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東京都社会福祉協議会

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福祉広報 2024年7月 786号 テキストデータ

【表紙】(写真)
足立区にある、戦前に建てられた日本家屋「仲町の家」。
この日は「草むしりと交流会」を開催。
晴天の中、汗をかきながら草むしりに精を出す参加者たち。
終了後はみんなでお弁当を食べて交流を深めました。
―仲町の家 足立区―

p.2 ●社会福祉NOW
令和6年能登半島地震における東京DWATの取組み

p.4 ●み~つけた
アートを通じて多様な人がつながり新たな出会いが生まれる文化サロン
仲町の家(足立区)

p.5 ●連載 福祉施設が取り組む広報活動【第4回】
ホームページリニューアルを機に施設の活動を分かりやすく発信
社会福祉法人 ベタニヤホーム 母子生活支援施設ベタニヤホーム(墨田区)

p.6 ●Focus on!
東社協
乳児部会 心理研究会

【目次】

1社会福祉NOW
2み~つけた
3連載 福祉施設が取り組む広報活動 第4回
4Focus on!今、こんな動きがあります
5Information(東京の寄附のカタチ/マンスリーニュース/ 東社協トピックス)
6福祉職が語る


--1【社会福祉NOW】
令和6年能登半島地震における東京DWAT(東京都災害派遣福祉チーム)の取組み

東京都災害派遣福祉チーム(以下、東京DWAT)は、災害時に避難所や福祉施設へ派遣され、被災者の福祉ニーズに応じた支援を行います。この度の令和6年能登半島地震では、東京から初めての派遣が行われ、石川県輪島市内の避難所に計30名のチーム員を派遣しました。

注1 DWAT
Disaster Welfare Assistance Teamの略

東京の災害時要配慮者支援とDWAT
東社協では、2017年度より東京都から委託を受け、「東京都災害福祉広域支援ネットワーク」を構築し、平時から東京都や区市町村、 東社協(事務局)、区市町村社協、 東社協施設部会、福祉専門職の職能団体が連携して、災害時の活動体制構築に向けた取組みをすすめ、災害対策の強化を図ることをめざしています。
2022年度末には、国や他の自治体の動向等をふまえ、東京においても「東京都災害派遣福祉チーム(以下、東京DWAT)」を設置し、翌年度からチーム員の登録研修を本格的に開始しました。
DWATは、都道府県単位で組織されるチームで、所定の研修を修了した福祉施設職員や福祉専門職等で構成されます。被災自治体からの要請により避難所や福祉施設へ派遣され、医療などの他のチームと連携して、災害時要配慮者への福祉的支援を行います。全国では8,000人を超えるチーム員が登録されています。

東京DWATの輪島市への派遣
全国社会福祉協議会は、厚労省から委託を受け、「災害福祉支援ネットワーク中央センター(以下、中央センター)」を運営し、被災地からの要請に基づき、全国的なDWATの活動調整等を担っています。
令和6年能登半島地震では、1月1日の発災後、石川県からの要請に基づき、5日から全国での派遣調整が行われました。8日には金沢市内に設置された1.5次避難所へのDWAT派遣が開始され、左図の通り、順次、奥能登地域に活動を広げました。東京では、東京DWATチーム員に派遣の意向を確認するとともに、現地の被害状況やDWATの活動状況などを随時チーム員へ情報共有しました。

図 石川県の地図 引用:中央センター作成資料

1~2月は過去に活動経験のある道府県のDWATが中心に派遣されましたが、3月からは活動先の拡大に伴い、全都道府県にDWATの派遣要請が出されました。東京DWATは輪島市へ派遣されることとなり、下表のとおり、2月29日から3月29日までの期間、市内4か所の一般避難所に30名のチーム員を派遣しました。
3月末までに全国から1,200名を超えるチーム員が派遣され、4月以降は金沢市内の1.5次避難所でのみ少数のチームが活動を継続していましたが、6月末をもって、すべてのDWAT活動が終了となりました。

表 東京DWAT派遣先(輪島市内)

