メニューをスキップします

つながる笑顔のかけはし

東京都社会福祉協議会

ホーム > 購読のご案内 > 福祉広報テキストデータ > 福祉広報 2023年12月 779号 テキストデータ

福祉広報 2023年12月 779号 テキストデータ

【表紙】(写真)

江戸の情緒を今に残す川越のレトロな街並み。
路地を抜けると昔ながらのブランコが、景色に溶け込んで置かれている。

【目次】

1社会福祉NOW
2TOPICS
3連載 ネットワークを活かした地域公益活動(8)
4 東社協発
5福祉のおしごと通信
6くらし今ひと

「*見出しの頭には「--(半角で2つハイフン)」の記号が挿入されているので、検索機能を使って頭出しをする際にご利用下さい。また検索の際、目次でご紹介した数字を続けて半角で入力すると、その項目に直接移動することができます。
(例)1をご希望のときは、「--(ハイフンハイフン)1(すべて半角)」と入力。」

--1【社会福祉NOW】
災害時要配慮者支援の取組みをさらに充実させるために
―福祉施設・福祉避難所等への専門職派遣―

 東社協では、大規模災害発生時の災害時要配慮者支援体制を構築するため、行政や福祉施設、職能団体と協働し「東京都災害福祉広域支援ネットワーク」の活動を推進しています。今号では、2023年から新たに取り組んでいる東京都災害派遣福祉チーム(東京DWAT)の育成についてお伝えします。

東京における災害時要配慮者支援
 東社協では、2016年度から東京都の委託事業として「東京都災害福祉広域支援ネットワーク(以下、ネットワーク)」の構築・局や区市町村、 東社協、区市町村社協、 東社協施設部会、福祉専門職の職能団体が連携して、災害時の活動体制構築に向けた取組みを推進し、災害対策の強化を図ることをめざしています。
16年に 東社協が区市町村を対象に実施した調査から、大都市東京の特性として、施設に入所せず、在宅サービスを利用しながら地域で生活する要配慮者が多い一方で、福祉施設では入所施設の災害時の受け皿に限りがあり、職員参集や人的体制の確保にも課題があることが分かりました。こうした課題に対応するため、ネットワークでは都との協定に基づき、発災後に福祉専門職の応援派遣を行うほか、「東京都災害福祉広域調整センター」を設置し広域調整を実施することとしています。特に応援派遣については、福祉施設や福祉避難所への派遣を想定し、セミナーや訓練等を行ってきました。

全国ですすむDWATの組織化
一方、国においても災害時要配慮者支援について検討が重ねられていました。18年5月には、災害関連死等の二次被害を防止する観点から、厚生労働省が「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」を公表し、官民協働ネットワークの構築と災害派遣福祉チーム(DWAT(注))立ち上げの考え方が示されました。
DWATは都道府県単位で組織される公的なチームで、所定の研修を修了した福祉施設職員や福祉専門職等で構成されます。避難所や社会福祉施設に派遣され、災害時要配慮者への福祉支援を行うとともに、医師や保健師等と連携し要配慮者へ切れ目のない支援を行います。16年の熊本地震の際には、すでに他県のDWATが支援活動を行っていました。
このような国や他自治体の動向等をふまえ、東京都においても全国的なスキームに乗ることで大規模災害時の受援体制(他地域からの支援を受け入れる体制)整備につながることから、22年度に東京都災害派遣福祉チーム(東京DWAT向けた動きが始まりました。そして、全国的な動きに合わせて、これまでの派遣先の福祉避難所・福祉施設に一般避難所を加える形で、災害時の応援職員の登録制度と研修制度を構築し、23年度から登録研修を開始しています。

