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東京都社会福祉協議会

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福祉広報 2022年8月 763号 テキストデータ

【表紙】
長崎県 福江島

日本一美しいといわれる香珠子海水浴場、
離島ならではの白い砂浜と透き通った浜辺が素晴らしい。
さぁ、海遊び全開だ!


社会福祉NOW 
施設を超えた協力で、支援力を高め合う〜知的障害者施設の高齢・重度化の現状と取組み~

福祉のおしごと通信 
仕事の壁を一人で乗り越えようとしていませんか?~チームで乗り越えた特例貸付奮闘記~
社会福祉法人台東区社会福祉協議会 生活支援係 小玉 周平さん

トピックス 
発達性読み書き障害の子どもを持つ家族の相談から地域の取組みへ
社会福祉法人練馬区社会福祉協議会 練馬ボランティア・地域福祉推進センター

【連載】地域における多文化共生のいま⑬ 「おとなりさん」との双方向の関係性が日本社会での暮らしやすさに
NPO法人アジア人文文化交流促進協会 Japan Intercultural Intelligence

 

【NOW】

施設を超えた協力で、支援力を高め合う〜知的障害者施設の高齢・重度化の現状と取組み~
東京都では、2018年から障害者支援施設等支援力育成派遣事業を開始しています。これは、利用者の高齢・重度化や強度行動障害等への対応を行っている知的障害者施設等へ専門職等を派遣し、個別メニューの作成支援や技術指導を行うことにより、支援力向上をねらいとしています。
今号では、派遣される支援チームメンバーと派遣受入れ施設の声から、知的障害者施設における現状とニーズを探ります。


高齢・重度化によりいま施設に求められること
近年、知的障害者入所施設では利用者の高齢・重度化が加速しています。知的障害のある方は加齢に伴う身体機能の低下が著しいと言われており、転倒による骨折や誤嚥性肺炎等の事故リスクが高まります。それに伴い、高齢化に対応していない従来の設備や職員の配置体制では対応が追い付かない状況にあります。
知的障害がベースにあるため、一般的な介護の対応だけではなく、高齢・重度化、強度行動障害などの利用者の特性に応じた支援を行う必要があり、専門的な支援スキルの獲得や支援内容・体制の見直し、環境整備をはじめ多くのことが施設には求められます。
こうした背景から、東京都は2018年度より「障害者支援施設等支援力育成派遣事業」(以下、派遣事業)をモデル事業として開始しました。21年度からは、東社協が受託して本格実施しています。先駆的に高齢・重度化に対応してきた施設の専門職(支援員・PT・ST(※1)等の多職種)を支援チームとして派遣し、派遣先施設の課題把握からノウハウの提供と実践、そして効果検証までを約1年かけて行います。月1回程度の限られた訪問の中、施設の支援力強化を図ることがめざされています。
多職種で連携し、高齢・重度化に対応する
~支援チームの視点から~
派遣事業の立ち上げから中心的に関わっている社会福祉法人滝乃川学園常務理事の高瀬祐二さん、STとして支援チームに関わっている社会福祉法人つるかわ学園の鴫原雅典さん、PTの黒川恵さんに、支援チームの視点から知的障害者施設での高齢・重度化の現状や対応するために必要な視点等をお聞きしました。

