【表紙】(写真)
小学校入学に向けて学習体験ができる「就学準備教室りりーふ」。この日の授業は国語。カードを使いながら自分の考えを話す練習をしました。先生の問いかけに元気よく答える子どもたち。
p.2 ●社会福祉NOW
やりがいを持って働き続けられる職場づくりをめざして
~社会福祉法人経営者協議会調査研究委員会によるインタビュー調査から~
p.4 ●み~つけた
安心して小学校生活を迎えるための準備教室
就学準備教室りりーふ(千代田区)
p.5 ●連載 これからを生きる次世代へ【第2回】
“福祉はみんなごと”若者にもあたりまえに
上智大学学生サークル wel-bee
p.6 ●Focus on! 今、こんな動きがあります
ソーシャルインクルージョン~誰ひとり取り残さない社会をめざして~
医療部会 MSW分科会
p.7 ●Information
学びを現場のチカラに!研修室だより/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本
p.8 ●くらし今ひと
美しい歩き方は“心と体を解放する”
馬渕 正彦さん
【目次】
1社会福祉NOW
2み~つけた
3連載 これからを生きる次世代へ 第2回
4Focus on! 今、こんな動きがあります
5Information(学びを現場のチカラに!研修室だより/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本)
6くらし今ひと
--1【社会福祉NOW】
やりがいを持って働き続けられる職場づくりをめざして
~社会福祉法人経営者協議会調査研究委員会によるインタビュー調査から~
2025年度は、厚生労働省の社会保障審議会福祉部会において約7年ぶりに福祉人材確保専門委員会が動き出すなど、少子化による生産年齢人口の減少を背景に、持続可能な福祉社会の実現に向けた人材確保等の議論は活発な様相を見せています。東京都社会福祉協議会に設置されている社会福祉法人経営者協議会(※)の調査研究委員会でも、そのような背景のもと、2023年および2024年度に人材確保・育成・定着等に関する調査を実施しました。
(※)社会福祉法人が公共的な精神のもとに質の高い福祉サービスの拡充と地域福祉の推進を図ることおよび自らの経営基盤の確立を図ることを目的とした、高齢分野、障害分野、子ども分野など種別を越えた横断的な協議体
福祉人材の確保・育成・定着に関するインタビュー調査に至るまで
調査研究委員会では、2023年度に福祉人材の確保・育成・定着に関する量的調査を実施しました。前回の調査対象期間が2018年度であり、実に5年ぶりの調査でした。背景には、物価高騰に対応した2023年春闘による全産業平均賃金との格差拡大および人材確保・定着への懸念等の経営課題がありました。調査では、人員配置基準に対して職員が足りていないと感じる法人が7割にのぼること、有料職業紹介事業者に対する紹介料支払いの平均値が高齢者事業経営法人で約480万円、複数事業経営法人で約700万円など高額であること等が統計的に明らかになりました。
2024年度の調査では、離職率の低い法人や職員採用数の多い法人、DX推進に積極的な法人など、10を超える法人を取り上げてインタビュー調査を行い、その取組みからヒントを得ることをめざしました。その中から人材の定着に向けた2法人の取組みをお伝えします。
■職員満足度調査に定量的分析を
(社福)風の森の取組みから
(社福)風の森はルーツである久我山幼稚園での保育・教育のノウハウを活かした地域の子育て支援への貢献をめざし、杉並区内で6か所の保育所を運営しています。