東京DWATチーム員登録研修会
23年10月に開催された「令和5年度東京都災害派遣福祉チーム員登録研修会」には、職能団体の構成員を含む約70名が参加。講義や事例報告、グループディスカッションを通して、災害時の福祉支援に必要な基本的な知識を学びました。講義を担当したオフィス園崎代表の園崎秀治さんからは、「被災地における福祉支援の必要性と支援するにあたっての基本」として、被災地外からの支援の必要性や、コロナ禍における被災者支援の変化等について解説がありました。特に、被災者支援にあたって支援者が欠くことのできない三原則「被災者中心・地元主体・協働」について、被災地の担当者が置かれた状況や現場で発生した事例等を交えて、丁寧に伝えられました。
事例報告では、被災地の福祉施設への派遣経験のある職員から当時の状況や支援者のメンタルケアの重要性について発表されたほか、21年の熱海市土砂災害時に活動した静岡DWAT事務局から、支援の実際の様子や平時の取組みについて報告があり、具体的な活動内容の把握につながりました。
グループワークでは施設種別を超えた意見交換が活発に行われ、「相談員は派遣先で何ができるのか分からなかったが、他の参加者からニーズを形にすることができると言われ、自分の中であいまいだった考えが明確になった」などの気づきが共有されました。

さらなる周知と取組みの推進を
研修を終えて園崎さんは、「東京にDWATができたことは被災者支援に関わる専門職が増える歓迎すべきこと。しくみは最初から完璧をめざす必要はなく、チーム員の力を合わせて1つでも2つでも派遣できるところから取り組むことに意義がある」と強調します。
今回の研修プログラムは、ネットワークの推進委員会内に設けた研修委員会が企画しました。事務局主導ですすめる地域もありますが、東京では先行地域のヒアリング等をふまえ、施設職員や職能団体を主要メンバーとして研修企画や研修体系等の構築を行っていきます。また、発災時を想定したシミュレーション訓練を通じて、DWAT派遣の流れを確認し、結果を今後のDWATの運営に反映させていくことを構想しています。
ネットワークでは年2回の登録研修を行い、チーム員を増やしていきます。また、24年度からはフォローアップ研修を予定しており、チーム員の資質向上や連携強化をめざします。
これまで被災地で活動する専門職チームは、医療・保健分野を中心にすすめられてきました。その中でDWATは最後発であるため、すでに取組みを始めている他県でさえ知名度が低いのが現状だといいます。ネットワークでは他分野の専門職はもちろん、職員の登録・派遣を行う福祉施設に対しても、意義や役割を継続して周知していくことを検討しています。
過去に実施された福祉職による被災地支援活動やDWAT先行地域のヒアリングから、被災地支援に携わった職員は、さまざまな経験を得て大きく成長して帰ってくるといいます。また他分野・他職種の職員と被災地支援をテーマに共に学ぶことも、職員の資質向上につながると考えられます。研修の受講や登録制度への参加、また平時の活動について、福祉分野の従事者が連携・協働し、大規模災害への備えを着実にすすめていくことが求められています。

(注)災害派遣福祉チーム…DWAT(ディーワット):Disaster Welfare Assistance Teamの略。大規模災害時に、要配慮者の福祉ニーズに的確に対応し、必要な福祉的支援を行う、福祉専門職(社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、保育士、看護師、理学療法士等)で構成されるチーム

(写真 東京DWATチーム員登録研修会の様子)

(図 災害派遣福祉チームの活動の流れ(都内で大規模災害を想定))

(表 災害福祉支援に関するこれまでの動き)


--2【TOPICS】
バリアフリーガーデンで広がる地域の輪
社会福祉法人とらいふ 特別養護老人ホームとらいふ武蔵野

コロナ禍で多くの課題に直面
デイサービスやショートステイ、保育所を併設する特別養護老人ホームとらいふ武蔵野は、2017年5月に事業を開始しました。開設後は地域住民と積極的に交流を図ってきましたが、新型コロナの感染拡大により、地域との交流や面会を制限せざるを得なくなりました。外出や会話の機会が激減してしまったことで入居者の認知機能の低下やうつの症状が現れるなど、入居者の生活にも影響がありました。それとともに、現場で働く職員にとっても大きな負担が生じ、離職者が相次ぎました。また、家族からのアンケートでも「早く面会をできるようにしてほしい」という声が多く聞かれました。

