【表紙】(写真)
障害のある方や法人職員、現役の劇団員など、さまざまな立場の方たちが活動する劇団「てあとるみのり」。稽古中にみんなで1カット。
“人は変われる”をモットーに「お客さんにいいものを届けたい」という想いで日々、稽古に励んでいます。(p.8)
―てあとるみのり 豊島区―
p.2 ●社会福祉NOW
災害に備えた都内民児協の取組み
p.4 ●み~つけた
「あるといいな」がある。病院が運営する地域住民の“拠り所”
ヨリドコ小野路宿(町田市)
p.5 ●連載 若者の孤独・孤立のいま【第3回】
子ども・若者たちが生きていく自信を持てるように
調布市社会福祉協議会 調布市子ども・若者総合支援事業ここあ
p.6 ●福祉のおしごと通信
制度の狭間や人をつなぎ、地域の方たちが望む暮らしを支える
瑞穂町社会福祉協議会 池谷牧雄さん
【目次】
1社会福祉NOW
2み~つけた
3連載 若者の孤独・孤立のいま 第3回
4福祉のおしごと通信
5Information(学びを現場のチカラに! 研修室だより/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本)
6くらし今ひと
--1【社会福祉NOW】
災害に備えた都内民児協の取組み
元旦の大地震から復旧・復興途上にあった石川県能登半島では、9月21日からの記録的豪雨により再び甚大な被害が起きました。8月には宮崎県日向灘の地震で初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表されるなど、2024年は災害への備えを強く意識する年となりました。
東京での発災を想定した取組みが求められる中、今号では、地域の最前線で活動する民生委員・児童委員による災害に備えた取組みの今を取り上げます。
注 民児協
民生委員・児童委員協議会の略
民生委員に期待される役割
東京の民生委員制度の原点は、1918(大正7)年の「救済委員」ですが、設置のきっかけは「大正6年の大津波」と呼ばれる高潮災害でした。被災した生活困窮世帯の実情調査や救済が目的で、その後も関東大震災をはじめ戦後のカスリーン台風やキティ台風等でも被災者支援に奔走するなど、これまでさまざまな災害と向き合ってきました。
災害対策基本法では、民生委員・児童委員(以下、民生委員)は「避難支援等関係者」の一員に位置づけられ、避難行動要支援者名簿(以下、名簿)の提供先となりました。内閣府と消防庁によると、名簿の作成状況は全国ですでに100%を達成。ただ、名簿の提供先に「民生委員」を挙げる都内の区市町村は90.3%に上るのに対し、自治会等への提供は低く、同様に、個別避難計画情報の提供先としても民生委員以外は5割台以下です(表)。
こうした状況は民生委員に負担が集中しかねず、委員が抱え込む恐れもあります。また、多くの地区で名簿掲載への同意取得に協力しており、それが「民生委員が避難支援に来てくれる」との誤解につながることも懸念されています。
災害に備える10か条
2011年の東日本大震災では安否確認や避難の呼びかけの活動中に56名の民生委員が犠牲になりました。2021年に九州地方を襲った豪雨災害では、「雨が怖いから来てほしい」との依頼に応じた委員が高齢者とともに亡くなったケースもあります。
全国民生委員児童委員連合会(全民児連)では、災害時における活動の考え方を「災害に備える民生委員・児童委員活動10か条」としてまとめています。「民生委員が助けに来てくれる」といった誤解を解消するためにも、今号では大きく3点を、地域住民を含む関係者の皆さんと共有したいと考えています。
①自身と家族の安全確保が最優先
災害時の民生委員の役割は、自らの命をかけた救命・救助ではなく、被災後の長期的な生活再建に隣人として寄り添うことです。区市町村からの避難情報の発令有無によらず、安全に不安がある場面では活動しない。自身を守るためにも率先避難を心がける。この二つを基本としています。
②地域ぐるみの要援護者の支援体制づくりに協力
