました。東京都内の社会福祉協議会(以下、社協)は、福島県内の災害ボランティアセンターに応援に入りました。東社協の東京都高齢者施設福祉施設協議会や、知的発達障害部会(以下、知的部会)では、宮城県気仙沼市の施設等でがれきの撤去や物資の運搬、移送支援などを行いました。
今号の「社会福祉NOW Ⅰ」では、東日本大震災を風化させないため、また、今後起こりうる首都圏での大地震への備えを考えるため、当時、知的部会が支援に入った宮城県気仙沼市の障害者施設と、東京都内社協職員が支援に入った福島県相馬市社協の、震災を経験した気づきや今の想いを取材しました。

知的発達障害部会の支援
~社会福祉法人 洗心会~
知的部会は、東日本大震災を受け、平成23年3月23日に東京都発達障害支援協会と合同で「東社協知的発達障害部会・東京都発達障害支援協会 合同災害対策本部」を立ち上げました。3月27日には派遣職員の第一陣が気仙沼市に入り、現地の社会福祉法人 洗心会(以下、洗心会)等へ支援に入りました。5期にわたり派遣が続き、がれきの撤去や障害児の送迎などを行いました。応援派遣は人数や派遣日数を変えながら、平成27年まで続きました。
◆第二高松園
洗心会が運営する障害者支援施設「第二高松園」は、気仙沼市唐桑町の高台に位置し、津波による被害は大きくありませんでした。当時、第二高松園で主任を務めていた菅原謙さんにお話を伺いました。
すぐには戻らなかったこと
第二高松園では、電気や水道などのライフラインは、発災から1か月後の4月に復旧しました。震災当時について「医療機関も被災し、第二高松園がある唐桑地区に通ずる道が津波で流されてしまった。そのため、薬が手に入りにくくなり、飲む頻度を減らさざるを得なかった方もいる」と菅原さんは言います。
新しく変化したこと
一方で、震災後、変化したこともあります。「『いつガソリンが入れられなくなってもおかしくない』という不安から、まず車のガソリンは常に満タンにするようになった」と菅原さんは言います。
一番の大きな変化は、施設と、ボランティアや地域との交流が増えたことでした。第二高松園では、震災前は、夏祭りなどの行事は利用者、家族、職員のみで行っていました。いろいろな方が施設内に入ると「利用者が精神的に不安定になる」不安があったり、ボランティアに何を頼んで良いか分からなかったりしたためです。
しかし、震災後、ボランティアが多く入り、交流する中で、次第に「外に開こう」という意識が職員の間に広がり、地域との交流に積極的になりました。利用者もボランティアがいる環境に馴染み、職員たちの不安は杞憂だったことに気づきました。現在では、夏祭りなどの行事に地域の人を呼び、ボランティアとして看護学生や高校生なども来てくれています。
外からの支援を受け入れる中で
「震災の直後、いろいろなボランティアが来てくれたが、1日から1週間で人が入れ替わったため、何を頼んで良いか分からなかった。"お客さん"という意識もあり、綺麗な部分の片づけ等をお願いしていた」と菅原さんは振り返ります。
その中で、知的部会から応援に来ていた職員が「第二高松園の職員の皆さんは、利用者の支援に集中してください。その他のことを私たちはやりに来たんだ」と言いました。菅原さんは「それまで気を使っていたところもあったが、その言葉を聞いて『やってくれて助かる』という気持ちが芽生え、さまざまなことをお願いできるようになった」と言います。
また、ライフラインがまだ戻っていなかった頃、自衛隊が用意した風呂での入浴介助を一緒にやってくれたことも印象深いエピソードです。「当時、利用者も不安定になっていたところで、応援職員の方が一緒に入浴介助をしてくれた。入浴の楽しさを利用者に教えてくれた様子を見て、『入浴介助はこういうことだったんだな』と改めて気づかせてくれた」と振り返ります。
被災者は「皆同じ」ではない
地震や津波による被害は、被災者全員同じものではありません。「例えば『会社は流されたけど、家は残った』人は気仙沼を離れ、その逆の人は今も気仙沼にいたりする。それほど同じ被災者と言っても状況が違う。そのため、被災時は、一人ひとりの状況が違うことに対し、互いの『気遣い』が大事だと思った。大変なことも楽しいことも、偏らずに皆で順番にできるよう、普段からお互いに話しておくことが大事ではないか」と菅原さんは言います。
震災への備えについて「答えはないが、普段から『災害時、福祉施設の職員としてどのように動くべきか』考えることで、日頃の行動や備えが変わってくるのではないか」と語ります。
◆気仙沼市障害者生活支援センター
第二高松園の支援の後、知的部会の支援は洗心会が運営する気仙沼市障害者生活支援センター(以下、センター)に移りました。センターでは、計画相談をはじめ、地域の障害者が安心して生活できるようサポートしています。気仙沼市障害者生活支援センター センター長 三浦美加子さん、茶園久美子さん、同法人 障害者就業・生活支援センター「かなえ」尾形寿恵さんにお話を伺いました。
震災時の様子
震災当日の様子について、三浦さんは「10年経ち、記憶も薄れてきているが、当時は『戦争の中』にいるように感じた」と振り返ります。「津波により、車が流され、車が1台しかなかった。その1台で避難所をまわり、利用者の安否を確認した。移動手段が限られ、時間がかかった」と言います。「発災時間によって、被災状況は変わるが、当日の避難の仕方が生死を分ける。『自分だったらどう避難し、守るか』、日頃から考えるべきだと思う」と話します。
その後の課題は利用者の移送でした。地震や津波により、道路が利用できず、通勤や通学に時間がかかるようになりました。震災から10年が経つ令和3年3月6日に三陸沿岸道路がようやく全線開通する予定です。(※3)
センターが入っていた市民福祉センター「やすらぎ」は震災後、取り壊しとなり、保健所や児童相談所などに5回引っ越しをしました。「やすらぎ」は平成29年に再建され、現在はセンターも「やすらぎ」の中に戻ってきました。
新しい社会資源の増加
震災により、障害者を雇用していた水産加工会社をはじめとする多くの企業も被災しました。「これにより、多くの方が失業し、再就職に時間がかかった」と尾形さんは言います。復興がすすむ中で、水産加工会社は機械化がすすみ、雇用先として減る一方、新たにできたスーパー等の販売業、清掃等が障害者の主な働き先となり、雇用環境が変化しました。
「話を聞いてもらうこと」で癒された
当時の知的部会の応援について、尾形さんは「毎週違う人が来て、話を聞いてもらう中で、自分の中で被災経験が整理されていった」と振り返ります。茶園さんも「私たちは、知的部会の応援派遣チームのことを『東京支援チーム』と呼んでいて、今でも交流がある。来てくれた時には『お帰り』と言って迎えている」と話します。
ほかにもボランティアの受入れを通じて、ネットワークが全国に広がり、「縁」ができたと感じています。「地域、人と人とのつながりがあってこそ、この10年やってこられた。皆でやっていけば乗り越えられる」と三浦さんは語ります。

