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東京都社会福祉協議会

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福祉広報 2025年9月 800号 テキストデータ

【表紙】(写真)
「+laugh(アンドラフ)」は、医療的ケア児や重症心身障害がある未就学の子どもと18歳以上の方を対象に、発達支援と生活介護を行っています。駄菓子販売所とフリースペースが併設されていて、地域住民との多様な関係性を築くことができる場所です。


p.2 ●社会福祉NOW
これからを生きる若者の自立にむけて

p.4 ●み~つけた
障害の有無に関わらず、地域の中で多様な関係性が紡がれる場所
+laugh(アンドラフ)(多摩市)

p.5 ●連載 安心できる生活を“すまい”から【最終回】
地域で居住支援をすすめるしくみづくり~お互いの理解を近づけることから
国立市健康福祉部福祉総務課 課長 小鷹 学さん

p.6 ●福祉のおしごと通信
子どもの成長を感じられる。ここで働いていて良かったと思うことの一つです
社会福祉法人 聖オディリアホーム 聖オディリアホーム乳児院 心理士 戸田 尭裕さん

p.7 ●Information
フクシロウレター/マンスリーニュース/東社協トピックス/東社協の本

p.8 ●くらし今ひと
聞こえる人と聞こえない人との間にあるバリアを壊してお互いが関われる「居場所」をつくりたい
一般社団法人POC 代表理事 酒井 冴輝さん

 

【目次】

1社会福祉NOW
2み~つけた
3連載 安心できる生活を“すまい”から 最終回
4福祉のおしごと通信
5Information(フクシロウレター/マンスリーニュース/東社協トピックス/東社協の本)
6くらし今ひと

 

--1【社会福祉NOW】
これからを生きる
若者の自立にむけて

昨今、社会全体で若者を支援していく必要性が認識され、さまざまな制度設計や団体による支援の幅も広がっています。
そんな子どもや若者に長年寄り添い続けてきた2つの団体の取組みから、活動するなかで見えてきた若者の変化、自立にむけて求められることを考えます。


活動を通じて見えた若者の変化
東京都は、この3月に「東京都社会的養育推進計画(2025-2029)」を策定しました(以下一部抜粋)。

東京都社会的養育推進計画(2025-2029)について
▶︎「新しい社会的養育ビジョン」に基づき策定
▶︎目標6に「社会的養護のもとで育つ子供たちの自立支援」を設定
▶︎具体的な取組みとして「社会的養護自立支援拠点事業(以下、「拠点事業」という)」の拡充を計画

今年度拠点事業の補助事業者として決定を受けた団体のひとつである『(特非)日向ぼっこ』は2006年に発足。社会的養護の当事者参加推進団体としての活動を皮切りに、今ではさまざまな背景をもつ若者に向けた活動を行っています。具体的には、居場所事業、相談事業、発信事業の3つを柱とし、若者たちが交流する場や相談できる機会づくりをすすめてきました。
日向ぼっこにつながる若者の多くが児童養護施設や児童相談所などの関係機関からの紹介とのこと。活動を始めて約20年、この間関わってきた若者の変化について、スタッフの木本ゆうさんは次のように話します。「やはり社会状況の変化は大きいですよね。例えば就職にあたってはコミュニケーション力が求められ、SNSを見ると“コミュ力がある”人が目につくようです。『こんな風にならないと』と思ってしまう一方で、若者自身の意思が感じられないなとも思います。自分で決めるという経験も乏しく、若者の欲求が分かりづらくなっていると感じます」。
また、社会的養護経験者は施設環境や制度の充実により、「衣食住が満たされ頼れる施設職員がいる、そんな安心感からか『施設を出ることに不安がある』と感じているかもしれません」とスタッフのAさんは言います。

(写真)