災害への備えは、民生委員等の一部の関係者だけが担うのではなく、地域全体の課題として、住民の安全に責務を有する区市町村をはじめ、地域住民を含む幅広い関係者が平時から力を合わせることが必要です。
③安全確保ができたら可能な範囲で要援護者支援に協力
発災後、活動上の安全が確保され、支援活動が可能となった際には、平常時に把握している情報をふまえて、支援が必要な人に適切に届くようつなぎ役を意識します。また、自身も被災者のため「民生委員だから頑張らなきゃ」と背負い込まず、無理のない活動を心がけることを大切にしています。
墨田区での地域連携の取組み
水害リスクをはじめ木造住宅密集地域などもある墨田区では、平常時からの地域連携に力を入れており、地域住民が災害時に助け合うしくみとして、町会や自治会の住民防災組織の中で要配慮者サポート隊(以下、サポート隊)を結成しています。
サポート隊の役割は、平常時は要配慮者個別避難支援プランの作成や防災訓練、災害時には避難誘導や生活支援などです。要配慮者情報の把握は、回覧板や口コミで行うサポート隊の周知に対して本人から申し出る方法と、民生委員が日頃の見守り活動で接する要配慮者に同意を取り、サポート隊へ情報共有する方法があります。
民生委員とサポート隊は連携し、要配慮者の安否確認や支援活動を行います。東日本大震災時には、区からの「65歳以上の高齢者の安否確認を」という要請に両者で協力して対応しました。民生委員だけでなく地域全体での要配慮者の把握を通じて支援の効率化を図っているそうです。
墨田区民児協としても、災害リスクや個人にできることを学び合う研修会を実施したり、円滑な初期対応のために全委員がA3サイズ1枚を折りたたんだ「災害時対応の心得」を携帯しています。地域住民ともに災害に対する意識を高め、地域で助け合うしくみを今後も広げていきたいとのことでした。
地域ぐるみの取組みに ~令和元年の台風をふまえ
令和元年は二つの大型台風が東京を直撃しました。
民生委員各々は気になる高齢者宅の訪問や電話による安否確認、避難所の運営協力など自主的に動いた一方で、組織的に活動を行った民児協は約3割に留まりました。また、多くの委員が、複数の対象者から「避難すべきか」「どこに避難すればよいか」などの相談を受けており、日頃の信頼関係が避難行動につながる非常に重要な存在になっていました。
この時、実際に「自力で避難できない方を誰が避難所まで送迎するか」という課題が表出。車椅子の利用者など、個々の状態に合わせた具体的な支援には、町会や自主防災組織といった近隣住民による支え合いの関係のみならず、社会福祉協議会や地域包括支援センター、介護サービス事業所、専門職等を含めた地域連携が必要です。災害という非常事態に効果的な支援を行えるよう、どの機関が誰を優先的に安否確認するのか、また「家にいたい」と避難を拒否されるケースなど、いざという時の対応について関係者間で話し合い、合意形成しておくことが求められます。
「暴風雨の中、見守り活動をすべきか判断に迷った」「家族から危険な時の活動について疑問が出た」など、民児協にも切実な声が寄せられました。民児協機能の早期回復はもとより活動方針の徹底、例えばさまざまな状況を想定した民生委員同士の連絡の取り方や委員一人ひとりの動き方など、民児協内で話し合いを重ね、災害時の活動方針および安全対策について、十分に理解しておくことが必須です。
避難に時間を要する人や災害情報をうまく受け取れない人などへの支援の実効性を高めるためには、こうした方々の特性に配慮した個別支援とともに、「地域ぐるみ」の防災・減災活動が欠かせません。地域においては、災害による直接的な被害や災害関連死を防ぐこと。民生委員においてはそのための協力に加え共助的な行動に伴う犠牲を出さないこと。何よりも地域が一丸となって取り組むことが大切になります。
被害を最小限に抑えられるように、そして被災された方々ができる限り安心と安全を確保し、日常に近い生活を取り戻し、その人らしい暮らしを送れるように、これからも地域の皆さんと一体となって取組みをすすめていきます。
