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東京都社会福祉協議会

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福祉広報 2025年7月 798号 テキストデータ

【表紙】(写真)
門前仲町にある多世代型コミュニティスペースennでの一枚。「世代を問わず楽しめる『食』を通して、人と人とがつながれる場所にしたい」というオーナー北原さんの思いがこもった手作りランチを囲んで。

 

p.2 ●社会福祉NOW
地域共生社会の実現に向けて
~重層的支援体制整備事業の現在地~

p.4 ●み~つけた
場所があるからやりたいことができる。人とのつながりを大切にして、誰かの可能性になれたら
多世代型コミュニティスペースenn(江東区)

p.5 ●連載 安心できる生活を“すまい”から【第3回】
地域づくりに邁進する社会福祉協議会だからこその居住支援とは 
府中市社会福祉協議会 地域活動推進課 まちづくり推進係 田上さん

p.6 ●福祉のおしごと通信
利用者さんの“生きるための活力”を上げ、自立への第一歩を支えていく
社会福祉法人救世軍社会事業団 救世軍新生寮 臨床心理士/公認心理師 遠藤 架児(かこ)さん

p.7 ●Information
新会長就任あいさつ/学びを現場のチカラに!研修室だより/ 東社協の本/令和6年度共同募金の御礼

p.8 ●くらし今ひと
自分の世界を広げてくれた 点訳に出会えてよかった
土井 京子さん

 

【目次】

1社会福祉NOW
2み~つけた
3連載 安心できる生活を“すまい”から 第3回
4福祉のおしごと通信
5Information(新会長就任あいさつ/学びを現場のチカラに!研修室だより/ 東社協の本/令和6年度共同募金の御礼)
6くらし今ひと

 

--1【社会福祉NOW】
地域共生社会の実現に向けて
~重層的支援体制整備事業の現在地~

地域共生社会の実現に向けて、2020年の社会福祉法の改正により自治体に義務付けられた「包括的な支援体制の整備」。
その手法のひとつとして、2021年度から「重層的支援体制整備事業」が始まりました。
開始から5年、都内の実践からみえてきた成果と課題についてご紹介します。

重層的支援体制整備事業創設の経緯と求められる機能
地域共生社会の実現に向けた取組みは、2016年に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」に始まり、2019年の「地域共生社会推進検討会」の最終とりまとめ等を経て、各地域の特性に応じたさまざまな取組みがすすめられています。

(図 重層的支援体制整備事業経緯)

「重層的支援体制整備事業」では、①本人や世帯の属性を問わず包括的に相談を受けとめ、支援機関全体で支援をすすめる「相談支援」、②本人や世帯の状況に寄り添い、社会とのつながりを段階的に回復する「参加支援」、③地域における多世代の交流や多様な活躍の場を確保する環境整備を行う「地域づくりに向けた支援」の3つの支援を一体的に実施することで「包括的な支援体制の整備」をすすめることをめざしています。
本事業は、地域住民の抱える複雑化・複合化した課題に、「具体的な課題解決をめざすアプローチ(個別課題の解決)」と、「つながり続けることをめざすアプローチ(地域とのつながりづくり)」の2つのアプローチを通じて、人と人とのつながりを基盤としたセーフティネットの強化に取り組みます。そのためには、高齢・障害・子ども・生活困窮をはじめとした、各分野における支援の相互の重なり合い、アウトリーチ・相談支援・参加支援といった一連の支援の流れの相互の重なり合い、各種福祉制度と住民主体の地域活動等の相互の重なり合い、これら3つの重なり合いが重要となります。