きっかけは一つのプランターから
コロナ禍で家族に会えず悲観する入居者を元気づけようと、小さなプランターを購入し、花の栽培を始めました。理事の大脇秀一さんは「普段は笑顔を見せない入居者が花の成長を喜び、少しずつ笑顔を見せてくれるようになった。草花を育てることが良い影響を及ぼしていると実感した。また、特養では20年5月から見取りケアが始まっていて、屋外で家族水入らずの時間を過ごしてほしいという思いがあり、職員が街角で見かけた車椅子のまま利用できる大きなプランターから着想を得て、バリアフリーガーデンをつくることを職員の話し合いで決めた」と話します。
オープンの準備は、バリアフリーガーデン着想から相談をしていた「クリーンむさしのを推進する会」を中心にすすめてもらいました。さらに活動を知り、地域住民の人たちが応援に来てくれました。また、園芸用品や設備などに必要な費用は「武蔵野市クラウドファンディング活用促進事業」を活用し、目標の100万円を超える119万円の資金が集まりました。

世代や立場を超えたゆるやかな交流の場「とらいふぁーむ」
22年9月19日の敬老の日に、バリアフリーガーデン「とらいふぁーむ」は保育所とデイサービスの中間スペースにオープンしました。運営企画推進室の河原優子さんは「新型コロナによって途絶えてしまった交流の機会を再構築することによって、地域福祉に貢献したいという考えから『とらいふぁーむ』の構想が生まれた。加えて、地域で人生を終える段階の人たちの尊厳ある暮らしのために、終の棲家として特養の役割を果たしたかった」と話します。続けて「オープン後は、地域のイベントで『とらいふぁーむ通信』を配布したり、こまめにブログを更新したりすることで、活動を知ってもらえるよう発信し続けた」と言います。
ガーデンでは、職員やクリーンむさしのが協力して花や野菜の手入れを行っています。収穫した野菜は入居者をはじめ、職員や地域住民などとらいふぁーむに関わる人々みんなで楽しんでいます。そのほかにも、地域住民が保育園の子どもたちと特養入居者のためにマジックショーを行うなど、地域住民の交流の場になっています。
デイサービスの利用者は、花の写生や押し花のオリジナルうちわづくり、ハーブを乾燥させたポプリづくり、植物を見ながら俳句を詠むなど、ガーデンでの活動を楽しんでいます。

入居者の役割創出の機会につながったビールづくり
23年3月、ホップの栽培やビール醸造を行う株式会社スイベルアンドノットの協力の下、クラウドファンディングで得た資金で「とらいふビールを作ろうプロジェクト」を開始。職員と入居者が協力し、ホップの苗植えから水やり、実の収穫までを行い、半年後に300本のオリジナルビールが完成しました。
大脇さんは「特養の入居者は、目標を持ってこの活動に取り組み、それを実現することができた。達成感を味わうことで入居者の自律心を高めることにつながった。ビールづくりの活動に関心を持った地域住民がガーデンを訪れるきっかけになったほか、特養やデイサービスへの利用を考えている方の見学が増え、新規利用にもつながった」と話します。

コンセプトを共有できる仲間を増やし活動を広めたい
とらいふぁーむ開始から1年が経ち、面会の場をガーデンにつくったことや、普段の居住空間を離れてリフレッシュできるようになったことで、入居者や家族、そして職員の満足度向上につながりました。
大脇さんは、とらいふぁーむで得られた効果として「野菜マルシェや芋ほり、交流イベントを行うことでとらいふぁーむの活動が浸透しつつある。園芸を通して職員と入居者の距離がより近くなり、さらに地域との垣根をなくしていく機会にもなっている。また、職員の満足度アップや離職防止、新しい職員の獲得、なによりも、利用者にとって生きがいや心身の活性化につながっている。今後『地域との関わり』というコンセプトが市内の他の特養にも広がり、共有できる仲間を増やすことで武蔵野市の介護を特徴づけられればと思っている」と話します。
河原さんは今後について「利用者の中には、とらいふビールのプロジェクトを『来年もやるぞー』と意気込んでいる方や、草花野菜の成長を楽しむ方、ガーデニングの先生になってくれる方もいる。また、介護度が重い方も主体的に活動に参加しようとしてくれている。これからも、人とつながることや人の役に立つことを積極的に行い「社会性」を育むことを大切にした施設でありたい」と思いを語ります。