図 事前に名簿情報を提供する先(都内分を抜粋)
警察95.2%
民生委員90.3%
消防署等90.3%
消防団61.3%
自主防災組織59.7%
社会福祉協議会58.1%
自治会54.8%
福祉専門職37.1%
図 平常時から個別避難計画情報を提供する先(都内分を抜粋)
民生委員61.3%
警察54.8%
消防署等53.2%
自主防災組織50.0%
社会福祉協議会43.5%
自治会40.3%
消防団37.1%
福祉専門職32.3%
注 内閣府・消防庁(2024年6月28日)『避難行動要支援者名簿及び個別避難計画の作成等に係る取組状況の調査結果』をもとに作成
(写真 サポート隊による避難誘導訓練の様子)
注 「災害に備える民生委員・児童委員活動10か条」
QRコード 「災害に備える民生委員・児童委員活動10か条」(全民児連ホームページ内)
--2【み~つけた】
「あるといいな」がある。病院が運営する地域住民の“拠り所”
病院をもっと身近な存在にしたい
江戸時代に宿場町として栄えた町田市の小野路宿に、2021年3月にオープンした「ヨリドコ小野路宿」があります。約300坪の敷地内には、訪問看護リハビリステーションとカフェ、集会場などのオープンスペース、蔵、菜園、竹林が生い茂る裏山がある複合施設です。ここを運営する一般財団法人ひふみ会まちだ丘の上病院の代表理事の藤井勝巳さんは「病院の敷居が高いというイメージを変え、地域の皆さんの身近な存在にしたい。病院のリニューアルを機に、そのきっかけになる場所がつくれないかと考え“あるといいながあるところ”をコンセプトにプロジェクトがスタートしました。ヨリドコには、地域の人たちの“ 拠り所”になりたいという想いが込められています」と背景を語ります。集会場や和室・蔵では展示会や各種イベントやワークショップなどが開かれ、ニーズによってフレキシブルに使うことができます。イベントのほとんどがここを訪れた人たちから提案され、横と横のつながりで住民主体のイベントづくりに発展しているといいます。
施設長の古賀寛さんは「驚いたのが、ここでつながった人や団体同士が連携し、ジャンルを超えて大規模なマルシェを開催したことです。もともと参加者だった人や団体がつながり、今度は主催者側となり役割をもって関わってくれる人が増え始めています」と反響を話します。
住民が心身ともに健康に生きられるために
ここで生まれた関係やイベントが、地域に住む人たちの生きがいややりがいにもつながっているのがヨリドコ小野路宿の魅力のひとつです。古賀さんは「“けんこう”は、自分らしい生活を送るための手段だと思っています。この場所をきっかけに体も心も健康な人たちが地域に増えれば、ウェルビーイングな生き方が実現できるのではないでしょうか」と語ります。さらに藤井さんは「要介護認定率や要介護度の改善、1人当たりの医療費の削減など、この取組みでの定量的な効果をデータ化して、ほかの地域にも参考にしてもらえるような提言ができたら面白いなと思っています」と、今後の展望を話します。
オープンして約4年。2024年9月にはまちだ丘の上病院内に指定居宅介護支援事業所が新設され、ヨリドコ小野路宿の相談や人と人をつなぐ機能をますます強化する予定です。ヨリドコ小野路宿は、これからも地域の人たちの心身が元気になる場づくりをめざしていきます。
ヨリドコ小野路宿(おのじじゅく)
場 所:町田市小野路町892-1(鶴川駅よりバスで約13分)
問合せ先:042-860-5950(代表)
QRコード ヨリドコ小野路宿おのじじゅく ホームページ
(写真 ヨリドコ小野路宿(おのじじゅく)町田市)
--3【連載 若者の孤独・孤立のいま 第3回】
子ども・若者たちが生きていく自信を持てるように
調布市社会福祉協議会 調布市子ども・若者総合支援事業ここあ
2023年度の文部科学省の調査では、不登校の状態にある小中学生は日本全国に34万6,482人いることが明らかになり、初めて30万人を超えました。今号では、生きづらさを抱える子ども・若者やその家族からの相談を受け止め、地域や他者とのつながりの中での体験機会づくりを通じた支援を行う調布市社会福祉協議会に取材をしました。