特徴的な取組みとして、職員満足度調査の定量的分析があります。実施の背景には法人設立初年度に発生した職員の離職。職員の満足度に着目した取組みは多くの法人で実施されていますが、風の森では、調査結果を定量的に分析して満足度向上に強い相関がある項目の抽出まで行い、優先順位をつけた取組みを可能としています。調査を始めた当初は満足度向上と強い相関のある項目が「休暇の取りやすさ」などの待遇面でしたが、待遇面が充足されてくると「意見を言える雰囲気」や「同僚の協力・安心感」等の人間関係へとシフトする様子も伺えます。こうしたデータを職員向けの説明で効果的に用いることで、法人の方向性に対する職員の納得感が生まれ、離職低下につながっています。また、児童発達支援や一時預かり保育事業など、事業とともに勤務形態を多様化することで早番や遅番といったシフトのない勤務環境を整備し、子育て時期にも続けられる職場づくりへ積極的に取り組み、職員の働きやすさに寄与することをめざしています。
(写真 運営施設の一つ「ピコナーサリー久我山」)
■“横のつながり”が働きやすさややりがいに
(社福)調布市社会福祉事業団の取組みから
障害分野の入所施設および通所施設のほか、子ども家庭支援センターや学童クラブ、児童館などを運営する(社福)調布市社会福祉事業団では、主任級以上の職員を対象に、法人内で年代別の定例会を開催しています。福祉サービス第三者評価等で人材育成方針の強化が課題として指摘されたことや、同年代の横のつながり強化をめざしたことが取組みのきっかけです。同年代特有の課題や問題意識を共有することで、「実践発表交流会」等の取組みが生まれました。
「ちょーじープラス」も定例会でのユニークな取組みの一つ。「事業団は大きなチーム!施設を超えた活動を“あたりまえ”にしたい」というメッセージを掲げ、「利用者や市民の日常を豊かにします」「職員の経験を増やします」「施設の支援の質を上げます」の3つのプラスをめざし、複数種別を運営している法人の強みを生かして、勤務の隙間時間で他施設をお手伝いする制度です。職員にとっては、「ちょっと気になっていたあの施設を体験できる」「以前働いていた施設の利用者にまた会える」という良さがあり、法人全体への意識の高まりにもつながっています。
また、仕事と家庭の両立に悩む職員の声から生まれた「両立支援プロジェクト」では、育児・介護等のプライベートと仕事との両立に関連して、積立保存休暇制度(※)の要件緩和やジョブリターン制度の制定、介護ハンドブックの作成、「小1の壁」座談会、育児懇談会などの取組みがひろがり、職員同士の「お互いさま感」も生まれています。女性の管理職6割以上や1桁台の離職率はこれらの取組みが実を結んだものといえます。
(※)時効により2年間で消滅する有給休暇を年に5日間、最大40日まで積み立てることができる制度。現在は積み立てた有給休暇を時間単位で取得できるように要件緩和されている。
(写真 両立支援プロジェクトの資料)
職員が安心して働ける職場づくりをめざして
インタビュー調査を通じて、離職率が低い法人や職員採用がうまくいっている法人の共通点として、次のようなキーワードがみえてきました。
・安心して働ける職場づくり
1年目職員への勤務面での配慮、OJT、カウンセリング型1on1、個別ミーティングの実施など
・職員が働きやすい勤務環境
十分な休日が取れる職員体制、介護や育児に対応した制度、週休3日制の導入など
・多様な職員のインクルージョン
LGBTQをオープンにできる風土、外国籍人材への対応など
・職員のやりがいや主体性を育む職場づくり
職員への権限委譲を前提とした委員会制度、職員参加によるDX推進の検討や人事考課制度の改善など
・採用面での大学との連携強化
1年目職員による母校訪問、大学教員からの学生のニーズ把握、大学を会場とした取組みなど
・ICT機器等の導入
ベッドセンサーやコミュニケーションロボット、電子記録ソフト、誤薬防止機器など
これらの意識や取組みが働きやすさや法人職員としての誇りを創出し、職員の定着率の高さや職員採用数の多さなどにつながっていると考えられます。
さらに現状を把握した上でより良い組織づくりをめざす経営者の意識も共通する傾向でした。職員を「人財」として大切にする法人は、職員が互いを大切にする風土を醸成し、サービス利用者を含めた「人」を大事にする法人文化につながっていきます。
社会福祉法人経営者協議会の調査研究委員会では、人材確保が厳しくなる状況の中でも、やりがいをもって働き続けられる職場づくりをめざし、法人を今より更に良くしようとする経営者や法人の取組み事例を今後も届けていきます。