拠点事業を活用したさらなる活動への展望
日向ぼっこは、発足当初に掲げていた“社会的養護の当事者団体”の看板を2013年に下ろし、当事者も含め「多様性が尊重される社会の実現」をめざす方向に舵を切りました。これまで大切にしてきた「本人の意思の尊重と一人で抱え込まないこと」に通じる文言が法改正の趣旨などにみられるようになり、自分たちのすすみ方が間違っていなかったと感じると話します。そして若者が自立に向かっていくためにこれからも大切にしていきたいことのひとつとして、さまざまな関係機関や専門職との連携・協働を挙げます。若者が頼れる先が自団体以外にもあること、これにより閉じた関係にならないことが重要だと言います。今後は拠点事業を活用した一時避難的かつ短期間の居場所提供も視野に入れているとのこと。「このような場所を必要としている若者は多くいます。これまでの取組みを継続しながら事業の枠組みをうまく活用してつながりをどう維持していけるか考え続けたい」と2人は展望を語ります。

子どもシェルターの設立から拡大へ
こども家庭庁では2024年度に新たに「こども若者シェルター・相談支援事業」を立ち上げました。この事業は、親からの虐待等に苦しみ、家庭等に居場所がない若者への居場所の提供や各種支援を行うことを想定しています。一時保護や施設入所等を望まない、あるいは年齢により対象とならない若者の受け皿となります。「第3期東京都子供・若者計画」においては社会的自立に困難を有する子供・若者やその家族への支援のひとつとして本事業を掲げており、一時的に身の安全を確保できる場が増えるのではと期待されています。
この事業の創設前から東京都内で子どもシェルターを運営している『(社福)カリヨン子どもセンター』は、2004年に特定非営利活動法人として設立し、全国で初めて子どもシェルターを開設しました(その後法人格を変更)。開設の経緯を理事で弁護士の馬渕泰至(まぶちやすし)さんは次のように振り返ります。「子どもたちからの相談を受ける窓口として、1985年に東京弁護士会・子どもの人権救済センターが開かれました。さまざまな事情で家に帰れない子どもたちの声を聞くなかで、『もっと受け皿がないと支援が続かない』ことに気づきました。さまざまな分野の支援者らの思いも重なり、シェルターをつくる機運が高まっていったと思います」。2011年には「子どもシェルター全国ネットワーク会議」を発足させ、現在約20団体が正会員として活動しています。

(写真)

羽休めをして次にすすむにあたって
「家や繁華街に居続けて怖い思いをしないように準備をして入居する子もいますが、『今日行く場所がない』という子も多いですね」と話すのは子どもシェルターのスタッフのBさん。「子どもたちの安全を守るため、入居にあたってはある程度のルールや制限を設けています。シェルターの方針を理解したうえで今後の生活をどうしていきたいかという目標がない子は、入居しても長続きしづらいです。また、入居期間をおおむね2か月以内としているため、わたしたちができることも限られます。その期間でそれぞれの状況を理解し、シェルター退居後の支援先等につなげています」と、シェルターが果たす役割を話します。
「こども若者シェルター・相談支援事業」について2人は、「私たちのシェルターは児童自立生活援助事業の一類型として運営しています。すべての子どもに『子ども担当弁護士』をつけ、関係機関と連携しながら支援しています。今回の事業創設でより多くの子ども・若者の受け皿が増える可能性があることを期待したいです。これまで支援につながらなかった子にもシェルターを知ってもらうきっかけになればと思います。とはいえ、シェルターの運営は安定した財源や継続的なスタッフの関わりが求められますので、今後の事業の展開については注視していきたいです」と話します。
また、Bさんはシェルターを利用する子どもたちについて、「以前は多くの子が『早く大人になりたい、自由になりたい』と話していましたが、今は大人になるのが不安な様子です」と言います。家を出たいけど友人と同じように進学したいと話す子もいて、進学に関する情報や制度を調べることも増えてきたと感じています。本人の意思を尊重し、現実との折り合いをつけながら自立に向けてどうすすむのか、シェルターにいる間に本人の意向を確認しながら整理していく支援をしています。

自立に向けた一歩を踏み出すために
両団体の話から共通して見えてきたのは、“与えられた環境以上に希望を抱きづらい”、そして“周りと同じであることを必要以上に気にする”若者の様子です。不安や悩みを抱えながらも自分の生き方を自分で決められること、その一歩一歩が自立につながっていくこと。そんな経験ができる機会を増やすことが求められています。そして子ども・若者のみなさんには、今回ご紹介したような団体に遠慮なく頼りながら自分の生き方を自分で決めることにチャレンジしてほしいと思います。