「ここあ」が取り組んでいること
調布市子ども・若者総合支援事業「ここあ」(以下、「ここあ」)は、子どもや若者を対象に学習支援・相談・居場所事業に取り組んでいます。子どもの貧困や、居場所のない子どもたちが多い状況などに対応したいという調布市の構想を受け、調布市社会福祉協議会(以下、社協)が2015年度より受託しています。
年代による切れ目のない“人生軸での支援”
主に中学生以降の10代後半から20代前半の本人や家族から相談が寄せられています。特に最近は不登校に関する内容が増え、「ここあ」係長の坂本祐樹さんは「入口は不登校の相談でも、聞き取りをすすめていくと、友人関係のトラブルや家庭内不和、ネットやゲーム依存など、背景は多様で複雑になっています。小学校から不登校の状態が続いているケースも多く、課題が先送りにされている状況が見受けられます」と話します。
そして、中学校から高校、高校から大学と切れ目があることによる課題もあるといいます。なんとか中学校を卒業して、全日制・定時制高校に進学しても中退してしまったり、通信制高校を卒業しても、学生時代を通じて他者とのコミュニケーションや体験機会がほとんどないまま、高校卒業後の人生をどうしていくのかが置き去りにされる状況も少なくないそうです。18歳以降は制度の切れ目でもあり、学校やこれまでの支援者とのつながりが途切れやすく、そうした現状の中、「ここあ」では年代で区切った支援ではなく、子ども・若者一人ひとりに寄り添い、切れ目のない“人生軸での支援”を大切にしています。
子ども・若者支援の今後と社協が取り組む意義
坂本さんによると、「ここあ」の居場所や相談事業で関わりのある子ども・若者たちの多くに、発達の特性や抱えている生きづらさがあります。学校や身近な大人から理解されにくく、徐々に自信や自己肯定感をなくしてしまい、それが孤独感や不登校、ひきこもりにつながっていることも多いといいます。
「ここあ」では、調布の地域と連携して体験機会をつくることに意識して取り組んでいます。例えば、高齢者が主体になるゲームを用いた交流の場づくりでは、「ここあ」の利用者でゲームが得意な若者に依頼し、運営を手伝ってもらいました。“自分の得意なことが誰かのためになる”。そんな経験が自信になり、若者は就労に前向きになっていったそうです。
一方で、こうした “人生軸での支援”には、支援の出口を設定しづらいという難しさがあります。課長の高橋順子さんは「若者支援には働くことへの支援も欠かせないため、就労準備なども『ここあ』が担っているのが現状です。新規の相談も増加する中で、職員の担当するケースも増え続けています」と、課題について触れます。続けて、事務局長の橋本ゆかりさんは「調布市の子ども・若者支援を社協だけで担えるとは考えていません。関係機関や市内で活動する団体の皆さんと、課題を共有しながら話し合いを重ねて、一緒に取り組める先を増やしていきたいと考えています」と、多機関との連携の必要性を強調します。
最後に、坂本さんは「勉強や就職という軸ではなく、子ども・若者の生活を考える“人生軸での支援”をできることが社協の強み。『ここあ』でさまざまな経験をしながら、生きていく自信をつけていってくれたら嬉しいです」と、想いを話してくれました。
(写真 調布市社会福祉協議会 事務局長 橋本ゆかりさん 地域福祉推進課 課長 高橋順子さん 「ここあ」 係長 坂本祐樹さん)
表 「ここあ」の事業内容
学習支援
対象:児童扶養手当や就学援助などを受給しているひとり親家庭や困窮家庭などの中学生
内容:学習支援コーディネーターの関わりのもと、大学生ボランティアによる1対1の高校進学に向けた学習と学習習慣を身につけるためのサポートを行う
実施日:月・水・金 18時~20時(週1回利用)
相談
対象:おおむね中学生以上の子ども・若者およびその家族
内容:学校や仕事、家庭生活などに関する相談を受け、状況の解決に必要な手立てを一緒に考える伴走型の支援や、他機関の紹介・情報提供などを行う