相馬市社会福祉協議会
相馬市は福島県浜通りの北部に位置する市で、東日本大震災では震度6強の強い揺れと沿岸部では大津波に見舞われました。人的被害・住家被害ともに甚大で、日常生活を失った多くの方たちが避難所生活を余儀なくされました。
発災後すぐに、全社協のブロック幹事県・市社協会議において、被災地を除く社協による被災地域の災害ボランティアセンター(以下、災害VC)への支援を決め、全国の社協職員が応援派遣に入りました。東京都内の社協(東社協と都内区市町村社協)は、九州ブロックの社協と共に福島県の支援に入ることとなり、平成23年3月19日から福島県内の災害VCで支援活動を開始しました。相馬市社協の災害VCには3月20日から8月31日までの間、東京から延べ522人の社協職員が入り、支援活動に取り組みました。
相馬市では、6月17日で市内の避難所は閉鎖となり、被災者は仮設住宅での生活が始まりました。これに伴い、8月1日に災害VCは生活復興ボランティアセンターとして、復興に向けた新たな役割や機能を加えた活動になりました。その後、生活復興ボランティアセンターは平成29年まで続き、平成30年からは相馬市社協の生活支援室として被災者の方たちの生活再建のための活動を続けています。
東日本大震災から10年が経ち、この10年間の相馬市社協の災害支援について、当時の相馬市災害VC所長で、現在は相馬市社協常務理事の今野大さんからお話を伺いました。
市との連携を密にした
災害ボランティアセンターの運営
発災直後、相馬市社協では市と連携を取りながら災害VCを設置しました。この時、相馬市社協の事務局の建物は避難所となり使用できなかったため、災害VCを市の商工会議所の建物に設置できるよう市がすぐに拠点を確保してくれました。災害VCの運営には市の職員も必ず入り、その状況を迅速に市の災害対策に反映させました。市と社協は一体となって支援することを意識していました。
フェーズの変化に応じた支援
この時の災害VCでの経験が、その後の相馬市社協の災害対策を検討する際に役立つたくさんの気づきをもたらしました。「変化していくフェーズを想定して支援を整備する」、「地域の力を最大限活用した支援をする」、「限られた人数で効果的な支援を届ける方法を考える」などです。
発災直後は、混乱の中で災害VCを運営する力が求められました。長期化する避難所生活、その後に仮設住宅が整備されるとそこでの生活と被災者を孤立させないためのコミュニティの再生にフェーズは移ります。相馬市では震災以前は2世代3世代同居の世帯が多くありました。しかし、仮設住宅では広さの問題から世帯を分けて住むことを余儀なくされました。平成24年から復興住宅が整備された以降も、元のように同居することはできず、それぞれの世帯での生活が始まりました。そこには隣近所や仮設住宅にいた顔見知りの人たちも居ません。そのため相馬市社協は、復興住宅にひきこもっている高齢者の方たちに、外に出てきてもらえるようにと、地域交流のイベントをつくったり体操教室や地域サロンを設置運営したりと、活動内容を変えていきました。その後は、復興住宅で生活する高齢者宅に積極的に訪問して、見守りとイベント等への参加の呼びかけを続けていきました。
地域の力に注目する
このような中、社協等の支援がなくても地縁で自立していく方たちが増え、住民自身で交流の場を運営できる力が徐々に芽生えていきました。そのことに注目して、社協が主導していた地域交流の場づくりを、住民の自主的な運営に任せ相馬市社協はそれを支える側に移行していきました。地域住民や地域のコミュニティの様子に応じて、社協の関わり方に変化をつけて、地域の力を育むことに努めました。
東日本大震災発災から10年目の今年、いくつかの復興支援の施策変更が予定されており、多くの方たちの生活に影響が出ることが想定されます。相馬市社協では、現在、生活困窮者自立支援のための事業を市から受託し、体制整備に努めています。
東日本大震災の教訓を活かした
令和元年東日本台風の災害対応
令和元年10月の東日本台風(台風第19号)は、相馬市にも被害をもたらしました。市内を流れる河川が氾濫し、死傷者と多くの家屋で全半壊・床上浸水の被害が出ました。相馬市社協では、平時から大規模災害の時に優先して支援に入る120世帯の名簿を用意していました。自力で対応できる世帯、地縁や住民の力で対応できる地域は、まずは自分たちで動いてもらい、相馬市社協は、要配慮者の世帯名簿に載るその世帯を優先して支援しました。これらの世帯の支援に目途が立った後も、相馬市災害VCは活動を継続し、復旧に向け尽力しました。限られた支援体制の中でどのようにして地域住民を支えるか、東日本大震災の教訓を活かした災害対応です。
今野さんは「一斉に全ての被災者の支援を開始しようとすると、限られた体制の中で本当に支援が必要なところへ力を注ぐことができなくなる。社協や行政の支えがあれば地域の力で対応できることが多いことが分かっていた。そのため事前に名簿をつくり、優先順位をつけることができた」と話します。
災害対応と社協の役割について
今野さんは「東日本大震災で生活が一変して今年で10年。常につながりと相談体制が途切れないよう尽力する。その人が、もう大丈夫、と言うまで寄り添うのが社協」と話します。さらに「一方で社協には通常業務も滞りなくすすめていく責任がある。また、災害対応のためにも平時のネットワークづくりは社協の重要な役割だ」と話します。

(※1)令和2年12月10日 警察庁緊急災害警備本部発表資料より。 
令和2年9月10日時点。
(※2)令和2年12月25日 復興庁、内閣府(防災担当)、消防庁発表資料より。 
令和2年9月30日時点。

