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福祉広報 2022年7月 762号 テキストデータ

【表紙】
東京都荒川区の子育てサロン
みんなのお家ilonaで遊ぶゆうなちゃん

気になるものが目の前にいっぱいに広がり
新しいお友だちの声も聴こえてくる
おうちとはちょっとちがった雰囲気に
ちいさな手一杯の笑顔が溢れる

社会福祉NOW 
コロナ禍で実習や福祉の体験機会が減少〜福祉人材確保・育成への影響は?

み〜つけた 
いろいろな人が集う場 みんなのお家ilona(イローナ) iroToriDori ‒multicolored neighborhood‒

【連載】地域における多文化共生のいま⑫ 
お互いを知り、助け合えるコミュニティづくりをめざして
NPO法人すみだ多文化共生交流会



【NOW】
コロナ禍で実習や福祉の体験機会が減少〜福祉人材確保・育成への影響は?
福祉施設・事業所では、コロナ禍によって社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士の資格取得のための実習や次世代に向けた福祉の職場体験の受入れが困難となりました。こうした機会の減少は、今後の福祉人材の確保・育成にどのような影響を与えるでしょうか。
東社協地域福祉推進委員会は、都内の大学等の養成校を対象にアンケート調査を実施しました。
今号では、その調査結果から、福祉における実習や体験の意義を改めて考えます。
―「資格を活かすとはいえ、実習を経験していないことから不安が大きく、福祉に就職するか決めかねている」、「二つの施設種別での実習を予定していたが、一つ目が中止になり、その種別は就職先の選択肢から外した」、「実習が延期になり、就職先を考える時期がギリギリになった」、「実習時期が遅くなり、採用選考の日程も最終締め切りが多く就職活動に苦労した」、「日誌の書き方にも実習を経験している人と差が出るのでは…と不安に思う」、「現場で求められるスキルに実際に対応できるかが不安」―
これらは、2020~21年度にコロナ禍で福祉施設・事業所での実習が予定どおりにできなかった学生たちにうかがった声です。
新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認された20年1月16日以降、それまでの日常生活とは一変しました。国は同年2月28日に『新型コロナウイルス感染症の発生に伴う医療関係職種等の各学校、養成所及び養成施設等の対応について』を文部科学省と厚生労働省の関係部局の連名で発出しました。そこでは、実習の確保が困難な場合、「実習に代えて演習又は学内実習等を実施することにより、必要な知識及び技能を修得することとして差し支えない」と示しています。この通知の対象は、福祉系では社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士が含まれ、3月2日には保育士についても同様の取扱いとすることが通知されています。そして、21年5月14日、さらに、本年度に入り22年4月14日にも同様の対応を継続することが通知されています。
実習や体験の機会を十分に提供できなくなると、どんな影響があるのでしょう。東社協地域福祉推進委員会では、22年1月27日~3月10日に都内の養成校にアンケート調査を実施し、実習担当教員40名、そして、20~21年度に実習を予定していた学生340名から回答を得ました。
実習は不足したが福祉をあきらめない
調査では21年度も82・5%の教員が「予定どおりに実習ができなかった」と回答しています。そのうち、「実習の時期を変更」と「希望していた実習先の変更があった」がそれぞれ78・8%、「実習の一部または全てを学内演習で代替した」が54・5%となっています。そして、予定どおりに実習ができなかった学生の半数は「就職先の選択に影響があった」としています。
学校側も何とか学生を実習に行かせたいと努力を重ねています。全員の教員が「実習前の一定期間、体調管理を記録させている」とし、89・7%の教員が「実習前の一定期間は行動制限」を学生に指導しています。「一定期間」には「2週間」が多く、「行動制限」には「通学以外に外出しない」「アルバイト等を禁止」などが挙げられました。
そうした中、教員の16・2%が「福祉職場への就職をあきらめた学生がいる」と答えています。一方、「福祉職場への就職は予定しつつも不安をもつ学生がいる」と答えた教員が61・5%。不安を抱えながらも福祉の道をすすもうとする学生の志を福祉職場として受けとめ、その育成と定着をいかに支援できるかが問われています。
