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東京都社会福祉協議会

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福祉広報 2025年4月 795号 テキストデータ

【表紙】(写真)
助産師さんたちでつくった団体「NPO法人さんばはうす葛飾」の「さんばcafé」での一枚。会場である助産院の一室には、窓から暖かい日差しや風が入り、親子の笑顔があふれます。人とのつながりの中で、みんなで子育てする地域をめざして。

 

p.2 ●社会福祉NOW
同世代と巡る、“滞在”から、わたしと福祉を考える旅

p.4 ●み~つけた
子育ては楽しいもの。子も親も自分の人生を大切にできるように
NPO法人さんばはうす葛飾(葛飾区)

p.5 ●連載 若者の孤独・孤立のいま【最終回】
子ども・若者の生きづらさをともに考える社会にむけて
社会福祉法人 子どもの虐待防止センター 医師 山口 有紗さん

p.6 ●福祉のおしごと通信
栄養学の奥深さを知り、管理栄養士の道へ。専門職としてスキルを磨き続けたい
社会福祉法人仁生社 管理栄養士/NR・サプリメントアドバイザー/東京糖尿病療養指導士 鈴木 里枝さん

p.7 ●Information
東京の寄附のカタチ/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本

p.8 ●くらし今ひと
写真を通じて誰かの役に立ちたい。その想いで今日もシャッターを押す
フォトグラファー 近藤 浩紀さん

 

【目次】

1社会福祉NOW
2み~つけた
3連載 若者の孤独・孤立のいま 最終回
4福祉のおしごと通信
5Information(東京の寄附のカタチ 遺贈を活用した施設への助成金「かみつぐ助成金」/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本)
6くらし今ひと

 

--1【社会福祉NOW】
同世代と巡る、“滞在”から、わたしと福祉を考える旅

自分らしさってなんだろう。障害ってなんだろう。福祉ってなんだろう……。
2025年1月、福祉施設への“滞在”を通じて、高校生5人が自分自身や福祉について考えを巡らせる時間を過ごしました。
今号では、今回の企画が生まれた背景や当日の様子についてお伝えします。

2025年1月6日~7日の2日間にわたり、東京都社会福祉協議会(以下、 東社協)が(社福)愛成会の協力の下に実施した「“滞在”から、わたしと福祉を考える〜BeingThinkingTour2025」。都内の高校1・2年生が対象となる福祉施設を舞台としたツアーは2024年度から始動しました。
取組みの出発点は、中高生世代に福祉を身近に感じてもらい、自分事として捉えてもらうような接点となる機会を 東社協として生み出せないかとの考え。膨大な情報に触れることができるようになった現代は、地域のつながりが希薄化し、自分のコミュニティを超えて多様な考えや価値観に触れることが難しくなっています。とりわけ家と学校が中心の学生時代はその傾向が顕著であり、今後の進路選択に向けていろいろなことを考える時期にある高校生に、自分の生き方や社会との関わりを福祉施設で過ごす時間を通して、考えてもらう取組みを新たにすすめていくことが決まりました。

参加者が主体となり、福祉を感じ、考えてもらう企画へ
企画にはヘキレキ舎の小松理虔(りけん)さん(※1)にアドバイザーとして参画いただき、小松さんの経験に基づく助言から、高校生が福祉施設へ“滞在”する取組みを行うことになりました。施設で職場体験するのでもなく、見学するのでもなく、“ただ、そこにいる”という“滞在”。その人らしくいられることを大切にする福祉施設には社会や人生における気づきや学びが多く存在しています。大人が用意したプログラムを体験するのではなく、参加者自らが主体となってそこに流れる時間や空気を感じたり、思いをめぐらせたり、時には行動してみたり。そうした自分発信の体験から、福祉を内在化してもらうような機会をめざして、準備をすすめていきました。
冬休み期間の2日間にわたる滞在ツアーの行き先は(社福)愛成会が運営する「メイプルガーデン」に。中野ブロードウェイ近くの住宅街にある障害者支援施設で、地域との関係性や今後の接点を考えて、対象は中野区周辺エリア在住・在学の高校1・2年生に限定し、参加者一人ひとりと向き合い、思いや考えを深堀りできるように定員は8名に設定しました。準備段階には、滞在の受入れ経験がある(社福)武蔵野会やそのプログラムを担う(一社)ぼくみんの佐藤由(より)さんにも協力をいただき、施設側としての姿勢やあり方を共有いただきました。学生と接点のある関係機関に周知を依頼し、募集開始から1週間で定員を超える申込みがあり、事前オリエンテーションやチャットツールを用いて、参加者の不安軽減や関係性づくりを図っていきました。
(※1)福島でオルタナティブスペースUDOK.を運営しながら、食や観光、福島、文化芸術など幅広い分野で地域活動を行われている。近年は、福祉施設へ滞在した内容を書籍や記事を通して発信するなど、福祉に対して取り組まれている。