左から
障害者就業・生活支援センター「かなえ」
センター長 菅原謙さん
気仙沼市障害者生活支援センター
茶園久美子さん
障害者就業・生活支援センター「かなえ」
尾形寿恵さん
(手前右)
気仙沼市障害者生活支援センター
センター長 三浦美加子さん

東日本大震災発災後、
知的部会応援職員による
作業後の集合写真

 (※3)令和3年2月2日取材時点。

 


東日本大震災から10年
Ⅱ 都内避難者支援の10年と避難者の声
東日本大震災では、住み慣れた自宅や地元を離れて避難せざるを得ない方が数多く発生し、東京都内にも発災直後から大勢の被災者が避難しました。東社協では、都内避難者への支援として、東京都の事業である「避難者の孤立化防止事業(以下、孤立化防止事業)」および「都内避難者相談業務」を地域福祉部にて実施してきました。また、東京ボランティア・市民活動センターでは、平成25年5月に設立された「広域避難者支援連絡会in東京」の事務局として、避難者支援団体の交流等を通じ、避難者への支援の強化や地域でのネットワークづくり等に取り組んでいます。
今号の「社会福祉NOW Ⅱ」では、都内避難者を支援してきた社協の一つである中野区社協での「孤立化防止事業」の取組みと、取組みを通じて出会った方々からお聞きしてきた声や思いを取り上げます。

発災直後より都内へ避難者を受入れ、
孤立防止に向けた支援を開始
平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、東北地方を中心に甚大な被害を受け、家財を失うなどした被災者の生活環境は急激に悪化しました。また東京電力福島第一原子力発電所の事故により、翌12日には半径20㎞圏内の住民に避難指示が出されました。この影響もあり発災直後より、多くの方が着の身着のままで被災地から県内、県外各地へ避難しました。
東京にも多くの被災者が避難し、東京都は、同年3月17日より、東京武道館、味の素スタジアムなどに避難施設を順次開設し、緊急受入事業を開始しました。このほか親族宅や知人宅へ避難した方も大勢いました。3月中旬以降、都が確保した都営住宅や東京都住宅供給公社から提供を受けた公社住宅、国家公務員宿舎や民間借り上げ住宅の提供なども行われ、各世帯の受入れ先が徐々に決定していきました。被災地から都内への避難者数は、平成24年4月時点で最大の9千505人となりました。
避難生活の長期化が見込まれる中、東京都は平成23年7月に「孤立化防止事業」を開始しました。都の補助を受け東社協が実施主体となり、避難者の多い地域等の区市の社協が実施しています。自治体や町会自治会、民生児童委員等と連携し、戸別訪問や避難者が交流できるサロンの開催等を通じて、高齢者や障害者等の要配慮者を中心に避難者を支援し、孤立を防止することを目的としています。平成23年度は15社協、24年度には19社協が実施しました。避難者数の減少もあり今年度は10社協が実施しています。
中野区での孤立化防止事業の実施
中野区社協では、平成23年9月より孤立化防止事業を実施しています。中野区は平成23年4月以降、避難者が主に区内の3つの都営住宅(以下、団地)に入居し、当時、都内で3番目に避難者数が多い地域となりました。うち、白鷺地区の団地には乳幼児から高齢者まで約200世帯が入居しました。入居者に対し、団地自治会や地区町会連合会による生活用品の寄贈、民生児童委員連合会での見守り、区の保健師の訪問や生活相談会等が行われました。そうした中で中野区社協は、避難者と、避難者を受け入れている地域住民との相互理解をより一層深めるために、間に立つ機関の必要性を感じていました。
当時、中野区社協では宮城県内の災害ボランティアセンターへの職員派遣や、区民による現地での災害支援ボランティア活動の支援も行っていました。事務局次長の秋元建策さんは「被災地支援を行っていたが、身近にいる区内避難者への支援は、人のつながりづくりをすすめる地元社協として当然、優先して実施すべきことだと感じた」と振り返ります。そこで、早急に区と調整し、孤立化防止事業の実施を決めました。
サロン「来らっせしらさぎ」
事業開始に合わせ、白鷺団地自治会の協力を得て、毎週金曜日に団地の集会室で、避難者の交流サロン「来らっせしらさぎ」を始めました。避難者をスタッフに迎え、近隣の方もボランティアとして参加し、社協職員も毎回参加し現在に至ります。地域活動推進課課長補佐の草野由佳さんは「長く避難生活が続く想定の中、当初から避難者同士だけでなく、避難者と地域の方がつながる場にするよう意識した」と言います。
サロンでは、地方紙を閲覧したりお茶を飲みながら話したりするなど、参加者は思い思いに過ごしています。男女問わず、子ども連れの方なども含め、当初多い時で1日約40人、コロナ禍前には毎回25人ほどが参加しました。季節のイベント等を実施するほか、サロンで気軽に相談できるよう月1回、弁護士や心理士、保健師、地域包括支援センター職員による専門相談も開催されています。サロンを通じて人間関係が広がり、交流が深まっています。開始から約9年半、継続的に参加する方もいます。
平成25年度からは、白鷺に次いで避難者が多かった上高田の団地でも「Smile!サロン」を隔週開催しました。(※2) 実施に向け開催した講座がきっかけで傾聴グループができ、このサロンが終了した現在も、メンバーが「来らっせしらさぎ」を支えています。他にもさまざまな団体、機関等と連携し、乳幼児を持つ親同士が特有の悩みを話せる子育てサロンや子どもの学習会、外出・交流イベント、避難者自身の特技や趣味を活かした活動の場等を開催してきました。
また、ひきこもりがちだった一人の男性避難者の「以前のように土いじりをしたい」という思いをきっかけに、平成25年6月より園芸サロン「さぎろくはたけ365」も実施しています。地域の高齢者会館の庭を利用して毎週野菜づくりをしています。近隣の男性等も参加し、居場所と役割づくりにもつながる場となりました。参加者からは「『立ち上がる力』『前を向く力』を畑から得た」等の感想が寄せられています。
平成23年10月からは情報紙「Smile!」を被災者向けに発行し、こうした避難者の声やサロン等の様子を随時発信しています。(※3)
サロン等での参加者の様子について、地域活動推進課地域ボランティア活動推進員の永嶋春美さんは「被災状況や避難の経緯、地元の復興状況や東京への思いは一人ひとり異なるため、親しい中にもお互いを気遣い、あえて深くは立ち入らず、ほっとできる日常の話をしている」と感じています。そこで、事業のもう一つの柱である戸別訪問で、個々の思いを聞いています。
戸別訪問で聞く避難者の声と今後
中野区社協では、区による避難者への全戸郵送物に同封したアンケートへの回答や、サロン等の事業を通じて避難世帯を把握しています。そのうち、主にサロン等への参加が難しい世帯に戸別訪問をしてきました。社協が訪問する中には自主避難の方や、年数が経ち避難元地域の状況等により区内に住民票を移した方もいます。
戸別訪問では、先の見えない生活への不安や怒り、将来に向けた意見の相違による家族間の関係悪化等について、相談を受けてきました。地元への帰還と東京定住との間で揺れ動き、早めに気持ちを東京定住に切り替えた方もいる一方で、特に福島県の方を中心に「家も仕事もお墓もある地元に戻れず、葛藤を抱えながら、都営住宅に住むためにやむなく区内へ住民票を移す決断をした方は多い」と永嶋さんは言います。
今も3月が近づき、震災の報道に触れると精神的に不安定になる方がいます。宮城県出身の方からは「津波が怖くて地元に戻れない」、地元に戻った方からも「以前と違う地域の様子に落ち込む」という相談も受けます。永嶋さんは「長く感情が出せなかった方々から、ここ数年『目の前で家族が津波に流された』『自宅の建て壊しに立ち会い、腰を抜かした』と過酷な体験や喪失感を聞くことが増えた。心の傷は簡単に癒えるものではない」と心情を推し量ります。
コロナ禍の現在も、中野区社協では福祉ニーズの高い方を中心に戸別訪問や電話連絡を続けています。また「来らっせしらさぎ」は一時休止したものの、スタッフが話し合って感染予防を徹底し、オンラインも交えて再開しています。地域活動推進課主事の山田瑠理子さんは「休止中に認知症が進行した方や『再開で日常を取り戻した』という方もいた。コロナ禍で、サロンが参加者や地域にとって必要な居場所になっていることを強く感じた」と言います。また地域福祉活動推進課長の黒木俊一郎さんは「サロンは、避難者支援という要素と参加者の主体性を大切に支援していきたい。今後も関係機関と連携を図りながら、避難者であり、地域で暮らす住民でもある方々を支え続けたい」と語ります。
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東社協では、今後も各事業や区市町村社協・関係機関等との連携を通じ、避難者の悩みや生活課題への支援を行っていきます。加えて、さまざまな背景を持ちながら東京に住む方々でもあることから、こうした方たちを包摂する地域のあり方や寄り添う支援を模索していきます。