対人援助技術には現場でしか学べないことがあります。実習機会の不足は、一定のスキルの獲得に影響を与えそうです。教員は、「コミュニケーション力」(84・2%)、「援助技術の実際」(76・3%)、「対象者理解」(73・7%)、「知識と技術の統合」(65・8%)、「チームワーク」(65・8%)の5つの獲得に影響があるだろうと指摘します。さらに、就職後の具体的な影響として、「現場に対するイメージと実際のギャップに悩むだろう」、「自ら行動することへの不安から消極的になる」、「対象者の内面を理解しようとすることが不足」、「想像力の弱さから丁寧な指導が必要になる」、「臨機応変な対応や保護者対応のスキルが不足」が挙げられ、「早期離職が増える可能性もある」といった危惧が示されています。
実習機会が十分に得られずに就職した福祉従事者は、多忙な業務と向き合いつつも先輩職員の実務から学びを得て成長のできる職場内研修の機会が必要になると考えられます。また、利用者支援をめぐる悩みを抱え込むことなく、職場内外で相談できる場があることが望まれます。
とはいえ、こうした取組みは各福祉施設・事業所だけでは困難なことも想定されます。それぞれの地域で同じ不安をもつ福祉従事者同士のつながりも大切になりそうです。例えば、新宿区内社会福祉法人連絡会では、21年10月に各法人・事業所の新人職員等を対象とした『オンラインサロン』を実施しています。参加者からは、悩みややりがいを共有し、モチベーションを高めるきっかけになったとの声が聞かれました。
コロナ禍の新たな経験を活かす
「未来の人材確保のため、できるだけ実習生を受け入れようと頑張った」。福祉施設・事業所では「実習は大切」と考え、何重もの感染症対策をしながら現場に入ってもらった施設・事業所もあります。また、オンラインを活用した実習に取り組んだ施設・事業所からは「五感を通じて気づいてもらいたいことが、オンラインではなかなか伝わりにくい」、「通常の実習では耳元で話してもらっているので、オンラインでは学生の声を高齢の利用者が聴きとることができなかったようだ」といった課題も指摘されました。
一方、調査では、学生に「実習の代替プログラムで印象に残ったもの、今後もあるとよいと思われるプログラム」も尋ねてみました。学生からは「現場の方が来校して多くの学生で話を聴くことができた」、「施設と学校をオンラインでつなぎ、授業で施設現場の話を聴くことができた」、「家族介護者懇談会など、現場の周辺の取組みを知ることができた」などが挙げられています。オンラインでは深くを知ることは難しくなりますが、逆にその特性を活かして幅広く現場の実際を発信できる可能性も広がっています。
さらに、今後、大きな災害や感染症の拡大などがあった際に柔軟かつ着実に実習や福祉職場の体験プログラムが提供できるよう備えておくことも重要になります。
次世代が福祉に関心をもつきっかけ
学生には「入学前に福祉サービスや支援を必要とする利用者との接点があったか」も尋ねました。すると、「身近に福祉サービスが必要な人がいた」は30・3%にとどまり、それを上回って、「中学生の職場体験など」が60・6%、「ボランティア活動を通じて」が37・6%となっています。福祉に関心を持つきっかけにはやはり「体験の機会」が重要です。
コロナ禍前には、中学生の職場体験のほか、地域にも開放された福祉施設のお祭り、夏の体験ボランティアなど、身近に「体験の場」がさまざまにありました。そうした機会の多くがコロナ禍に中止になりました。機会が減少したままでは次世代が福祉に関心をもつきっかけが失われるおそれがあります。これまでにあった「体験」を着実に再開していくことが求められます。
また、コロナ禍にはエッセンシャルワーカーの活躍に社会の目が集まりました。コロナ禍に福祉従事者はその専門性を発揮して利用者の安心・安全な暮らしを守り抜きました。そうした「福祉」の実践がコロナ禍に果たした役割の重要性も次世代に伝えていくべきものと考えられます。
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知識は、実際を見て気づきの体験を伴うことで、自分なりのスキルとなります。また、利用者からの直接の学びは他に代替することができないものです。実習や体験の機会を一つずつ取り戻しながら、このコロナ禍の経験をふまえ、新たな手法も活用した積極的な情報発信に今こそ取り組んでいくことが必要です。
調査結果の詳細は、東社協ホームページの調査・提言に掲載しています。