※インタビュー調査で把握した他法人の取組み事例は、近日、 東社協ホームページで公開予定です。
(QRコード 東社協・経営協HP)
--2【み~つけた】
安心して小学校生活を迎えるための準備教室
千代田区 就学準備教室りりーふ
小1プロブレムで悩む親子が少しでも減るように
小学校生活になじめるか心配―。そんな子どもや親の不安に寄り添い、小学校での学習体験や学校生活に必要な心構えなどを学べるのが「就学準備教室りりーふ(以下、りりーふ)」です。りりーふを立ち上げたのは、小学校や特別支援教室で指導した経歴をもつ、現役教員の村上沙織さんです。「ちょうど『小1プロブレム(※)』が注目され始めた頃で、入学前から小学校での学習や集団生活が学べ、環境の変化に適応する力を身に付けることができたら、小1プロブレムで悩む親子が減るのではないかと思いました」と立ち上げへの想いを振り返ります。千代田区内の区民館を借り、2015年にコミュニティ活動としてりりーふをスタートさせました。
りりーふでは、月1回、4~6歳の入学前の幼児を対象に、国語や算数、図工、音楽などがベースになった45分間の授業を行っています。プログラムについて村上さんは「学習塾とは違い、すぐに座学に取り組むのではありません。たとえば国語では、手遊びや体幹トレーニングを行いながら正しい姿勢や鉛筆の持ち方などを習得します。その子なりのスピード感で、楽しく学習に取り組めることをめざしています」と話します。ほかにも集団生活で必要な心構えやコミュニケーション力を高める授業も。
授業終了後は、子どもは自由時間となり、保護者は座談会に参加します。座談会では子育てに関するさまざまな情報交換が行われ、気負わずに悩みを相談できる場として保護者にとっても貴重な時間となっているようです。
※小学校入学後に子どもが集団生活に適応できず、何らかのトラブルが生じている状態
自己肯定感が育まれる場所
「最初は全くと言っていいほど発言をしなかった子が、半年ほどりりーふに通うようになって、だんだんと自分らしさを出せるようになり、卒園間近にはたくさんの人の前で発表できるようになったんです。何より、その子が楽しく小学校に通っていると報告をもらった時が一番嬉しかったです」と村上さんは目を輝かせながら話してくれました。りりーふの授業を通じて、子どもが少しずつ成長している姿は親の安心感につながり、それが子どもに伝わることで自信と自己肯定感が育まれる。それが小学校生活を楽しくスタートするための大切な土台のひとつになると、村上さんは言います。
りりーふがスタートして約10年。今年から個別支援も始め、通常の授業の後にマンツーマンでの指導も行っています。また、りりーふ共催の芸術イベント「千代田子どもの芸術祭~番町たき火まつり~」は毎年開催され、来場者も年々増えていき、地域の風物詩として人気を博しています。村上さんは「地域でつながっているということが私にとって活動のモチベーションのひとつ。これからも、挑戦をしながら柔軟に続けていきたいです」と話します。
就学準備教室りりーふ
開催場所:千代田区麹町2−2−36 鈴木ビル2階〔麹町集会室〕
開催日程:毎月1回日曜日 9:45~11:15
(QRコード 就学準備教室りりーふHP)
--3【連載 これからを生きる次世代へ 第2回】
“福祉はみんなごと”若者にもあたりまえに
上智大学学生サークル wel-bee
高田 翼咲(つばさ)さん、鎌田 直樹(なおゆき)さん、代表 前田 一葉(かずは)さん
(写真 上智大学学生サークル wel-bee(左から)高田翼咲さん、鎌田直樹さん、代表 前田一葉さん)
子ども・若者にとって“福祉”が身近な存在であるためには―。そうした問いを考える本連載の第2回では、「福祉を“みんなごと”にしたい」と学生の視点から同世代に向けて福祉を発信する上智大学のサークル「wel-bee(ウェルビー)」を取材しました。
「オシャレに楽しく福祉を発信 学生による学生のための福祉メディア」を掲げる上智大学の学生サークル「wel-bee」は、webメディア、フリーペーパー、SNSを通して、若者に向けて福祉の幅広い情報を発信しています。2010年から始まった本サークルは一度廃部になったものの、2022年に現代表の前田一葉さんにより復活。現在では、社会福祉系の学部以外からもさまざまな学部や他大学のメンバーが参加しています。
