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福祉広報 2023年7月 774号 テキストデータ

【表紙】(写真)

海に囲まれた小さな島の遊びといえば
飛び込み、潜り、泳ぐ!
漁師たちとも皆、顔なじみだ
獲れたての自慢の魚を手いっぱいに見せてくれた

【目次】

1 社会福祉NOW
2 Topics
3 連載 ネットワークを活かした地域公益活動(3)
4 東社協発
5 くらし今ひと

「*見出しの頭には「--(半角で2つハイフン)」の記号が挿入されているので、検索機能を使って頭出しをする際にご利用下さい。また検索の際、目次でご紹介した数字を続けて半角で入力すると、その項目に直接移動することができます。
(例)1をご希望のときは、「--(ハイフンハイフン)1(すべて半角)」と入力。」

--1【社会福祉NOW】

身寄りがあってもなくても、
誰もが安心して暮らすことのできる地域社会に

東京都の高齢化率は、2023年1月時点で22.67%。高齢者の単身世帯の割合も増加傾向にあり、日常のコミュニケーション機会の減少、病気や認知症の進行など、生活上のリスクが高まります。
今号では、地域で暮らす高齢者を介護・医療・保健・福祉などの側面から支える地域包括支援センターへの取材を通して、身寄りのない高齢者の支援に大切なことを考えます。

 

地域包括支援センター(以下、包括)は、地域で暮らす高齢者を支える総合的な相談窓口で、介護保険法に定められています。生活上の困りごと全てを受け止めて適切な機関等につなぐ「総合相談支援業務」、消費者被害の防止や相談など、高齢者の権利を守る「権利擁護業務」を行っています。さらに、地域のケアマネジャーの支援や他機関とのネットワークをつくる「包括的・継続的ケアマネジメント支援業務」、高齢者が要介護状態になることを予防するために必要な支援などを行う「介護予防ケアマネジメント業務」を担っています。
近年の単身高齢者の増加に伴い、特に、身寄りがないことで、医療決定や金銭管理のほか、連帯保証などのさまざまな契約等の場面で、課題が現れることが多くなっています。府中市晴見町にある「府中市地域包括支援センター安立園(以下、安立園)」にもさまざまな相談が寄せられています。
例えば、認知症が進行している状況で成年後見制度の利用手続きが必要になったケースや、見守りが必要な世帯がオートロックマンションに住んでいるために関わりが難しかったケースなどです。
今回は、安立園のセンター長で社会福祉士の河野知子さん、保健師の江村わくりさん、主任介護支援専門員の大橋雅子さんに、80代男性の実際の事例について、お話を伺いました。

 

80代男性の事例
ヘルパーを利用して一人暮らしをしている。遠方に親戚はいるが現在は疎遠状態。携帯電話を所持していない。今春にがんを発症。

男性は、がんの疑いがあることが分かり、早急に総合病院に診察に行く必要が生じました。以前からケアマネジャーとして関わっていた大橋さんが付き添うことになったのをきっかけに支援が始まりました。
何度も通院し、男性はがんと診断されましたが、ご本人の希望で大橋さんは告知時と手術をするかどうか決定する場に同席しました。大橋さんは、当時について「ご本人もショックを受けていたが、一緒に受け止め、寄り添うことを意識した。手術のリスクは大きかったが、迷いなく『まだ生きたい』とご自身で決められ、それは我々にとっても力になった」と話します。
ただ、入院中の連絡先がなかったことで、病院から安立園に電話がかかってきていたことや、退院後の生活を病院と連携してどう支援していくかなど、多くの課題がありました。また、広く地域を担当する包括として、一つのケースの中でどこまでが自分たちの役割なのかという悩みもあり、常にチームで確認をしていました。河野さんは「包括の職員が直接誰かの支援に入れば、ほかの誰かに入れなくなる。だから、ご本人の周りのつながりや、実際に動ける人を掘り起こすことや、その中で役割分担や連携を構築していくことが求められる。特に身寄りのない方を支える上では重要なことだと思う」と言います。そのためにも、日ごろからの顔の見える関係づくりが大切と強調します。