都内における取組み状況と成果・課題
2024年度は、都内23の地区で本事業が実施されており、2025年度は、新たに7地区で開始の見込みです。移行準備事業や独自に準備をすすめる自治体も合わせると、都内の半数以上で具体的な取組みがすすめられています。
東京都社会福祉協議会では、2024年度から東京都の委託を受け、本事業の「後方支援」事業を実施しており、その取組みのひとつとして自治体と社協を対象とした訪問によるヒアリングやアンケート調査を行いました。
実施地区の4割強が『総合相談窓口を設置しない』としており、既存の支援機関の連携で相談を受けとめ、1つの窓口だけでは解決が難しい場合に本事業における「多機関協働事業」を活用してチームで支援をするなど、窓口同士の連携により対応していることがわかりました。また、2024年度の傾向として、生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業の機能拡充による対応がみられました。窓口同士の連携では、研修やケース検討などお互いの機能を知り、学び合いの機会を設けることが重要で、支援機関同士の狭間を埋めるだけでなく、職員のスキルアップにもつながっています。地域生活課題は多岐にわたるため、福祉部門だけではなく、教育やまちづくりなど庁内のさまざまな部門や、地域の活動団体や福祉施設・企業・関係機関等との連携が求められています。
複雑化・複合化したケースの多くは、世帯内に支援が必要な方が複数いる、引きこもりや地域からの孤立により必要な支援が届いていないなど、既存の制度や支援だけでは解決が難しい状況にあります。そうしたケースには、複数の関係者で情報共有や支援の検討を行うことで、早期対応やチーム支援により、具体的な支援がすすんでいることが伺えます。
個別支援に取り組む中で、その人に合った制度や地域の社会資源の不足により、支援がすすまない場合もみられ、既存の取組みの機能拡充や、新たな活動の創設が求められています。調査結果からは、本事業の実施間もない地区において地域づくりの成果を感じられないとする傾向が高く、成果として実感が得られるようになるには時間がかかる、地道な取組みであることが伺えます。同時に、一人では地域や活動の場との関わりが難しい方へのアウトリーチにも時間がかかることが伺え、本人の同意を得るまでの息の長い関わりや、緩やかな参加の支援が必要となり、「重層的支援会議(※)」を経たプラン作成に至ることが難しく、そのプロセスについて評価がされにくいという課題がみえてきました。
地域づくりは、本人や地域のニーズに応じて取り組むことが必要で、本人や世帯への支援と一体的に取り組むことが重要なポイントですが、具体的な目標や手法は千差万別なことから、成果がわかりにくいことも取組みがすすみにくい要因のひとつとなっています。
(※)本事業による支援プランの作成やその適切さなどを協議するため、本人同意を得て開催される。

「地域共生社会の在り方検討会議」における論点から
国では、2024年6月より「地域共生社会の在り方検討会議」を開催し、地域共生社会の概念の再整理、今後の包括的な支援体制の整備の在り方、重層的支援体制整備事業等における取組みの方向性等について議論が行われ、本年5月に「中間とりまとめ」が公表されました。
地域共生社会の実現に向けて、各区市町村において多様な取組みが展開されており、これまで支援が行き届いていなかったケース等への対応がすすめられているものの、今後の人口減少や単身世帯の増加等による家族機能の変化をふまえると、互助を含めた住民主体の地域づくりを広げていく必要があり、その取組みの趣旨や背景について認識を共有することが重要であるとの指摘がありました。
「包括的な支援体制の整備」については、何をもって体制整備ができているとするのか判断が難しいうえ、本事業を実施せずに体制整備を行っている自治体に対する支援が講じられていないとの意見や、本事業を実施していても多機関協働事業等の機能や取組みについての評価指標がなく、人口規模のみに応じた財政支援にとどまっていることへの指摘がありました。また、体制整備が相談支援の包括化の範囲にとどまって理解されていることが多く、地域づくりまで実施できていないことについて、国や都道府県による伴走支援はもちろん、社会福祉法に規定する「支援会議」の活用や「重層的支援会議」の枠組みを、本事業の実施に関わらず、「包括的な支援体制の整備」をしている自治体に拡大し、区市町村の実情に応じた体制整備を支援することの必要性などが述べられています。
本事業の実施にあたっては、地域住民との対話や、地域資源やニーズの把握・分析等を行ったうえで、実施するか否かを地域住民や関係者と合意をしてすすめることが重要とされており、こうしたプロセスや実施にあたっての目標・評価設定・達成状況の確認等の具体的な考え方を、国が整理・具現化して示すことの必要性が言及されています。