輪島市におけるDWATのミッション
東京DWATの輪島市における最初の派遣先は、門前中学校内に設置された一般避難所でした。3月当初、門前中学校には約170名が避難しており、対口支援で入った行政職員が避難所運営を担っていました。また、「JMAT」や「JRAT」といった医療チームが市内の避難所を巡回したり、国際医療ボランティア団体「ジャパンハート」の看護師が2~3名のローテーションで長期滞在し、避難者の健康管理を支えていました。
第1クールのリーダーを務めた有賀弘さんは「門前中学校は発災当初、自主避難所として住民が押し寄せ、集落ごとにまとまって生活していました。段ボールハウスだったので、どこにどんな世帯がいるのかを市も把握できていない状況でした。そのため、避難者名簿をDWATにも提供してもらえるよう避難所の運営者へ依頼するところから活動を始めました」と言います。
また、発災から2か月が経過する中、避難者の心労も蓄積し、健康状態の悪化や最悪の場合は段ボールハウス内での孤独死など、さまざまなリスクが懸念されました。そこで、第2クールからは、輪島市内に入っていた8都県のDWATによる定期ミーティングが始まりました。その中で、輪島市内におけるDWATのミッションが、避難所内の要配慮者情報を市につなぎ、生活の場が仮設住宅などへ移行しても福祉的支援が継続される環境づくりの支援であるとの共通認識を深めました。第2クールリーダーの岩田雅利さんは「DWATの役割が具体化されたことで、急展開ながらも他のチームと同じ方向を向きながら、避難所内のマッピングと要配慮者のアセスメントをすすめられたと思います」と、活動を振り返ります。
第5クールからは、門前中学校における要配慮者の把握がおおむね完了したことから、中小規模の避難所へ派遣先が変更され、避難所内のキーパーソン(民生委員や町内会長等)と連携し、要配慮者の情報把握に取り組みました。第6クールリーダーの岩田有佳乃さんは「DWATのミッションと避難者のニーズに乖離があり、時にはもどかしい思いをすることもありましたが、DWATの役割はあくまで『地元での支援につなぐ』ことであり、被災地が自分たちの力で復興に向かえるよう支援することの大切さを改めて感じました」と、DWATが果たすべき役割とその難しさについて語ります。

「連携と協働」によりめざすもの
業種や職種、経験なども異なるメンバーでチームを組み、さまざまな関係機関や支援団体と一緒に被災地支援を行うためには、なによりも「連携と協働」が不可欠でした。今回の派遣では、施設長などの管理職経験者がリーダー役として他機関との連携やメンバーの統率を担いました。他のチーム員もそれぞれの専門性を発揮して、「福祉なんでも相談コーナー」での対応や、避難所内での体操やレクリエーションの開催、不安を抱える被災者への傾聴など、あらゆる場面で活躍しました。
また、今回のDWAT活動では、支援に入る都道府県DWATがチームで活動ができるよう、各活動地域における「地域リーダー制」が導入されました。
東京DWATでは今回の経験をふまえ、今後、チーム員養成や支援体制の強化を図りつつ、東京での大規模災害を想定した平時からのつながりと、外部支援を受け入れる受援力を高めていくことをめざしていきます。

2024年度も10月と1月の2回、「東京DWATチーム員登録研修会」を予定しています。東京都における災害対策の強化に向け、ご関心のある方は、ぜひご参加ください。

注2 対口支援
大規模災害で被災した自治体と支援側の自治体がパートナーとなり、復興における各種支援をするための手法
注3 JMAT
日本医師会災害医療チームの略。避難所等での医療活動を通じて被災者の命と健康を守り、地域の医療復興を支援するチーム
注4 JRAT
日本災害リハビリテーション支援協会の略。災害時における被災者の身体的・精神的な回復をサポートし、自立生活ができるよう支援を行うチーム
(写真 段ボールハウス(門前中学校))
(写真 さまざまなチームとの協働)


--2【み~つけた】
アートを通じて多様な人がつながり新たな出会いが生まれる文化サロン

出会いの“縁”をつむぐ場所
江戸時代に日光街道の宿場町として栄えた足立区千住地区。ここに、千住のまちづくりに貢献した石出掃部介吉胤の子孫が代々受け継いできた日本家屋があります。この家屋を足立区、東京藝術大学、NPO法人音まち計画の三者共催による市民参加型のアートプロジェクト「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」が、文化サロン「仲町の家」として地域にひらいています。アーティストや地域住民、ふらっと通り掛かった人など、いろいろな人や団体が出会い、交流できる拠点として2018年にオープンしました。
運営を担うNPO法人音まち計画の吉田武司ディレクターは「地名である仲町の『仲』という漢字には、人と人との仲を取り持つという意味があります。プロジェクト名にも「縁」という漢字があり、コンセプトにぴったりだと思い『仲町の家』と名づけました」と話します。