わたしと福祉を考える旅
2日間の滞在ツアーは、9時30分~16時で実施。感染症等により当日の参加は5名となりましたが、福祉との距離や動機はそれぞれです。ツアーコンダクターとして小松さん、参加者に近い存在としてサポーター役で佐藤さんが引率し、メイプルガーデンでの滞在を軸としつつ、2日目には同法人運営の通所事業所「ふらっとなかの(就労継続支援B型事業所・生活介護事業)」にも足を運ぶなど、障害のある方が働く姿や入所施設との違いなども感じてもらいました。施設に到着して簡単な案内を受けたら、そこから“滞在”がスタート。やることや求められることが明確にない中、最初は戸惑いもみられましたが、次第に参加者それぞれのあり方で施設に溶け込んでいきました。メイプルガーデンの職員の皆さんには「いつもどおりで参加者のことは気にせず、何か聞かれたら対応いただければ」とお願いしてあり、利用者さんの隣に座って話してみたり、少し離れてその場の様子を伺ってみたり、流れに身をまかせてカラオケで歌うことになったりする人も。そうした、参加者自身が自分の視点や思いのままにその場を過ごしていきました。
また、両日とも対話の時間を2時間設け、参加者は自分の“滞在”を通した発見やゆらぎなどを、同世代やツアー関係者との間で言語化し共有する作業を重ねていきました。1日目の振り返りでは、参加者から「障害は個性なのか?」、「対等な関わりって?」、「当たり前や正解とは?」などのそれぞれの問いが生まれ、自分の問いを携えて2日目の滞在に臨んでもらっています。問いに対してどんな結論に至ったのか、答えはでなかったのか、自分の中で巡った思いをそのままツアーの最後に共有してもらいました。職員の方も対話に参加し、施設や職員のあり方、姿勢など、自分たちが日ごろ大切にしながらも、当たり前になっていて意識していないところを高校生が気づき、そのストレートな感想から、改めて自分たちを知る良い機会になったとの声が聞かれました。限られた時間の中、同世代と一緒に福祉施設に“滞在”し、言葉を交わす経験は、アンケートの回答からも、参加者それぞれにとって大切な時間になったようです。

ツアーに参加した高校生から寄せられた声をちょっとシェア!
●この2日間は私の価値観やもともと持っていた考え方を大きく揺さぶられるような、本当に貴重な時間だったなと感じます。
●自分の中での障がい者のイメージが変わったというよりは、自分の中での想像の幅が広がったという感じがします。
●生活を送っていく中で、生まれた疑問をここまで深堀りすることもないし、同世代との意見交換をする機会もないので、楽しい時間を過ごすことができた。
●1日目の終わりにメンバーと話すという機会をいただくこともできて、自分にはない視点で物事をみるきっかけに。他者の言葉を介して過ごすことで、視点の移り変わりを感じられて、同世代と同じ立場で多角的に物事を捉える楽しさや難しさを学んだ。
●「障害は個性だ」という考え方は、健常者が自分は障がい者に対して偏見を持っていないと思い込むためのきれいごとなのではと思いました。障害を自分から遠ざける、個人の問題と思いこむというような考えを導くきっかけになってしまうのではないかと感じました。