滝乃川学園では、約20年前、一部の棟の利用者の年齢が60歳を超えました。高齢・重度化から派生して起こる課題に対し、重度心身障害者施設へ職員を派遣して身体介護の技術を学んだほか、PTの常勤採用、設備改修などの対応をしました。
同じ頃、高瀬さんが入所施設代表幹事を務めていた東社協知的発達障害部会(以下、知的部会)は、東京都と「知的障害者施設にとって高齢・重度化は今後大きなテーマになる」と共通認識を持ちました。
16年、東京都は、滝乃川学園を含めた先駆的な取組みをしている施設に他施設から支援員を集め、育成する事業を始めました。そして、18年、課題を抱える施設に、先駆的に取り組んでいる施設の職員を派遣する形に変え、現在の事業に至ります。
支援チームの中心を担う高瀬さんは「東日本大震災の直後、知的部会の災害応援派遣で現地のコーディネーターを担った。当時、多くの施設や専門職の方から各施設の課題を聞いた。各施設が協力して課題を解決することに意義を感じ、この事業につながった」と話します。
支援チームが大事にしていること
支援チームが派遣先施設を訪問する際、大事にしている点があります。一つはその施設の課題抽出です。施設自身が『困っている』と感じることでないと自分ごとになりにくいため、丁寧に課題の整理を行います。
二つ目に、施設と共に持続可能な対応を考えることです。例えば、黒川さんは「移動する際はエレベーターではなく、階段を使ってみる等、いつもの流れの中でついでにできることを支援員と確認しながら提案している」と話します。
三つ目に、多職種との連携です。多くの知的障害者施設では福祉用具業者とつながっていない状況があります。さらに「探すのが大変なほど知的障害分野に関わるPT、STが少ない。専門職の方がいると、支援に根拠や厚みができる」と高瀬さんは話します。また、身体介護の経験がない職員の中には、腰を痛めながら介護している状況もあります。施設が高齢・重度化に単独で対応することは難しいので、医療機関や栄養士、PTやST等の専門職といった施設の外部資源を活用することが重要です。そのため支援チームでは、外部資源の活用の仕方も伝えています。
高齢・重度化する利用者への支援で大切なこと
高齢・重度化する利用者への支援は、一つを解決すれば結果が出るものではありません。高瀬さんは「施設が自分たちで気づいて自分たちで解決していかないといけない。これまでやったことのない仕事をしなければならない。活用できる資源、ノウハウを揃え、施設間で共有、協力することで、業界としての進歩があると思う」と語ります。
また、高齢・重度化に対応するにあたっての意識も大切です。鴫原さんは「ネガティブな対応になりがちだが、いかに前向きに取り組んでいくかが大事。例えば、食事や歯磨きに時間がかかるようになるが、捉え方によっては一人ひとりコミュニケーションがとれたり、健康管理ができたりするなど、その時間を充実させることができる」と言います。
外部の視点を取り入れる大切さ
~社会福祉法人渡良瀬会緑ヶ丘育成園(栃木県足利市)
利用者の平均年齢は58歳。1968年に開設した緑ヶ丘育成園では利用者の高齢化がすすんでいます。支援チーム受入れ当時、介護を要する利用者と強度行動障害の利用者が混在する現場では、事故リスクが高まっていました。支援現場のどこに課題があるのか分からない状況にあり、また高齢・重度化の対応について経験やスキルが不足するまま、判断をすることに不安を覚える職員もいました。「施設で利用者の特性に応じた支援を模索し始めたところでモデル事業の話を受けた。まずは施設での取組みを優先しては、との声もあったが、せっかくいただいた機会と前向きに捉えた」と、支援課の吉田紀久さんと前原由実さんは受入れの背景を振り返ります。
高齢支援と強度行動障害支援の2チームで、支援チームと共に、まずは課題の洗い出しを実施しました。支援チームの工夫により、初回訪問から施設職員がざっくばらんに意見を出しやすい環境にありました。高齢支援チームでは食事支援、そして強度行動障害支援チームでは日中活動と環境づくりを中心に、約1年、課題把握から取組み検討・実施を繰り返しました。
ひとつのきっかけから生まれるいくつもの変化
「現場職員が自ら考え、形にしていく機会が少なかった。受入れをきっかけに、自分たちで考えていく必要があることに気づけた」と、職員の意識変化について吉田さんが挙げるように、支援チームをきっかけに、多くの面で施設に変化が生まれました。ミールラウンド(※2)導入に加え、PT・歯科医も定期的に現場に入っています。専門職との連携は、職員の負担軽減、何より支援の質の向上につながっています。利用者の日中活動(空き缶等を資源に変えるリサイクル活動)を通じて地元の小学校と連携する等、施設外との新たなつながりも生まれています。高齢・重度化への対応の一環として受け入れた支援チームをきっかけに、課題を抱えていた支援現場にとどまらず、会議体制や職員の意識、そして外部との関係までプラスの影響が及びました。
つながることで見えてくること
「何を言われるのだろう、と受け入れる側は身構えると思う。色々なアドバイスをもらい、施設の変化を目の当たりにした。身構えることはない」と、前原さんは受入れをためらう施設に共感しつつ、外部の視点を取り入れることの有効性を伝えます。課題を抱え、行き詰まり感を覚えている時こそ、外部を受け入れることをプラスに捉えることが重要です。「他施設を知ることで、うちだけが抱えることではないという気づきを得ることができる」。吉田さんが受入れを経て『横のつながり』の大切さを強く実感するように、今後高齢・重度化に伴い生じる新たな課題へ取り組む上で、施設間で課題を共有し共感することが、大切な一歩といえます。
変化を受け入れ、変わることの意味を考える
~社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会 恩方育成園(八王子市)
「職員の視点が外ではなく内に向いていた。新たなことを取り入れたいという意識が施設としてあった」と支援係長の本田友則さんが話すように、恩方育成園の支援チーム受入れには、利用者の高齢・重度化への対応以外に、現状維持の傾向が強い施設に危機感を抱き、意識変化を図ることが目的にありました。全職員で参加し、表面化していた課題ごとにチームに分かれ(STチーム・PTチーム・利用者支援チーム)、支援チームと共にすすめていきました。
専門職、外部機関とのつながり
どのチームにも共通していた課題が専門職との連携や課題の捉え方です。「課題が気づきのままとなり、具体的な取組みに至っていなかった。専門職の知識を根拠に取り組む意識がついた」と、主任支援員の門倉志保さんは車いすの利用者を例に、専門職や外部機関との連携を強調します。ある利用者の姿勢の変化について、要因は筋力低下ではなく車いすにあることが、PTや福祉用具業者の視点から分かりました。
職員だけの判断ではなく、専門職の視点を入れることにより、異なる取組みが可能となります。また、対処的ではなく機能維持としての予防的なアプローチや、個人ではなくチームとして課題を捉えることが支援チームをきっかけに園全体に浸透していきました。
変化を受け入れる
施設を取り巻く環境が変化しても施設だけは変わらない。そうした状況は一転し、受入れ期間後も施設では変化が継続しています。支援現場へのICT導入や会議体制の見直し、そして、専門職との連携やチームアプローチの継続等、変える視点を持ちながら、恩方育成園は取り組み続けています。
「支援チームは特効薬ではない。施設のしくみづくりのきっかけにすぎない」と、現在、支援チームに参加している本田さんと門倉さんは、受け入れ施設の『主体性』の重要さを繰り返します。「教えてもらう」のではなく、職員が当事者として取り組むスタンスが、受入れ後も施設が課題へ対応していく上で必要といえます。
他施設を知り、自施設へつなげる
今後の障害者支援に必要なことに「問題解決を施設内でとどめず、他施設に聞き、専門職を頼る。近道はある」と、本田さんは『施設間のつながり』を挙げます。いま高齢・重度化が深刻でない場合も、他施設の取組みを知ることで、後手とならず、機能維持にもつながります。
高齢・重度化への対応について施設で漠然と想像するのではなく、先に経験した他施設の取組みや経験を参考に、自施設の取組みにつなげていく。そうしたつながりから得る『情報』が、障害者福祉の変化に対してこれから大切といえます。
                               ●                                          ●                                              ●
モデル事業実施期間も含めると事業開始から今年で5年。21年度事業報告会は、当初の想定の2倍以上の160人が参加しました。「ぜひうちにも来てほしい」という声が複数あり、事業の反響の大きさが分かります。
多くの知的障害者施設はこれから高齢・重度化を迎えます。派遣事業では、恩方育成園のように、支援を受け入れた施設が支援チームに職員を派遣し、支援チームとして他施設に入って学んだことを自施設に還元し、相互に高めあう取組みが広がりつつあります。
本事業をきっかけに、施設同士が情報やノウハウを共有し、支え合い、支援力を高めていく関係が広がることが期待されます。