地域共生社会の実現に向けて
2020年の社会福祉法改正から5年が経過し、「包括的な支援体制の整備」が各地区ですすむ一方、地域住民を取り巻く社会情勢の変化により求められる支援も多岐にわたり、法改正を含む各種制度の見直しが行われています。既存の制度では十分な支援が行き届かなかったケースへの対応と、住民が主体となって地域生活課題の解決に取り組める地域をつくっていくために、本事業の効果を可視化し、地域住民や関係機関への理解を広げていくことが求められています。

(QRコード 重層的支援体制整備事業による取組みや調査結果を『みんなで重層ポータル』に掲載しています。)
(QRコード 2022年3月号では、実施地区の取組みをもとに「重層的支援体制整備事業」のポイントについて紹介しています。ぜひこちらもお読みください。)

 

--2【み~つけた】
場所があるからやりたいことができる。人とのつながりを大切にして、誰かの可能性になれたら
江東区 多世代型コミュニティスペースenn

「自分の居場所」と感じられる場づくりを
門前仲町駅から歩いて数分の路地裏にある多世代型コミュニティスペース「enn」。住宅兼電気工事会社だった場所を、ennのオーナーである北原千寿子さんが中心となって閉業を機にリノベーションし、2021年4月にコミュニティスペースとして生まれ変わりました。看護師として在宅医療に携わっていた経験から「介護者を含め、孤独を抱えている人が多い」と北原さんは実感。「世代を問わず気軽に誰かと話せる環境があれば」という思いから立ち上げた、年代を問わない多世代が集うみんなの居場所となっています。建築士やWebに詳しい人、移住支援や町おこしに取り組んでいる人など、いろいろな経験と知識をもつたくさんの仲間の協力によってできたennは、まさに人の「縁」が生みだした場所です。
ennのオープン時から続く名物イベントの「ピンコロエクササイズ」。月2回開催されるこのイベントは、パーソナルトレーナーの先生を迎えて1時間の体操をした後、みんなで北原さんお手製のお昼ご飯を囲みます。98回目となる6月上旬の日も、和やかな雰囲気とともに食事がすすみ、参加者からは「ずっと家に居るだけだからここがあって良かった!」との声が。それを聞いた北原さんから自然と笑みがこぼれます。

ここが誰かの人生の足がかりになれば
スチームコンベクションオーブンや業務用冷蔵庫など、キッチン設備が充実しているのもennの特徴の一つです。そのため、自分で飲食のお店を持つ体験をしてみたい人、キッチンを使ったイベントをやりたい人なども利用しています。ここでの経験を生かし、実際に自身でお店を始めた人もいるそう。ennは誰かの「やりたい!」を応援する場所でもあります。
イベントの参加者だった人が次は主催者として借りに来ることもあります。「こんな場所を探してた」と言われると、北原さんもやっていて良かったと、やりがいを感じるそうです。
「enn」にはつながりの「縁」や「円」、支援・応援の「援」と、さまざまな意味が込められています。一人ひとりが自分を大事に、みんながみんなを大事にできれば社会が良くなる。そんなオーナーの思いとともに、ennはこれからも誰かの「可能性」を広げる場となるよう、「居場所」を提供していきます。

多世代型コミュニティスペースenn
場所:江東区門前仲町2-4-4
問合わせ先:monnaka.enn@gmail.com

(写真 多世代型コミュニティスペースenn)
(QRコード ennホームページ)

 

--3【連載 安心できる生活を“すまい”から 第3回】
地域づくりに邁進する社会福祉協議会だからこその居住支援とは 
府中市社会福祉協議会 地域活動推進課 まちづくり推進係 田上さん

(写真 府中市社会福祉協議会 地域活動推進課 まちづくり推進係 田上さん)