福祉施設を起点とした、学び合える地域をめざして
今回の取組みは、高校生に自分自身と重ねて、福祉や地域について考えてもらうことが目的であるとともに、その様子を福祉関係者や教育関係者へ伝え、取組みが広がることも意図しています。2日間のツアーの様子は写真や映像でさまざまなプロジェクトを記録するアーティストの冨田了平さんに映像制作を依頼し、また、対話の時間のグラフィックレコーディングを民生児童委員でもある齋藤みささんにお願いしました。今後、映像(※2)や冊子等のアウトプットを介して、福祉施設での“滞在”が参加者や施設にもたらす作用や、参加者・関係者の声を共有していきながら、より多くの施設や地域で取り組んでいくことができるようなアプローチを次年度以降すすめていきたいと考えています。
次世代に向けた新たな取組みとして動き出した「“滞在”から、わたしと福祉を考える旅」。(社福)愛成会の職員や利用者の皆さんをはじめ、多くの関係者の協力により実現に至りました。進路や人生を考え始める、多感な時期にある参加者にとって、福祉や地域との接点が生まれたことに加え、多様な考えや価値観、立場の人に出会えたことは、自分の選択肢や可能性が広がる機会にもつながったと考えています。同時に勇気をもって参加してくれた高校生から、新たな気づきや視点、そして問いを大人たちがもらう機会にもなりました。今後も、生まれたつながりを大切にしながら、取組みを広げていくことを想定しています。福祉施設をきっかけに、多様な他者の価値観や考えに触れ、学び合える地域社会をめざして―。
(※2)当日の様子は 東社協ホームページで公開予定です。

(写真 レンズを通して、中野のまちを切り取ったり。)

 

--2【み~つけた】
子育ては楽しいもの。子も親も自分の人生を大切にできるように
葛飾区 NPO法人さんばはうす葛飾

地域住民として、一緒に子育てをしたい
NPO法人さんばはうす葛飾は、葛飾区内で活動する助産師らによる団体です。メンバーは皆、葛飾区民でもあります。理事長の井出陽子さんは「助産師である自分でも、子育てでは孤独を感じたことがあります。同じ地域の住民であり、専門職でもある私たちも一緒に、安心して子育てできるよう活動しています」と言います。活動は、メンバーの得意分野を活かしたさまざまな講座や仲間づくりが中心です。ほかにも、区から委託された妊産婦向け学級などの実施や、災害時に弱者になりやすい妊産婦や女性等の状況について防災イベント等で発信し、区の防災計画への働きかけもしています。
3月、井出さんの助産院の一室では、「さんばcafé」として、「発達を促すふれあい遊び」のミニ講座とおしゃべりの場が開かれました。0歳児の親子5組が参加し、副理事の江原美恵子さんが、歌いながら赤ちゃんにぎゅっと触れたり顔をなでたりなど、発達と親子関係を促すふれあい遊びを教え、月齢に応じた発達過程なども伝えます。
講座後は、参加者同士でお茶を飲んで自由におしゃべり。地元のイベント情報を交換したり、悩みを聞いて共感したり、ほっとできるひとときです。江原さんは「ネット上などの誤った情報に惑わされても、正しい情報が伝えられるのは私たちがいる場だからこそ。親子に長く関わり、成長を見守れる地域の活動の良さも感じます」と言います。参加者からも「子どもと外出でき、助産師さんもいて安心できる場所です」などの声が聞かれました。
井出さんは、多くの出会いを振り返り、「病院でのお産で医療者の言動に傷つき、不信感も持つ中で出会い、活動に参加され、徐々に表情が明るくなった方が印象に残っています。今もその親子を見かけると嬉しくなります。世の中では子育ての大変さばかり強調されますが、活動を通じ、子育て期ならではの楽しみを提供したいです」と話します。

自分を大切にすることを伝えたい
さんばはうす葛飾では、今後、性教育講座や学校などでの「命の授業」の実施に、より力を入れていく予定です。「性の知識は、生きる力や自分で人生を選ぶ力をつける“ライフガードスキル”です。自己肯定感が低い子どもが増えていますが、助産師の視点で、子どもも親も、誰もが自分を大切にしてほしいと伝えていきたいです」と井出さんは語ります。