つながりから生まれる新しい文化
「仲町の家」では、アーティストや学生などとともにアートの展覧会や映画上映、コンサートなどのさまざまなプログラムを実施しています。イベントがない日は、縁側で休憩したり、「コンシェルジュ」と呼ばれるスタッフと千住のまちや文化についておしゃべりをしたりなど、自由に過ごすことができる場所です。
吉田さんは「ギターが置いてある居間にたまたま立ち寄った方がギターの練習をし始め、そのうちに仲間も増えて、最終的にバンドを組み、「仲町の家」で演奏会を開催したことがありました。ここが接点となって人と人とがつながり、表現の場や可能性が新しく生まれたのを目にし、とても印象的でした」とエピソードを話します。
「仲町の家」が文化サロンとしてオープンして6年。吉田さんは「以前に、地域に出て地域包括支援センターとアートを通じた介護予防に関するプロジェクトを行ったのですが、拠点があっても出会うことのできない人がまだまだいることを実感しました。福祉サービスを利用されている人、福祉に携わる方や団体とも出会える場がつくれないか模索しています」と語ります。
「仲町の家」は、新しい可能性が生まれる文化サロンとして、さらにたくさんの人たちに開かれた場所をめざしています。

仲町の家
場所:足立区千住仲町29-1
オープン:土·日·月·祝日 10:00~17:00 年末年始・夏季休業あり
問合せ先:「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」事務局 電話03-6806-1740

QRコード 仲町の家ホームページ
(写真 仲町の家 足立区)


--3【連載 福祉施設が取り組む広報活動 第4回】
ホームページリニューアルを機に施設の活動を分かりやすく発信

社会福祉法人 ベタニヤホーム 母子生活支援施設ベタニヤホーム(墨田区)

法人や施設の“顔”として、あらゆる関係者に情報を発信できる公式ホームページ。今号は、プロの協力を得て、2024年4月にリニューアルを実現した、母子生活支援施設ベタニヤホームに取材しました。

施設を必要とする人にさらに情報を届けたい
ベタニヤホームは、関東大震災により被災した母子の保護と救護のために1923年に設立され、2023年に創立100周年を迎えた母子生活支援施設です。施設長の伊丹桂さんは「全国的にみて母子生活支援施設の数は減少しています。一方で、DV被害やひとり親世帯の貧困などの問題が深刻化する状況下で、施設を必要とする人たちは数多くいるのに、存在を知られていない状況があります。そこで、さらに多くの人にベタニヤホームを知ってもらうため、まずは公式ホームページを一新し、必要な情報を積極的にお知らせしたいと思いました」と、背景を話します。
それまでベタニヤホームの公式ホームページは、イラストや文章などを主に職員が手掛けていましたが、今回のリニューアルでは、文章やレイアウト、撮影などの制作をプロの力を借りた方がより訴求力が高まると考え、ライターやデザイナー、フォトグラファーに協力を仰ぐことにしました。助成金も活用し、施設の広報委員会がかじ取り役となり、プロと連携しながらリニューアルに向け動き出しました。

対象を絞り込んだ分かりやすいデザイン
広報委員会メンバーの一人、松丸富士恵さんは「地域で困っている方にベタニヤホームのことを知ってほしいという想いに加え、施設を応援してくれる人たちや企業にも、我々の理念や活動を届けたいと考えました」と話します。その結果、ターゲットを「支援が必要な人」と「支援したい人」の2つに絞り、「暮らしたい方へ」と「ご支援の受付」というタブをトップページに作成しました。
同じく広報委員会メンバーの板谷かなとさんは「PCで見る画面とスマホで見る画面を意識して区別したのもポイントです。スマホ画面でトップページを開くと『暮らしたい方へ』というポップアップが表示され、問合せ先の情報にすぐに飛べるしくみにしました」と話します。「ご支援の受付」ページには、寄附やボランティアへのお礼のメッセージと、寄附の方法やボランティア募集への問合せ方法が分かりやすく掲載されています。
デザインは、全体的にシンプルで温かみのあるものに統一しました。特徴的なのは、ホームページに掲載している写真の中に、利用者が登場していること。板谷さんは、「きちんと趣旨を説明し、了承を得た方を撮影しましたが、掲載するのは正直悩みました。それでも、ここに来た方がどういう風に暮らしているのかリアルにイメージできるのは、実際の利用者さんが載った写真以外ないと思ったのです」と語ります。2023年夏ごろから検討を始め、約半年間の制作期間を経て2024年4月1日にリニューアルしました。