(※1)PT:理学療法士、ST:言語聴覚士
(※2)食事の様子を多職種で観察して評価するもの

PTによるアドバイス(緑ヶ丘育成園)

グループワーク(緑ヶ丘育成園)

 

【おしごと通信】

台東区社会福祉協議会で働いて4年目になる小玉周平さんに、現在のお仕事への思いについてご寄稿いただきました。
仕事の壁を一人で乗り越えようとしていませんか?~チームで乗り越えた特例貸付奮闘記~

仕事に対する価値観は、「辞めたい」「楽しい」「どうでもいい」と、人それぞれだと思います。採用4年目の私は、どちらかといえば仕事を「楽しい」と思っています。福祉経験の浅い二十代の目線から、いわゆる「入社3年目の壁」について、お伝えしたいと思います。
採用1年目の私
小学生の頃からサッカーをしていますが、サッカーで一番大切なことは、「チームプレー」と「与えられたポジションを無心でこなす」ことだと思っています。ご縁があって台東区社会福祉協議会(以下、台東区社協)に採用していただきましたが、約40名程度の小さな組織なので、特に人間関係は大切です。2019年度までは採用職員歓迎会があり、チームの一員にしてもらおうと、ピエロに徹しました。「どんだけ~!」と某芸能人のモノマネを披露し、私の記憶では爆笑でした。仕事では、「起案ってなに?」と、右も左も分からない状態で先輩職員から指導を受ける日々でした。ですが、与えられた業務以外でも、役に立つことなら何でも吸収する熱い時期でもありました。動じたら負け。そう思って表情を変えずに仕事をすすめていると、上司や先輩から、「小生意気」と笑われたことを覚えています。
そんな私が福祉と出会ったのは、高校3年生のとき、「将来は人の役に立ちたい」という漠然とした想いから始まりました。進学した大学では、「地域福祉」を学び、児童、高齢、障害といった分野を問わず地域で孤立した人の支援について関心を持ちました。また、大学の実習活動先が台東区であり、この街に貢献したいと強く想い、台東区社協に就職することを決めました。入職後、生活資金等の貸付部署に配属され、現在もこの部署で勤務しています。
小生意気な私の前にそびえる特例の壁
入職して2年目になる直前に「生活福祉資金特例貸付制度」(以下、特例貸付)が始まりました。23区で一番小さな台東区でも、22年6月末現在、合計で約1万6000件の申請がありました。
最初は辛かった長時間勤務も徐々に慣れてきましたが、兼務で従事する職員や派遣会社の職員が次々と辞めていくのを見て、さすがに切ない気持ちになりました。私は辞めようとは思いませんでしたが、今思えば、チームが欠けていく業務のピーク時が「3年目の壁」だったと、改めて気づかされます。私が小生意気と言われる職場は、今では笑いが絶えません。こうしたチームの雰囲気があって、「入社3年目の壁」が「壁」に見えなかったのだと思います。
また、仕事にやりがいを見いだせたことも大きいと思います。コロナ禍で失業した方に対して資格取得制度を紹介し、資格取得後、無事に介護現場で働くことができたというケースがありました。わざわざ台東区社協にご来所いただき、直接感謝されたときは、私も自分のことのように嬉しかったです。
貸付はお断りしても支援は断わらない
皆さんも同様のご経験があると思いますが、仕事をしていると、感謝ばかりではなく、時には利用者や相談者から怒られることもあります。実際のところ、私が担当している貸付業務は、要件に該当せずに貸付をお断りせざるを得ないことが多くあります。結果として、態度が急変したり、罵声を浴びせられたり、ひどいときには、人格まで否定されることもあります。
そのようなときは、貸付できない理由を丁寧に説明し、「できないことはできません」と、毅然とした対応をすることが大事だと思います。そのうえで、貸付以外の方法をご本人やご家族と一緒に考え、別の機関につなげる等、支援を簡単に切らないよう心がけています。
ストレスはひとりで溜めない
相談者だけではなく、職員同士であっても、言葉や行動の内容によっては、「イヤだな」「頭にくるな」と思うことも当然あります。小生意気な私が、表情に出さなくなってきたのは、3年目の頃からでしょうか。負の感情を持つこと自体が悪いのではなく、その後の行動が大切です。例えば、「自分には、他にも大切な業務がある」と頭を切り替える等、自分なりにストレスを溜めない方法を身に付けることも必要だと思います。
仕事で壁にぶつかったとき、その壁を全部一人で乗り越えるのではなく、時には周りの手も借りながら乗り越えてみてください。別の角度から見ると、壁には見えないこともあるかもしれません。