(※1)本文中の、東京都による平成23年、24年当時の都内避難者の受入れ支援の対応や避難者数等については『東日本大震災 東京都復興支援総合記録誌(平成23年3月11日から平成26年3月31日まで)』(東京都、平成27年3月発行)の「第6章 被災者の受入支援」を引用、参照しています。

 都内避難者支援に関わる
 中野区社協の皆さん

「来らっせしらさぎ」
令和元年12月の
クリスマス会の様子

(※2)「Smile!サロン」は、上高田団地からの全避難者の退去に伴い、平成30年度で終了。
(※3)情報紙「Smile!」は令和2年12月時点で計79号を発行。

 

 

【予算】

令和3年度
国および東京都予算案固まる

令和3年度国予算案
令和3年度の国予算案は令和2年12月21日に閣議決定されました。社会保障関係費は令和2年度から0.5%の増となっています。厚生労働省では「新型コロナウイルス感染症から国民のいのちを守るための体制確保」として、「介護・福祉サービス提供体制の継続支援」、福祉施設における感染防止策として「個室化等の環境整備」、「感染防止のための研修や業務継続計画(BCP)の策定等」等が新規事業として盛り込まれています。感染症等への対応力強化等をふまえ、介護報酬は+0.70%、障害福祉サービス等報酬は+0.56%となっています。
質の高い医療・介護サービスの確保に向けて「介護事業所における多様な働き方の導入」、「介護人材の確保のための新たな返済免除付き貸付事業の創設」等が新規事業です。
多様な就労・社会参加の促進に向けて「雇用と福祉の連携による離職者への介護・障害福祉分野への就職支援」、「ひきこもり支援及び地域社会に向けた情報発信の推進」、「障害者の雇用を促進するためのテレワークの推進」等があげられています。
安全・安心な暮らしの確保等に向け「重層的支援体制整備事業の実施」、「生活困窮者等の自立支援の強化、住まい確保・定着支援、住居確保給付金の支給(重層的支援体制整備事業分を含む)」、「成年後見制度の利用促進のための体制整備」、「災害時における福祉支援体制の整備推進」等が新規事業(一部新規を含む)です。
その他「児童相談所の体制強化等」、「地域における子どもの見守り体制の強化等」、「共同受注窓口を通じた全国的な受発注支援体制の構築」等が盛り込まれています。
令和3年度東京都予算案
令和3年1月29日、東京都は令和3年度の予算案を発表しました。「福祉と保健」は前年度比1.4%増です。
高齢社会対策の推進については、感染症対策やオンラインツールを活用した介護予防・フレイル予防活動に取り組む区市町村を支援する「新しい日常における介護予防・フレイル予防活動支援事業~コロナに負けない!~」、「短期集中予防サービス強化支援事業」、介護サービス事業所等が新型コロナの影響を最小限に抑え、活動できるようその経費等を支援する「介護サービス事業所等におけるサービス継続支援事業」、「高齢者施設等の感染症対策設備整備推進事業」等が新規の予算として盛り込まれています。
少子社会対策の推進については、有資格者の地域連携推進員を確保し、要支援児童等へ対応強化を図る区市町村を支援する「保育所等における要支援児童等対応推進事業」、セミナーの開催やアドバイザーの派遣等により保育所等における「子供主体の保育」の推進を図る「子供主体の保育普及推進事業」、「児童福祉人材の確保・育成」、区市町村に予防的支援チームを設置し、支援対象家庭の抽出と支援を行うモデル事業を実施する「予防的支援推進とうきょうモデル事業」、「里親養育専門相談事業(里親子のサポートネット)」、「東京都出産応援事業~コロナに負けない!~」等が新たに盛り込まれました。
障害者施策の推進については「商品開発等業務改善支援モデル事業」、分身ロボットや意思伝達システムを用い、重度障害者の就労を支援するモデル事業の「デジタル技術を活用した重度障害者に対する就労支援事業」、「デジタル技術を活用した障害福祉サービス事業所等支援事業」、「障害児の放課後支援事業」等が新たに位置づけられました。
このほかに、福祉人材の確保として「介護職員の宿舎施設整備支援事業」、「介護事業者の地域連携推進事業」、「介護現場におけるハラスメント対策事業」、地域活動に興味がある個人と町会・自治会の困りごとをマッチングする「地域コミュニティの活性化に向けたパイロット事業」、「男性の家事・育児参画に向けたマインドチェンジキャンペーン(仮称)」等が新たな事業となっています。