府中市社会福祉協議会(以下、府中市社協)では、市からの委託を受け2022年4月より「住宅セーフティネット住まい相談」を実施しています。社会福祉協議会が住まいに関する相談を担う意義とは何でしょうか。担当する地域活動推進課まちづくり推進係の田上さんに府中市社協の取組みを伺いました。 

住まい相談の窓口を社協に一本化
「住宅セーフティネット住まい相談」は、住宅セーフティネット法による住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するための支援策の一つとして設けられた、住まい相談の窓口です。府中市居住支援協議会が2020年7月に立ち上がり、事務局を担う府中市都市整備部が同年8月からこの窓口を開設しました。開設当初、府中市では、市福祉保健部が所管する高齢者対象の住居の住み替え支援や、府中市社協が行う民間住宅の斡旋事業といった住まい相談の窓口もありました。その後、福祉的な相談も一体的に引き受けることをねらいとして、2022年4月に窓口を一本化し府中市社協でその相談を受けています。
具体的に住み替えが必要な場合は、協力店として登録している不動産事業者に照会をかけ物件を探します。実際に住み替えに至るケースもありますが、相談をきっかけとして住まいに限らない課題が見えてくることもあります。一緒に相談内容を解きほぐしていき、必要に応じて同じ部署の地域福祉コーディネーター(以下、地域福祉CO)や各関係機関につなぐこともあります。

地域づくりを基盤とした居住支援
田上さんは、2022年度まではまちづくり推進係で地域福祉COを担当し、2023年度からは住まい相談の担当になりました。「相談者に対して複合的な視点を持ち、相談内容として顕在化していること以外の困りごとはないかを考えたり、制度を紹介したりすることは共通する役割だなと思います。一方で、例えば福祉用具の利用などによりいかに希望に近い暮らしができるかという視点は、住まい相談の担当ならではだと感じます」と言います。また、府中市社協が住まい相談の窓口を担うことの効果のひとつとして、地域福祉COとの連携があります。「ある単身高齢者のケースでは、担当の地域福祉COと住み替え前から情報共有を行いました。住み替え後は地域福祉COが紹介したサロンや、地域住民が行うボランティア活動に参加されています」。
『住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会』の中間とりまとめにおいても、地域における居場所づくりまで含めた取組みの推進が求められています。地域住民が生きがいをもって暮らしていくための活動につながる例だといえます。

社会の変化に伴うこれからの居住支援
このように社協ならではの住まい相談が定着していく中で、田上さんは難しさも感じており、「そもそも相談者に紹介できる物件が少なく、不動産事業者から『ここでもよければ』と提案されたところも金銭面・生活面で条件が合わないことも少なくありません。加えて、理解あるオーナーが高齢となり物件を売却したりするなどの変化もあり、受け入れ可能な物件が少なくなってきているなと思います」と話します。借りる側、貸す側双方に意向があるのは当然で、いかにすり合わせていけるか日々悩みながら対応しているそうです。
一方で空き物件の利活用の促進や社会全体においても居住支援の必要性が認識されてきた状況を鑑みると、これからできることもあると考えているとのこと。例えば社協が入居後の支援をすすめる中でオーナーや不動産事業者に「社協が見守っているから安心して貸せる」と思ってもらえるよう、オーナーとの情報交換ができればいいなと考えているそうです。
こうした住まい相談をひとつの入口として、府中市社協は社協だからこそできる支援の仕方、かかわり方を模索し続けます。

(QRコード 府中市 住宅セーフティネット住まい相談)

 

--4【福祉のおしごと通信】
利用者さんの“生きるための活力”を上げ、自立への第一歩を支えていく
社会福祉法人救世軍社会事業団 救世軍新生寮 臨床心理士/公認心理師 遠藤 架児(かこ)さん

女性自立支援施設で心理職として働く遠藤架児(かこ)さん。心理職をめざそうと思ったきっかけや利用者さんとの日々の関わり、今後力を入れていきたいことなどをお聞きしました。