 

単身高齢者本人や周りとのつながりを引き立てる支援を行う

今回の事例にはあてはまりませんが、身寄りのない方であっても、本人の周りには、包括や他機関だけではなく、近隣住民や学生時代からの友人、会社の元同僚といったインフォーマルなつながりもあります。「このようなインフォーマルなつながりは、不安定かもしれないが融通もきくし、スピード感もある。さらに、誰かをサポートした経験は本人の周りにいる人にとっても『この時はこう対応した』という自信にもなり、地域に受け継がれていくと思う。そういった人たちの存在に我々が気づき、光を当てることができると良い」と、河野さんは話します。江村さんは「ご本人のネットワークがどうつくられてきたかを知ることが大切。その上で、大小のネットワークを重層的に支えたり、広げたりする役目が包括にはあると考えている」と言います。
その一方で、ご本人の意思を一番に尊重し、支えることも包括には求められます。大橋さんは「この事例の男性は、現在は周りとの関わりを持っていなかった。このことは事実として受け止め、その状況の中でどういったものを活用できるかなどを我々が把握し、彼を支える体制を整える。これまで生きてきた彼の人生に焦点を当てて支援をしていくことが大切だと思う」と話します。

 

事例から見えてくる課題と今後について

今回の事例のように、総合病院はさまざまな科で診察を受けられる反面、予約や案内などが煩雑で、一人ひとりのサポートまでを求めることは難しく、単身高齢者が一人で受診することが困難な状況があります。河野さんは「病院側が単身高齢者の生活状況や背景も含めた配慮をもう少しすることができれば、本人も安心できると思う。病院も、身寄りがない人を引き受けた後、退院後のつなぎ先がないなど課題を抱えている。そのほかにも、身寄りのない方への支援ニーズの増加に対して、関わる支援機関や人員体制の整備等が追い付いていないと感じている」と言います。
また、包括として、単身や二人暮らしの高齢者世帯と早期に関わりを持てていたとしても、いざという時のための準備を早い時期からすすめておくことの難しさもあるといいます。江村さんは「我々は専門職として先の見立てや可能性を考え、準備をしておいた方が良いと考えるが、それとご本人の思いが違うこともある。ご本人にとっては日常生活なので、『まだ大丈夫、なんとかなる』と思ってしまう。このギャップを少しでも小さくしていくことが必要」と話します。
安立園では、担当する地域の自治会や老人会、民生児童委員、ケアマネジャーなどに向けて、高齢者地域支援連絡会を開催しています。23年度は「身寄りのない方への支援」をテーマに、事例を用いてグループワークを行うことを予定しています。このような連絡会で支援に関連する情報提供をしていくほか、日々の活動の中でも、早めに準備をして周囲とつながることの大切さの発信・周知を続けていきます。

 

(図 地域包括支援センターの主な業務(取材をもとに作成))

(写真 社会福祉法人安立園の外観)


--2【Topics】

母子に寄り添いながらすすめる
産前・産後母子支援
―母子生活支援施設リフレここのえ

厚生労働省(注1)によれば、2020年度の心中以外の虐待死において0歳児が全体の約65%と最も多く、そのうち0歳0か月が半数を占めています。その背景には、実母の養育困難や育児不安、産後うつのほか、 「妊婦健診・乳幼児健診の未受診」や「予期しない妊娠」などの妊娠期・周産期の問題が明らかになりました。特定妊婦(注2)等を対象とした妊娠期からの支援体制の強化は喫緊の課題であり、17年「新しい社会的養育ビジョン」では、「妊娠期から出産後の母子を継続的に支援する社会的養育体制の整備」の必要性が言及されています。

 