 

 

【マンスリー】2021.1.26-2.25

2/2
緊急事態宣言の延長を決定
政府は、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県について、2月7日までとしていた緊急事態宣言を3月7日まで1か月延長することを決定。埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県を除く6府県は3月1日に先行解除された。

1/19
「介護施設等の職員のためのメンタルヘルス相談窓口」を設置
厚労省は、新型コロナ感染事例が発生した場合や感染リスクが高い者との接触による介護職員等の職員に生じる心身の負荷に対する支援を行うことを目的として、メンタルヘルス相談窓口を設置。(公社)全国老人福祉施設協議会、(公社)全国老人保健施設協会においても、メンタルヘルス相談窓口が設置されている。
<新型コロナウイルス感染症に対応する介護施設等の職員のためのメンタル対応問合せ窓口>
https://www.murc.jp/cam/covid19_soudan/

2/1
「東京都移行期医療支援センター」を
開設
都は、小児期医療機関と成人期医療機関の連携促進や患者の自立支援を推進するなど、移行期医療を総合的に支援するため「東京都移行期医療支援センター」を開設。患者からの相談受付は、令和3年度から開始する予定。

2/5
子育てタイプ診断WEBコンテンツ
「子育てホッとタウン」を公開
都は、子育ての悩みに寄り添えるよう、新たなWEBコンテンツを公開。ホームぺージ上で質問に答えると、子育てのタイプが診断され、具体的なアドバイスを受けることができる。
〈子育てホッとタウン〉
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/osekkai/kosodatehottown/

2/5
女性の健康をサポートするポータルサイト「TOKYO#女子けんこう部」を開設
都は、女性が健康な生活や女性特有の病気について手軽に知ることができるポータルサイト「TOKYO#女子けんこう部」を開設。サイトでは、幅広い年代の女性に向けた情報発信を行っていく。
〈TOKYO#女子けんこう部〉
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/joshi-kenkobu/

 

 

【連載】8

コロナ禍でも日常を守るために
~緊急事態宣言期間を中心とした福祉施設・事業所の取組み~

新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染拡大の影響により、福祉施設・事業所には利用者の命・生活、職員の安心・安全を守るため、これまで以上に厳しい感染症対策が求められています。特に国による緊急事態宣言および東京都による緊急事態措置期間中(令和2年4月7日~5月25日)は、各施設等において新たな感染症に配慮しつつ、利用者の日常をいかに守るか苦心し、工夫を重ねていた時期でした。令和3年に入ってもなお感染拡大の状況が続き、東京では1月8日より2度目の緊急事態宣言期間に入りました。
本連載では、令和2年4、5月の緊急事態宣言期間を中心に、福祉施設・事業所が未知の感染症にどのように向き合い、利用者の生活を守る工夫や取組みをしてきたのかを発信していきます。今回は、救護施設と、重症心身障害児(者)施設について取材しました。
*今回、紹介する事例のさらに詳しい内容は、本会の「ふくし実践事例ポータル」でご覧になれます。 
(http://fukushi-portal.tokyo/)


コロナ禍での施設の生活の中にも楽しみやうるおいを提供する
~(社福)恩賜財団東京都同胞援護会
昭島荘

昭島荘は、昭島市にある生活保護法第38条に基づく保護施設です。救護施設は、心身に障害や疾病があり経済面も含めて、自立した日常生活を営むことが困難な利用者の健康で安心・安全な生活を支援する施設です。定員は100名で、現在(令和3年1月18日時点)96名が入所しています。最年少39歳、最高齢91歳(平均年齢66・8歳)と、幅広い年齢構成です。
感染症対策について
「昭島荘は入所施設のため、感染が発生すると集団感染(クラスター)のリスクが高く、インフルエンザ等の感染症対策には以前から取り組んでいた」と、主任生活指導員の茂木貴之さんは話します。手洗い・うがいの徹底や1日2回の館内消毒等に伴い、冬場であれば換気の回数を増やし、利用者へマスク着用のお願いをしています。このほかにも、インフルエンザ等の感染症予防研修を職員向けに実施しました。
これらの対応に加え、一度目の緊急事態宣言が発出された令和2年4月からは、食堂は対面を避けるテーブル配置とし、一度に利用できる人数を制限、また、職員会議の少人数化(不参加者へは議事録回覧の徹底)、政府の要請に則して「自宅待機者」対策等を図りました。
令和2年7月には、防護服「着脱方法研修」を全職員に実施し、さらに、新型コロナ陽性者発生に備え、委託している消毒業者と消毒方法等の検討を行いました。茂木さんは「建物の構造と利用者の障害等の特性を鑑み、陰性者と陽性者を分けること(ゾーニング)が困難である。その際にどこまで感染を防げるかという不安はある。だからこそ、"感染しない""持ち込まない""感染させない"という気持ちで取り組んでいる」と話します。そのために、フェイスシールドや防護服、消毒液等の備品も用意しました。
行事・イベントを「やらない」
よりも「何かできることを」
コンサートやお祭りなどの行事やクラブ活動は、一度目の緊急事態宣言を受けて、ほとんどを中止としました。しかし「コロナ禍だからといって何もしないのではなく、何かできることはないか考えた。そこで、移動水族館(※1)に応募したところ、幸運にも抽選にあたり、移動水族館が実現した」と茂木さんは話します。これを施設のイベントにしようと、模造紙や色紙を使って海の生き物をつくり、1か月間、施設内を装飾しました。
「利用者さんのコロナ禍の生活に楽しみやうるおい、刺激を提供することが私たちの仕事だと思う」と言います。
今までやってきたことを継続する
新型コロナの感染が拡大してから、制限の多い生活は続いています。
令和3年1月に二度目の緊急事態宣言が発出されましたが、大きく変わったことはありません。新たな感染対策や生活様式を変更することで混乱してしまう利用者もいます。それを防ぐためにも、日常生活や外出等のルールを再確認し、改めて気を引き締めるようにしています。
カラオケや映画会などの活動は、アクリルボードを購入して飛沫を防ぐなどの対策を取り、再開することができました。物品を用意するなどの工夫をすることで、できることに取り組んでいます。
今後に向けて
今までの行事をコロナ禍でも実施可能な企画にすることを検討中です。茂木さんは「利用者の安心・安全を守った上で、新規の入所者をどう受け入れていくかが今後の課題」と考えています。あわせて、さまざまな事情を抱える人を受け入れる"地域のセーフティネット"としての役割があり「コロナ禍で本人・家族、社会からのSOSにどう応えていくかが、私たち救護施設の使命」と話します。