【み〜つけた】
いろいろな人が集う場みんなのお家ilona

荒川区にある木造2階建ての一軒家。「みんなのお家ilona」(以下、みんなのお家)は、2019年4月に、荒川区子育てサロンの一つとしてオープンしました。
入口では、色々な国の文字で表した色鮮やかな看板が出迎えてくれます。門をくぐるとすぐに広がる「畑」は、子どもたちが自由に土遊びをしたり、ガーデンイベントで利用されます。畑の横には、地域のボランティアの方とスタッフ手づくりの「縁側」も見えます。親子でのんびりと過ごしたり、草花や木の実を摘み、自然に親しむことができます。玄関から家に入ると、親子で遊べる部屋が二つ、カフェ風のおしゃれな雰囲気の一室に入ると、秘密基地のような「押入れ」があります。絵本を読んだり、おままごとをしたりと、子どもたちに大人気な場所です。
年齢や国籍、障害の有無に関わらず、さまざまな人が集い、会話を楽しんでいて、実際に訪れた人からは「親子で、とてもリラックスして過ごせた」との声が聞かれます。
「誰もが気軽に立ち寄り、楽しめて、近所の方との会話が生まれる場所。枠にとらわれた遊びでない、子どもたち自身で遊びを生み出す体験ができる」と、サロン運営団体「iroToriDori」代表の白井美典さんは話します。
好きな時間に来られる常設の場をつくりたい
白井さんは以前、子どもの絵画造形教室を運営していました。外国や異文化にも興味があり、15年から4年間は、さまざまな国籍の親子が交流する「多言語パーク」の活動を続けました。この活動をきっかけに、多文化、多世代、障害の有無に関係なく、尊重し支え合う姿を、地域の子どもたちに感じてもらいたいという思いを持つようになりました。
地域の声を反映した形で常設の乳幼児の親子向け子育て交流サロン「ilonaおやこの縁側」は設立に至りました。社協や区の協力のもと「みんなのお家」をつくり、その1階で運営を開始。
「一人での子育ては大変。悩みを抱えるお母さんが気軽に相談できる場所で、地域のいろいろな人が一緒に子育てを応援する環境にしたい。ここでパワーをチャージして、また明日から頑張ろうとリフレッシュしてほしい」と白井さんは語ります。
作品を通して、子どもたちを知ってほしい
「iroToriDori」副代表の氏家景子さんは、17年2月に、発達に障害のある子どもたちと保護者中心でつくる「凸凹の子と一緒に育つ会『ひだまり』」の運営を開始。21年4月から「みんなのお家」の2階で活動を行っています。子どもたちと保護者の居場所づくりをはじめ、障害のある子どもたちを知ってほしいという思いから社協に相談、設立に至りました。
気軽に話せる場所として、保護者のための「かたる場」の活動を行うほか、同年4月、自閉症啓発デーには「子ども美術館iroToriDori」を開催しました。自閉スペクトラム症や障害のある子どもたちが制作した作品を1階に展示し、区内の雑貨屋等では作品の販売も実現しました。
「作品を通して、何か心に留めてほしい。今後は、公共施設やアトリエ、雑貨屋に子どもたちの作品を展示してもらえるようにお願いしていきたい」と、氏家さんは意気込みを語ります。
コロナ禍が契機となった活動の変化
運営開始から1年経った20年3月、「みんなのお家」は、新型コロナ感染拡大の影響を受け、区のサロンと同時期に休止しました。
外出制限もあり、息抜きすることができない保護者のため、スタッフと手分けして利用者全員へ励ましの言葉と、公式LINEアカウントを知らせるハガキを送付。ZOOMの使い方を一から説明するなど、離れていてもつながることを意識して活動を続けました。
「コロナという未知の相手にどう対応したら、親子が安心して来室できるようになるのか考え続けた。お母さんを孤立させないようにしたいと思った」と、白井さんは振り返ります。その後、同年6月からおやこの縁側は運営を再開。今でもLINEは相談・交流するツールとして活用され続けています。
親と子どもの活力になる居場所に
今後について、白井さんは「地域で応援の循環ができるコミュニティをつくっていきたい。それが子どもたちにも伝わり、目の前に困っている人がいたら、自然と助けられるような人に育ってほしい」と話します。
氏家さんは「子どもに障害があることで思い悩んでいるお母さんはたくさんいる。一人で抱え込まず、皆に相談することで、今後すすむべき道や将来の希望が見えるはず。ピアサポーターとして同じ歩調で寄り添う支援を行い、ともに歩んでいきたい」と語ります。
「分野の異なる人々の輪が重なり合って、ワクワクするような新たな芽が生まれる場でありたい」と白井さんは言います。ここで出会った人達のことを知り、お互いに相手を尊重することで、かけがえのないつながりが生まれる。「みんなのお家」は、そんな居場所です。

みんなのお家ilona(イローナ)
荒川区町屋4-16-7
サロン運営団体:iroToriDori-multicolored neighborhood-
開館:月曜から金曜(祝日等を除く)午前9時15分~午後2時15分
Facebook
https://www.facebook.com/irotoridoritown/

さまざまな玩具に興味深々な様子
縁側での遊びは無限大
サロン運営団体iroToriDori
(右から)代表 白井美典さん 副代表 氏家景子さん
 

 

【マンスリー】2022.5.26 - 6.25
6/8
改正児童福祉法が成立
改正児童福祉法が、参議院本会議において全会一致で可決、成立した。一部を除き、令和6年4月に施行される。児童相談所が一時保護を開始する際に、親権者等の同意がない場合には、裁判所が必要性を判断する「司法審査」を導入するとしている。また、児童養護施設等で暮らす子どもや若者に対する自立支援について、原則18歳、最長でも22歳までとしてきた年齢制限の撤廃などが盛り込まれている。

6/14
豊島区を「児童相談所設置市」に指定する政令が閣議決定
豊島区を「児童相談所設置市」に指定する政令が閣議決定された。これにより、豊島区は児童相談所を設置することができるようになり、長崎健康相談所との複合施設として整備をすすめ、令和5年2月の開設を予定している。特別区による児童相談所の設置は、世田谷区・江戸川区・荒川区・港区・中野区・板橋区(令和4年7月開設予定)に続く7区目となる。

6/17
「防災基本計画」を修正
政府は、令和3年度に発生した災害等や関連する法令改正をふまえ、災害対策基本法に基づき作成される防災基本計画を修正した。市町村および各指定避難所の運営者は、指定避難所の良好な生活環境の確保のため、専門家等との定期的な情報交換を努めることが記載されているが、そこに、今回、NPOやボランティア等が明記された。

6/17
ヤングケアラーへの相談支援等を行う団体への補助を開始
東京都は、都内でヤングケアラーの支援に取り組む民間団体への直接補助を行う「東京都ヤングケアラー相談支援等補助事業」を開始。


【連載】12
地域における多文化共生のいま~東京で暮らす外国にルーツのある方たちをとりまくさまざまな活動・現状と課題~
日本に住む外国にルーツのある方は、言葉や文化、生活習慣の違いなどから、普段の暮らしや地域住民との関係の中でさまざまな困りごとを抱えています。これを解決するために、都内では日本語教室や学習支援、相談支援、外国にルーツのある方と地域住民が相互理解を深めるための交流など、多くの取組みが行われています。
本連載では、同じ地域に暮らす一員である彼らの日常生活のサポートや住民同士の交流を深める取組みを紹介し、多文化共生をすすめる各地域での活動から見える現状や課題を発信していきます。
今号では、墨田区を中心に多文化交流活動をすすめる団体の取組みを紹介します。
お互いを知り、助け合えるコミュニティづくりをめざして
NPO法人すみだ多文化共生交流会
2020年8月に任意団体として発足後、2022年にNPO法人化。国籍や年齢、性別などを超えてお互いが学び合い、助け合える地域コミュニティづくりをめざして、地域活動や文化交流活動に取り組んでいる。
*ホームページURL:https://www.smc-npo.jp/
事務局長の刈谷仁路志さん