求められる産前産後支援

「母子生活支援施設リフレここのえ」は、DV被害や養育困難等多様な背景の母子が利用しています。20世帯を入所定員とし、安心して母子が暮らせる場の提供から、生活支援、就労・法的手続き支援など世帯に寄り添った支援を展開してきました。
新たに、19年から緊急一時保護事業(注3)を活用して特定妊婦を対象に産前産後支援「Sun・Sun・Smileプログラム」をスタートしました。施設長の横井義広さんはその経緯について、「他県施設の取組みを見聞きして、刺激を受けた。支援ニーズや母子生活支援施設への社会的期待に加え、施設機能・経営強化も視野に17年頃から取り組むことを考え始めた」と話します。

 

母子生活支援施設が取り組む意義

施設長と職員2名のプロジェクトを立ち上げ、検討をすすめる一方、医療機関でない生活支援施設で妊娠期から受け入れることに不安や反対などさまざまな声がありました。助産師や妊産婦支援に取り組む婦人保護施設関係者より妊娠・出産の基礎知識や緊急時の対応等の講習を受けながら、職員間で母子生活支援施設として産前産後支援を行う理由を繰り返し考えたといいます。
プロジェクトメンバーであり母子支援員の流石理沙さんは「各講師から受けた『多くの人に抱っこされた子どもは幸せになる』『医療的なことは基本をおさえ、何より安心して産める環境をつくることが大切』などの言葉は、私たちを後押しした。周産期に携わる不安を和らげ、支援の役割・意義を自覚することにつながった」と振り返ります。「母子生活支援施設として一緒に育てる」ことを支援の根幹とし、受入れ病院の確保や助産師との契約、マニュアル策定等、受入れ環境の整備をすすめていきました。

 

お母さんに寄り添い、安心を

19年4月から産前産後支援を始め、4ケースを受け入れてきました。緊急一時保護事業を契約している区市からの依頼を受け、保健センターや母子父子自立支援員、施設職員などによる関係者会議でのアセスメントを経て、産前産後支援の利用に至ります。DV被害や経済的困窮、若年など利用者をとりまく状況はさまざまで、必要に応じて関係機関と連携し、出産後の見立てについてもあわせて検討をしていきます。
受入れ後は、職員全員が関わり妊娠期から出産後までの健康管理や生活支援、育児支援など、世帯に応じた柔軟な支援を行っています。流石さんは「妊娠期から一緒に健診に行ったり、生まれてくる赤ちゃんの名前を考えたりと家族同様の関わりをすることで『私たちも出産を楽しみに待っている』ということがお母さんにも伝わっているのでは。安心して産める環境を提供し、お母さんに寄り添いながら支援できることが、医療施設ではなく母子生活支援施設で取り組む意義だと思う」と支援を通じて実感しています。退所後もアフターケアとして支援を継続し、交流会等で母子に会えることも職員のやりがいにつながっています。

 

求められる産前産後支援をめざして

現在も支援のあり方を模索し続けており、課題の一つとして取組みの周知があるといいます。横井さんは「妊娠葛藤相談と居住支援を行っているNPO法人から利用につながったことがあった。より社会ニーズに応える産前産後支援を考える上で、地域で妊産婦に対して取り組む民間団体等とつながっていくことが大切になる」と今後を話します。
Sun・Sun・Smileプログラムの始動から4年。母子生活支援施設としてさまざまな母子を支援してきたことを強みに、リフレここのえはより良い産前産後支援の形をめざし続けています。

 

(注1)子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第18次報告)

(注2)出産後の子どもの養育について出産前より支援が特に必要と認められる妊婦

(注3)母子世帯や単身女性で緊急の事情により住むところがない方を対象に、一時的な住居の提供や生活相談など   実施

(写真 助産師による講習の様子)

(図 支援プログラムの主な内容(取材をもとに作成))

(写真 生後間もない赤ちゃんと病院で対面)

 


--3【連載 ネットワークを活かした地域公益活動】

地域のニーズにこたえる活動を、
試行しながら生み出す
中野区内社会福祉法人等連絡会

中野区内社会福祉法人等連絡会では、2020年に相談支援と食支援をセットにした常設のフードパントリーを開設し、連携事業所を少しずつ増やしています。
また、22年からは仕事体験の場を提供する就労支援プロジェクトをスタートさせました。地域の課題解決につながるさまざまな取組みを「試行」しながら生み出していく連絡会の動きについて伺いました。