職員体制を再編し、
感染症対策を強化する
~(社福)天童会 秋津療育園
秋津療育園(以下、園)は、東村山市にある児童福祉法に基づく医療型障害児入所施設および障害者総合支援法に基づく療養介護事業を行う施設です。施設入所の対象は医療管理や生活介護を必要とする重症心身障害児者で、園には医師と看護師が勤務しています。令和3年2月現在178名が入所事業、短期入所事業を利用しています。長期利用者が多く、利用者の33%は60歳以上です。
平時から徹底した感染症対策を実施
園では、新型コロナが流行する以前から、感染症対策を徹底しています。施設長で医師の大石勉さんは「感染症は年間を通して流行するため常に緊張感を持って対策をしている。来園者には手洗いやマスクの着用等をお願いしている」と話します。職員やその家族に発熱や体調不良があった場合は常勤の医師が状況を確認し「感染状況報告書」に詳細な病状を記録し、勤務が可能かどうかを判断します。利用者に対しては、CDCガイドラインの標準予防策(※2)に基づき、平時でも利用者を直接支援する際は手指消毒とマスク、エプロン型のガウンの着用を必須としています。利用者に感染症が発生した場合は、園内で検査をし、診断に基づいて適切な対応を行います。
家族へは綿密な情報提供を通して
不安を軽減
令和2年2月以降はそれまでの感染症対策に加えて、職員の出退勤時や家族、外部からの来園者には検温をして記録することにしました。
大広場での日中活動は中止し、各部屋で少人数での活動に切り替えました。面会や、月に1回の家族会も中止となりましたが、家族会役員とは綿密に情報交換をしていました。加えて、月に1回程度、家族に園や全国の新型コロナに関する対応や状況をお知らせする便りを発送しました。大石さんは「園の状況を定期的に家族に発信していたことが功を奏したのか、家族からの不安な声は多くは聞かれなかった」と話します。
衛生用品は備蓄しているものを使用し、乗り越えることができました。また、利用者の衣服をつくっている縫製室で、職員1人あたり3枚の布マスクを製作し、配布しました。
職員体制を再編し、
新型コロナ対応マニュアルを作成
園には、医療病棟が2棟、療育棟が2棟あります。令和2年4月上旬、緊急事態宣言の発令にあたり、新型コロナ陽性者の発生を想定した新型コロナ対応マニュアルを作成しました。また、エリアの消毒や接触者などに迅速に対応できるよう職員のロッカールームや休憩室、出入口を職種別から病棟別に変更し、リハビリスタッフは病棟専属での配置とするなど、職員体制を再編しました。
大石さんは「利用者は高齢の方や呼吸器系に疾患のある方が多いので、罹患した場合、生命に影響をおよぼす可能性がある。徹底した感染対策は利用者の命を守ることにつながる」と強調します。
早期発見、感染経路の遮断が
新型コロナクラスター対策の基本
令和2年12月10日から16日にかけて、職員1名、利用者4名が新型コロナに罹患しました。園内では、陽性者が発生した病棟の閉鎖と棟内のゾーニング等、より厳格な感染拡大対策を実施しました。利用者4名のうち、3名は専門病院に転院し、1名は転院先が見つからず園内で治療しました。保健所との相談のもと病棟の利用者と職員全員にPCR検査を実施し、全員が陰性と判明した後、新たな感染者のないことから令和3年1月1日、新型コロナは収束したとの判断を受けました。
大石さんは「重症化を想定した早期の転院申請は、その後の感染拡大防止にとても有効であった。改めて行政や保健所と密接に連携を図っていくことが重要」と話しました。
介護職員の人材確保は急務の課題
令和3年1月7日、緊急事態宣言が再発令されました。大石さんは「マニュアルを遵守し、職員体制の変更を継続していたため、混乱なく再発令を迎えた。今後も検討を重ね、マニュアルを充実していく予定である」と話します。続けて「今回はなんとか職員で対応することができたが、さらに感染拡大がすすめば厳しい状況になることが想定された。介護職員の人材確保は急務の課題である」と話します。

模造紙や色紙を使って、施設内を装飾

(※1)移動水族館:都立葛西臨海水族園が行う、来園が難しい方々のいる社会福祉施設等を対象に、海の生き物を専用のトラックで運ぶイベント。

 昭島荘
 主任生活指導員
 茂木貴之さん

(※2)米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病管理予防センター)が公表したガイドライン。接する利用者の感染症の有無に関わらず、分泌物、排せつ物、傷のある皮膚や粘膜はすべて感染源とみなして予防策をとることを標準予防策という。近年、介護分野を含め、感染の可能性があるものを取り扱う場合に必要な『基本的な感染予防策』とみなされるようになってきている(厚生労働省老健局 令和2年10月『介護現場における感染対策の手引き 第1版』)

秋津療育園 施設長 大石勉さん

 

 

【東社協発】

福祉の仕事就職フォーラム
特設サイトのご案内

例年開催していた福祉系合同就職説明会「福祉の仕事就職フォーラム」は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて今年度は開催中止となりました。そこで、対面型イベントに代わり、このたび、約150法人の情報等を掲載した特設サイトを開設しました(期間は6月末まで)。
ぜひ本サイトを就職・転職活動の情報収集、法人とのコミュニケーションにお役立てください。
《主なコンテンツ》
▽法人情報(地域や施設種別で検索可能)
各法人のPR動画、採用関連情報 等
▽福祉業界セミナー動画
▽資料請求・施設見学等の問い合わせフォーム
▼詳細はこちら
http://www.fukushi-forum.jp/