小玉 周平さん
Shuhei Kodama
社会福祉法人台東区社会福祉協議会 生活支援係

 

【トピックス】

発達性読み書き障害の子どもを持つ家族の相談から地域の取組みへ
▼ 社会福祉法人練馬区社会福祉協議会練馬ボランティア・地域福祉推進センター

2022年6月17日(金)、練馬区立区民・産業プラザで、(社福)練馬区社会福祉協議会練馬ボランティア・地域福祉推進センター(以下、同センター)と東京練馬中央ロータリークラブが主催する「地域で発達性読み書き障害の理解を深めるシンポジウム」が開催されました。会場とライブ配信合わせて450名以上の参加となり、会場参加者には、冊子(発達性読み書き障害早わかりガイド)が配布されました。
1本の電話からプロジェクトが始動
取組みのきっかけは18年6月、同センターに区民から寄せられた一つの相談でした。発達性読み書き障害の子どものために、教科書へのルビ振りを手伝ってほしいという家族からの相談でした。ルビ振りをボランティアにお願いするとともに発達性読み書き障害について知るため、勉強会を同センターが開催。当日は当事者や家族、ボランティア等が学び合い交流を深めました。
同年12月、この勉強会がきっかけで、定期的に集まり話せる場の必要性を感じ「えるでぃ~学習障害について考える会~」が発足。月1回の情報交換会が現在も行われています。
19年には、ロータリークラブから地域貢献について相談を受け、地域で起きている困りごとを共有しました。そのひとつとして、発達性読み書き障害に関する現状や取組みを紹介したところ、ロータリークラブから地域でできることを共に取り組みたいとの話につながり「発達性読み書き障害の理解を深めようプロジェクト」が立ち上がりました。
プロジェクトは、地域への発信手段として、障害特性やサポートを分かりやすく解説する冊子の発行と、当事者の声を伝えることのできるシンポジウムを行うことに決まりました。その後、同センターが中心となり、当事者や地域団体、元教員等で構成される編集委員会が21年10月から数回に渡り、開催されました。
区民の悩みを社協が共に考え活動を展開
同センターの岡本朋子さんは「初めに電話をかけてくれた家族の相談を丁寧に聞き、気持ちを受け止めたうえで、短期目標でルビ振り、長期目標で、学校で読み書きに困難を抱えている子どもたちが誰でも合理的配慮を受けられる環境づくりをめざして、この取組みにつなげた」と話します。
コロナ禍でプロジェクトは1年延期されたものの、練馬社協全体で気持ちを合わせ、冊子作成とシンポジウムの開催に向けて、協力体制の構築に励みました。
冊子作成、配布で気軽に相談できる環境をつくる
同センターの村上由夏さんは「個の支援でなく、地域の支援につなげたいという想いがあった。冊子の編集には、たくさんの人に協力してもらった。冊子をつくり上げていく過程の中でチームワークが得られた。つながりの大切さを実感した」と話しています。
冊子の配布においては、学校関係者に取組みの趣旨を理解してもらうことで障害理解がすすみ「合理的配慮」が社会に広く浸透してほしいという編集委員会の願いが根底にありました。そのためロータリークラブと協力して、校長会にて冊子の概要を説明するとともに、区内すべての小中学校(97校)各クラス1冊ずつ冊子を配布しました。さらに練馬社協のホームページから、誰もが自由にダウンロードできるようにしました。
さまざまな人を巻きこみシンポジウムを開催
編集委員や当事者、専門家と打ち合わせを重ね、シンポジウムで伝えたいことを確認しました。また、オンライン配信の協力者を探していたところ、日頃からお世話になっている民生委員が地域の企業をつないでくれました。編集委員や、関係者が一丸となって周知し、想定を大幅に上回る参加につながりました。
一連の取組みを、これからの地域活動への興味・関心につなげたい
村上さんは「シンポジウムにいらした方々が、感じたことを地域に持ち帰り、周囲に伝えることで、目には見えないが地域の変化につながっていると感じている。地域住民それぞれの障害理解がすすんでいくことを願っている。今後も困っている人に寄り添いながら、仲間を増やしていく場を社協としてつくっていきたい」と話します。
岡本さんは「社協内で共感の輪が広がっていったと実感している。これまでのつながりのあったボランティアや団体、民生委員だけでなく、今回新たに地域の企業などさまざまな人たちと出会えたことで、一連の取組みができた。これからも日頃から地域とのつながりを大切にしていきたい」と話します。

編集委員と練馬中央ロータリークラブ、社協職員の皆さん

シンポジウム当日の会場の様子

発達性読み書き障害の理解を深めるシンポジウムでの1コマ

「発達性読み書き障害早わかりガイド」は、こちらのQRコードからダウンロードできます

 

【マンスリー】2022.6.26 - 7.25


6/28
「避難行動要支援者名簿及び個別避難計画の作成等に係る取組状況の調査結果」を公表
内閣府および消防庁では、市町村における避難行動要支援者名簿および個別避難計画の作成等に係る取組状況について調査を実施し、令和4年1月1日現在の状況をとりまとめ、その結果を公表した。個別避難計画が未策定の市町村は574団体(33.0%)であり、そのうち、令和4年度末には288団体(16.5%)となる予定。