 

コロナ禍で試行した「相談支援型フードパントリー」

2020年、中野区内社会福祉法人等連絡会では、新型コロナ感染拡大の影響で思うように活動できない状態が続いていました。
事務局の中野区社協では、生活福祉資金の特例貸付等を通じて生活困窮の深刻さと食支援の必要性を痛感し、「中野つながるフードパントリー」を企画。会員事業所の協力を得て、社協の事業として12月に実施しました。しかし、こうした単発ではない常設型のパントリーが必要だとも考えていました。
その頃、社会福祉法人武蔵野療園しらさぎ桜苑の地域連携室では、事業所独自のパントリーの準備をすすめており、21年2月からの実施を予定していました。この動きを知った社協は、連絡会のモデル事業とすることを発案し、役員会の協議を経て翌21年度の事業計画案の中で新規事業として立案しました。3月には、NPO法人セカンドハーベスト・ジャパンと社協との間で、毎月50世帯分の食料提供を受ける協定を締結し、4月からしらさぎ桜苑と社協の2か所で、相談支援と食支援をセットにした相談支援型フードパントリーの試行が始まりました。
事業の周知は、福祉事務所や子ども家庭支援センター等の相談支援窓口に対して行いました。21年4月から9月までの相談実績は2か所合わせて106件で、20代から80代まで幅広い年代の方からの相談を受け、個別に食料を渡しました。しらさぎ桜苑地域連携室長の白岩裕子さんは、印象に残っている事例の一つについて「継続的に連絡を取っていたパントリー利用者が無料・低額診療につながった後に生活保護受給となり、手術を受けて元気になられた。私たちは食料をお渡しすることしかできなかったが、ご本人から『ここをきっかけにトントン拍子でつながった』と感謝の言葉をいただいた」と話します。

 

事業所の連携によりパントリーを拡大

この取組みをさらに広げていくため、食品を詰め合わせた「パントリーバッグ」を区内10か所の事業所で受け取れる拡大版パントリーのしくみを構築し、22年2月から1か月間、試行しました。
連絡会では設立当初から身近な事業所で住民の相談を受けられるしくみづくりを構想していましたが、会員からは「分野以外の相談は難しい」等の意見も出ていました。中野区社協経営管理課長の小山奈美さんは「どんな人が来るか分からないというのが最大の懸念。食をツールにして試行的にでも相談の場面をつくれたら、利用者がどんな話をするのかも分かると思った」と話します。課長補佐の大友昌一さんは「ベースにしらさぎ桜苑の実践があったことと、やってみてから考えようというイメージが連絡会で共有できていたこと、そして新型コロナ以前から協働事業プロジェクトを行ってきた経験もプラスに作用した」と、事業所が連携して取り組むことができたポイントについて話します。
拡大版パントリーでは、受付と相談は社協が一括し、受け取り場所と日時を調整して事業所で手渡すという形を取りましたが、障害の多機能型事業所のコロニー中野のように、パントリーバッグを取りに来ることが難しいという相談者に対して自宅まで届けるなど、柔軟に対応したケースもありました。連携事業所では受取り報告とともに相談者から聞き取った内容を社協に共有しています。22年度からは連携事業所が18か所に増え、地域の人の安心感につながる取組みとして少しずつ浸透しています。

 