第33回都内民間相談機関研究協議会
「今あらためて『依存』を知ろう」を開催します

アルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存、ゲーム依存など、社会には数多くの依存症が存在します。依存症の問題が脚光を浴びるにつれ、少しずつ、さまざまな依存症の自助グループや家族会が増え、保健所や精神保健福祉センターなどの行政の専門機関でも相談できる機会や、ひとりで悩んできた人がつながれる機会も増えてきました。今回は依存症研究のエキスパートである精神科医の松本俊彦先生(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長)より、依存症について正しく学び、私たちの社会の身近な課題として改めて考えます。

共催:民間相談機関連絡協議会、東京ボランティア・市民活動センター
日時:3月26日(金)19時~21時
会場:東京ボランティア・市民活動センター A・B会議室/オンライン参加あり。
参加費:民間相談機関連絡協議会 会員 1,000円
一般 1,500円
申込方法:FAXまたはメール 
(申込締切:3月24日(水)。定員になり次第締切)申込先:民間相談機関連絡協議会 
FAX:03(3235)0050 
Mail:info@minsouren.org

 

 

【アンテナ】〈2月26日(金)時点の情報です。感染症拡大防止のため、イベントが中止になる可能性があります。詳細は各団体にお問合わせください。〉

講座・シンポジウム

【オンライン】第186回国治研セミナー
コロナ感染予防と認知症予防の
両立に向けて
3月27日(土)10時~12時半 70名 3,500円※リピーター特典あり 講演1「コロナ感染予防と認知症予防の両立に向けて」、講演2「世界の認知症の現状と取り組み~海外視察研修をとおして~」 ホームページ、FAXまたはメールにて 3月25日(木) (一社)チャイルドライフ 〒192-0916 八王子市みなみ野1-7-1 第3学生会館2階 教育研修担当:金子/縄手
042-641-5901 042-641-5902
http://childlife.gr.jp/education/index.php
【オンライン】
これからの自殺対策について
ウィズ・コロナ、ポスト・コロナを見据えて
【動画公開期間】3月21日(日)~4月20日(火) 無料 【第1部】シンポジウム「世代別にみた自殺対策」、「失われたいのちから学ぶ」、「新型コロナウイルスのパンデミックが人の心にどのような影響を与えたのか」、「ポストコロナ時代の精神科クリニックにおける自殺対策について」、【第2部】総合討論 ホームページにて ※動画公開期間中は申込可 (公社)日本精神神経科診療所協会事務局 〒151-0053 渋谷区代々木1-38-2 ミヤタビル7F
03-3320-1423
http://www.japc.or.jp/index.html
第16回シンポジウム
高齢期の資産管理と介護費用
3月14日(日)13時半~17時半 会員3,000円、一般4,000円、学生2,000円 「高齢期の資産管理と介護費用」をテーマに、基調講演、ディスカッションほか ホームぺージより (NPO)日本介護経営学会事務局 〒153-0044 目黒区大橋2-24-3 中村ビル2階(株式会社やさしい手内)
03-6684-5806
https://kaigokeieigakkai.jp/past-activity/symposium/17th_symposium/

その他

「遺言・相続110番」
(無料電話相談会)
3月18日(木)10時~15時 無料 弁護士が遺言書の作成等、相続に関する電話相談(30分程度。相談の内容によっては、面談での相談を勧める場合あり) 相続関係でお困りの方 必要なし 第一東京弁護士会 業務推進第二課
03-3595-1154(遺言センター)
https://www.ichiben.or.jp/
映画『きこえなかったあの日』
3月15日(月)~30日(火) シネマ・チュプキ・タバタ※日本語音声ガイド付上映 1,000円(障害者・学生500円、中学生以下無料) 東日本大震災直後に宮城を訪れて「耳がきこえない人たちが置かれている状況を知ってほしい」という痛切な思いを描いた今村監督がみつめた10年間 STUDIO AYA
052-621-9670
studio_aya_office@yahoo.co.jp
http://studioaya-movie.com/anohi/
第73回保健文化賞
4月15日(木)消印有効 活動年数が原則として10年以上あり、かつ将来の活動も期待できる団体・個人。ただし、東日本大震災被害への支援を主たる目的とする活動に限り、活動年数は問わない (※個人の応募は年齢が原則として50歳以上) 第一生命賞(感謝状、賞金:団体200万円、個人100万円)等 所定の申請書類と必要書類を郵送かつメール 第一生命保険(株)DSR推進部 保健文化賞担当 〒100-8411 千代田区有楽町1-13-1
050-3780-6950
hobun1950@dl.dai-ichi-life.co.jp
https://www.dai-ichi-life.co.jp/dsr/society/challenges/hoken02.html

 

 

【資料ガイド】

会議資料
■障害福祉サービス等事業所における新型コロナウイルス感染症への対応等について(厚生労働省/1月)
■令和2年度 自殺総合対策東京会議計画評価部会(都福祉保健局/1月)
■「子ども家庭福祉に関し専門的な知識・技術を必要とする支援を行う者の資格の在り方その他資質の向上策に関するワーキンググループ とりまとめ」(厚生労働省/2月)
■第24回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(オンライン会議)」資料(厚生労働省/2月)
■令和元年度福祉行政報告例の概況(厚生労働省/2月)
■令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(厚生労働省/2月)
■第160回労働政策審議会職業安定分科会資料(厚生労働省/2月)
■「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案要綱」の諮問及び答申について(厚生労働省/2月)
■成年後見制度における市町村長申立に関する実務者協議資料(3回目)(厚生労働省/2月)
■第104回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料)(厚生労働省/2月)
■感染症や災害等の非常時にやむを得ず学校に登校できない児童生徒に対する学習指導について(通知)(文部科学省/2月)
■児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(令和2年度)(第1回) 配布資料(文部科学省/2月)
■「いじめ総合対策【第2次・一部改定】」(都教育庁/2月)

調査結果
■「更生保護ボランティア」に関する実態調査-保護司を中心として-〈結果に基づく勧告〉(総務省/1月)
■「都民生活に関する世論調査」結果(都生活文化局/1月)
■令和2年上半期「雇用動向調査」の結果(厚生労働省/2月)
■国民健康保険実態調査 令和元年度(厚生労働省/2月)
■令和元年度「衛生行政報告例」の結果(厚生労働省/2月)
■東日本大震災により被災した児童生徒の学校における受入れ状況について(令和2年5月1日現在)(文部科学省/2月)
■「障害者のスポーツに関する意識調査」の結果(都オリンピック・パラリンピック準備局/2月)
■若者の消費者被害に関する調査結果(都生活文化局/2月)