システム開発職から心理の道へ
女性自立支援施設とは、生活困窮や性暴力など、困難な問題を抱える女性たちの心と身体の回復と、自立を支援する施設です。
心理の仕事に就く前は、システム開発の会社でプログラマーをしていました。仕事を続けていくうちに「もっと人の幸せにつながるような仕事をしよう」と思い立ち、退職を決意。直感で心理職になる道を選びました。臨床心理士の資格取得のため大学院へ入学し、2010年に臨床心理士になりました。その後は、大学の学生相談カウンセラーとスクールカウンセラーの仕事を掛け持ちで7年ほど働いた後、新生寮とは別の女性自立支援施設で働きました。
ある時、東京都の女性自立支援施設で働く心理職の連絡会があり、そこに出席していた新生寮の方から入職への強い誘いを受け、2018年11月に入職しました。

心の回復が自立への第一歩
新生寮では、週4日の非常勤の心理職として働いています。利用者さんの悩みや困り事を聞いて、解決に向けアドバイスやサポートをする心理面談が主な仕事です。とはいえ、利用者さんには傷ついた心と身体を癒してもらうことが先決です。話したくないことを無理に聞くことはせず、病気やトラウマに対する心理教育をしたり、タッピングタッチやTFT(思考場療法(しこうばりょうほう)など副作用の少ない心理療法を行ったりすることもあります。
また、幼少期に家族と十分なコミュニケーションを取れる環境になかったり、自分の気持ちを言語化することが苦手だったりする利用者さんが多いため、面談という形を取らずに卓球やパズルなどのレクリエーションをすることもあります。その方に合ったアプローチ方法で、負荷をかけないように気をつけながら、本来持っている「生きる活力」を引き上げて、自立への第一歩を踏み出すお手伝いができたらと思っています。
また、利用者さんに対して「決めつけない」「期待しすぎない」ことも大事です。「~だろう」「こうあるべき」と決めつけず、リスペクトを忘れない。そして、適切な距離感を保ちつつ利用者さんと向き合うことが、いい関係性を築くために大切なことだと思います。

専門職としてさらに知見を広げていく
心理職は基本、一人で動いていますが、支援員や看護師、栄養士など職場の皆さんが理解を示してくれていて、特別な会議がなくても日ごろから情報共有をしているため、協力し合える関係性が構築できています。また、年に2回行われる心理職の連絡会や、 東社協女性支援部会の情報交換会などに参加し、他施設の心理職との情報共有も有意義な時間です。取り入れたいことがあったらやらせてもらえる柔軟な職場環境も、やりがいの一つです。
新生寮に入職して7年目に突入しました。心理の仕事を辞めようと思ったことは一度もありません。今後は、女性自立支援の分野で、トラウマ関連の知見をさらに深めていきたいと考えているところです。「何が利用者さんの役に立つのか」という気持ちを持ち続けながら、これからも心理の仕事を続けていきたいです。

(イラスト 社会福祉法人救世軍社会事業団 救世軍新生寮 臨床心理士/公認心理師 遠藤 架児(かこ)さん)

 

--5【Information(新会長就任あいさつ/学びを現場のチカラに!研修室だより/ 東社協の本/令和6年度共同募金の御礼)】
新会長就任あいさつ
川澄(かわすみ) 俊文(としふみ)
(写真 川澄(かわすみ) 俊文(としふみ))