仕事体験ができる就労支援プロジェクト

22年度は新たな試行的取組みとして、就労支援プロジェクトにチャレンジしました。それまでも「中野つながるフードパントリー」で福祉の仕事相談や情報提供を行っていましたが、資格要件などもあり、なかなか就労にはつながらない状況がありました。また、社協が実施する「福祉なんでも相談」や「ひきこもり相談」を通じて、就労前のワンステップが必要な方がいることを実感し、中間的就労などの場がつくれないかと考えていました。そこで、事業所で仕事体験ができる場をつくる就労支援プロジェクトを連絡会に提案しました。体験とはいえ、あくまでも仕事なので少しでも報酬を出せる形にして、財源は東京都地域公益活動推進協議会の助成金を活用し、事業費として予算計上を行い、了承されました。
会員事業所を対象に勉強会を開き、資格がなくてもできる簡易的なプログラムを考えてほしいと社協から伝えたところ、4事業所から手が上がりました。社協が用意したフードパントリーの仕分けに加え、清掃や調理補助、午睡時の布団干し、砂場の整備等、1回2時間の活動が揃いました。3回体験をして両者が合意すれば採用面接ができるようにしたところ、これまで20代~70代の4名が参加し、現在2名が就労しています。
小山さんは「参加しやすいプログラムを切り出してくれたことがありがたかった。課題としては、体験希望者の状態をどこまで受入れ先に伝えるか。先入観があっても難しいし、一方で状態を知った上で受け入れたほうが良いという意見もある」と話します。実際に取り組んでみての成果や課題をいかに連絡会で共有していくかも課題といいます。

 

地域のニーズに基づいた活動を

連絡会副会長でコロニー中野事業所長の近藤章夫さんは、社会福祉法人の地域ネットワークについて「障害分野にとっては、保育や高齢など種別を超えたつながりが地域でできることがありがたい。困ったことがあったら聞いてみようと思えるので本業にとっても良い影響があるし、ひいては利用者のためにもなる。一人でも多くの職員に参加してほしい」と話します。
また、会長で武蔵野療園理事長の駒野登志夫さんは、コロナ禍での取組みについて「実際に顔が見える形での交流が大切。オンラインは便利だがどうしても固くなってしまう」と振り返ります。そして「個人的には、これからは買い物や通いの場への行き帰りなど日常的な移動支援が大事になると思っている。こうした課題に連絡会で一緒に動き出していけたら」と、今後も地域のニーズに基づいた活動を社会福祉法人の連携によって生み出していくことを考えています。

 

(写真 左から(社福)中野区社会福祉協議会 課長補佐 大友昌一さん
       (社福)武蔵野療園 しらさぎ桜苑 地域連携室長 白岩裕子さん
       (社福)武蔵野療園 理事長 駒野登志夫さん
       (社福)東京コロニー コロニー中野事業所長 近藤章夫さん
       (社福)中野区社会福祉協議会 経営管理課長 小山奈美さん)

(写真 施設職員が協力してパントリーバッグの仕分け作業を行う)

(QRコード 東京都地域公益活動推進協議会のウェブサイトで「中野区内社会福祉法人等連絡会」の取組みを随時掲載中です)

 

--4【 東社協発】

2022年度  東社協事業報告

2022年度事業報告および決算が、監査ならびに23年6月9日の理事会、同27日の評議員会を経て承認されました。22年度は、『令和4~6(2022~2024)年度 東社協中期計画』の初年度として「東京の多様性を活かし、それぞれの地域生活課題を主体的に解決できる地域社会」の実現をめざして取組みを推進してきました。
新型コロナの感染拡大防止のため、オンラインによる研修や会議が続いていましたが、感染症対策に十分配慮した上で、徐々に集合型の事業を展開することができるようになりました。
新型コロナの影響を受けた世帯への生活福祉資金「緊急小口資金」と「総合支援資金」の【特例貸付】申請は、22年9月末をもって終了、累計で約65万8000件、約2544億円の貸付を決定しました。

 

1 安全・安心と権利擁護、自立生活支援の推進

○地域福祉権利擁護事業の年度末の契約中件数は4290件(前年度比104%)でした。
○国の『第二期成年後見制度利用促進基本計画』をふまえ、東京家庭裁判所と連携した市民後見人の受任機会の拡大に努めました。
○福祉サービス運営適正化委員会では、区市町村苦情対応機関の対応力向上のため、基礎研修と専門研修を開催しました。
〇新型コロナの影響を受けた世帯への「緊急小口資金」と「総合支援資金」の【特例貸付】申請・送金が終了し、23年1月より償還を開始しました。住民税非課税による判定年度別償還免除等や、償還困難者への償還猶予等を実施しました。