その他
■離職者等向けリーフレット「最近少しお疲れ気味のあなたへ」(都福祉保健局/2月)
■(英文)#SELP challenge with Covid-
19 / コロナ禍におけるセルプの取り組み(全国社会福祉協議会/2月)

 

 

【くらし】

自分にしてもらったことを、
次の子どもたちにしてあげたい

小学生のときにネパールから家族で来日した、ジージー・プラサンガさん(21歳)は、NPO法人「としまWAKU
WAKUネットワーク(以下、WAKUWAKU)を通じ、地域の中での学習支援や支えを受けて成長してきました。そして今、大学生になり、地域の子どもたちに勉強を教え、成長を支える側として活動しています。お話を伺いました。

5年生のときに日本に
父と母、妹の4人家族です。11歳の冬に来日しました。両親は日本語が分からないため、父の会社の社長が学校のことを手伝ってくれました。小学校には日本語教室がありましたが、ネパール語の生徒は僕一人でした。その後、日本語ができるネパール人の転校生が来て、その子を通じて放課後に校庭で遊んだりする中で日本の友達も増え、日本語も上達しました。
今、この地域でもネパールをはじめ外国からの子どもが増えています。友達や言葉のことで相談されることもあります。自分の経験から「まずは、分からなくてもいいから日本語で話しかけてみると良いよ」と伝えています。
WAKUWAKUと出会い、さまざまな人とつながり頼れる人が増えた
中学生になり、日常会話は問題なくなりましたが、漢字は難しく同級生に追いつくのは大変でした。一方、ネパールでは、授業は英語ですすめられていたため、英語は易しく感じました。
中2のときに母の友達の紹介で「勉強を教えてくれるところがある」と聞き、WAKUWAKUの学習会のひとつに友達と参加しました。勉強のほか、遊びもできる楽しい場所でイベントもありました。その時の大学生ボランティアとは今もつながっています。子ども食堂も紹介してくれて、友達も増え、たくさんのつながりをつくってくれた場所でした。高校受験もサポートしてもらいました。過去問の準備や、都内の高校受験で重要な模試『Vもぎ』を無料でWA
KUWAKUから申し込んでくれたりもしました。両親は、もちろん『Vもぎ』なんて知りません。助けられました。
大学進学で支えてもらった経験
高校生になり、部活やアルバイトで忙しく、WAKUWAKUからはしばらく足が遠のいていました。
大学受験で浪人が決定しました。塾はお金もかかるため、勉強をどうすすめるか、WAKUWA
KUに相談をしてみました。すると、複数の学習会をコーディネートしてくれ、教科ごとに得意な大学生が勉強をみてくれることになりました。一緒にオープンキャンパスや大学見学に連れていってくれたほか、経済学部志望を伝えると、経済学部の大学生が進学後の情報提供や助言をしてくれました。進路選択段階でも大学生を通し視野が広がり、助けられました。
大学生の姿から影響を受けた
今、自分が大学生になり、これまで僕のために時間を使ってくれていた大学生がその裏では授業やアルバイトの合間を縫い、厳しいスケジュールを工面をしてくれていたことが分かります。また、毎回の活動後『この居場所がどうしたら子どもたちにとって、より居心地の良い場所になるか』を真剣に話し合っていたことも知りました。これまでの感謝の思いが、より一層強まりました。だからこそ大学生になった今、僕もその活動に参加して、これまで自分にしてもらったサポートを、次の子どもたちにしてあげたいと考えました。大学受験を支えてもらった時間を通して、何より、WAKUWAKUの大学生の姿から大きな影響を受けたと思います。そして自分自身と、この場所の捉え方が変わりました。
ここは、子どもたちの世界を広げ、いろいろなところにつなげてくれる、そして、困ったらいつでも来られる場所です。でも、こういう場所に出会えていない子どもたちはまだたくさんいます。こういう場所があることを一人でも多くの子に知ってほしいです。
頼られるのはうれしい
今、僕はWAKUWAKUでは、学習会やZOOMで中3生に英語と数学を教えています。また、WAKUWAKUを通じて、他区でネパールから来たある中1生の授業での通訳の手伝いをしています。来日したばかりは大変です。親も日本の学校の制度を知りません。一緒に部活や学校生活について考えたり学校との間に入ったりもします。先日、先生からその子の成長について話があり、本当にうれしく思いました。
頼られることはうれしいです。自分ができることはしてあげたい、そして、こういう場をもっと広げていきたいと思います。

「NPO法人 としまWAKUWAKUネットワーク」
の活動の詳細はこちらから

 

 

【本】

災害時要援護者支援ブックレット5
気仙沼と東京で生まれた絆
"支え、支えられる"から"ともに高め合う仲間"へ
平成28年10月に知的発達障害部会が発行した「気仙沼と東京で生まれた絆―東日本大震災復興支援記録集」をもとに作成しました。今号のNOWⅠで取り上げた、気仙沼での支援について、発災5年目時点の東京からの派遣職員と現地の方それぞれの思いや生まれた絆が本書に記録されています。
◆規格 A5判/161頁 ◆発売日 2017.1.5
◆1,100円(本体1,000円+税)
高齢者福祉施設におけるBCP(事業継続計画)訓練ガイドライン
本書では、東社協高齢者福祉施設部会・センター部会が実施したBCP訓練の内容および結果をふまえ、6つの訓練の事例を体系的に整理して紹介するとともに訓練で使用したシナリオや資料をまとめました。
執筆:齋藤 實、英 由佳
◆規格 A4判/64頁 ◆発売日 2013.2.22
◆1,047円(本体952円+税)
高齢者福祉施設におけるBCP(事業継続計画)策定ガイドライン
(震災編)〔初版第2刷〕
東日本大震災の教訓をふまえ、各施設で作成したBCPの知恵を集め、1冊にまとめました。高齢者施設でのBCP策定にお役立て下さい。
執筆:齋藤 實
◆規格 A4判/64頁 ◆発売日 2012.3.8
◆1,047円(本体952円+税)

月刊「福祉広報」

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