NPO法人 さんばはうす葛飾
2013年3月設立認証。団体名は、葛飾区内にかつて「産婆(さんば)さん」と呼ばれていた助産師がいる場(家=ハウス)をつくりたいという思いが由来。助産師のほか、看護師や栄養士等も活動をサポート。
「さんばcafé」、「0歳児ママ向け講座」、「性教育講座」、「命の授業」ほか、区委託事業等を実施。詳細や予約はホームページから。

(QRコード NPO法人さんばはうす葛飾 ホームページ)
(写真 NPO法人さんばはうす葛飾 葛飾区)

 

--3【連載 若者の孤独・孤立のいま 最終回】
子ども・若者の生きづらさをともに考える社会にむけて

社会福祉法人 子どもの虐待防止センター 医師 山口 有紗さん
生きづらさを感じながら思春期を過ごし、高校中退や単身渡米などさまざまな経験をしてきた。

本連載では、2024年10月号からの計6回にわたり、「若者の孤独・孤立のいま」と題し、子ども・若者支援にそれぞれの角度から取り組む団体に取材をしてきました。最終回となる今号は、小児科医の山口有紗さんに、これまでのご自身の経験や活動から、子ども・若者を取り巻く周囲の大人や地域にとって大切となる視点を伺いました。

子ども・若者の生きづらさは社会の映し出し
SNSの普及で、他者とつながりやすくなった一方、身近に行き場がなく、孤独・孤立を感じる若者は増えています。そうした若者の生きづらさは、不登校児童数や若年層の自殺者数の高止まり、孤独死の増加や性被害、闇バイトなど、さまざまなかたちで表出し、子ども・若者に対する支援の必要性が社会としてもようやく高まってきました。
多くの子どもや周囲の大人と向き合ってきた山口さんは、子ども・若者の生きづらさを考えるときの視点やあり方について、「子どもの“問題”と捉えると、それを解決するためにどうしようかという思考に、私もなりがちです。目の前の子どもたちを支援対象として見るだけではなく、“これは子どもたち自身の問題ではなくて社会を映し出しているのかも”と受け取る。子どもたちの様子や行動は私たち大人や社会へのメッセージであると常に捉えるように意識しています」と言います。続けて、「私自身、しんどかった時期に、そのしんどさを取り除こうとしてくれる人はありがたい存在であったけど脅威でもあったなと。しんどい渦中に一緒にいてくれて、解決を急がないでいてくれて、真剣に向き合ってくれる安心安全な大人の存在。それは専門家だけでなく、周囲のさまざまな大人が担える役割です」と、自身の経験をふまえて話してくれました。「子どもの声を聴くこと」の機運が高まっている今、改めて、大人都合の解釈や誘導になっていないだろうか、目の前の子ども・若者が見えている世界や本当の願い、幸せとは何だろうかと考え続けることが求められています。

弱さの共有から本当の連携が始まる
子ども・若者の生きづらさに対しては社会全体で取り組まなければならず、福祉や教育・医療など、どこか一つの分野だけでは完結しません。しかし、連携が大事だと分かっていても分野が異なると協働しにくくなるのも事実です。これまでの本連載の中でも、連携・協働の大切さとともに難しさが言及されています。
山口さんは研修医時代から「こども専門家アカデミー」という、子どもに関わる専門職らが集まり、日ごろの活動や思いなどを話す場づくりに取り組んできました。そこで大切にしているのは、“弱さ”も含めてお互いにつながれること。「つい、専門分野の特色や得意なことを共有したくなりがちで、そうした場も必要ですが、それだけだとお互いが一線を越えていけない。『私には分からない、できない、失敗しがちで……』と弱さを出しても大丈夫と思える安心な場で定期的に顔を合わせること、分野の垣根を越えてもいいと思えることが本当の意味での連携につながっていくと考えています」と言います。