 

2 福祉水準の向上を支える基盤の強化

○改正対応が必要な育児介護休業法、ハラスメント防止、個人情報保護法等の人事労務関係の規定例等をとりまとめた「令和4年度改正法施行対応版 社会福祉施設・事業者のための規程集」を発行しました。
○「福祉の仕事就職フォーラム」を令和に入ってから初めて対面開催しました。さらに「フクシを知ろう!おしごと体験」を3年ぶりに実施し、中高生、小学生の参加がありました。
○「離職介護福祉士届出制度」では、特設サイトの開設、15秒動画の公開等による広報活動の強化に努め、新規登録者数は大幅増となりました。
○「東京都福祉人材情報バンクシステム(ふくむすび)」を運用し、利用促進の働きかけと、事業者・求職者のニーズに応じた情報発信を行いました。
○東京都福祉人材センター研修室では、新たなテーマとして「ファンドレイジング研修」や、東京独自の「職場内研修担当者研修」を実施し、さらに、新型コロナの影響により中止していた「労基法に関する研修」「苦情解決担当者研修」を3年ぶりに開催しました。
○従事者共済会では、数理計算を実施しました。20年度の制度改正の効果により、さらに安定した財政状況となったことを確認しました。

 

3 ネットワークの構築・協働と幅広い参加の促進

○都内1034法人が会員の東京都地域公益活動推進協議会では、オンラインによる地域公益活動の実践発表会と表彰を実施しました。さらに、ブランディングの一環としてマスコットキャラクターを公募し、選考の結果「つつまる」に決定しました。
○「東京都災害福祉広域支援ネットワーク」の推進に努め、被災自治体からの派遣要請を受けるシミュレーション訓練を実施し、職員応援派遣の流れを確認しました。
〇施設部会では、新型コロナの影響により中止していた集合型の会議やイベントを、感染症対策に十分配慮した上で、徐々に再開させました。今後は、状況に応じてオンライン型・集合型を取り入れた事業展開で、部会活動を活性化させていきます。
○東京都民生児童委員連合会では、東京都補助事業として、都内全委員を対象に、モバイルPCの配布と研修会を都内各所で開催し、コロナ禍での相談支援活動の強化を図りました。
○東京ボランティア・市民活動センターでは、アクションプランに基づいた取組みとして、「災害協働サポート東京」の設立総会を開催しました。今後も、東京都域における連携のあり方について関係者間の共通認識づくりをすすめます。
○東京善意銀行では、福祉施設等の寄附配分のニーズを的確に把握するために、アンケート調査を実施して、1523施設からの回答をもとに、施設のニーズに応じて寄附の適切な配分に努めました。

 

4 地域の取組みの支援と普及

○重層的支援体制整備事業を実施している7地区の社協へのヒアリングや、情報交換会で把握した活動内容を事例集としてまとめ、発行しました。
○地域づくりをすすめるコーディネーターのテーマ別養成研修を開催しました。区市町村社協が受講生を受け入れる「実地研修」を3年ぶりに再開しました。
○社会福祉法人の地域ネットワーク、民生児童委員協議会、社協の三者連携による協働体制で地域課題に対応する4つの実践事例を紹介した「チームで取り組む 地域共生社会づくりVOL.2」を発行しました。

 

5 情報発信と提言

○プロジェクトチームによる「質と量の好循環をめざした福祉人材の確保・育成・定着に関する調査2022」を実施し、過去の調査との比較から職層ごとの現状と課題の経年変化を把握しました。調査結果をふまえ、提言につなげます。
○ウェブサイトにより本会の情報を適切に公開するとともに「福祉実践事例ポータルサイト」や広報誌、メールマガジン、SNS等を活用した広報活動を展開しました。
〇第71回東京都社会福祉大会を、新型コロナの感染拡大防止のため、規模を縮小して12月に開催し、東京における社会福祉発展の関係者への顕彰を行いました。

 