住民の声をきっかけに団体を設立
墨田区の人口は、2022年4月1日現在、約27万7000人。そのうちの4・3%にあたる1万2000人弱が外国籍住民です。中国や韓国、フィリピンを中心に、出身国は90か国以上にわたるといいます。
すみだ多文化共生交流会(SMC)は、地域活動や文化交流を通じて、国籍や年齢、性別などを超えてお互いが学び合い、助け合える地域コミュニティづくりをめざして、20年8月に任意団体として発足しました。墨田区では、以前から日本語教室は開かれていましたが、当時は多文化交流活動や、そのネットワーク構築に取り組む組織はなかったそうです。
SMC事務局長の刈谷仁路志さんは、18年から墨田区の街や人の魅力を発信するタウン誌「すみだノート」の発行に携わっています。刈谷さんは「取材を通して区内のさまざまな人とつながっていく中で、外国人の方から『多文化交流する場がほしい』という声があった。自分は門外漢だったが、タウン誌の作成で培った人脈を活かして、地域活動をしている方や日本語教室を開催している方などに声をかけたり、話を聞いたりしながら、団体づくりに取り組み始めた」とSMC設立の経緯を説明します。そして「話を聞く中で、かつて多文化交流に取り組んでいた団体があったことを知ったが、その当時関わっていた方から『以前の活動のやり方を踏襲する必要はない』というアドバイスを受け、動きやすくなった」と振り返ります。22年3月に法人化した現在は、地域団体のほか、教育・福祉関係者、弁護士、行政書士、区内在勤の外国出身者など、約20名のメンバーで運営しています。
発足後は、活動が本格化する前に新型コロナの感染拡大の影響を受け、思うように活動できない時期が長く続きました。全体で集まることもなかなかできませんでしたが、21年度には区の事業助成金を活用し、外国籍住民をはじめとする区民や地域活動をしている方などが気軽に集まれる「多文化交流カフェ」のほか、墨田区在住の外国人を対象とする「暮らしのアンケート」や「暮らしの動画」の作成、SNSの強化等、実態把握や情報発信に取り組むなど、少しずつ活動を広げています。
多文化交流カフェで地域をつなぐ
多文化交流カフェは、さまざまな形で開催しています。参加者が自由に集まるサロン形式や、全国通訳案内士による浅草~墨田のまちあるきツアー、イベントなどへの出張相談、あるいは全体交流会などです。
21年9月には、墨田区東部の立花地区・文化地区を中心として、高齢者や子育て世帯、外国人などの孤立化防止・見守り強化活動を行う「One SUMIDA Project」が主催するイベントで、フィリピン出身の理事と一緒に「多文化暮らしの相談所」という相談ブースを出展しました。同プロジェクトは、社会福祉協議会や高齢者支援総合センター(地域包括支援センター)、児童館、大学、子育て支援団体など地域に関わる有志による取組みで、SMCも立ち上げ時から関わっています。
こうしたつながりから具体的な相談支援につながった事例もあります。ある時、児童館の館長から「日本語が話せない女性が生活に困っているようだ」という相談がありました。女性はフィリピン出身のシングルマザーで、コロナ禍で収入が減り、生活が困窮していたそうです。本人は日本語で状況を説明できないため、SMCの同郷の理事が女性の話を聞き、社協や区役所に同行するなどして福祉サービスの利用につながりました。
刈谷さんは、地域には相談を必要としながらも孤立している外国人がいるのではないかと見ています。同郷の人たちで集住している場合はそのコミュニティで助け合えることもできますが、そうでない場合やコミュニティが小さい場合は相談する相手がいなかったり、何をどこに相談すれば良いか分からないといったことが考えられます。当然、言葉の問題もあります。
SMCでは今後、多文化交流カフェをさらに身近な場所で開催し、気軽にコミュニケーションを取りながら、ちょっとした困りごとを話せる「街角相談室」といった形にしていくことも考えています。刈谷さんは「専門的な相談を受けて、直接解決するようなことはできないが、当事者を適切な相談窓口につなぐパイプ役のようなことができればと思っている。仕事をリタイアした人や、外国人と関わった経験を活かしたい人、また地域と関わりを持ちたい外国人もいるので、そういった方々を巻き込んでいきたい」と言います。さらに、「多文化交流に興味を持っていても、何をしたらいいのかが分からない人が多いのでは。多文化交流カフェが参加へのハードルを下げる一歩になったら」と話します。
近所付き合いの距離感を大切にネットワークをつくる
今後の活動について刈谷さんは、「外国人の高齢者も増えているので、多文化の中に多世代も入ってきているという認識。墨田区は人と人の距離が近いと感じている。日常的なちょっとしたあいさつや、何かあったら一声かけるといったことが、暮らしやすさにもつながってくる。そういった近所付き合いのベースになっているものを大切にしていきたい」と話します。
そして、「暮らしに根ざした相談などの部分と、イベントによる多文化交流や魅力発信などの楽しい部分のバランスを取って活動していきたい。それを通じて、区内のさまざまな活動に横串を通していきたい」と展望を語ります。
多文化交流下町1dayツアーの様子
「暮らしの動画」では、出身地の料理なども紹介
2021年9月に実施した多文化交流カフェ全体会の様子。活動紹介や情報交換などを行った
大学生との交流や防災の取組みへの参加など、さまざまな機会を活かして活動をすすめている