「wel-beeは福祉をみんなに関係があり、みんなで意識していく『みんなごと』だと考えています。なのであえて福祉に関係なさそうな見た目やコンテンツを考え、興味のない学生にも関心を持ってもらうことをめざしています」と前田さんは話します。
そうしたビジョンに共感し参加しているメンバーにとって福祉が「みんなごと」になったきっかけはそれぞれ。今年の4月から加入している高田翼咲さんは、高校のSDGs活動で学習支援などの活動に取り組む地域の人に話を聞いたこと、前田さんは、マンションで一緒にラジオ体操をしていた高齢の方たちが心身の不調をよく訴えていたことが気になったことだといいます。また鎌田直樹さんは「体調を崩し、一度大学を退学しました。その経験の中で福祉が自分ごとになり、みんなの根本にあることなんだと思うようになりました」と振り返ります。
若者に福祉との出会いを届けるために
高田さんは「福祉を学んでいない友達と話していると、『福祉=力仕事・低賃金』といった固定観念があると感じます」と話します。自分たちは福祉を身近に感じていても、周りの若者はそうではない。そうした状況を変えるために、「自発的に調べないと情報を得にくいwebメディアだけでなく、偶然手に取れるフリーペーパーも発行しています」と前田さん。また、知るハードルを下げるべく「福祉×身近なもの」で知ってもらおうという意識も。例えばある記事では、かわいい犬の写真に惹かれて読み始めると、福祉分野で取り入れられているドッグセラピーがどのようなもので、何が課題なのか、と次第に興味が湧いていく構成になっています。
さらに、「学生ならではの目線で発信する」「自分たちが体験する」ことも大切にされています。理系のメンバーが「福祉×DX」をテーマに取材で鋭い質問をしたり、栄養学科のメンバーの発案で福祉事業所で作られている食べ物を取材しに行ったり。同年代の多様なメンバーたちそれぞれの関心や「好き」にもとづいた体験と発信が、若者にとっての手の届きやすさにつながっているようです。
(写真 大学構内のラックやイベントを通じて配布されるフリーペーパー。表紙には「何だろう」と思わず手に取りたくなるキャッチーな見出しが散りばめられている。)
同世代の若者に向けて
インターネットを通じていろいろな情報が手に入るようになった現代ですが、実際の体験を通して他者を知ることができる機会は限られています。wel-beeの3人は、そんな今だからこそ、同世代や年下の若者に大切にしてほしいことを次のように語ります。
「自分も大学に入るまでは障害のある人と関わったことなどがありませんでした。高校生のときは特に進学校などでは勉強漬けになりがちですが、いろんな人と出会ったり、いろんな経験をすることが大事かなと思います」と高田さん。前田さんは「『こういう人がいる』とニュースで見て知っていても、背景を知らないと『その人がリアルな人間として実在している肌触り』は感じにくい。関心をもったらちょっと踏み込んで調べてみるといいかも」といいます。
また、「みんな生き急いでいる感じがあるなって思います。『普通』というレールに当てはめすぎると苦しくなるけれど、現実にはいろんな人がいて、表面からは見えないいろんな背景や価値観、生き方があります。そう考えると、“自分も今これが苦しいけど、焦らずゆっくりいこう”という気持ちになれるのでは。自分を大切にしてほしいです」と鎌田さんは思いを明かします。
若者に福祉を身近に感じてもらうには——。3人の言葉から、身の周りの他者や出来事に一歩深く関われたり、若者が自分も他者も大切にしようと思える環境づくりの重要さに改めて気づかされます。それぞれの想いを胸に、wel-beeでは若者が「福祉っておもしろいかも」「自分ごとなのかも」と思えるきっかけを、これからも届けていきます。
(QRコード wel-beeのHP)
--4【Focus on! 今、こんな動きがあります】
ソーシャルインクルージョン~誰ひとり取り残さない社会をめざして~