(QRコード 2019年に日向ぼっこに取材した様子をふくし実践事例ポータルに掲載しています。)
(QRコード (特非)日向ぼっこHP)
(QRコード (社福)カリヨン子どもセンターHP)

 


--2【み~つけた】
障害の有無に関わらず、地域の中で多様な関係性が紡がれる場所
多摩市 +laugh(アンドラフ)

一人の市民として地域でつながる
大規模な団地が立ち並ぶ多摩ニュータウンの商店街の一角に、未就学の重症心身障害児や医療的ケア児の児童発達支援と、18歳以上の方の生活介護を行う多機能事業所「+laugh(アンドラフ)」があります。+laugh(アンドラフ)を運営する(一社)Lifeis代表理事の影近卓大(たくだい)さんは「医療的ケア児や重症心身障害児は年々増えていますが、街であまり見かけないことに違和感を持っていて。地域の人たちと障害がある子たちとのタッチポイントが生まれる場所があればいいなと思いました」と話します。多摩ニュータウンを拠点に、2021年4月にオープンしました。

駄菓子がつなぐ日常の関係性
ユニークなのが、事業所内に「まちの駄菓子屋さん」と名付けた駄菓子販売スペースがあること。なぜ駄菓子屋なのか影近さんに伺うと、「駄菓子屋って社会を学べる一つの場所だと思っていて。おこづかいでどれだけお菓子が買えるか真剣に考えたり、マナーが悪いと店主に叱られたり。そんなところに、社会との接点を持ちにくい子がいることができたら、もっといろいろな景色が生まれるんじゃないかと思いました」と話してくれました。駄菓子販売は、生活介護の場となっていて、高校を卒業した方が袋詰めやシール貼り、レジ打ちなどを行い、売り上げの一部は工賃として支給されています。アンドラフで介護福祉士として働く志田真由美さんは「生活介護を利用する方には自分の仕事として、できること、持っている力を発揮してもらっています」と話します。
事業所はガラス張りで、外からも中からも自然に人々の様子が目に留まるつくりになっています。ふだん通る道や行く先で日常的に見かけると次第に気になってきて、自然な交流やつながりが育まれていく。時間はかかるけれど、そんな関係性を大事にしたいという影近さんの想いが込められています。志田さんは「ひときわ嬉しかったのが、児童発達支援を卒業して小学校に入学する子どもたちへ、地域の子どもたちがお祝いの品をつくり、巣立ちを祝ってくれたこと。地域の皆さんにとってもここが“日常にある楽しい場所”になっていると実感しています」と笑顔で話してくれました。

誰もが豊かな暮らしを創造できるまちへ
最後に影近さんは「今、私たちのような福祉事業所に求められているのは、事業所にいる時間だけ安全に過ごせればいいということではなく、障害がある人たちの暮らしがもっと豊かになる試みを考えていくことだと思っています。これからも地域の皆さんとともに“福祉視点のまちづくり”を一緒にやっていけたら」と話します。
障害のあるなしに関わらず社会の一員として、豊かに生きていける地域をめざして。これからも+laugh(アンドラフ)は、この場を地域にひらき、人と人との出会いを紡いでいきます。

+laugh(アンドラフ)
場所:多摩市諏訪5-6-3多摩ニュータウン諏訪102号
問合せ先:042-401-9865

(写真 +laugh(アンドラフ))
(QRコード +laugh ホームページ)

 

--3【連載 安心できる生活を“すまい”から 最終回】
地域で居住支援をすすめるしくみづくり~お互いの理解を近づけることから
国立市健康福祉部福祉総務課 課長 小鷹 学 さん

(写真 国立市健康福祉部福祉総務課 課長 小鷹 学さん)