退所された方たちにも広報していきたい
伊丹さんは「ホームページを一新したからといって、これで終わりとは思っていません。これからは施設を出た『退所者』向けにも、ベタニヤホームのイベント情報などをお知らせできるような広報のしくみを考えていきたいです」と、リニューアルの所感と今後の展望を語ってくれました。

(写真 PCのトップ画面。2つのタブにより、サイトを訪れた人が何を知りたいか即座に分かります)
(写真 スマホのトップ画面。「暮らしたい方へ」のボタンを押すと、連絡先が掲載された画面へ移ります)
QRコード ベタニヤホーム ホームページ
(写真 施設長 伊丹 桂さん、松丸 富士恵さん、板谷 かなとさん)


--4【Focus on!】
さまざまな事情から、家庭で育てることができない乳幼児を24時間365日受け入れ、見守り続ける乳児院。都内に11か所ある乳児院で構成される 東社協「乳児部会」は、時勢に応じた調査研究や研修実施、提言活動等に取り組んでいます。当部会には職種ごとの研究会があり、今回は各施設の心理職による「心理研究会」の活動を紹介します。

心理職のあり方を模索する場
乳児院における心理職は、子どもたちの心身の発達状態の把握や心理的ケアをはじめ、保護者のケアや親子関係の調整、より良い支援に向けた他職種へのコンサルテーションなど、専門性に基づく支援のみならず、子どもたちとの関係構築、そして支援現場に大切な多職種連携を支えています。心理職の勤務形態や配置は施設で異なり、全国的にみてもその数は多いといえません。「一般的な乳幼児支援と異なる」「教科書だけじゃわからない、応用が求められる」と、心理研究会の齊藤さんと麻見さんが話すように、乳児院という環境下で心理職として取り組む固有の難しさが多くあるといいます。だからこそ、20名を超える心理職が定期的に一堂に会す心理研究会は、専門職同士で学び合える貴重な機会であり、乳児院での心理職のあり方をそれぞれが模索する重要な場になっています。

心理研究会と乳児院の相互作用をめざして
家庭支援・心理研究会を経て、2013年に設けられた心理研究会は、年4回程度と限られた場である中、各職員の課題意識や関心に基づくテーマをもとに情報交換や研修、事例検討を行っています。2023年度は「ライフストーリーワーク」をテーマに、外部講師も招きながらみんなで学び、考える時間を過ごしました。
特に2015年から数年にわたるPCAGIP法による事例検討の研究は、心理研究会として大切にしてきた取組みといえます(右図参照)。「チームで養育を考える乳児院で生かせるのでは」というメンバーの提案を機に、みんなで学ぶことから始めて各施設でも試行し、現在は乳児部会の研修で毎年実施され、ケースカンファレンスに取り入れている施設もあります。

図 PCAGIP法による事例検討(乳児部会心理研究会「乳児院におけるケースカンファレンスー新しい事例検討法 PCAGIP法の取り組みー」から作成)

このように、心理職としての専門性だけでなく、子どもの養育にみんなで取り組む現場のあり方も問い続けてきた心理研究会。設置当初から参加している麻見さんはこれからの研究会について、「乳児院はまさに過渡期にあり、求められる機能や役割、そのあり方が変わってきています。社会が変わりゆく中で、心理職としてどうあるべきなのか。都内施設で働く仲間として、一緒に考えていけたらと思っています」と話します。続けて、乳児院で働いて4年目となる齊藤さんは「新たなメンバーも増えていて、参加する誰にとっても満足度の高い研究会をめざしていきたいです。研究会で得たものをそれぞれが乳児院に持ち帰り、また研究会に持ち寄るといった循環ができれば」と研究会への想いを明かします。
2024年度の研究会テーマは「観察」。心理職として、どんな視点で日々子どもたちを見ているのか。色々な学びを経験した心理職がつどい、情報交換することから始めていきます。