東京都社会福祉協議会では、「令和7~11年度 東社協中期計画」において“協働”ですすめる5つの「取組みの柱」を設定しています。
今号からのFocus onでは、それぞれの柱に沿って定めた令和7年度の重点取組みについてご紹介します。
医療部会 MSW分科会
今回は取組みの柱Ⅲ「暮らしの安心づくり」に位置づけられた取組みについて、 東社協医療部会MSW分科会幹事会より寄稿いただきました。
(QRコード 東社協中期計画についてはこちら)
無料低額診療事業のこれまで
「無料低額診療事業*1」とは、経済的な理由で医療を受けられない人を対象に、無料または低額な料金によって診療を行う事業です。ホームレス・人身売買被害者・DV被害者・在日外国人・震災被害者・刑余者などの社会的に援護が必要な方を対象とし、負担を軽減することで誰ひとり取り残さないように医療につなげることを目的としています。行政やNPO法人等の各種支援団体と連携し、主に健康面から基本的な生活の立て直しに向けた支援につなげています。東京都内では55の医療機関でこの事業を実施しており(2025年10月現在)、このうち30の医療機関が 東社協医療部会に所属し、福祉医療事業の充実に取り組んでいます。
*1 社会福祉法第2条第3項第9号に規定
『医療相談室』の現状
医療部会は、2002年ごろからホームレスに関する実態調査を実施したり、相談会を行ったりしてきました。2010年にはそれまでの取組みを引き継いだ『医療相談室』を設置し、相談を受けたら速やかにその方の現況や要望等を整理し、適切な医療を受けられる会員病院や診療所との受診調整を行っています。近年は活動範囲が広がり、多くの在日外国人の相談が支援団体から寄せられています。会員の医療機関が対応した実例をご紹介します。
在日外国人A:頭痛、腹痛、発熱に悩まされ、なんとか近くの医療機関にて自費受診したが原因は不明。更なる医療費が捻出できず支援団体に相談したところ、『医療相談室』につながった。受診調整ののち総合病院を受診し、マラリアであることが判明した。いまや日本では国内感染の報告がない症例だったが、すぐに感染症専門病院へ転送となり完治に至る。
在日外国人B・C:日本で働いてきた70代夫婦。収入があったうちはなんとか生活できていたが、高齢となり仕事ができなくなったこと、高齢の夫を支えていた主介護者である妻の視力低下により生活そのものを継続することが困難となる。支援団体が夫婦の状況を把握し『医療相談室』に相談、妻の総合病院への受診調整を図る。白内障手術を行った後は支援団体のサポートもあり母国に帰国し、生活保護に類する制度の利用、老人ホームへの入居に至ったとのこと。
『医療相談室』での外国人支援における課題と今後の展望
多くの外国人は、言語、文化、生活習慣の違いに加え、日本の複雑な在留資格制度や医療保険制度に関する知識も不足しがちで、必要な医療や福祉サービスから取り残されやすい状況に置かれています。2023年改正出入国管理及び難民認定法*2により難民認定制度の見直しと送還停止効の例外規定の創設が規定されるなど、在日外国人にとって在留資格や難民申請の運用に多大な影響も出ました。「制度の壁」「言葉の壁」「心の壁」と言われるように彼らが直面する課題は一つではなく、単一の制度やサービスでは解決できない複合的なものばかりであり、社会全体として包括的に支援していく必要があります。
『医療相談室』は支援システムの中で、各種支援団体との連携、情報の整理や共有、全体調整等の「ハブ」としての役割を今後も担っていきます。福祉・医療に携わるみなさんとつながりながら、ソーシャルインクルージョンが根付いた社会の実現に向けて取り組んでいきます。
*2 詳細は令和5年入管法等改正について(出入国在留管理庁HP)を参照
--5【Information(学びを現場のチカラに! 研修室だより/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本)】
学びを現場のチカラに! 研修室だより
オンラインの強み×対面の交流 職場研修担当者研修をリニューアル開催しました!