(写真 右から(社福)とらいふ 理事 大脇秀一さん
特別養護老人ホームとらいふ武蔵野
運営企画推進室 河原優子さん)

(写真 芋ほりイベントの様子。入居者全員が芋ほりを体験し、採れたての芋のおやつを味わった)

(写真 保育園の子どもたちや入居者、近隣住民が集まりみんなで種まきを行った)

(写真 とらいふビールと、クラウドファンディングの返礼品として紙とトウモロコシを主原料としてつくったタンブラー)


--3【連載 ネットワークを活かした地域公益活動】
社会福祉法人同士がつながり、地域に根ざした活動に取り組む

杉並区社会福祉法人地域公益活動連絡会(すぎなみ社福連)は、区内の社会福祉法人同士が連携・協働し、地域公益活動に取り組んでいます。コロナ禍での活動の様子や、会員法人同士のつながりを丁寧にすすめていくことの大切さについてお話いただきました。

◆コロナ禍でも活動を続けることを意識して
すぎなみ社福連は、2015年の発足後、杉並区を3つに分け、そのブロックごとに活動をしてきました。新型コロナが流行する直前の19年に、杉並区全体で、一つの連絡会として動くことになりました。各法人だけでは取り組めない、もしくはさらに広げていきたい地域公益活動を、横のつながりを使ってすすめていくことを大切にしています。
すぎなみ社福連の最初の取組みとして、「すぎなみ地域活動お役立ちガイド」を作成しました。会員施設の概要紹介と地域住民向けイベントの開催や施設・物品の貸し出しなどの情報が掲載されています。20年には、随時更新された情報に住民がアクセスしやすくなるように、ホームページをつくりました。
会員施設同士はメーリングリストでつながっており、コロナ禍でも、何かあった時にはお互い呼びかけあうことのできる体制がとれていました。「歩みを止めない」ことを意識し、幹事会だけでもオンラインなどで活動を続けていました。
22年6月に、施設職員だけでなく、広く地域住民にも防災の取組みなどを知ってもらえるよう、「保育・障害・介護に向き合いながら災害を乗り越えるために」と題したパネルディスカッションを行い、動画配信しました。3分野の施設の代表者が登壇し、各施設が日ごろから取り組んでいる災害対策を伝えるとともに、一人ひとりが自ら防災について考える内容です。いざという時には福祉施設も地域住民に助けてもらうことがあることや、地域全体で助け合うことの大切さにも触れています。さらに、災害を自分事として考えられる「私たちの防災アクションシート」というワークシートも作成し、公開しています。
同年11月には、杉並区や企業、さまざまな団体が協働して主催し、地域住民の交流やつながりづくりを目的にしたイベントに、杉並区社協と一緒に参加しました。複数の会員法人職員が案内チラシ配布と、寄附やボランティア活動に関するアンケート協力を呼びかけました。すぎなみ社福連の幹事長を務める中田あかねさんは、「コロナ禍を理由に何もしないわけにもいかない。機会を捉えて少しでも動くことを大切にしていた」と振り返ります。