6/28
「東京都医療的ケア児(者)実態調査」の結果を公表
東京都は「東京都医療的ケア児(者)実態調査」の結果を公表した。この調査は、医療的ケア児とその家族の生活の状況等や支援ニーズを把握し、今後の医療的ケア児施策の参考とするため、都民および事業所を対象に行われた。都民調査は、医療的ケア児(者)の属性や日中の居場所、相談先、主な介護者の困りごとなど、事業所調査は、医療的ケア実施に係る職員の関与度や医療的ケアの実施状況などを主な調査項目としている。

7/15
令和3年度「都民等のボランティア活動等に関する実態調査」結果を公表
東京都は、令和3年度「都民等のボランティア活動等に関する実態調査」の結果を公表した。この調査は、今後の東京都のボランティア推進施策の参考とするため、平成28年度から実施しており、平成30年度の前回調査と比較すると、ボランティア活動に関心がある人は28.9%で、16.3ポイント減少した。

 

【連載】13

地域における多文化共生のいま~東京で暮らす外国にルーツのある方たちをとりまくさまざまな活動・現状と課題~

日本に住む外国にルーツのある方は、言葉や文化、生活習慣の違いなどから、普段の暮らしや地域住民との関係の中でさまざまな困りごとを抱えています。これを解決するために、都内では日本語教室や学習支援、相談支援、外国にルーツのある方と地域住民が相互理解を深めるための交流など、多くの取組みが行われています。
本連載では、同じ地域に暮らす一員である彼らの日常生活のサポートや住民同士の交流を深める取組みを紹介し、多文化共生をすすめる各地域での活動から見える現状や課題を発信していきます。
最終回となる今号では、主に外国人住民と日本人住民との相互理解を深める活動を行う団体を紹介します。
「おとなりさん」との双方向の関係性が日本社会での暮らしやすさに
NPO法人アジア人文文化交流促進協会 Japan Intercultural Intelligence(略称 JII)
日本人と日本で暮らす外国人が、お互いを尊重し合い、それぞれの文化が持つ素晴らしさを楽しめる「良き隣人」として、共に生きる「文化共生」の実現をめざす団体。2010年に設立し、東京を中心に、「おとなりさん・ファミリーフレンド・プログラム」をはじめ、暮らしの相談やイベントの企画・運営、留学生就職支援を行っている。
NPO法人アジア人文文化交流促進協会ホームページ:http://j-ii.org/