福祉事業所の研修担当者を対象に、研修計画の立て方や効果的なOJTのすすめ方など、職場研修のしくみづくりを体系的に学ぶ「職場研修担当者研修」を開催しました。
本研修はコロナ禍を機にオンライン型へと移行し、「研修会場への移動の負担がない」「繰り返し視聴できる」などの声をいただきながらこれまで実施しています。
今年は、こうしたオンラインの利点を活かしつつ、集合型での受講者同士の交流も取り入れた新たな形へとリニューアル。事前の「導入編」動画で基礎知識を学び、「演習編」当日では講義やグループワークを通じてさらに学びを深めました。
受講者からは「同じ立場の方と悩みなどを共有し情報交換できた」「職場内で取り組むべき内容が明確になった」との声も寄せられました。
研修室では、テーマ等に応じて、オンラインや集合型などの特性を活かし、より効果的な学びとなるよう研修を実施しています。
(QRコード 東社協研修受付システム「けんとくん」はこちらから)
(QRコード Xでは研修情報、研修室職員のつぶやき発信中!)
マンスリーニュース 2025.9.26〜10.25
ピックアップ
(9/29)2027年度からの障害児福祉計画の基本指針を議論
こども家庭庁は障害児支援部会で第4期障害児福祉計画の基本指針を議論。主な見直しとして、伴走型相談支援体制の強化・強度行動障害児への支援・重症心身障害児への支援・児童発達支援センターの機能明確化・生産性向上とサービスの質の確保を挙げ、基本指針の年内取りまとめをめざす。
(9/30)2024年度の介護費用過去最高
厚生労働省は2024年度「介護給付費等実態統計」の結果を公表。費用額は介護予防サービス及び介護サービスあわせて11兆9,381億円(前年比4,242億円増)となり、過去最高となった。また、サービスを一度でも利用したことがある実受給者数は前年より12万1,900人増加の675万4,000人となった。
(10/10)「こども誰でも通園制度」、利用時間は上限月10時間に
こども家庭庁は、生後6か月から3歳未満の未就園児が対象で、親が働いていなくても子どもを預けられる「こども誰でも通園制度」の来年度からの全国実施において、利用時間の上限を月10時間とする方針を示した。
年内に制度案をとりまとめる予定。
東社協トピックス
改めて言葉にするのは難しい“社協”ってなに?~基本要項2025から考える~
9月25日、 東社協地域福祉部地域福祉担当の主催で、第1回区市町村社協運営管理研修が開かれました。都内の区市町村社協職員を対象にした研修で、2025年3月に改定された「社会福祉協議会 基本要項」がテーマとなっています。
当日は社協の変遷とともに、基本要項を基に社協の使命や役割を改めて確認し、それぞれが日常業務と照らし合わせながら、“社協”とは何かを言葉にする時間を過ごしました。参加した職員からは、「自分自身や社協の活動を振り返るきっかけになった」「私たちが変わらず大切にしなければならない考え方や姿勢について問う時間になった」といった声が聞かれ、こうした場を継続していくことや、社協で働く多様な職員と意見交換をし、自分自身の仕事や組織について言葉にしていく重要性が明らかになりました。
(写真)
(イラスト)
(QRコード 社協 基本要項2025)
東社協の本
ご注文は 東社協図書係まで 電話03-3268-7185
(新刊)社会福祉施設・事業者のための規程集~就業規則・関連規程編 様式・資料付~【2025年データ版】
本商品は【データ版】のみの販売です。書籍ではありません。ご注意ください。
本規程集は、労働関係法、育児・介護休業法その他直近の法改正をふまえ、福祉施設・事業所に合わせて作成した、就業規則及び関連する規程例(約50種)、様式、資料集です。就業規則、主な規程にはわかりやすい解説を付け、各施設で加工しやすいようにWordまたはExcel版を付けています。就業規則や各種規程の定期的な見直しに本書をご活用ください。※ご購入手続き後、Eメールでデータのダウンロード方法をお知らせします。
◆発売 2025.09.30
◆定価 6,600円(本体6,000円+税10%)
成年後見制度とは・・・〔改訂第4版〕
本書は、成年後見制度をわかりやすく解説した小冊子です。
制度の背景や理念、あらましをはじめ、「補助」「保佐」「後見」のそれぞれの内容や活用事例、Q&Aをコンパクトにまとめました。