東京都の多摩地域に位置し、約7.7万人が暮らす国立市。地域で居住支援をすすめるしくみづくりは、2024度に「高齢者住まい・生活支援伴走支援事業(以下、伴走支援事業)」に取り組む前からすすめられてきました。具体的な取組みとしては宅建協会と協定を結び、窓口で受けた住まい相談について物件を斡旋してもらうもの。しかし、4年前に始めた取組みも次第に鈍化し、その背景について、福祉総務課課長の小鷹学さんは「情報提供であっても時間や人的コストが不動産事業者に生じる中、知識がない私たちからの現実的でない、案件に結びつかない依頼が重なり難しくなっていったように感じます。また、市営住宅がない国立市には住宅課が存在せず、福祉部門が居住支援に取り組んできました。賃貸住宅のストックを活かすということならできる話ですが、市内の住宅事情をふまえた全体的な住まい施策となると福祉部門だけでは限界がありました」と話します。そうした状況からハード部門を担う都市整備部も交えて国立市の居住支援を考える必要性に行き着き、2024年度に伴走支援事業に応募。居住支援の専門家による伴走支援を受けながら、福祉部門が肌で感じていた居住支援の必要性を、部署を超えて共有することを第一にすすめていきました。 

伴走支援を受けながら、地域の居住支援の方向性を描いていく
1年間にわたる伴走支援事業や他市への視察を通じて、大家や管理会社等の不動産事業者を支えるしくみが現制度に欠けていることを強く感じた小鷹さん。居住支援をすすめていく上で住まいを必要とする相談者だけでなく、提供する側の視点にも寄り添う、そのバランスが重要であるといいます。「不動産事業者の本来の仕事ではないのに、心配だから見守る、ゴミの片づけをするといった話を聞きます。私たちからすればつなぎ先が浮かびますが、大家さんは制度を知らないで困っていたり、場合によってはそうした状況を聞いて大変に感じ、貸す側にハードルが生まれたりする現状があるのではないでしょうか。福祉側の私たちにとっては『住まい=人権』という感覚ですが、不動産事業者としては事業が成り立つか、経営的な視点がまずあるわけですよね。協力を押し付けるのではなく、そうした視点に寄り添ってすすめていくことが大切だと感じました」と話します。
(QRコード 国立市における伴走支援の内容は厚労省資料参照)

お互いの理解を近づけ、解決できる体制を
2025年度からは個別に事業者が登録する「協力不動産店制度」を開始したほか、9月からは住まい相談の窓口を一本化。認知度の高い「福祉総合相談ふくふく窓口」において、福祉と不動産事業者側の視点を持ち合わせた居住支援法人が住まいを必要とする人や、大家さん等の貸す側の相談を定期的に受けるものになります。さらには、今後の課題として、国立市として居住支援の方向性を地域に示していく必要があるとのこと。そのためには、関係者が情報を持ち寄り、住まいニーズや住宅事情、人口動態などをふまえて総合的に居住支援をみんなで考えていく場がまずは必要であるといいます。現在未設置である居住支援協議会についても、そうした場となる可能性や、相談実績もふまえて、必要性と目的を明確にしてから設置していく方向です。
最後に小鷹さんは、「住まいって、人生において最も基盤になるもので、住宅が借りられない、住宅がないってこと自体、福祉的には最初に解決しなきゃいけない問題だと思います。一方で時代が変わり、従前の施策では対応できず、借りづらい人、制度の狭間にある人が生まれています。身寄りのない人は、当然保証人がいません。そうした時に、解決できる体制をつくっていくことがとても大切であると感じます。まだまだ現行制度で解決することが難しいことはありますが、それでも自分たちに今できることをしっかりとやっていく。その中で、大家さん等の不安が軽減したり、関係者間のお互いの理解が近づいて、『居住支援に関わってよかった』と思ってもらったり。そうした積み重ねが、居住支援に取り組む私たちに今求められていることではないでしょうか。居住支援はいわば仲間づくりですね」と思いを明かしてくれました。多様な視点や声を取り入れながら、居住支援のしくみづくりを考えてきた国立市。関係者間の共有と理解を大切にしながら、実効性のあるしくみづくりをめざしていきます。

 