◆顔の見える横のつながりを大切にする
23年5月には、会員施設職員が集まり、「広報活動」をテーマにした勉強会とグループワークを行いました。参加者からは「勉強会の内容も参考になったが、交流する機会があって良かった」と好評でした。同年8月に行った活動報告を兼ねた全体会でも、グループワークの時間をとりました。お互いの状況を伝え合ったり、会話をしながら活動のアイディアを出し合ったりと、つながりが生まれる機会になっています。
中田さんは「顔を合わせて情報交換をすることで、自分が知らなかった地域の困りごとに気づくことができ、分野にとらわれずに地域に関わる意識が芽生えていくと思う」と話します。杉並区社協の長峰由美さんも「対面での活動も増えている中で、各法人の悩みやノウハウが共有できていて、つながりの大切さを改めて実感している」と言います。

◆地域の中に〝当たり前に〟存在する社会福祉法人
ホームページなどでの情報発信は継続して行い、地域住民に活動を知ってもらうことも大事にしています。杉並区社協の疋田恵子さんは「ホームページを見た地域の方からの問い合わせも増えている。つくり上げたものを活かし、継続することで、私たちの活動が地域に浸透していくと考えている」と言います。
また、イベントで配布したアンケート回答や日々の情報共有の中で、「使わなくなった子どものランドセルを寄附したいが、どうしたら良いのか分からない」などの具体的なニーズもあがっています。こうした声に、すぎなみ社福連としてどのように取り組んでいくか検討を重ねながら、「杉並らしい」地域公益活動の展開もめざしていきます。
地域住民にすぎなみ社福連の存在や社会福祉法人を知ってもらうことで、同じ地域の中で助け・助けられる関係性が成り立ち、それが一種の地域公益活動になると中田さんは考えています。「社会福祉法人が地域の中に当たり前にあり、必要な時に相談に来てもらったり、頼っていただけるようになって初めて、地域公益活動が〝ふつうに〟できる。社会福祉法人が地域の中の一住民であると思っていただけるよう、私たちも意識しないといけない」と強調します。
事務局は、会員法人が参加できる機会をつくり、一緒に作業をすることを大切にしています。疋田さんは「イベントで配布したアンケートの集計作業に協力してくれる施設や、寄附してくださった方にお礼として渡せるノベルティを持っている施設があるかなど、メーリングリストで声をかけるようにしていて、皆さんすぐに反応してくださる。歩みは遅くなってしまうかもしれないが、このような過程を惜しまず、情報共有をしながら〝みんな〟ですすめていきたい」と言います。
社会福祉法人けいわ会の理事長で、すぎなみ社福連の会長を務める澤津弘さんは「地域公益活動を行うにあたって、杉並区社協のサポートにより、つながる機会をつくっていただいた。富士登山に例えるならまだ1合目を超えたところかもしれないが、現状維持にとどまることなく、今後も地域の方々に喜ばれる『すぎなみ社福連』になれれば」と、思いを話します。ネットワークでつながり、社会福祉法人がさらに地域に根ざしていけるよう、すぎなみ社福連は今後も活動を続けていきます。

23年5月号よりお届けしてきた本テーマの連載は今号で終了します。今後も、地域公益推進協のサイトなどで、地域課題の解決をめざした各地域のさまざまな取組みを発信していきます。

(写真 左から
(社福)杉並区社会福祉協議会 経営管理課連携推進係 長峰由美さん
(社福)杉樹会 法人本部長常務理事 中田あかねさん
(社福)杉並区社会福祉協議会 経営管理課長 疋田恵子さん)

(QRコード すぎなみ社福連 ホームページ)

(QRコード 「災害パネルディスカッション~保育・障害・介護に向き合いながら災害を乗り越えるために~」の動画はこちらからご覧いただけます!)