今回お話しをお聞きしたお二人
(イラスト 社会福祉法人愛恵会乳児院 愛恵会乳児院 心理療法担当職員、専門職リーダー 麻見 映理子さん)
(イラスト 社会福祉法人二葉保育園 二葉乳児院 心理療法担当職員 齊藤 朗子さん)


--5【Information(東京の寄附のカタチ/マンスリーニュース/ 東社協トピックス)】
東京の寄附のカタチ

東京善意銀行事業のご案内~利用者の交流活動促進のための経費助成事業~

皆様からいただいた寄附金の一部を「施設利用者の交流活動費」として助成しました。施設からは「普段交流の少ない利用者同士が助け合う様子がみられた」、「今回の旅行をきっかけに『仲間』がいるという安心感や一体感が促進された」、「地域の方に施設のことを知ってもらう機会ができた」など、たくさんの声が届きました。

東京善意銀行では社会福祉施設等への寄附のご相談を承っております。
(写真 3つの事業所合同開催で、子どもと卒業生がともに参加し、子どもたちが作成・準備をしたゲームなどで楽しい時を過ごしました。)


マンスリーニュース
2024/5/26~6/25

ピックアップ
(5/17)「共同親権」導入を柱とする改正民法が可決・成立
離婚後の法制度としては77年ぶりの見直し。単独親権に限る現行制度から共同親権選択を可能とした。また養育費の先取特権の付与となる「法定養育費」制度が新設された。2026年までに施行される。

(5/30)「住宅セーフティネット法」の改正案が可決・成立
高齢や障害などにより、一般的な賃貸住宅への入居が困難な「住宅確保要配慮者」の居住安定をめざす同法改正案が可決・成立した。居住支援法人が支援する「居住サポート住宅」の認定制度などが規定された。

(6/5)合計特殊出生率1.20で過去最低
厚生労働省が公表した「令和5(2023)年人口動態統計月報年計(概数)」の結果によると、合計特殊出生率は1.20で過去最低。出生数も72万7,277人と、8年連続の減少で過去最少であったことが明らかになった。

東社協トピックス
2023年度事業報告および決算が承認されました
2023年度事業報告および決算が、監査ならびに2024年6月12日の理事会、6月27日の評議員会にて、承認されました。2023年度は、『令和4~6(2022~2024)年度 東社協中期計画』の2年目として事業を推進してきました。
内容の詳細はホームページからご覧いただけます。
QRコード 東京都社会福祉協議会 ホームページ

夏の体験ボランティア2024 in TOKYOはじまる!
夏の体験ボランティアの季節がやってきました!「ボランティア体験をしたい」「新しいことに挑戦してみたい」「社会で起きている課題について知りたい」「多様な方に出会いたい」など、皆さんの新たな一歩をお待ちしています。初めての方もぜひ詳細をご覧ください!
QRコード 東京ボランティア・市民活動センター(TVAC) ホームページ 夏の体験ボランティア2024 in TOKYO


令和5年度共同募金の御礼
令和5年度の共同募金運動につきましては都民各位のご理解とお力添えにより実施し、経済活動の停滞や市民活動の自粛などを起因とする新たな社会福祉課題に対する関心の高まりもあり、前年度を上回るご寄付をお寄せいただくことができました。心より感謝申し上げます。
これからも皆様のたすけあいのお気持ちを、支援を必要とする多くの方々へお届けできるよう努めます。引き続き皆様方のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
社会福祉法人 東京都共同募金会


東社協の本
ご注文は 東社協図書係まで 電話03-3268-7185

New
重層的支援体制整備事業 実践事例集 Vol.2 ~実施5区市の区市町村社協の取組みより~
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(写真 重層的支援体制整備事業 実践事例集 Vol.2 ~実施5区市の区市町村社協の取組みより~ 表紙)

重層的支援体制整備事業 実践事例集 ~実施7区市の区市町村社協の取組みより~
本事業を実施している7つの自治体の区市町村社協にヒアリングした内容をもとに、取組みのポイントを整理しました。
B5判/100頁
発売日2023.5.12
定価550円(本体500円+税10%)

チームで取り組む地域共生社会づくり Vol.2 ~民生児童委員・社会福祉法人・社会福祉協議会の3者連携による4つの実践事例集~
A5判/40頁
発売日2023.4.7
定価495円(本体450円+税10%)