開所時間:平日10時~20時(木曜日のみ17時まで)日時は個別の事情に応じて調整
居場所
対象:おおむね15歳以上の子ども・若者
内容:「ただ過ごすだけでいい」家以外の場所で、調理やスポーツなどのプログラムも行う
実施日:月・火・水・金 10時~18時
--4【福祉のおしごと通信】
制度の狭間や人をつなぎ、地域の方たちが望む暮らしを支える
瑞穂町社会福祉協議会で働く池谷牧雄さんに、社会福祉協議会(以下、社協)の仕事の魅力や、係長の立場から、部下、組織への思いなどについてお話を伺いました。
本人が望む生活に向け、意思決定を支えた出会い
多摩地域に生まれ、小さい頃から祖父や親戚との関わりの中で育ちました。高校卒業後、身体を動かせてコミュニケーション力が活かせる福祉の仕事をめざし、福祉系大学に入りました。地域福祉を専門とするゼミでの学びや、市社協での実習・アルバイトの経験から、人との距離が近く、地元や実習先にも地域性が近い市町村部の社協で働きたいと思うようになり、2005年に瑞穂町社協に入職しました。
瑞穂町社協の正規職員は、現在14人です。多くの町村社協同様、一人の職員が複数の事業を担当するため、幅広く相談支援の力が養われる環境だと思います。
今も印象に残る出会いがあります。約10年前、地域福祉権利擁護事業をきっかけに、妻と離婚し自暴自棄になり支援を拒否する独居の高齢男性に関わりました。親族や近隣の関わりもほぼなく、お酒を多飲する心配な状況でした。半年後に何とか医療につなげたものの生命に関わる病気の手術も拒否されました。それが本当に本人が望む生き方とは思えず、何度も自宅に通う中で「もう少し生きたい」と本心が聞けました。これを機に手術する覚悟を決め、退院後は福祉サービスも入り、劇的に生活が改善されました。本人の望む暮らしの実現が、社協職員の役割だと自覚した出会いです。
係長としての姿勢やあり方に悩んだことも
係長になり3年目です。はじめは自分なりの係長像があり、何事にも率先して行動力や指導力を発揮すべく頑張りましたが、その態度が部下との温度差を生み、悩みました。なるべく仕事を任せ、良かったところを評価するようにすると、徐々に部下からの相談が増え、自分の働き方や姿勢を考える上で大きな気づきになりました。係長の役割は、組織の調和を保ち、組織と職員をつなぐことだと思います。一人ひとりが替えのきかない職員だからこそ、ワークライフバランスも保ち、皆が力を発揮できる職場にしたいと考えています。
瑞穂町社協では現在、町内6地区で新しい出会いやつながりをつくる「地域つながり推進連絡会」や、つながりを大切にする意識の普及啓発活動「みずほつながりたい」に重点的に取り組んでいます。シンボルマーク制作の過程では若手職員が活躍してくれました。また、住民や企業・団体、法人等の協力を受け食糧支援の「ささえあいフードリレー」にも取り組んでいます。今後もこうした地域福祉の土壌づくりや制度の狭間のニーズに対応する新たな事業にも積極的に取り組み、「社協があるから地域が豊かになった」と思ってもらえるよう、皆と力を合わせていきたいと思います。
(写真 社会福祉法人瑞穂町社会福祉協議会 地域支援係長 兼 権利擁護センターみずほ係長 社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員 池谷牧雄さん)
(写真 職員皆さんの意見を集めて完成した、町内に広く配布する「みずほつながりたい」のステッカーとバッジ。社協職員と認識して声をかけてくれる方が増えているのは嬉しいという池谷さん。休日は、お子さんのサッカーのコーチの活動や、趣味のバイクなどでリフレッシュされているとのこと。)
--5【Information(学びを現場のチカラに! 研修室だより/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本)】
学びを現場のチカラに! 研修室だより
研修ニーズ調査を行いました!