理事・事務局長
楊 淼(やん みゃお)さん


これまでの自身の経験が現在の活動に
アジア人文文化交流促進協会(JII)理事・事務局長の楊淼さんは、日本の人事系コンサルティング会社に勤務しながら、日中両国の政府や企業が、経済や文化について意見交換を行う国際交流会議に、学生の頃から運営や通訳として関わっていました。両国の会議関係者は、中国で反日デモが激化した時期でも、お互いに信頼し合い、友好的な関係を築いていました。楊さんは「会議の様子と、中国で反日デモが起きていた当時の状況とのギャップにショックを受けた。『直接知ること』の大切さを痛感した」と振り返ります。直接関わっていれば、分かり合えることや学び合えることが数多くあり、その機会を提供したい。それがJII設立時の思いです。
仕事と子育ての両立をし始めた15年が大きな転換点となりました。楊さんは「『初めての子育て』と『外国人』という条件が掛け合わさった時、ビジネスの世界では感じなくなっていた『外国人は異質な存在』であることを改めて実感した。例えば、近所の児童館や育児サークルに行っても、周りの人が困惑してしまったり、逆に気を遣われすぎたりと、とても不自然な感じだった」と話します。そして「自分と同じような境遇の人から相談を受けることも多く、『会社員としてではなく外国人だからできることをしたい』と、気持ちが大きく動いた」と言います。勤めていた会社を17年に退職、JIIの活動に専念することを決断し、活動のあり方を模索することにしました。教育や医療、福祉の面で、日本で暮らす外国人がどのような課題を持っているのかを客観的に把握するための調査や、外国人を対象にした相談会を実施するなどしました。楊さんは「その中で、困りごとの多くは日常生活のことで、『疑問に思っていることを気軽に聞ける相手さえいれば、まず多くの問題が解決される』という確信を持つことができた」と語ります。
そこで、19年に始めたのが「おとなりさん・ファミリーフレンド・プログラム(OFP)」です。
日本で暮らす自信につながる
OFPは、日本で暮らす外国人が、地域に住む「おとなりさん=日本人ボランティア」とペアを組み、一対一の交流を通じて、日本での生活に慣れていき、なじみやすくなるためのコミュニケーションサポートプログラムです。日本人ボランティアと外国人、合わせて500人近くが登録しています。日本人ボランティアには、会社員や子育て世帯、学生、シニアの方などが登録しています。参加している外国人住民は、日本語学校や大学、大学院の学生、子育て世帯、会社員の方などで、属性はさまざまです。
ペアのマッチングは、JII事務局のコーディネーターが、外国人と日本人の登録者それぞれの居住地域や家族構成、生活スタイル、ニーズや期待することなどを丁寧にインタビューしながら、さまざまな要素を組み合わせて行います。「一対一の関係性を深めることで、それが生活を広げるきっかけになる。身近で気軽に話せる日本人とつながることによって、その人を通じて日本社会になじみやすくなると考えている」と、楊さんは話します。多くの外国人にとって、地元の「普通」の日本人と直接関わることは、大きな経験となるからです。そして、それが日本で暮らしていく自信につながります。
外国人住民が感じる「暮らしにくさ」について、楊さんは「ほとんどが『日常生活に直結するもののしくみや使い方が分からない』、『自分が困っていることを日本ではどうすれば解決できるかが分からない』といった身近なこと」と言います。また、明文化されていない日本のルールは、異なる環境で生活してきた人からすると疑問やプレッシャーに感じることも非常に多いです。例えば、オフィスカジュアルとはどの程度なら良いのか、道端で食事をして良いのかといったようなことでも戸惑うことがあるといいます。楊さんは「これらは日本での生活経験が浅いことによるもので、一度経験すれば分かるようになる。日常生活での困りごとは、専門家や相談窓口で対応するものではなく、日本で生活している日本人住民と一緒に解決すればいい」と言います。OFPは、外国人が抱える孤立や情報不足、暮らしにくさを解消していく役割を担っています。
一方的な支援にならない関係性づくりを
「OFPを始めた時は、日本人ボランティアが集まらなかったらどうしようと心配だった。しかし、実際には、多くの人が登録してくれて、外国人とつながりたいと思っている人がたくさんいることを強く実感できた」と、楊さんは言います。日本人がOFPに登録している理由として、「自分が海外で現地の人に親切にしてもらったから同じように外国人に接したい」、「自分と異なる考え方や文化を持っている人のことを知りたい、理解したい」といったことがよくきかれています。楊さんは「これらは、まさに我々の活動で大切にしていること」と強調します。困っている人に手を差し伸べて助けるだけではなく、双方向の関係性やつながりを重視しています。楊さんは「外国人支援という言葉をみると『外国人=困っている人』と思ってしまうかもしれない。もちろん専門的な支援が必要な人もいるが、多くの場合、一方的な関係は成り立たない。これまで接することがなかった異なる文化や価値観を持つ人と関わることで、必ず自分自身に変化をもたらし、相手にも変化を与える。その相互作用を深めていくことが大切」と、活動への思いを語ります。
いつかOFPがなくなるような社会に
現在は、首都圏エリアで活動していますが、今後、日本全国へ広げていき、外国人住民がどこに住んでいても、その地域で「おとなりさん」を見つけられるような未来を、JIIはめざしています。楊さんは「OFPは、これまでの社会の枠組みにあてはめにくいしくみかもしれないが、日本人と外国人両方のニーズに応えているものであり、外国人が日本社会になじみ、一緒に生活していくために必要な、革新的なもの。多くの人に知ってもらい、参加する人が増え、日本に暮らす住民同士の力で社会が良くなっていくことを期待している。そして、いずれOFPのようなしくみがなくても、みんなが自然に関わるような社会になったら嬉しい」と、今後について語ります。
21年8月号から連載してきました本テーマは今号で終了します。地域で活動するさまざまな団体を知っていただけたら幸いです。

JIIのシンボルマーク。木や鳥にはさまざまな色が使われており、豊かな共生をイメージさせる

「おとなりさん・ファミリーフレンド・プログラム(OFP)」のしくみ(JIIホームページより)

 

【東社協発】

西脇基金チャリティーコンサート2022を開催します

【西脇基金チャリティーコンサートとは】
西脇基金は、西脇和昭氏のご遺志によりご遺族からの寄附を受け、東社協に設置している基金です。児童養護施設や里親のもとで暮らしている子どもたちが、大学・短大・各種学校等へ進学する際の学費を支援しています。
基金創設以来35年間で、延べ1,400人以上の子どもたちに奨学金を給付してきましたが、給付件数の増加等により、その運用益だけでは必要な給付財源を確保することが難しくなっています。そこで、1997年に発足した「西脇基金を支える会」により、毎年チャリティーコンサートを開催していただき、その収益のすべてを東社協にご寄附いただくことで、西脇基金の給付に充てさせていただいております。
【コンサート概要】
〈西脇基金チャリティーコンサート2022〉
日 時:9月27日(火)18時00分開演(17時30分開場)
場 所:なかのZERO 大ホール
(中野駅南口より徒歩10分)
入場料金:(前売り券)自由席:3,000円、指定席:3,500円
(当日券)自由席:3,500円
出 演:第一部 鈴木直樹BAND
第二部 富岳太鼓
【チケットお問合わせ・お申込み先】
西脇基金を支える会 (TEL)03-3256-3674

 

 

【東京の寄附のカタチ】東京善意銀行への寄附をご紹介します。(不定期掲載)

ニチレイふれあい基金~ニチレイグループによる社会貢献活動~

「ニチレイふれあい基金」は、有志従業員と会社とのマッチングギフト制度により、社会福祉・医療分野、海外等へ支援を行っておられます。東京善意銀行が細やかに施設のニーズを拾い上げていることに共感をいただいたことから、2016年以降毎年、現金での寄附をはじめ物品寄附や食育を目的とした出前授業の実施などご支援いただいています。
昨年度も、児童養護施設等を巣立つ若者へのお祝い金、施設の物品購入費として寄附を頂きました。

昨年度のご寄附により、高齢者施設が購入した空気清浄機

東社協東京善意銀行では、社会福祉施設等への寄附のご相談を承っております。
●千代田区神田駿河台1-8-11 東京YWCA会館3階
☎03-5283-6890
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いただいた寄附や福祉施設等への配分についてTwitterで発信しています。