【東社協発】
2021年度東社協事業報告
2021年度事業報告および決算が、監査ならびに22年6月9日の理事会、同24日の評議員会を経て承認されました。21年度は、『平成31年度(2019年度)からの3か年 東社協中期計画』の最終年として「東京の多様性を活かした〝地域共生社会づくり〟の推進」を共通目標に取組みを推進してきました。
昨年度に引き続き新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大防止のため、オンラインによる研修や主要な協議の場の設定、WEBを活用した情報発信等に注力し、各事業は停滞することなく展開できました。
新型コロナの影響を受けた世帯への生活福祉資金「緊急小口資金」と「総合支援資金」の【特例貸付】は、専任の事務センターを設け、7言語の対応を行っています。
1 安全・安心と権利擁護、
自立生活支援の推進
○地域福祉権利擁護事業の契約件数は4123件でした。
○「地域と家庭裁判所の連携による成年後見制度の新たな選任・利用支援のしくみ」を推進し、17区市(前年度11区市)で東京都の補助メニューによる取組みが行われました。
○福祉サービス運営適正化委員会では、コロナ禍における現地調査としてオンラインによるリモート調査の手法を確立し、10カ所の調査を実施しました。
○新型コロナの影響を受けた世帯への「緊急小口資金」「総合支援資金」の【特例貸付】は、21年度に21万9000件超の貸付を行いました。借受人25万2000人に償還・償還免除に関する案内を送付しました。
2 福祉水準の向上を支える
基盤の強化
○介護現場におけるハラスメント対策事業として相談窓口を設け、弁護士等によるメール相談や電話相談を開始しました。
○新たな求職者ニーズに対応し、所定の要件を満たした後に福祉職として一定期間継続して従事すれば償還免除となる新たな貸付事業として
・介護分野就職支援金貸付事業
・障害福祉分野就職支援金貸付事業
・福祉系高校修学資金貸付事業
を開始しました。
○「人材定着・離職防止相談支援事業」では、「福祉のしごとなんでも相談」に事業開始後、最多の1832件の相談がありました。
○東京都福祉人材対策推進機構専門部会では、コロナ禍における無資格・未経験者への就職支援について検討・意見交換を行い、さらにアフターコロナへの展開に向けたまとめを行いました。
○福祉人材センター研修室では、昨年度に引き続き、収録型・ライブ型WEB研修を強化し、多くの福祉従事者の研修機会の確保と感染予防の両立に努めました。
○従事者共済会では、20年度の制度改正に基づき、新給付率による施行や資産の移受管を実施し、安定的で持続可能な制度構築に努めました。
3 ネットワークの構築・協働と
幅広い参加の促進
○東京都地域公益活動推進協議会では、22年度からの全加入組織(オール東京)に向けて、積極的な広報活動と各種別部会等での説明や意見聴取に努めました。
○障害者支援施設等において、高齢化や重度化、強度行動障害等への対応力向上のため施設へ専門職等を派遣する「障害者支援施設等支援力育成派遣事業」を開始、施設の支援力強化を図りました。
○施設部会では、新型コロナ対策のため、主要な会議・研修会等でオンライン等を積極的に活用して、部会活動を展開しました。さらに、各部会の特性に応じたテーマで、事例集の作成や特設ページの開設等による情報発信強化に努めました。
○東京都民生児童委員連合会では、ホームページやバス広告、SNS等を活用した民生児童委員活動の普及啓発を行いました。また、各種研修はDVD配布や動画配信等による研修機会の確保で、多くの参加がありました。
○東京ボランティア・市民活動センターでは、広報戦略担当を設置し、WEBサイト「ボラ市民ウェブ」や情報誌、SNSの活用等、多様な情報発信に努めました。
○東京善意銀行では、福祉施設等の寄附配分のニーズを的確に把握するために、アンケート調査を実施して、寄附の適切な配分に努めました。
4 地域の取組みの支援と普及
○「重層的支援体制整備事業に向けた社協の取組み方策検討プロジェクト」を設置し、実施地区の事例をもとに社協の取組み方策を整理しました。
○地域づくりをすすめるコーディネーターの養成研修や、実施区市町村の情報交換会等をオンラインで開催しました。
○社会福祉法人の地域ネットワーク、民生児童委員協議会、社協の三者連携による協働体制で対応する5つの実践事例を紹介する「チームで取り組む 地域共生社会づくり」を発行しました。
5 情報発信と提言
○地域福祉推進委員会では、都内養成校の教員と学生を対象に、コロナ禍による実習機会や施設体験等の減少による影響についてアンケート調査を行い、その結果をまとめました。
○新任職員定着の参考となる施設・事業所の取組み事例や各種制度をまとめた「施設長・先輩職員のための定着応援ハンドブック」を発行しました。
○福祉の魅力可視化プロジェクトでは、中学生の職場体験の事前・事後学習等で活用する冊子の改定を行いました。あわせて福祉の魅力を伝える動画を作成しました。
6 東社協法人基盤の強化
○22年度からの新たな中期計画を策定し、長期・三か年の「取組みの方向性」を示し、15の重点事業について具体的な到達目標を設定して、22年度以降、進行管理と評価をしていきます。