--4【 東社協発】
「経営相談室」では、都内社会福祉法人・福祉施設からの相談をお受けしています
経営相談室には、毎年度約1千件の相談が寄せられています。内容に応じて、弁護士や公認会計士、社会保険労務士、税理士による専門相談(メールによる相談・回答が基本)も行っています。法人・施設運営や利用者処遇など幅広く対応していますので、お気軽にご相談ください。
■相談メールアドレス:
fukushi-soudan@tcsw.tvac.or.jp
■専用電話番号:03-3268-7170

守秘義務厳守、相談無料!!
※できるだけメールでのご相談をお願いします。

■経営相談室ホームページ
※社会福祉法人の経営に参考となる情報や
「経営相談室だより」を掲載しています。

*カスタマーハラスメントホームページ
介護サービスの利用者・家族からのハラスメント
への対応についての相談は別途お受けしています。


東社協中期計画レポート 4 ~東京の多様性を活かした“地域共生社会”を一歩前へ~
「令和4~6(2022~2024)年度 東社協中期計画」の中から、重点事業⑬「東京都災害ボランティアセンター(VC)の取組み推進と、連携のあり方に関する協議・検討の実施」について進捗をお伝えします。

「東京都災害VC」の取組みは、NGOやNPO、社会福祉協議会、東京都等が参画する「東京都災害VCアクションプラン推進会議」(事務局:東京ボランティア・市民活動センター(TVAC))のアクションプラン(5か年中期実行計画)に基づき、すすめています。
22年には、東京都災害VCを協働運営する一般社団法人「災害サポート東京(CS-Tokyo)」の設立に関わりました。また、21年に作成した「市民協働 東京憲章」の普及に努め、22年度から23年度にかけて「関東大震災100年とこれからの市民防災」をテーマとする連続勉強会を6回開催しました。
区市町村災害ボランティア活動支援として、被災者支援経験が豊富なNGO・NPOと区市町村社協のブロック会議をつなげるなど、平時から多様な団体の連携・協働を意識して取り組んでいます。
今年は第2期「アクションプラン」の最終年にあたることから、第3期「アクションプラン」の策定に向けて検討をすすめています。

(QRコード 東社協中期計画はこちらからご覧いただけます)

(QRコード 災害協働サポート東京(CS-Tokyo)の概要や事業内容はこちら)

(QRコード TVACの災害における取組みについてはこちらから
*アクションプラン推進会議の詳細などもご覧いただけます)

東社協 新会員のご紹介
▼東京都高齢者福祉施設協議会
特別養護老人ホーム しらひげ/渋谷区ひがし健康プラザ地域包括支援センター/渋谷区かんなみの杜・渋谷地域包括支援センター/特別養護老人ホーム 本町けやきの杜
▼介護保険居宅事業者連絡会
憩いの里いけぶくろ/指定居宅介護支援事業所さにゅう/ケアレイズプランセンター/白十字あきつの里/グループホーム 本町けやきの杜
▼知的発達障害部会
すみだ障害者就労支援総合センター/小松川支援センター/地域活動支援センターアンティ/しょうぶエバンズ
▼児童部会
自立援助ホーム L‘espoir
▼保育部会
調布市立上石・原保育園/薫る風・上原こども園/もみの木保育園希望丘
▼情報連絡会員
PC工房/グループホームむく/つむぎホーム/グランドール立川/新町ハイツ/中原ハイム/プレイセンターせんがわ/啓光ホーム/1番線ホーム/ウイズタイムホーム/わくわくプレイス/わくプレ2 きぼう/地域活動支援センターふれあい/東梅ホーム/東京手話通訳等派遣センター/グループホーム畑中たましろ荘/東京聴覚障害者福祉事業協会法人本部事務局

第72回東京都社会福祉大会のご案内

東京の社会福祉の発展に功績のあった社会福祉関係者に感謝の意を表するとともに、本表彰を通して優れた活動内容を紹介することで福祉活動の普及・推進をめざし開催します。今年度は、492名56団体に東京都社会福祉協議会会長表彰状・感謝状を贈呈します。

日時:2023年12月22日(金)14:30~16:00
場所:東京都庁第一本庁舎 大会議場
主催:東京都、東京都共同募金会、東京都社会福祉協議会

東京の児童養護施設や里親から巣立つ若者にエールを!
~クラウドファンディングに挑戦中~
さまざまな事情により保護者と暮らせず、児童養護施設や里親のもとで生活する子どもたちの多くは、進学や就職のため18歳で施設や里親のもとから離れ、一人暮らしを始めます。東京善意銀行でお預かりした寄付金の一部は、自立を控えた若者へお祝い金としてお送りしています。このお祝い金をより多くの方へ知ってもらいたいという思いから、クラウドファンディングを実施しています。
公開期間:2023年11月16日(木)~2024年1月30日(火)
目標金額:200万円