 

 

【アンテナ】8月1日(月)時点の情報です。詳細は各団体にお問合わせください。この他にも東社協ホームページに各種情報を掲載しています。
東社協ホームページ「各種福祉情報の提供」
https://www.tcsw.tvac.or.jp/about/keyword/kakushu.html

助成金
第29回ボランティア活動助成
9月15日(木)消印有効 (1)高齢者、障がい児者、子どもへの支援活動およびその他、社会的意義の高いボランティア活動(2)地震・豪雨等による大規模自然災害の被災者支援活動 上限30万円 所定の申請書類に必要事項を記入し、郵送 (公財)大和証券福祉財団 〒104-0031 中央区京橋1-2-1 大和八重洲ビル
03-5555-4640
fukushi@daiwa.co.jp
https://www.daiwa-grp.jp/dsf/grant/outline.html
児童福祉に関する活動費助成
9月30日(金)必着 事業所が東京都に所在し、保護者や家庭に貧困や養育困難な事情のある児童および学生等の若者(25歳以下)の支援を目的とした教育・就業・自立の支援事業を東京都内で行う非営利の法人 上限100万円 所定の申請書類に必要事項を記入し、郵送 (公財)戸田壽一・成郎育英財団 事務局 〒107-0061 港区北青山3-10-18 北青山本田ビル3階
https://www.t1176foundation.or.jp

講座・シンポジウム
第12回2022年度高齢者虐待防止研修
9月24日(土)9時50分~17時00分 第1部「行政職員向け施設虐待対応研修」、第2部「施設従事者向け研修:ちょこっとカンファ」、第3部「相談援助職への暴力・ハラスメント―理解・予防・対処―」の3部構成の研修(オンデマンド配信およびリアルタイム配信) 第1部、2部は各2000円、第3部は3000円(資料のほか書籍の進呈あり)。基礎研修動画視聴のみは1000円 各プログラム30名(先着順) Webにて申込 9月8日(木) 高齢者虐待防止のための安心づくり安全探しアプローチ(AAA)
info@elderabuse-aaa.com
http://www.elderabuse-aaa.com/

その他
第21回定期コンサート
「新倉壮朗の世界」
9月9日(金)18時半開場、19時開演 和光大学ポプリホール鶴川 ダウン症の即興演奏家・新倉壮朗氏の2部構成のコンサート 大人2,000円、小人(高校生~小学生)1,000円、幼児無料 電話またはFAX、メールにて 新倉壮朗コンサート実行委員会
/042-734-7787
takeo_niikura9230@yahoo.co.jp
http://takeoyume.exblog.jp
第16回
未来を強くする子育てプロジェクト
(1)子育て支援活動の表彰
より良い子育て環境に資する活動を行い、成果を上げている個人・団体※要件あり 「スミセイ未来大賞」100万円、「スミセイ未来賞」50万円ほか
(2)スミセイ女性研究者奨励賞
子育てのために研究を中断している女性研究者および、子育てをしながら研究を続けている女性研究者 1年間に上限100万円を2年間まで
(1)(2)共通
9月9日(金)必着 所定の申請書類に必要事項を記入し、必要資料を同封の上、郵送 住友生命保険相互会社「未来を強くする子育てプロジェクト」事務局 〒102-0072 千代田区飯田橋2-14-7 光ビル
03-3265-2283 03-3265-2267
https://www.sumitomolife.co.jp/about/csr/community/mirai_child/
第15回歯ミカップ
10月20日(木)13時半~14時半 ※オンライン配信 障がい者施設での歯磨きや口の健康を守るための取組みや、障がいのある方が各自で行っている健康な歯・口をつくる工夫や努力の表彰と発表 9月16日(金) (1)応募 応募用紙に必要事項を記入の上、FAX、郵送、メールにて (2)視聴 必要事項を記入の上、メールにて 歯ミカップ実行委員会 事務局(多摩立川保健所内)
042-524-5171 042-528-2777
S0000346@section.metro.tokyo.jp
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/tthc/oshirase/hamicup_15.html
第20回読売福祉文化賞
9月30日(金)消印有効 新しい時代にふさわしい福祉活動に取り組んでいる団体の顕彰(1)一般部門(福祉活動全般)3件、(2)高齢者福祉部門(高齢者を支援する福祉活動)3件に対し、トロフィーと副賞各100万円 所定の申請書に必要事項を記入の上、郵送またはメール (社福)読売光と愛の事業団「福祉文化賞」係 〒100-8055 千代田区大手町1-7-1
03-3217-3473 03-3217-3474
hikari-ai@yomiuri.com
https://www.yomiuri-hikari.or.jp

 

【資料ガイド】

会議資料
第45回社会保障審議会生活保護基準部会 資料(厚生労働省/6月)
東京都子供・子育て会議 第22回全体会議 資料(都福祉保健局/6月)
東京都社会福祉審議会22期 第1回・第2回検討分科会 資料(都福祉保健局/7月)
第211回社会保障審議会介護給付費分科会(持ち回り)資料(厚生労働省/7月)
第16回 社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」(資料)(厚生労働省/7月)
第4回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ 資料(厚生労働省/7月)
その他
「都と事業者との連携による高齢者等を支える地域づくり協定」に基づく取組(都福祉保健局/7月)

 

【くらし】

元受刑者の言葉に耳を傾ける「刑務所ラジオ」のパーソナリティとして
FM87・4MHz「ラジオフチューズ」で、2022年4月から6回にわたって放送されたラジオ番組「刑務所ラジオ」のメイン・パーソナリティー塩田祐子さんにお話を伺いました。