◆規格 A4判・32頁
◆発売 2023.05.31
◆定価 550円(本体500円+税10%)
【DVD】今すぐ役立つ!感染症予防
本DVDは、福祉施設等におけるノロウイルスなどの集団感染を防ぐための手順や対応を、ドラマと特殊映像で分かりやすく説明しています。
◆収録時間 基礎編:約13分30秒 対応編:約13分
◆発売 2017.09.29
◆定価 1,320円(本体1,200円+税10%)
--6【くらし今ひと】
美しい歩き方は“心と体を解放する”
陸上競技選手の経験を生かし、歩くことの大切さを実感してきた馬渕さん。歩き方の指導に至るまでのこと、なぜ歩くことを伝え始めたのか、お話を伺いました。
馬渕 正彦さん(愛称:マブー)
学生時代は陸上競技部に所属し、高校では関東大会、大学ではインカレ(二部)に出場。
40年間、公立中学校の保健体育科教師として勤め、現在も教育に携わりながら、調布市での歩き方教室を中心に「歩き方」の指導を行っている。
二人の恩師との出会いで「歩くこと」の大切さを知る
子どもの頃から足が速い方で、中学校の入学式の日に陸上競技部への入部を決めました。その頃はスポーツといえば野球という時代でしたが、走ることに魅力を感じていました。陸上競技部は大きな大会で上位に入るほどではありませんでしたが、中三のとき、陸上競技を専門とする先生が異動されてきて、わずか半年の間にみんなが急激に成長し、区の大会で総合優勝したのです。そしてリレーでは県大会で5位に。先生の指導はマジックのようでした。
高校でも陸上競技を継続し、「中学の顧問の先生のようになりたい」と思い、保健体育科の教師をめざしました。そして大学の陸上競技部ではコーチから「よい走り方のためにはよい歩き方が先!」と言われ、生まれて初めて歩き方の指導を受けました。その効果もあってインカレ(二部)で入賞。歩くことの大切さを実感しました。
中学校の教員になってからは部活で陸上競技の指導に邁進。よい記録を出させてあげるために時間を忘れて指導をしました。歩いている時のフォームが良くないのに走るのは速いという人に会ったことはありません。歩き方だけでなく立っている姿勢、目線が大切。その指導を何十年も続けてきました。多くの競技会で部員たちの実績は確実に上がりました。
得意分野で人の役に立ちたい
教員生活が終わりに近づいたころ、「自分は社会であまり役に立っていなかったかも」とふと思いました。これからは得意分野で社会貢献をしたいと思い始めた時に、タイミング良く何人かの知り合いから「歩き方を教えてほしい」という依頼があり、指導を開始しました。
それから約10年間、子どもを含め多くの人に指導をしてきました。自分もゆったりとした気持ちになりたいと思いながら、月に1回、調布市で中高年向けに歩き方教室を始めて今に至ります。歩き方の指導は10mあれば可能だし、何より勝負がないのがいいと思っています(笑)。歩き方教室に来られる方には、美しいフォームを身に付けていただけるよう繰り返し指導をしています。参加者用の教科書として、私がこの7月に発刊した「マブーの歩き方教室」の利用も効果を上げています。美しいフォームが身につくことで姿勢が良くなり、筋肉強化にもつながります。長い距離も苦にならないし、人から褒められるし、いいことばかりです。
美しいフォームで歩くことは人生を豊かにする
美しいフォームで歩くと、体がほぐれ、リラックスします。私は肩が凝ったら、散歩して治します。人間にとって歩くことは根源的な動き、それ自体を楽しむことで“心と体を解放する”=リラックスと考えています。日本人は他国に比べて美しい歩き方の人が少ない。だから美しいフォームで歩ける人をもっと育てたいです。
4年前に調布の歩き方教室に初めて来られた当時80歳の方は、高齢者にありがちな、前屈みで歩いていました。教室に通い、美しいフォームを身に付けたことで姿勢が良くなり、84歳になった今、自ら走ることに挑戦するまでになりました。その方は「まだまだやれる」と自信をつけられています。
「いくつになっても、美しいフォームで歩けば人生を豊かにする」という思いで、これからも歩き方の大切さ(美しいフォーム)を伝えていきたいです。
(QRコード 調布の歩き方教室)
以上で、福祉広報2025年11月号を終わります。