東京都福祉人材センター研修室では、 東社協研修受付システム「けんとくん」に登録いただいている施設・事業所を対象に、「研修ニーズ調査」を実施しています。今後の研修テーマや方法、企画などに活かすことを目的に、おおよそ隔年のペースで行っています。調査項目の一つ「研修実施を希望するテーマ」についての2024年度と2022年度の結果は表の通りです。表を比較すると、その時の注目のトピックスがニーズに反映される一方、常に必要とされるテーマがあることも分かりました。すでに実施している研修を継続して施設・事業所の普遍的なニーズに応えていくとともに、時流に即した新たなテーマの研修企画のために、これからもニーズの把握に努めます。
表 研修実施を希望するテーマ 複数回答/回答数
2024年度
1 位災害・福祉避難所(498)
2 位虐待防止(459)
3 位事故防止・ヒヤリハット(458)
4 位リスクマネジメント(456)
5 位アセスメント(452)
総回答事業所数:891
2022年度
1 位リスクマネジメント(352)
2 位職場内研修(349)
3 位アセスメント(338)
4 位アンガーマネジメント(330)
5 位虐待防止(328)
総回答事業所数:598
けんとくん 検索
QRコード けんとくん 東社協研修受付システム ホームページ
マンスリーニュース
2024/10/26~11/25
ピックアップ
(11/12)東京の一人暮らし世帯は、2050年に54.1%となる見通し
国立社会保障・人口問題研究所は日本の世帯数の将来推計を公表。2045年以降は全都道府県で世帯総数が減少傾向となる予測。また、全国の単身世帯の割合は2050年には44.3%(2,330万世帯)で、東京都では54.1%となる見通し。
(10/29)精神障害による措置入院患者数が過去最少
厚生労働省は「令和5年度衛生行政報告例」を公表。令和5年度末時点の精神障害による措置入院患者数は1,388人で、過去最少を更新。また、精神障害者保健福祉手帳交付台帳登載数は、144万8,917人で、過去最多(前年度比7.7%増)。
(10/31)全国の小中学校の不登校児童数が11年連続で増加し過去最多
文部科学省によると、令和5年度の小中学校における不登校児童数は346,482人と過去最多(前年度比15.9%増)。背景に、保護者の学校に対する意識の変化、コロナ禍の影響での登校意欲の低下、配慮が必要な生徒への適切な指導や支援での課題など。
東社協トピックス
募集中 ゆめ応援ファンド助成
都内におけるボランティアグループ、市民活動団体を対象とした活動資金助成。
【助成金額】 上限50万円(2025年4月1日以降に支払う費用が対象)
【申込方法】 申請書を記入の上、必要書類を添付し郵送
【募集期間】 2024年11月1日(金)~2025年1月7日(火)(消印有効)
※例年より締切日が早まっております。ご注意ください。
申込・問合せ先 東京ボランティア・市民活動センター TEL:03-3235-1171
QRコード TVACニュース ホームページ
第73回東京都社会福祉大会のご案内
今年度は、402名53団体に東京都社会福祉協議会会長表彰状・感謝状を贈呈します。
【日時】 2024年12月24日(火)14時30分~16時00分
【場所】 東京都庁第一本庁舎 大会議場
【主催】 東京都、東京都共同募金会、東京都社会福祉協議会
QRコード 東京都社会福祉協議会 ホームページ 東京都社会福祉大会
東社協の本
ご注文は 東社協図書係まで 電話03-3268-7185
New
母子福祉部会 紀要 No.17(令和5年度)
社会的養護の担い手としての母子生活支援施設の役割と課題
母子生活支援施設の実態を明らかにした調査結果に加え、より地域に必要とされる施設としてどのように機能を展開できるか議論した内容等を収録した一冊。
A4判/100頁
発売日2024.11.21
定価1,870円(本体1,700円+税10%)
児童養護施設 事務処理の手引~第六次改訂版~