--4【福祉のおしごと通信】
子どもの成長を感じられる。
ここで働いていて良かったと思うことの一つです
社会福祉法人 聖オディリアホーム 聖オディリアホーム乳児院 心理士 戸田 尭裕(たかひろ) さん

(写真 社会福祉法人 聖オディリアホーム 聖オディリアホーム乳児院 心理士 戸田 尭裕さん)

心理職として働く戸田尭裕さんに、乳児院での仕事を選んだきっかけ、日々の仕事の喜びや葛藤などについてお話を伺いました。

思春期・成人期から児童、そして乳幼児の道へ
大学・大学院では、思春期・成人期の方とのカウンセリングを主に学んでいたのですが、大学院の時に経験した子どものセラピーをきっかけに「もしかすると子どもの領域も面白いかもしれない」と興味を持ちました。その経験から大学院卒業後は教育相談所で働きました。そこでは小・中学生とその保護者に関わることが多く、対象児童を理解するためには早期の母子関係や幼少期の育ちを知ることが重要視されていました。自分の中で「幼少期の育ちはそんなに大事なのか。もう少し勉強した方がいいかもしれない」と感じていました。ちょうどその頃、大学時代の先輩に乳児院での仕事を紹介してもらい、乳児院なら子どものこころの発達を学べるのではと思い、教育相談所を辞めて新しい領域に踏み込んでみました。また、今の施設で働きはじめたとき、いくつかの病院でも働いていて、そこでは思春期・成人期のクライエントを対象としていました。そこで出会うクライエントのなかには、家庭環境に問題があったり経済的に厳しかったりと、幼少期に大変な経験をしている人が少なからずいました。乳児院にもさまざまな背景で入所する子どもがいますが、その子たちが将来困らないように、できることをやれたら、そう思ったのが乳児院で仕事を続けようと思ったきっかけの一つです。

乳児院ならではの子どもとの関わり方
思春期・成人期と違い、言葉でのコミュニケーションが難しい乳幼児に対しては、じっと観察したり、目線の合いやすさや抱っこをしたときの身体の硬さ、遊び方や大人との関わり方を見たりしています。その上で一人ひとりの特徴を職員と共有し、「この子にはこんな特徴があるから、こういう風に関わっていくといいかもしれません」など、関わり方の助言をすることがあります。
なかには、退所後に遊びに来てくれる子や保護者の方がいます。中学校にあがったと報告してくれる子や、小さい時に自分がどんな所で過ごしていたかを知りたくて訪ねてくる子も。その子の成長を感じる瞬間で、職員も交えて当時の思い出話ができるのが嬉しいです。一緒に振り返ることがその子の人生の役に立てばいいなと思います。

悩むことがあっても、信頼できる先輩がいるから頑張れる
この子に対して何ができるだろう、その子へのいい支援方法がなかなか思い浮かばない……。そんな考えが頭をよぎることもあります。
悩みや迷いが多い仕事ですが、とても信頼している大学時代の先輩と一緒に働けていることが、仕事へのモチベーションにつながっています。相談しやすく、自分が気づけなかったことを教えてもらっています。一緒に働いているとたくさんの学びがあり、自分の支えにもなっています。
今後のキャリアについて、明確なビジョンがあるわけではないのですが、乳児院という施設のことや、ここで生活している子どもたちがいるということをもっと多くの人に知ってもらえたら嬉しいです。

 


--5【Information(フクシロウレター/マンスリーニュース/東社協トピックス/東社協の本)】
「福祉人材確保への取組み」フクシロウレター
次世代に福祉の魅力を伝える! ~「フクシを知ろう!おしごと体験」、「保育の仕事職場体験」を実施しました~
夏休み期間中、東京都福祉人材センターや東京都保育人材・保育所支援センターを利用して、約1,400名の中高生が都内の福祉事業所や保育所での職場体験に参加しました。受入れにご協力いただいた事業所の皆様、ありがとうございました。職場体験をきっかけに福祉の魅力が伝わり、福祉に関心を持つ生徒や、福祉の仕事を志す生徒がひとりでも増えていたら嬉しいです。