2021年度 東社協決算報告の概要(資金収支総括表)単位:円
事業区分 拠点区分 収入 支出
一般
会計 社会福祉事業 地域福祉活動推進事業 874,899,853 874,899,853
出版事業 256,173,897 256,173,897
福祉基金 15,670,402 15,670,402
ボランティア・市民活動総合基金 9,605,654 7,037,912
杉浦基金 4,022,731 1,848,660
西脇基金 90,655,095 64,214,854
ヒカリ興業奨学基金 10,000,000 9,930,120
施設部会特別活動 112,889,280 91,184,932
東京ボランティア・市民活動センター 209,142,917 217,303,558
東京都福祉人材センター 2,143,781,059 2,143,781,059
権利擁護事業 613,449,000 613,449,000
東京善意銀行 65,965,180 65,576,941
東京都民生児童委員連合会 166,623,681 161,241,687
自立生活スタート支援事業 38,575,732 25,916,000
受験生チャレンジ支援貸付事業等貸付事業 941,365,722 941,365,722
多重債務者生活再生事業 72,772,928 72,772,928
東京都地域公益活動推進協議会 18,726,000 16,737,225
社会福祉事業区分 計 5,644,319,131 5,579,104,750
公益事業 従事者共済会 13,218,300,070 13,198,419,807
介護福祉士等修学資金貸付事業 114,559,023 500,522,359
福祉系高校修学資金貸付事業 13,030,000 8,097,170
介護分野就職支援金貸付事業 99,800,000 8,222,890
保育士修学資金貸付等事業 115,169,288 858,401,452
ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業 6,914,398 64,907,400
児童養護施設退所者等自立支援資金貸付事業 653,700 67,555,100
ゴールドマン・サックス市民活動協働事業 24,683,774 24,683,774
公益事業区分 計 13,593,110,253 14,730,809,952
一般会計 合 計 19,237,429,384 20,309,914,702
生活福祉資金会計 生活福祉資金 144,543,057,884 122,720,984,047
生活福祉資金貸付事務費 3,394,682,660 2,840,133,865
要保護世帯向け不動産担保型生活資金 127,240,153 150,541,770
臨時特例つなぎ資金 949,770 19,223,400
離職者支援資金(都・子育て加算) 1,480,059 4,003,289
※支出が収入を上回る会計は前期末支払資金残高により充当されています。

東社協 新会員のご紹介
▽東京都高齢者福祉施設協議会
特別養護老人ホーム生寿園/新田楽生苑
▽介護保険居宅事業者連絡会
砧愛の園/訪問介護 同心/ベストリハ墨田
▽保育部会
はるの小川ちとせ保育園/ウィズブック保育園天王洲/おやまがおか 種まく人保育園/滝野川北保育園/ナーサリー中野の森
▽知的発達障害部会
江戸川区立障害者就労支援センター/アレーズ秋桜/Life Design うぃーる/Life Design らふ
▽身体障害者福祉部会
生活寮そら
▽情報連絡会員
せせらぎの里/グループホームじゃんぷ/品川区立平塚高齢者多世代交流支援施設/品川区立東品川高齢者多世代交流支援施設/ぷりすくーる西五反田/かがやきの郷福楽園/一般社団法人 反貧困ネットワーク/ゆんたく福祉サポート/すくすくキッズ/LIFE SCHOOL 阿見/LIFE SCHOOL 鳴海駅前/港区立障害保健福祉センター 放課後等デイサービス/グループホームひまわり/Life Design ほとり

「地域福祉推進に関する提言2022」を発行しました
東社協地域福祉推進委員会では、毎年、地域福祉推進のために重点的に取り組むべき事項をまとめ、「委員会からの提言」と「部会・連絡会からの提言」を整理し、提言活動を行っています。
国においては、改正社会福祉法が2021年4月から施行され、「重層的支援体制整備事業」が始まり、各区市町村が実情に応じた体制づくりに取り組んでいます。一方、コロナ禍でこれまで顕在化していなかった地域の課題が把握され、新たな地域福祉活動が求められています。また、コロナは福祉職場での実習や次世代の体験機会の減少といった福祉人材の確保・育成にも影響を及ぼしています。
委員会ではそうした視点をふまえ「委員会からの提言」と「部会・連絡会からの提言」を行いました。
今後も、関係者の皆さまのご意見をいただきながら、提言活動の充実を図ってまいります。
▽内容
●第1部 委員会からの提言
【提言Ⅰ】コロナ禍で顕在化した地域課題への対応~重層的支援体制整備事業や社会福祉法人の地域公益活動の活用~
【提言Ⅱ】実習や体験機会の減少による福祉人材確保・育成への影響~福祉職場への就職後に経験の不足を補うための支援とコロナ禍の経験をふまえた新たな取組みに向けて~
●第2部 部会・連絡会からの提言
【主な提言~抜粋】
*地域福祉を推進する人材の確保・育成・定着の支援
*地域包括ケアの構築には高齢者福祉施設のもつ社会福祉の総合力を活用すること
*感染症対策への取組み
*保育の質を向上させるための配置基準の検討
*長期化する新型コロナウイルス感染症流行下において増加する生計困難者又は生活困窮者への無料低額診療事業の利用など
「提言2022」の詳細はこちら