6  東社協法人基盤の強化

〇新たな中期計画の初年度として、15の重点事業を中心に進行管理と推進評価をすすめ、ウェブサイトの活用により進捗状況の情報発信に努めました。

(表 2022年度 東社協決算報告の概要(資金収支総括表)注 支出が収入を上回る会計は前期末支払資金残高により充当されています。)

 

 東社協 新会員のご紹介

東京都高齢者福祉施設協議会

特別養護老人ホーム あおぞら縁小竹テラス/仲宿地域包括支援センター/特別養護老人ホーム サニーヒル板橋/地域包括支援センター新田


知的発達障害部会

生活介護事業所ひまわりばたけ/あどおん/Wood Factry


児童部会

クリスマス・フォレスト/自立援助ホーム 陽気遊山


保育部会

下北沢保育園/東大泉保育園/子どもの森ゆうぱーく保育園/大宮保育園/天沼保育園/いづみ保育園/万願寺保育園/梅丘至誠保育園/練馬区立氷川台第二保育園


母子福祉部会

パルメゾン上北沢


情報連絡会員

特別養護老人ホーム小峰苑/南八幡さくら保育園/ハーモニーむらやま/にじいろハウス/rubato/オリーブ/明治わらべこども園/れいめい白鳥学童保育クラブ/エス・エス・エス 東京支部/エス・エス・エス 三多摩支部/エス・エス・エス 神奈川支部

 

令和4年度共同募金の御礼

令和4年度の共同募金運動は、長引く新型コロナ感染下ではありましたが、市民生活や各団体の活動が緩やかに戻る兆しを見せ始める中、前年より多くの皆様にご参加いただくことができました。感染拡大に伴う経済活動の停滞や、市民活動の自粛を起因とする新たな社会福祉課題などに対する対応の期待が高まる中、都民各位のご理解とお力添えによりまして、第76回目の運動を実施することができました。
感染拡大防止を最優先としながら募金運動を展開し、従来の募金方法に加え非接触型の募金方法も活用するなど、さまざまな状況でより多くの方が募金運動にご参加いただけるよう環境整備に努めました。おかげさまで、感染下でご苦労されている社会福祉施設・団体に対する都民の皆さまの関心の高まりなどもあり、前年度を上回るご寄付をお寄せいただきました。地域の社会福祉事業の充実のためにお役立ていただくことができ、ご支援・ご協力を賜りました皆さまに改めて心より御礼申し上げます。
今後とも皆さまのたすけあいのお気持ちを、支援を必要とする多くの方々へお届けできるよう尽力してまいる所存でございます。引き続き変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
社会福祉法人 東京都共同募金会

 

「地域福祉推進に関する提言2023」を発行しました

 東社協地域福祉推進委員会では、地域福祉推進のために重点的に取り組むべき事項をまとめ、「委員会からの提言」と「部会・連絡会からの提言」として整理し、提言活動を行っています。
この間、改正社会福祉法が2021年4月から施行され、「重層的支援体制整備事業」が始まり、各区市町村で地域の実情に応じた体制づくりがすすめられています。一方、コロナ禍により、これまで把握しきれていなかったさまざまな地域課題が顕在化し、新たな取組みが求められています。また、コロナ禍は、福祉職場での実習や職場体験など、次世代の体験機会の減少につながり、福祉人材の確保・育成にも影響を及ぼしています。
委員会ではそうした視点をふまえ、事業者が取り組むべき事項や施策提言をまとめました。今後も、関係者の皆さまのご意見をいただきながら、提言活動の充実を図ってまいります。

内容

第1部 委員会からの提言
【提言Ⅰ】福祉人材の確保・定着・育成の促進
【提言Ⅱ】コロナ禍に顕在化した地域課題と重層的支援体制整備事業
第2部 部会・連絡会からの提言
【主な提言~抜粋】
*地域包括ケアの構築には高齢者福祉施設のもつ社会福祉の総合力を活用すること
*感染症対策への取組み
*権利擁護・差別解消への取組み
*少子化を見据えての保育所における新たな補助制度の検討
*こども基本法および改正児童福祉法施行への適切な対応および子どもの権利としての社会的養護の実現
*女性支援法施行にむけて~困難な問題を抱える女性支援の向上 など