(写真)
(イラスト 「フクシロウ」)
(イラスト 「ホイクマ」)
(QRコード 東京都福祉人材センター、東京都保育人材・保育所支援センターの取り組みやイベント情報については、随時ホームページでお知らせをしております。)


マンスリーニュース 2025.7.26~8.25
ピックアップ
(7/29)厚生労働白書、次世代の主役となる若者へ
厚生労働省が公表した「2025年版厚生労働白書」は、次世代を担う若者に向けた社会保障・労働施策の意義や役割を特集。高校生を対象とした意識調査の結果も収録され、「福祉」への関心は5割弱。教育現場をはじめ地域や家庭等において身近に感じる取組みが求められる。

(7/31)保育施設などにおける事故3,190件、過去最多
子ども家庭庁は、全国の保育所や幼稚園、認定こども園などの施設における2024年の事故件数が3,190件だったと公表。前年より418件増え、過去最多となった。うち3,187件が負傷等で前年より424件増、3件は死亡事故で前年より6件減となっている。

(8/4)最低賃金の目安、時給63円引上げを
厚生労働省の中央最低賃金審議会は、2025年度の最低賃金額改定の目安について時給63円の引上げと答申した。目安通りに行われた場合、全国平均は1,118円となり全都道府県が1,000円を超す。引上げは23年連続、63円は過去最大の引き上げ額となる。


東社協トピックス
今年もやります。地域公益活動実践発表会Part.1

東京都地域公益活動推進協議会では、社会福祉法人の地域における公益的な取組みを推進するために、各社会福祉法人や区市町村ネットワークがどのようにニーズを把握し、地域に向けて取り組んでいるかを共有・発信する活動を行ってきました。今年度もその取組みの一つとして、「地域公益活動実践発表会Part1」を開催します。福祉関係者が取り組む上でのヒントや学びを得る機会だけでなく、広く学生や都民の皆さんにも知ってもらうことができればと考えています。ぜひお気軽にお申込みください。
日程:2025年11月6日(木)13時30分~16時30分(開場13時~)
会場:葛飾区金町地区センター5 階 ホール(葛飾区東金町1-22-1)
定員:60名(福祉関係者や区市町村行政職員、関心のある学生や市民)
申込:東京都地域公益活動推進協議会HPより  https://tokyo-koueki.jp/
締切:10月30日(木)

(イラスト つつまる)
(QRコード 東京都地域公益活動推進協議会HP)

10月1日から赤い羽根共同募金運動が始まります!
10月1日から赤い羽根共同募金運動が始まります。共同募金へのご寄付金は、高齢者や障がい者、子どもなどを対象とした民間の社会福祉事業を通じて地域福祉の充実に活用されています。
本年も赤い羽根共同募金運動にご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
東京都共同募金会ホームページ https://www.tokyo-akaihane.or.jp/

(QRコード 東京都共同募金会ホームページ)


東社協の本
ご注文は東社協図書係まで  電話03-3268-7185

よくわかる高齢者デイサービス2 デイサービスにおける機能訓練とは(付録CD-ROM付)
「個別機能訓練加算」においての算定要件基準は「その人らしい、在宅での生活をより意識する」ことが前提となっています。本来のデイサービス(通所介護)の重要な役割として再認識いただき、利用する方々の「その人らしい」生活の実現に役立てていただければ幸いです。
◆規格 A4判・122頁
◆発売 2017.07.25
◆定価 1,650円(本体1,500円+税10%)

ネットワークづくりのためのヒント集3 我がまち 再発見! データ・まちの声・未来像
地域診断をすすめるための「我がまちシート」を作成しました。地域包括支援センター職員と地域住民が目標となる地域像を一緒に考え、未来志向型で地域づくりをすすめるツールとしてご活用ください。
◆規格 A4判・94頁
◆発売 2018.06.20
◆定価 1,320円(本体1,200円+税10%)

生活相談員のためのショートステイマニュアル2 ~リスクマネジメント編~(CD-ROMつき)
困難なケースでもいかに施設の安全性を確保した上でサービスを提供していくのか、日頃の生活相談員業務のヒントが詰まった1冊となっています。
◆規格 A4判・122頁
◆発売 2018.12.17
◆定価 1,870円(本体1,700円+税10%)