10年近く会社勤めをしていました。もともとテレビやラジオが好きで、番組づくりに興味があったので、放送作家になる勉強をするために上京しました。専門学校に入学し、習作で放送台本を書くために情報収集していたとき、東京・葛飾区にある東京拘置所で死刑の執行をやっている事を知り、驚きました。大都市東京にそのような施設があることを知らなかったのです。
監獄人権センターでの活動
死刑制度の情報収集から始まり、拘置所や刑務所のことを調べているうちに監獄人権センターと出会いました。監獄人権センターは、刑務所、拘置所内での被拘禁者の人権問題に取り組んでいる団体です。私はこの団体の活動に、2009年からボランティアとして、14年からは職員として関わっています。
監獄人権センターで新しいプロジェクトを立ち上げる事になった時、私には一つアイデアがありました。それは、札幌市内のコミュニティFMが、札幌刑務所に服役する受刑者からの手紙と曲のリクエストで構成した刑務所内向けのラジオ番組をつくっていて、無料アプリ(リスラジ)を使えば獄外でも全国から無料で聴けることを知ってから、温めていたアイデアです。
支援団体でありがちなのが、イベントや報告会では支援者や専門家が前面に出て、当事者の人たちは「支援を受けた人」の一例として短いコメントを話すだけ、というスタイルです。
当事者の思いを、その人自身の言葉で聞きたい、という思いが常にありました。しかし、それと同時に、私達の活動は当事者(元受刑者)が顔や名前を出して発言する事が難しいという問題も抱えていました。
当事者の声を届ける
「刑務所ラジオ」
ラジオは顔出しする必要がないので、当事者が安心して、正直な気持ちを話すことが出来るのではないかと考えました。刑務所を出所した人や受刑者の家族がマイクの前に座り、彼らの生の声を真ん中に置いたラジオ番組をつくってみたいと考えていました。そのことを提案して、新しいプロジェクトで「刑務所ラジオ」というラジオ番組をスタートさせることが決まりました。
22年4月、府中刑務所がある府中市のコミュニティ放送局「ラジオフチューズ」(東京府中FM)で、6月までの3か月間、第2・4月曜日に約30分間の番組がスタートしました。受刑者の社会復帰や支援のあり方を考える30分です。
出演する方たちは、マイクの前で話す訓練は受けていません。ですから、話し方も語彙も滑舌も間の取り方もその人独特のものです。それでも、番組ではその方の話を番組の中心において、合間に支援者の方たちやさまざまなゲストの方たちとやり取りをする構成にしています。司会進行は私が務めました。
社会復帰後の生活の不安、家族や知人・支援者との関係、仕事のこと、さまざまな生きづらさが生の声で伝わります。リスナーの皆さんには元受刑者に対する理解の促進や、共に暮らす街づくりに役立ってほしいと願って放送していました。
出所後の社会復帰を困難に
している要因
監獄人権センターの活動を通して、出所後の生活を再構築することの困難さを実感しています。出所後に戻る家がない人が大勢います。彼らは生活のすべてをつくり直さなくてはなりません。生活困窮者や障害がある人のための支援制度はいくつもありますが、その支援を受けるためには住所が必要です。出所後に戻る家がない人が、住居を決めることには多くの困難が伴います。住所がなかなか決まらないことで、不安になり、精神的に不安定になっていくこともあります。
こういった方たちも「住宅確保要配慮者」です。府中市をはじめ、各地域の居住支援協議会による住居確保のための支援活動に期待しています。

塩田祐子さん

「刑務所ラジオ」は現在再放送中です。
7月~12月まで、毎月第2月曜日の夜10時から、「ラジオフチューズ」(東京府中FM)FM87.4MHzで放送中。
無料のコミュニティFMアプリ「リスラジ」でパソコン・スマートフォン・タブレットから、全国どこからでも聴くことができます。

 

【本】

NEW
令和4年度改正法施行対応版
社会福祉施設・事業者のための規程集
2022年度から施行される法令の中で、育児・介護休業関係・個人情報保護関係等、特に社会福祉施設・事業者で対応が必要なものを整理して、その解説と改正する規程を例示しました。
本書には、CD-ROMをつけています。CD-ROMのデータを使って、すぐにでも規程の整備・改正に向けた取組みができるようになっています。
◆規格 A4判/132頁 ◆発売日 2022.07.21
◆定価 2,200円(本体2,000円+税10%)

NEW
域福祉推進に関する提言2022
東社協「地域福祉推進委員会」では、毎年、地域福祉推進のために重点的に取り組むべき事項をまとめ、「委員会からの提言」と「部会・連絡会からの提言」を整理し、提言活動を行っています。
◆規格 A4判/116頁 ◆発売日 2022.06.24
◆定価 220円(本体200円+税10%)

福祉職場の新任職員・未経験者は何に悩んでいる?
施設長・先輩職員のための
定着応援ハンドブック
福祉分野の職場の人材不足解消のためには、現在働いている新任職員の育成・定着の視点も重要です。そこで、新任職員の「定着支援」が人材不足解消の大きなポイントになると考え、新任職員のよくある困りごとと解決のためのヒント、施設の取組み事例、施設等が利用できる制度や助成金の情報をまとめハンドブックを作成しました。
◆規格 B5判/52頁 ◆発売日 2022.04.04
◆定価 440円(本体400円+税10%)

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