 

(QRコード 「地域福祉推進に関する提言2023」の詳細はこちら)

 


--5【くらし今ひと】

きょうだいを一人の人間として見てほしい

障害者の兄弟姉妹を、ひらがなで「きょうだい(児)」と呼ぶことがあります。ご自身もきょうだいであり、きょうだい会ファーストペンギン代表の菅井亜希子さんにお話を伺いました。

 

自分の感覚を大切に生きてきた

学生の頃からとにかくやりたいことが多く、興味を持ったことを自由に追いかけていました。現在は、音楽業界でライブハウスの裏方をする傍ら、イベント制作やオンライン秘書、法律事務も行っています。ここまで仕事が多岐に渡っているのは、大学時代の東日本大震災の経験が影響しています。「いつ何が起きても後悔しないよう生きる」と決め、自分の好きなことや感覚を大切にしてきました。

 

大人になって自分の生きづらさを知った

7つ下の弟が自閉症で、私は「きょうだい」にあたります。弟は高校生まで普通学級で過ごしていて、いわゆるグレーな状態でした。そのせいか、弟の発達に対して私の認識は「何かあるんだろうな」という程度でした。
しかし、私が社会人になり、「弟が障害者手帳を取得した」と母から聞いた時は、家族が障害者であるという現実に、なんともいえないショックを受けたのを覚えています。同時に、手帳を持つことで弟が生きやすくなるなら、と前向きに捉えようとする自分もいて、複雑な心情でした。
それから数年経ち、私がきょうだいについて意識したきっかけは、父が病気で倒れたことでした。ひとり親になるかもしれない状況で、母も歳を重ねていくなか、まず浮かんだのは「弟どうしよう」ということでした。自分が「弟の面倒を見なくてはいけないかもしれない」という見えないプレッシャーを実感したのです。さらにその頃の私は、自分の他責思考で悩み、生きづらさを感じていました。その生きづらさの原因を調べていくと、「機能不全家族(注1)」というワードに行き着きました。「機能不全家族」にもさまざまな要素がありますが、自分の場合は、弟の障害が関係しているのではと考えました。そこで私は、自分の家族の現状と生きづらさに向き合おうと、「きょうだい会ファーストペンギン」の交流会に足を運んだのです。

 

きょうだい支援に携わって感じたこと

ファーストペンギンは20~30代のきょうだいを対象にした団体で、主な活動は対面での交流です。最初は交流会に参加するだけでしたが、気付けば会を企画する側にまわっていました。
交流会では、きょうだいだからこそ共感できる〝あるある〟が話題にあがることがあります。たとえば「兄弟はいますか」というよくある質問も「うっ」と感じるきょうだいは多くいます。家族に障害者がいると話すと、暗い雰囲気にしてしまうのではと思い、兄弟姉妹について隠したり、偽ってしまう。きょうだいならではの悩みは皆持っていて、その辛さの度合いは、兄弟姉妹の障害の重軽度などで決まるものではありません。「あの人の方が大変そうなのに」と自分を責めることなく、周りと比べないことが大切だと思います。
障害者の家族支援をされている方や福祉従事者の方にお伝えしたいのは、「きょうだいを一人の人間として見てほしい」ということです。私自身、市の福祉課職員の方からの「頑張りすぎないで」という一言で、肩の荷が下りた経験があります。自由に生きることに後ろめたさを感じてしまうきょうだいには、兄弟姉妹を通して接するのではなく「その人自身を気にかけている」と伝えることが支援につながるのではないでしょうか。
私も、まだまだやりたいことがたくさんあります。これからも自分の感覚に正直に、後悔のない人生を歩んでいきたいです。

 

(注1 家庭内の対立や虐待などによって正常に機能していない家族のこと)

(写真 ファーストペンギンで行った講演会の様子)

以上で、福祉広報2023年7月号を終わります。

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