市民一人ひとりの小さな行動が社会を変えていく
子ども・若者がしんどいことがあっても生きていてもいいと思える社会には、一人ひとりの意識が大切です。山口さんは「これは壮大なことのように思えるけれど、社会を変えていくヒントは私たち一人ひとりの行動や生活にあると思います。自分以外の誰かのために立ち止まることができるか。気づいたら声かけができるか。窮屈で余白がなくなっている社会かもしれないけれど、電車に子どもが乗っていたらちょっと気にかけるとか、店員さんの目を見てお礼を言ってみるとか、自分自身を小さく変えていくことはできる。私たちそれぞれが社会に流れる空気をつくり、誰かの小さな幸せの担い手になっている。そんな意識を持つことが必要なのではないでしょうか」と語ります。

(写真 社会福祉法人 子どもの虐待防止センター 医師 山口有紗さん)

 

--4【福祉のおしごと通信】
栄養学の奥深さを知り、管理栄養士の道へ。専門職としてスキルを磨き続けたい

社会福祉法人仁生社 管理栄養士 NR・サプリメントアドバイザー 東京糖尿病療養指導士 鈴木 里枝さん

社会福祉法人仁生社の高齢者施設で管理栄養士として働く鈴木里枝(りえ)さんに、栄養士をめざそうと思ったきっかけやキャリアプランについて伺いました。

中学生から描き続けた管理栄養士への道
幼少期に母が亡くなり、父と祖父母に育てられました。家事や料理の手伝いをあまりしてこなかったせいか、家庭科の授業で野菜の皮むきが全くできないことにショックを受け、そこから率先して料理をするようになりました。この体験が管理栄養士の道へすすむ最初の入口だったように思います。中学生になり、父から管理栄養士という資格があることを教えてもらい、そこから高校、大学と管理栄養士をめざして勉強してきました。大学では栄養学の面白さに目覚め、研究三昧の日々を過ごし、卒業後に管理栄養士の資格を取得しました。その後、製薬会社へ就職し、夫の東京への転勤を機に退職しました。転居後、これまでとは全く違う分野で挑戦してみたくなり、高齢者施設の管理栄養士として、2008年に仁生社へ入職しました。

身をもって知った連携の大切さ
現在は仁生社の栄養課の係長として、養護老人ホームで管理栄養士をしています。主な業務は、ご利用者の身体状態や嗜好に合わせた献立の作成や食材発注のほか、栄養指導や栄養管理などです。1日の流れとしては、ミーティングや事務作業などを経て、お昼に「ミールラウンド」を行います。「ミールラウンド」とは、ご利用者の食事の場面を多職種で観察し、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)、姿勢などに問題はないかを確認することです。特に高齢者は低栄養や脱水になりがちで、糖尿病や腎臓病などの治療食の方も多いので、食事を実際に確認してモニタリングすることが重要です。そのほか調理師や栄養士と合同でミーティングや申し送りをして一日が終わります。
私が所属している栄養課には、管理栄養士や調理師が約25名在籍し、チームで業務にあたっています。そのため、メンバーとのコミュニケーションは欠かせません。コミュニケーションの大切さを学んだのは、入職後に栄養ケアマネジメント(※)業務で困難に直面したことがあるからです。学校で習ってきた知識では太刀打ちができず、ご利用者一人ひとりの生活スタイルや嗜好、嚥下状態も異なる中でどうアプローチをしたら食事量や体重が安定するのか、どの食形態がいいのか悩みました。看護師や機能訓練指導員、介護職員に加えご家族にも相談し、カンファレンスを重ねていく中で栄養ケアマネジメントの意味を理解していきました。多職種連携、コミュニケーションの重要さを学んだ出来事でした。
※管理栄養士の代表的な仕事の1つ。利用者の栄養状態や食事の摂取状態を詳しく把握し、栄養ケアの計画を立案・改善すること

さらに専門性を高めていきたい
管理栄養士の資格は一度取得したら更新の必要はありません。しかし、栄養学は日進月歩で変化しています。専門性を高めるためには、自主的に勉強しながら日々、知見を深める必要があると思っています。後輩にも、いろいろなところにアンテナを立てて専門性を磨いてほしいと思っています。これからも、これまでの経験を糧にして栄養士の道を突きすすんでいきたいです。