--6【福祉職が語る】
本人の自己決定に即した過不足ない支援を

「権利擁護センターすてっぷ」と社会福祉基礎構造改革
私は、東京都社会福祉協議会が1991年に設置した、認知症高齢者(設置当時は痴呆性高齢者)・知的障害者・精神障害者のための「権利擁護センターすてっぷ」(以下、「すてっぷ」)に、1994年から法律専門相談員として活動に携わりました。まだ社会福祉基礎構造改革前で、福祉サービスの提供が措置によって行われていた時代です。
すてっぷの法律専門相談員のメンバーには、さまざまな経歴の弁護士が集まっており、福祉に関わってきたそれぞれの背景も全く異なり、そのため自由な議論が可能だったと思っています。
すてっぷは、社会福祉基礎構造改革を受けて、2001年5月に発展的解消をすることになりました。本当に発展的だったのかと問われると少し躊躇せざるを得ないのですが、地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)と苦情解決制度の運営適正化委員会がスタートすることによって、すてっぷの機能をこの2つの制度に組み入れていったことになります。
私は、厚生労働省においてそれらの制度を創設する委員会の委員となり、制度を構築するにあたって、できる限り、すてっぷでの経験を活かしたつもりです。その後も、介護保険における福祉サービス契約のモデル契約書策定や不動産担保型生活福祉資金貸付制度構築などにおいても、すてっぷでの経験を活かしていけるよう努力したつもりです。

すてっぷで学ばせてもらったこと
私がすてっぷで学ばせてもらったことは、措置のもとでの福祉においては、必ずしも福祉サービスの相手の人格が尊重されていないということでした。もちろん、特定の職員さんが相手の人格を大切なものとして尊重している姿は見ていました。しかし、相手の人格の尊重が、制度的に保障されていないことが問題だと感じていたわけです。
当時は、判断能力が低下して困った人は、助けてもらっているのだから、それ以上は高望みであって、軽々しく人格の尊重などと言ってはならないという雰囲気があったように思います。故意に侵害しているつもりはなくても、支援する側の余裕がなくなってしまうと、つい相手の人格を侵害するような態度や言葉遣いが出てしまうのだということです。
それとは別にすてっぷで感じたこととしては、その正反対に、判断能力が低下している人は、ヴァルネラブルでピュアな(従属的立場におかれた純粋な)人たちであり、保護しなければならないという誤解がありすぎるということでした。特に知的障害のある人たちについて、「ヴァルネラブルでピュアな人たち」だから守ってあげなければならないということに違和感を感じました。
知的障害のある人にもいろいろな人格の人がいるはずで、知的障害のある人だから常にピュアだというのは違うのではないかということです。私は、知的障害のある人がいろいろなことを経験させてもらえないまま成長させられたがゆえにピュアに見えてしまうのではないかと思います。
したがって、私は、極端に言えば、知的障害のある人が、とんでもない失敗をしたり、もっともらしい嘘をついたり、小ずるいことをしてしまったりすることもあるよう、その人の人格がそれぞれの人に合う形で成長できるよう支援することが大事なのではないかと思います。

権利擁護とは
私にとっての権利擁護とは、「人格の尊重という理念のもと、その人の法的諸権利につき、その人の自己決定に即して、過不足なく支援すること」と考えています。支援者にだけ都合のよい支援では意味がありません。本人にとっての人格の尊重こそが大事だということです。
そのため、最近は、愚行権の保障と支援付自己決定の尊重を重視すべきではないかと考えています。2022年9月に障害者権利条約の対日審査の総括所見が採択されました。そこでは、「代行決定制度の廃止」「意思決定支援制度の確立」などが指摘されています。代行決定制度をすべて廃止してよいかは問題ですが、そのような視点が重要でしょう。

(写真 明治大学専門職大学院法務研究科教授/日比谷南法律事務所パートナー弁護士 平田 厚さん)
1985年3月東京大学経済学部卒業、1990年4月第二東京弁護士会登録、2004年4月明治大学法科大学院専任教授就任、2012年3月日比谷南法律事務所設立。東京都社会福祉協議会における権利擁護センターすてっぷ専門相談員、地域福祉権利擁護事業の契約締結審査会委員長等を歴任。

以上で、福祉広報2024年7月号を終わります。

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