--5【福祉のおしごと通信】
経験や知識のカードで〝ポケット〟をいっぱいに

婦人保護施設いこいの家で、支援員として働いて4年目になる樽谷志穂さんに、働く上で大切にしていることや福祉従事者に向けて伝えたいことを伺いました。

(写真 樽谷 志穂さん
Shiho Tarutani
社会福祉法人 恩賜財団 東京都同胞援護会
いこいの家 支援員)

保育園の先生の影響で福祉の道に
社会人になってすぐは、IT企業など、福祉と関係のない業界で働いていました。福祉に興味を持ったのは、結婚後、子どもが通っていた保育園の先生方がとても親切にしてくれたのがきっかけでした。箸の持ち方からトイレトレーニングまで、全力で子育てをサポートしてくれる姿を見て、自分も保育の勉強をしようと決意しました。職業訓練校に2年通い、保育士資格を取得した後、職業訓練校の先生と、今勤めている法人の母子生活支援施設の施設長(現いこいの家施設長)が知り合いだった縁で、入職することになりました。それから10年経ち、いこいの家に異動して4年目になります。

一人ひとりに合わせ、利用者の〝自立〟を支える
いこいの家では、24時間体制で、生活に困難な問題を抱える女性の支援をしています。就労や金銭管理をサポートしたり、人間関係などで悩んでいる方の相談を受けたりすることもあります。健康・食事についての支援では、看護師・栄養士と連携しています。
利用者と接する中でまず悩むのは、初対面からの距離の縮め方です。どうしたら心を開いてもらえるかは一人ひとり全く違うので、新しく入所された方を担当するたびに試行錯誤を重ねています。
日々感じるのは、〝自立〟のハードルの高さです。利用者にとって、1人で暮らしていくことはさまざまな困難があると思います。〝自立〟と言うと、誰にも頼らずに何でもできるイメージがありますが、そうではなく、地域の資源を使い、さまざまな人とつながり、生活していて困ることがなるべく少なくなれば良いなと思いながら支援にあたっています。

福祉の仕事に就いて変わったこと
1人でできる仕事ではないので、他の職員との関わりも大切です。利用者と接する際もそうですが、何かを伝える時は、まず自分が根拠をしっかり理解し、相手に合わせた伝え方をシミュレーションしてから話すようにしています。私は何事も、すぐ「なんで?」と聞いてしまうのですが、逆に質問することが苦手な人もいると思います。相手が聞きやすい空気をつくるのも大切ですが、質問が必要ないくらいしっかり話が伝わるよう、工夫して話すようになりました。これは、福祉の仕事に就いてさまざまな利用者や職員と出会い、「自分が発した言葉を、どう受け取るかは人によって変わる」ということを実感したからだと思います。
福祉施設で人と関わる中で、自分が変わったことは他にもあります。私は支援において「丸丸をして良かった」と思うことがあまりなく、「もっとこうしなきゃ」と常に考える性格で、自分ではそれがネガティブ思考で短所だと思っていました。しかし、先輩職員は向上心があると受け取ってくれて、私の長所だと言ってくれました。それ以来、私自身も現状に満足しないことをプラスに捉えるようになりました。自分の向上心も大事にしつつ、「これじゃだめだ」と思った時は、その時のベターを選ぶようにしています。