初版は1971年11月に当時の児童部会書記会により発行されました。目まぐるしく制度が変わる中で、より最新の情報を提供できるよう改訂しました。
A4判/417頁
発売日2024.1.24
定価2,860円(本体2,600円+税10%)
子どもの未来を拓く 自立支援コーディネーター30の実践
自立支援コーディネーターのこれまでの取組みを実践報告集としてまとめました。
A4判/152頁
発売日2018.7.19
定価1,100円(本体1,000円+税10%)
--6【くらし今ひと】
演劇を通じて得られる成長が、次のステージにすすむきっかけになればいい
社会福祉法人豊芯会の地域演劇交流事業を担う劇団「てあとるみのり」。
その総監督であり、脚本や音響などを手がける椙田佳生(すぎたよしお)さんに、劇団を立ち上げたきっかけや劇団員への想いなどについてお伺いしました。
高校3年生で演劇に目覚める
幼い頃から目立ちたがり屋で、漫画を描いたり、一人でバンドをつくって友達に聞かせたりと、とにかく表現することが好きでした。演劇との出会いは、高校3年生の春。演劇部だった友人から急遽ピンチヒッターを頼まれ、観客の前で初めて演技をしました。自分の演技でお客さんが笑ったり、拍手をしてくれたりすることに感動し、演劇の面白さに目覚めました。すぐに演劇部に入部し、大学も演劇学科にすすみました。
大学卒業後は友人とアマチュア劇団をつくり、アルバイトをしながら演劇活動を続けていましたが、いったん演劇から離れ就職することに。しかし5年ほどで退職し、これからどうしようと考えていた時期に、精神保健福祉法が施行され、精神保健福祉士という資格が新しくできたことを知りました。「今までやってきた演劇が役に立つことがあるのでは」と何か予感のようなものを感じ、資格が取れる専門学校に入学しました。
実習先での演劇プログラムが好評に
精神保健福祉士の実習先である精神科病院のデイケアで、患者さんと一緒に演劇を用いたプログラムを実践したことがありました。患者さんからは「面白い」「またやりたい」と好評で、職員の方からも「こんな反応は初めてです」などの嬉しい言葉をいただきました。この経験から「演劇を通じて、障害のある方の『変わりたい』『何かしたい』といった気持ちに寄り添えるのではないか」と確信しました。縁あって社会福祉法人豊芯会の当時の理事長からお誘いいただいて現在の職場に入職し、2008年に「てあとるみのり」を立ち上げました。
「てあとるみのり」は、知的障害や精神障害のある方や法人の職員、学生、地域住民の方などで構成された劇団です。現在までに27回の主催公演を行い、今年で設立から17年目を迎えました。私は総監督を務めながら脚本、演出、音響なども手がけています。障害のある方と稽古をしていると、自分では思いつかない表現をしてくれることがあり、「こういう考え方があるんだ」といろいろなことに気づかされ、日々勉強になっています。
好きなことに全力で取り組んで人は成長する
「人は変われる」が劇団の理念です。ただ演じるだけではなく、お客さんからお金と時間をいただく以上は、時には厳しい稽古にも向き合わなければなりません。障害のあるなしに関わらず、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちの中で、自分にできることは何かを考えて役割を全うし、仲間と協力しながら全力で演劇に取り組む。そうすると達成感が得られ、結果が評価されることで自己肯定感も高まります。そして、さらに良くしたいという工夫に変わり、人として成長していきます。自分が演劇と出会って人生が変わったように、劇団員にも演劇を通じて自信をつけてほしい。これからも演劇を通じていろいろな人たちと交流をしていきたいです。
(写真 社会福祉法人豊芯会 ハートランドみのり施設長 「てあとるみのり」総監督/精神保健福祉士 椙田佳生(すぎたよしお)さん)
劇団「てあとるみのり」総監督を務め、脚本、演出、音響、時に映像編集、舞台監督も手がける。このほか、同法人の就労支援事業にも携わっている。
以上で、福祉広報2024年12月号を終わります。