6月25日付で 東社協会長に就任しました川澄俊文(かわすみ としふみ)です。先月まで東京地下鉄株式会社の会長として、区部を中心に9路線180駅の地下鉄を運営し首都東京の都市機能を支える交通事業に尽くしてきました。
福祉分野の仕事としては、2012年7月から東京都の福祉保健局長として、その後、副知事として福祉行政に携わりました。東日本大震災を契機とした首都圏における大規模災害に対する備え、改正介護保険法による地域包括ケアシステムの本格的な構築、保育所の待機児童問題の克服、障害者総合支援法による障害者の自立生活を支える施策などに奔走しました。
2016年6月に都を退職して以来、9年ぶりに福祉分野に戻ってきましたが、少子高齢化は一層すすみ、わが国では65歳以上の高齢者がピークを迎える2040年に向けた「地域包括ケアシステム」の深化や地域共生社会の一層の推進などが求められています。また、能登半島地震を教訓とした在宅避難者や車中避難者を含めた被災者の福祉的支援の強化も喫緊の課題となっています。こうした山積した課題の克服に向けて、私達、社会福祉協議会への期待を強く感じております。
本年3月、本会は「東京らしい多様性を活かした地域共生社会」をビジョンとして掲げ、業種別部会連絡協議会の会員を始め、関係者の皆様と「協働」して取り組む5か年の中期計画を策定しました。私は、東京が、さまざまな人たちが暮らしやすい、魅力あふれた都市となることをめざし、これまでの経験を活かし、皆様と一緒に最善を尽くしてまいります。どうぞ、よろしくお願いします。

〈プロフィール〉2010年:都病院経営本部長/2012年:福祉保健局長/2016年:副知事/2018年:(公財)東京都環境公社理事長/2023年:東京地下鉄㈱代表取締役会長


学びを現場のチカラに!研修室だより
「福祉職員キャリアパス対応生涯研修」が始まりました!
東京都福祉人材センター研修室では、2025年度の「福祉職員キャリアパス対応生涯研修」が始まりました。この研修は、全国統一の階層別研修として「組織性(職層に応じた役割行動・能力)」を学ぶもので、今年は7月から3月にかけて、全17コースを実施する予定です。
昨年度は「初任者研修」と「中堅職員研修」を、コロナ禍以降久しぶりに集合型で開催しました。昨年度の受講生からは「他職種の方との意見交換で視野が広がった」「対面で話し合うことで相手の表情やリアクションを直接感じられて、より実りあるグループワークができた」などのお声をいただいています。
今年度は「管理職員研修」も、ライブ型WEB研修に加えて集合型研修も設けましたので、受講スタイルによってコースをお選びいただけます。
これから申込を開始するコースも多数ありますので、ぜひ 東社協研修受付システム「けんとくん」からご確認ください。「X」でもイチオシ研修のお知らせなどを発信中です。

けんとくん 検索
「X」でも研修情報、研修室職員のつぶやき発信中
(QRコード けんとくん)
(QRコード X)


東社協の本
ご注文は 東社協図書係まで  電話03-3268-7185

新刊
改訂版 社会福祉法人会計の実務 第1編 月次編
「令和2年版  社会福祉法人会計の実務  第1編  月次編」の改訂版です。前版以降の社会福祉法人会計基準等の改正を取り込み、令和7年3月までの会計関係行政指導通知の改正と、短編研修の内容、 東社協に寄せられた質問等を反映した解説やQ&Aを加えた内容となっています。会計担当者の疑問や不安の解消や、より適正な会計データの作成ができることで、社会福祉事業の円滑な経営に活用ください。
◆規格 A4判・607頁
◆発売 2025.6. 30
◆定価 7,700円(本体7,000円+税10%)
(写真 改訂版 社会福祉法人会計の実務 第1編 月次編 表紙)

見てみよう、聞いてみよう 未来を拓く福祉のしごと
福祉について知りたい中学生や、職場体験の事前・事後学習の場面など、幅広く活用できる冊子です。職場体験の事前学習や、中学校での福祉教育・福祉学習の副教材として、ぜひご活用ください。
◆規格 B5判・36頁
◆発売 2022.04.14
◆定価 440円(本体400円+税10%)

こんなことに気づいてあげて ~暴力・虐待を防ぐためにあなたにできること~
暴力・虐待を生まない社会づくりをめざし、この冊子を作成しました。
◆規格 B5判・20頁
◆発売 2015.04.07
◆定価 330円(本体300円+税10%)