(写真 社会福祉法人仁生社 管理栄養士 NR・サプリメントアドバイザー 東京糖尿病療養指導士 鈴木 里枝さん)
(写真 栄養教室での一コマ)

 

--5【Information(東京の寄附のカタチ 遺贈を活用した施設への助成金「かみつぐ助成金」/ マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本)】
遺贈を活用した施設への助成金「かみつぐ助成金」
東京善意銀行では、ご寄附いただいた1億円近い遺贈をもとに、故人の名前を付した「かみつぐ助成金」を実施しました。助成金額は1施設50万円以内、「利用者に必要な物品購入費」と「地域生活課題対応事業費」の2種類として募集し、非常に多くの施設から申請がありました。地域生活課題対応事業の取組み内容については、今後皆様にWEBサイトなどでお伝えしてまいります。

マンスリーニュース 2025/2/26~3/25

ピックアップ
(3/5)年間の生活保護申請件数が過去最多
厚生労働省が公表した被保護者調査によると、2024年の生活保護の申請件数(速報値)は25万5,897件となり、前年比818件増(0.3%増)だった。比較可能な調査結果のある2013年以降、過去最多の申請数となった。

(2/27)少子化はより一層進行し、出生数が過去最少
厚生労働省の人口動態統計速報によると、2024年の出生数(速報値)は過去最少の72万988人で、前年比3万7,643人減(5%減)だった。また、死亡数は過去最多の161万8,684人で、前年比2万8,181人(1.8%)の増加となった。

(3/7)障害者就労支援に関する資格を創設、専門人材確保へ
厚生労働省は「職場適応援助者の育成・確保に関する作業部会」報告書を取りまとめ。障害者就労を支える人材の質・量不足等の課題解決に向けて、障害者就労支援に関する中級レベルの資格「障害者就労支援士(仮称)」を創設することを公表した。

東社協トピックス
● 2025年度の 東社協事業計画・予算が決定しました
2025年3月18日の理事会および3月27日の評議員会にて、2025年度の 東社協事業計画・予算が承認されました。詳細はホームページからご覧ください。
2025年度は、「令和7~11(2025~2029)年度 東社協中期計画」の初年度です。中期計画のキーワードは“協働”。「取組みの柱」として、業種別部会の会員をはじめとする社会福祉法人や福祉団体、ボランティア・NPO、企業など、幅広い関係者の方々とのネットワークで、協働ですすめる取組みの方向性・視点を5つ定めました。
この「取組みの柱」を意識し、2025年度の事業計画では28の重点取組み事項を位置づけています。“協働”から生まれる大きな力で、東京らしい多様性を活かした地域共生社会づくりを推進していきます。


中期計画の取組みの柱
①つながり、支え合う地域づくり
②包括的支援と協働のしくみづくり
③暮らしの安心づくり
④福祉で働く人と支える組織づくり
⑤福祉の可視化と包摂に向けた共感づくり

(QRコード 東京都社会福祉協議会 ホームページ)

東社協の本
ご注文は 東社協図書係まで  電話03-3268-7185

重層的支援体制整備事業 実践事例集 Vol.2
~実施5区市の区市町村社協の取組みより~

重層的支援体制整備事業を実施している自治体の社協にヒアリングする実践事例集の第2弾。
地域で活動する多くの関係機関、関係者に読んでいただきたい一冊。
規格B5判/98頁
発売日2024.5.13
定価770円(本体700円+税10%)

(写真 重層的支援体制整備事業 実践事例集 Vol.2 ~実施5区市の区市町村社協の取組みより~ 表紙)

10/62 もっと知りたい 東京にくらす
―10社協の取組み・東京都内62区市町村社協

コロナ禍を経て、都内区市町村社協はどのような課題を把握し、取り組んでいるのか。アンケート結果と都内10社協にヒアリングした取組みからお届けします。
規格A5判/68頁
発売日2024.05.15
定価770円(本体700円+税10%)