経験を積むほど見える景色は変わる
福祉の仕事をされている、特に若手職員の方に伝えたいのは、「1~2年目で判断しないでほしい」ということです。仕事の面白さや向き不向きは、経験を積むほど見え方が変わっていきます。他の業界に比べ、こんなに経験年数の違いで見える景色が変わるのは、福祉ならではだと感じています。後輩職員には、よく、今経験していることや学んでいることをカードに例えて「〝ポケット〟にどんどん入れていってほしい」と伝えています。私も、自分の経験が役に立ち、持っているカードが出せた時、点と点がつながるようで嬉しく感じます。すぐには分からなくても、いつかそのカードを〝ポケット〟から出して、支援に活かせる日が来ることを知ってほしいと思っています。


--6【くらし今ひと】
すべての人に開かれていて、柔軟だからこそ面白い

人々が行き交い、他者に触れることで誰かに少しでもやさしくなるきっかけになればと、アトリエを地域に開いている芸術家の平山匠さんにお話を伺いました。

◆美術はいつも近くに
子どもの時から〝美術〟はすぐそばにありました。社会的に自閉症と定義された2つ歳の離れた兄がいるのですが、絵を描いたり粘土を触っていると落ち着いたようで、家にはいろんな色の小麦粘土や画材がありました。兄と一緒にオリジナルのキャラクターを生み出して粘土や人形で遊ぶ。そんな時間を多く過ごす中で、美的感覚が養われていったように思います。粘土で何かをつくることが得意だったので、大学は彫刻科にすすみました。
幼少期から兄のそばで美術に触れてきた自分にとって、面白いと思う美術やアートの領域は〝色々な視点〟があって、大学のアカデミックな授業に違和感を強く覚えました。気づけば美術をやる意味を見失い、模索する日々が続きました。そんな時に知人が勧めてくれたカルチャースクールに入ることで、「なぜ美術を必要とするのか、表現したいのか」、自分の原点をひたすら見つめ直すことになります。

◆兄と向き合い、自らをコウシンすることから
これまで兄の障害に対して「本当に向き合っていいのか」という気持ちがどこか自分の中にありました。そんな自分の原点をひたすら探る途中に、幼少期に障害を揶揄する周囲に強く反発した自分こそが、心の奥底に根付いた優生思想の中で兄を差別してきたのではないかということを見出していきました。兄に対する社会のあり方への問題意識と自分自身の逆説的な差別意識から、美術に触れるきっかけをくれた兄と一緒に、美術を介して世界を共有する時間をもう一度もちたいと考えました。そうして、兄の絵をベースに対話と会話を繰り返し、立体化させていったのが「モンスター大戦記ハカイオウ」。兄弟という関係性から離れ、一人の表現者である「兄」と向き合い、二人の視点を近づける過程を積み上げていった作品です。
この制作から、〝他者との違い〟や〝コミュニケーションの手法〟等の新たな視点が生まれ、20年に「アトリエ・サロン-コウシンキョク」を開くことになりました。アトリエ兼サロン兼公民館的な場として、自分を介してさまざまな人が流動的に交わり、それぞれの感覚や視点を更新してもらって、おこがましいけれどそれで救われる人がいたらいいなって。実際、自分は救われていますし。

◆美術も、自分も、柔軟で開いていたい
コウシンキョクを運営しながら、22年からは都内病院でデイケアの「造形コース」の美術講師をしています。精神的に生きづらさを感じている人を前に、何が自分はできるのか。一人ひとり背景や価値観、表現したいものは違えど、生きるための美術がそこにはあって、〝美術のあり方〟そのものを問い直す時間になっています。同時に、〝美術を楽しむ、喜ぶ〟といった表現することとストレートに向き合う大切さを改めて教えていただいています。
やっぱり権威性を重視したり、一部の人にしか開かれていない美術には違和感があって、ある種優生思想的な文脈につながっていると感じます。だから自分はどんな人に対してもオープンに、どのようにリスペクトして、面白がれるかを大切にしていきたいです。

(写真 「モンスター大戦記ハカイオウ」
制作過程の2人の対話や会話も一緒に展示されていた)

(QRコード 平山さんの作品はホームページよりご覧いただけます)

 

以上で、福祉広報2023年12月号を終わります。

ページの先頭へ