令和6年度共同募金の御礼
令和6年度は都民・団体並びに法人各位のご理解とお力添えをいただき、第78回目の共同募金運動を実施し、従前の社会福祉事業に加え、経済困窮や社会的孤立など時代や世相を反映した社会福祉課題へも対応することができました。これからも皆さまのたすけあいのお気持ちを、支援を必要としている多くの方々へお届けできるよう努めてまいります。
皆さまのご支援に心より御礼申し上げますとともに、今後とも変わらぬご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
社会福祉法人 東京都共同募金会

 

--6【くらし今ひと】
自分の世界を広げてくれた 点訳に出会えてよかった

点訳とは活字を点字に訳すこと。視覚障害者の読書の充実を図るために30年以上もの間、ボランティアで点訳に励む土井京子さんに、点訳との出会いやあまり知られていない点訳の世界についてお話いただきました。

土井 京子さん
1995年から点訳ボランティアを開始。(社福)日本点字図書館所属のボランティアの点訳者として、これまで61タイトル、約29,000ページの点訳実績がある。趣味はウォーキング。

広報誌から点訳を知る
点字を知るまでの私は、普通の主婦でした。ある時、住んでいる地域の広報誌に掲載された点字サークルの記事が目に留まり、興味を持ったことが始まりです。さっそくサークルに参加し、点字のいろはを手取り足取り教えてもらい、その面白さに目覚めました。しばらくしてサークルの先生から、「本格的に勉強をしてみないか」と点訳者としての道を勧めていただき、いくつかの団体を教えてもらいました。日本最大の点字図書館の「(社福)日本点字図書館」がボランティアの点訳者を募っていて、養成のための通信講座を開いているということを知り、受講することにしました。
それまでは趣味の一環で楽しみながらやってきたのですが、点訳者を育てる講座だとそうはいきません。課題を提出し、間違いがあったらやり直しになります。わからないことは図書館でとことん調べて挑みました。20数回の課題提出を経て、晴れて点訳者として日本点字図書館に登録となり、今に至ります。

表現できないものはない、点訳の奥深さ
現在は、日本点字図書館から依頼を受けて点訳をしています。担当するのは小説や実用書が多いです。日本点字図書館から原本が送られてくるので、それを3か月~半年かけて点字に訳していきます。
訳す作業では、読み方を点字で表すので、漢字を正しく読めるかが重要になります。意味が分からない言葉や読めない言葉が出てきたら、とことん調べます。納得できるまで調べつくす作業は、何とも言えない達成感が味わえます。実際の点訳には、パソコンを使います。いったん点字データに整えた後、何度かの見直しを経て、日本点字図書館へ提出するというのが私の作業の流れです。
通常の文字と比べて違う点は、点字は話し言葉のように音で表すこと。たとえば、「私は」の「は」の助詞は、点字では「わたしわ」と訳します。また「分かち書き」といって単語のまとまりごとにスペースを空けるといったように特有のルールがあります。これが点字の難しさでもあり面白さでもあるところです。長くやっていても、まだまだ学ぶことがたくさんあり、奥が深いです。

点訳は新しい世界を広げてくれる存在
「誰かのために」といった気持ちよりは、自分が点訳をやっていて楽しいから今まで続けてこられました。以前、私が手がけた本を読んでくれた目の不自由な方から、日本点字図書館を経由して本の感想とお礼をお手紙でいただいたことがありました。「読んでくれている人がいる。やってきてよかったな」と温かな気持ちになります。
これまで点訳の世界に長く携わってこられたのは、家族や日本点字図書館をはじめ、いろいろな人の協力やお導きがあったから。無我夢中であっという間でしたが、私の世界を広げてくれた点字には感謝しています。これからも、点訳のボランティアをできるだけ長く続けていければと思っています。

(写真 点訳で使用する各種テキスト類。国語辞典や百科事典、人名、医学など本のジャンルによって専門の辞書にあたることも。)
(QRコード (社福)日本点字図書館)


以上で、福祉広報2025年7月号を終わります。

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