【アンテナ】
7月1日(金)時点の情報です。詳細は各団体にお問合わせください。この他にも東社協ホームページに各種情報を掲載しています。
東社協ホームページ「各種福祉情報の提供」
https://www.tcsw.tvac.or.jp/about/
keyword/kakushu.html


助成金
子供が輝く東京・応援事業
【定額助成(新たな取組へのチャレンジ)】令和4年度公募
7月21日(木)消印有効 結婚、子育て、学び、就労までのライフステージに応じた取組みを行う都内に本社または事務所を有する法人 上限1,000万円 所定の応募書類に必要事項を記入し、書留など配達記録が残る方法で郵送 (公財)東京都福祉保健財団 事業者支援部 運営支援室 子供が輝く東京・応援担当 〒163-0718 新宿区西新宿2-7-1小田急第一生命ビル18階
03-3344-8535
https://www.fukushizaidan.jp/313kosodate/
公益財団法人ユニベール財団2022年度 研究助成
7月29日(金)午後5時必着 心と健康、社会的包摂に関わるソーシャルワーク実践、これからの福祉の環境づくりに関する領域の研究を行い、(1)(2)両方の条件を満たす方。(1)大学、研究機関、教育機関等において研究教育活動を行っている方、または社会福祉団体において社会福祉の実践に従事している方(2)大学院修士課程または博士前期課程に在籍される方、ならびに修了された方、またはそれと同等以上の資格や能力を有する方 上限100万円 所定の申請書に必要事項を記入し郵送 (公財)ユニベール財団 〒160-0004 新宿区四谷2-14-8 YPCビル5階
03-3350-9002
https://www.univers.or.jp/index.php?researchgrant
2022年度チャリティープレート助成金
9月30日(金)必着 障害者が通う小規模作業所、アクティビティ・センター(自立生活センター、グループホーム等)で、特に緊急性が明確である団体 上限50万円 所定の申請書類に必要事項を記入し、必要書類を同封の上、郵送 (特非)日本チャリティプレート協会 〒166-0012 杉並区和田1-5-18アテナビル2階
03-3381-4071
http://www.jcpa.net/jcpa/?page_id=13
講座・シンポジウム
第195回 国治研セミナー
8月6日(土)9時半~12時 ※Zoomを活用したオンラインセミナー 「子ども達の生きる力を育む2022~ソーシャルスキルトレーニング&ペアレントトレーニングの視点からパート2~」と題した土屋徹氏による講義 保育士や児童相談員、児童発達支援員、教員、臨床心理士、MSW、OT、ST、PTなど 4,000円 ※条件により料金の変更あり 70名※受講人数に到達次第終了 ホームぺージ、メール、FAX 8月4日(木)午後6時迄 (一社)チャイルドライフ 教育研修部
042-641-5901 042-641-5902
edu@childlife.gr.jp
http://childlife.gr.jp/education/
令和4年度 意思決定支援と虐待防止に関する研修会
9月17日(土)、18日(日) ※Zoomによるオンライン研修 300名 10,000円 意思決定支援と虐待防止について基礎から学び、共生社会の実現に寄与することを目的とした研修会 市町村(障害福祉担当者)や障害福祉センター、障害者団体、各障害福祉サービス事業所の職員、その他障害福祉に関わる者 8月16日(火)※申込状況により調整あり 申込専用WEBサイト 全国障害者総合福祉センター(戸山サンライズ) 〒162-0052 新宿区戸山1-22-1
03-3204-3611 03-3232-3621
https://www.normanet.ne.jp/~ww100006/trainingsession2022.html
その他
第57回NHK障害福祉賞~障害のある人と支える人の体験作文の募集~
7月31日(日)消印有効 2つの部門で体験作文を募集(1)障害のある本人の部門 (2)障害のある人とともに歩んでいる人の部門 【作品発表・表彰】12月に入選作品集を発行し、入選者への表彰式を行う 所定の応募票を記入の上、作品に添付し、郵送またはホームページにて応募 (社福)NHK厚生文化事業団「障害福祉賞」係 〒150-0041 渋谷区神南1-4-1 第七共同ビル
03-3476-5955 03-3476-5956
https://www.npwo.or.jp/info/22221


【資料ガイド】
会議資料
第3回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ 資料(厚生労働省/6月)
第15回社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料)(厚生労働省/6月)
第121回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料)(厚生労働省/6月)
調査結果
令和2年国勢調査 就業状態等基本集計結果(総務省/5月)
重度重複障害児者等の生涯学習に関する実態調査(令和3年度)(文部科学省/6月)
不登校に関する調査研究協力者会議
報告書~今後の不登校児童生徒への学習機会と支援の在り方について~(文部科学省/6月)
その他
高齢者虐待に関する通報・相談窓口(区市町村)(都福祉保健局/5月)
「2023(令和5)年度 社会福祉制度・予算等に関する要望書」(全国社会福祉協議会/5月)
児童生徒への性暴力等の防止に向けた啓発動画(文部科学省/6月)
学校施設のバリアフリー化の加速に向けた取組事例集(文部科学省/6月)