 


--6【くらし今ひと】
聞こえる人と聞こえない人との間にあるバリアを壊して
お互いが関われる「居場所」をつくりたい

耳の聞こえない人の世界を理解してもらうために、さまざまな取組みを行ってきた酒井さん。これまでの活動と今後の目標や生き方について、お話を伺いました。

一般社団法人POC(ポック) 代表理事 酒井 冴輝(さえき) さん
4人きょうだいの長男。聞こえない次男、三男とともに国立市でろう者と聴者が交われる居場所づくりや手話を広めるための活動を行っている。個人ではYouTubeなどのSNS発信やモデル活動を行っている。


弟のおかれた環境から自然と自分のすすむ道を確信
ろう者の次男、三男は小学生の時、遠方のろう学校へ通学していました。クラスメイトは2人のときや5人のときなど人数がバラバラで、友人と交流する空間が少なく、自分と比べて世界が狭いのかもしれないと疑問を持つようになりました。学校が離れているので、放課後に友達と遊ぶ機会もありませんでした。
高校生の時、弟のおかれている環境と常に向き合ってきたことから、自然と「聞こえない人のサポートをしたい」と思い、大学ではろう学校の教諭をめざして勉学に励みました。しかし、大学を休学して行ったワーキングホリデーの最中に子どもの時に感じた限られた世界を思い出し、『学校という場ではなく、聞こえない人と聞こえる人が一緒に過ごせる「居場所」をつくることが自分のすすむ道』と確信しました。

YouTubeチャンネルが大好評になりクラウドファンディングで資金集めへ
居場所づくりをするにも「資金」が必要で、クラウドファンディングで資金を集めようと考えましたが、無名の自分が協力を仰ぐのは簡単なことではありません。そこで、自分たちの人間性、兄弟間のやり取り、自分たちがイケメンであること(笑)など、興味をもってもらえたらという思いでYouTubeでの発信をはじめました。2020年8月に開始し、翌年10月には3万人の登録に達しました。
その後、クラウドファンディングが無事に成功。「居場所」を立上げ、その後学習支援などオンラインを中心に活動していきました。いずれもろう者の大学生などが手話講師となったり、教材をつくるなど、働く場にもなっています。ろう者はアルバイトでさえ、なかなか雇用に結びつかない現状もあるのです。
現在は手話を使って飲食とコミュニケーションができる「BAR」を中心に、月1回開催しています。参加者は聴者7割、ろう者3割で遠方から来られる方も多いです。手話を知ってもらうだけでなく、聞こえない人がどんなことに困っているのかを感じ取れる場になっていたら。
また、2025年の11月末にはイベント「デフフェス」を計画しています。「LGBTQ+レインボープライド」と同じ規模感で、ろう者・手話を理解してもらえるようなフェスをめざします。また、終了したあとも持続可能なものにしたいです。

(QRコード 11月30日開催「デフフェス」特設サイト)

自分のためにやってきたことを周りのためや社会のために繋げていきたい
聞こえる者同士、聞こえない者同士、自分と似ている人と一緒のほうが居心地がいいこともあります。次男はろうの社会の中で生きてきましたが、社会人になって、聴者の友達が増えました。世界が広がった実感を覚えたと言っているのを聞くと、もっとろう者の世界が広くなるようにサポートしたいと思いました。ろう者としての誇りを灯し、輝く姿を未来に描けるように、聴者も当事者の声に耳を澄まし、共に生きる方法を模索して、一人ひとりが輝ける未来をつくっていきたいです。「自分のためにやってきたことが、周りのためや社会のために繋がっていくこと=カッコ良く生きるということ」というモットーを大切に、聞こえる人と聞こえない人との間にあるバリアを壊して、聞こえない人だけをサポートするのではなく、お互いに交われる「居場所」をつくっていきたいです。

(写真 一般社団法人POC 代表理事 酒井 冴輝さん)


以上で、福祉広報2025年9月号を終わります。

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