チームで取り組む地域共生社会づくり Vol.2

民生児童委員・社会福祉法人・社会福祉協議会の3者連携による実践事例を収録。
規格A5判/40頁
発売2023.4.7
定価495円(本体450円+税10%)

 

--6【くらし今ひと】
写真を通じて誰かの役に立ちたい。その想いで今日もシャッターを押す

車椅子ユーザーのフォトグラファーとして介護業界を中心に活躍する近藤浩紀さんに、これまでのご経験や大切にしている想いなどについて伺いました。

フォトグラファー 近藤 浩紀さん
2011年にシドニーへ語学留学後、独学でカメラを学ぶ。福祉業界の関連雑誌やイベントなどの撮影を手掛ける。ボランティアセンターの職員としても勤務している。

障害を意識せず過ごした幼少期
生まれた時から脳性麻痺があり、車椅子生活です。生活で困る事はありましたが、両親や友人など、周りの人たちが分け隔てなく接してくれ、小・中学校は普通科に通い、ごく普通の学生生活を送りました。志望校の高校受験に落ち、定時制高校に通いながら高校1年の2学期から全日制の高校に編入しました。このころからインスタントカメラや携帯のカメラで写真を撮るようになりました。大学受験でも失敗し、希望の大学の短期大学部へ入学して、卒業後にその大学へ3年生から編入しました。同じ頃、『五体不満足』で有名になった乙武洋匡さんが、車の免許を取得するドキュメンタリーを見たことをきっかけに、自動車免許を取りました。高校・大学と受験に失敗し、挫折だらけだった私にとって、成功体験のひとつになりました。
大学は自宅から遠く、大学のバスの本数も少なかったため、同じ車椅子ユーザーの学生と一緒にバスの増便とバリアフリー対応を大学に直談判したことがあります。その結果、バスが増便され、大学のほぼすべてのバスがバリアフリー対応になりました。この経験から、声をあげることの大切さを知りました。

社会人生活を経て渡豪。独学でカメラを学ぶ
大学卒業後は、障害者雇用で外資系のPC関連企業に就職しましたが、メンタルの調子を崩してしまい退職を決意。その後、大学で英語を専攻していたこともあり、スキルを磨こうと英会話教室に通いました。それでもまだまだ足りないと感じ、生の英語を学ぶため25歳でオーストラリアのシドニーに留学します。これは自分の中では大きな挑戦でした。渡豪後、ふと「もう二度と来られないかもしれないから、オーストラリアの風景を収めておきたい」と、思い切って高額な一眼レフカメラを買いました。いいカメラでとっておきの風景を収めておきたい、ただそんな理由でした。
丸1年の留学を終えて帰国。カメラのテクニックを磨いてきれいな写真が撮りたいと思い、独学で基礎から勉強を始めました。ある時、友人から誘われて介護関連の勉強会に参加したのをきっかけに、介護関連雑誌の表紙写真やセミナーなどの撮影を任されるようになり、2015年からフォトグラファーとして仕事をするようになりました。フォトグラファーはやっと巡り合えた天職だと思っています。「近藤さんにしか撮れない写真だね」「ありがとう」という言葉が私にとって生きる喜びです。車椅子生活なので誰かに手伝ってもらうことが多いですが、何かお返ししたいと常に感じていたこともあり、少しは人の役に立てているのだと実感できます。

祖父の言葉を胸にすすんでいく
今から20年以上前ですが、祖父と一緒に公園に行ったときに唐突に祖父が、「浩紀、死ぬまで勉強するんだぞ」と言いました。この言葉が心にずっと残っており、私の大切にしている言葉です。自分には特別、才能があるわけではなく、障害もあり自由に体を動かせるわけでもない。そんな自分にずっと悩んできました。たまたまシドニーでカメラに出会い、撮影することが楽しいと感じてからは、祖父の言葉の後押しもあり、自分なりに必死で勉強してきました。祖父が残してくれた言葉を大切にしながら、これからも頑張っていきます。

(写真 フォトグラファー 近藤 浩紀さん)
(QRコード 近藤 浩紀オフィシャルサイト)


以上で、福祉広報2025年4月号を終わります。

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