【くらし】
お互い様の心でつながり、仲間と笑顔で過ごしたい
各区市町村には、地域交流の場として地域の住民が主体的につくるサロン活動や居場所があります。
府中市で、誰でも自由に参加でき、工作や手芸、ゲームなどの活動を行う「井戸端サロン木曜会」の代表者の小柴典子さんにお話を伺いました。
サロン活動との出会い
数年前に、脊柱管狭窄症を患い、手術をしました。同時期に身近な家族が亡くなったこともあり、気持ちが落ち込み、無気力になってしまいました。そんな様子を見た娘に「市でいろんな講座をやっているよ」と勧められたことがきっかけで、ネイル教室や口腔機能向上の講座等、介護予防にまつわる教室に参加するようになりました。そこで人に会ったり、体を動かしたりするうちに、少しずつ元気になったのを覚えています。
徐々に会場の準備や手伝い等にも関わるようになったある時、「ここに来られるのは元気な人がほとんど。一人暮らしの方たちの中にはどこにも行く所がなく一日中家にいる人もいるんじゃないか」と、ふと思いました。友人ともそんな話をして、何かできないかと考えていた時に「サロン立ち上げませんか」という社協のチラシを見つけたのです。社協に連絡をとり、友人17人を誘って2015年に「井戸端サロン」を立ち上げました。
「井戸端サロン」という名前には、昔、井戸の周りに自然と皆が集まり、何気ない会話やつながりが生まれていたように、サロンを通じて自然とお互いを気遣うつながりができたら、という思いを込めています。
お互い様の心で支え合う
井戸端サロン木曜会は、自治会の協力もあり、都営住宅の集会所で活動しています。コロナ禍前には、毎月2回木曜日、自由参加で集まり、手芸や工作、ゲームのほか、映写機を使って映画観賞会など企画も盛りだくさんで活動していました。自由参加ではありますが、一人暮らしの高齢者が主な参加者層なので、いつも来ていた人がしばらく来なかったり、様子が違ったりするとやっぱり気になります。そうすると、家に少し顔を見に行ったり、電話をしたりして、何か困っていないかなと様子を見ます。
高齢になるとどうしても体の具合が悪くなることが多いですが、一人暮らしだと一層大変です。身寄りのない病気の高齢者に寄り添った経験は一度や二度ではありません。毎日のように家に通い、ドライシャンプーを手伝ったり、のり巻きをつくって届けたり、都営住宅の玄関に手すりを付けられるように働きかけたこともありました。
振り返ると、さまざまなことをしてきましたが「してあげている」という感覚はなく、何かあればお互い様という気持ちや、人と会える楽しさ、誰かの役に立てたという充実感が力になって、自然と体が動いています。
製本業を営んでいた実家には、昔から多くの人が出入りしていて、みんながお互い様という心でつながっていることを幼い頃から当たり前のように見てきました。そんな生活の中で受け継いだ考え方が今につながっているのかもしれません。
子どもが小さい時には、PTAの役員を合計で11年間、地域の子ども会の役員も17年間務めました。自分の家族はもちろんですが、地域のみんなにとって少しでも良くなれば、という思いでいつも動いています。
出来ること一つ一つを大切に
コロナ禍になり、今まで通りの活動ができないことは一番の悩みでしんどいところです。なかなか集まれないので、会報をつくり、7名の役員が手分けをしてサロンの参加者に届けています。顔を見ると様子も分かるので、いつもと違うなと感じた時には社協に相談するようにしています。
正直に言えば、若い世代もいないので、将来このサロンがどうなるかは分かりません。ただ、これまで考え続けてきたのは、今、目の前のできることに一つ一つ誠意を持って取り組むということです。たくさんの人に支えられ、子どもや孫など、若い世代からも教えてもらいながら活動しています。自分がいい加減に取り組んでいたら手を貸してもらえないし、信用も得られないと思っています。できることに一生懸命向き合って、社協の職員や地域包括支援センターの職員、若い人の手も借りながら、仲間と健康に長生きしたいですね。
小柴典子さん


【本】
障害者総合支援法とは…[改訂第3版]
◆規格 A4判/32頁 ◆発売日 2020.10.1
◆定価 550円(本体500円+税10%)
介護保険制度とは…[改訂第14版]
◆規格 A4判/32頁 ◆発売日 2019.8.5
◆定価 440円(本体400円+税10%)
地域福祉権利擁護事業とは…[改訂第3版]
◆規格 A4判/32頁 ◆発売日 2016.9.20
◆定価 440円(本体400円+税10%)
成年後見制度とは…[改訂第3版]
◆規格 A4判/32頁 ◆発売日 2018.5.30
◆定価 440円(本体400円+税10%)
制度解説の冊子【とは…】シリーズは、東社協のロングセラー。それぞれの制度や事業に関わる法律の改正や制度変更にあわせて、都度、改訂を重ねてきました。各制度・事業の概要やしくみ、利用事例、実績、関係機関等を紹介しています。福祉サービスに関わる関係者や、福祉を学ぶ学生が、理解しておきたいポイントを、図表を取り入れて分かりやすくコンパクトにまとめました。
職場での学習会や、授業等のテキストまたはサブテキストとしてご活用ください。
 

月刊「福祉広報」

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