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福祉広報 2025年12月 803号 テキストデータ

【表紙】(写真)
狛江市にある工房兼多目的スペース「PLATHOME 東野川SPACE」。ものづくりに必要な機材が気軽に使えるほか、キッチンが併設されたレンタルスペースではシェアカフェやママ友会などさまざまな目的で利用できます。地域の人たちの「作りたい」「やりたい」が叶う場所。
Photo by:管 洋介  Yosuke Suga

p.2 ●社会福祉NOW
ビジネスケアラーを支えていくために
p.4 ●み~つけた
工房から地域へ。ひらかれた空間が人と人をつなぐ
PLATHOME 東野川SPACE(狛江市)
p.5 ●連載 これからを生きる次世代へ【第3回】
「子ども民生委員」の体験を通じて、地域の中で“生きる力”を育んでほしい
大田区社会福祉法人協議会
p.6 ●Focus on! 今、こんな動きがあります
オール東京でつくる“母子生活支援施設らしさ”
東社協 母子福祉部会
p.7 ●Information
東京の寄附のカタチ/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本
p.8 ●くらし今ひと
助け合いが特別なものではなく、自然に広がる社会へ
山内 康太郎さん


【目次】
1社会福祉NOW
2み~つけた
3連載 これからを生きる次世代へ 第3回
4Focus on! 今、こんな動きがあります
5Information(東京の寄附のカタチ/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本)
6くらし今ひと



--1【社会福祉NOW】
ビジネスケアラーを支えていくために
介護の需要が増す一方で生産年齢人口の減少による人材不足が避けられない状況において、仕事をしながら家族を介護する“ビジネスケアラー”への支援は喫緊の社会課題です。
企業が、そしてわたしたち一人ひとりがこれからできることを2つの取組みから考えます。
10月のとある夜、渋谷にある商業施設で“介護者予備校”が開かれました。対象は介護を始めたばかりの人や介護未経験の人。なかには仕事終わりとみられる人もいて、30代から60代まで幅広い年代の参加者が家族信託や成年後見制度に関する弁護士からの話を真剣に聞いていました。主催は特定非営利活動法人UPTREEです。
「見聞きしたことがある」という経験を
「何も知らないまま介護をするというのは、泳ぎ方を知らなくて溺れている状態だといつも例えています。介護のスイミングスクールってないな、と思って、“介護者予備校”を始めたんです。介護し始めはいろいろ頑張っちゃうのですが、次第に余裕がなくなり、いつ終わるかわからない日々に疲れてきちゃいます。だからわたしたちは、いかに事前に介護について見聞きしたことがあるかが大切だと考えています。事前に知っておくことで、いざ介護に直面したときにどうしようかと悩む時間が短縮されます」とUPTREE代表理事の阿久津美栄子さんはいいます。
UPTREEは2012年から家族介護者支援(ケアラーサポート)やケアラーが集える場の提供を行ってきました。阿久津さんは、活動の始まりについて、「育児と介護のダブルケアをするなかで、自分自身をケアできず体調を崩してしまいました。当時を思い返すと、事前に介護について学ぶきっかけがなく知識がなかったことや介護サービスを使っても部分的にしかわからないことなどが浮き彫りに。これって誰でも陥ることだなと感じ、介護者の支援が必要なのではと思いました」と振り返ります。
企業に期待したい支援とは
2019年頃からはビジネスケアラーの支援として企業内介護者カフェの運営を開始。実際に介護をしている人はもちろん、今後のためにと介護に関心のある人が参加した例もあるそうです。「介護の悩みの7割は、感情の整理がしきれないことに起因すると感じています。企業内カフェでは、同じ職場にいる者同士で悩みや不安を分かち合ったり、経験者から介護における工夫を学んだりすることができます。それにより『自分は一人じゃない』と思えて仕事にも介護にも向き合うことができ、結果的に離職防止にもつながっているのではないでしょうか」と阿久津さんはこれまでの取組みを整理します。社会的にもビジネスケアラーを支える重要性が着目され、事業主側でも制度を設けるなどの取組みにつながることが期待されています。
阿久津さんは、「制度をつくって終わりではなく仕事と介護のバランスをとることが大切だという組織文化が醸成されてほしい、それには経営層の意識改革が重要ではないか」と続けます。
(写真 経験談は“備え”の第一歩です)
(QRコード (特非)UPTREEホームページ)
気負わずに介護について話せるようになれたら
(株)セブン&アイ・ホールディングスは、社員からの声をもとに介護サロンを実施しています。その経緯について、人財本部人財共育部シニアオフィサーの髙木剛さんは次のように話します。「より働きやすい職場づくりをめざし全社的な取組みをすすめていくなかで、社員有志による分科会がいくつか立ち上がりました。そのうちのひとつが多様な働き方や勤務形態を考えていくことを狙いとした“Smile Support”で、2024年度より介護サロンを開始しました。社員の切実な声を聞ける場だと、この取組みの重要性を経営層にも理解していただいています」。
介護サロンは現在月に1回、就業時間内に開催しています。Smile Supportのメンバーで介護サロンの運営を担う山口匠さんは、「現在介護をしている人、今後介護をするかもしれない人、介護が終わった人など参加者の背景はさまざまです。部下から介護に関する相談を受けたときのためにと、上司の立場で参加する人もいます。また対話を大切にするため、定員を6~8名程度に限定しています。個人が抱える悩みや近況をサロンの場で話してもらうことで、参加者同士の有益な情報交換はもちろん、本人にとっても状況の整理ができるようです」と話します。開催後のアンケートでは、『話しづらい介護の悩みや葛藤を聞けてよかった』『サードプレイス的な雰囲気でいい時間だった』などの声が寄せられています。ちなみにUPTREEの阿久津さんを招いて認知症について学ぶ会もあり、『専門家がいると安心します』という感想もあったそうです。「当初は制度の提案につなげることも考えていましたが、不安や悩みを話すだけでも心理的負担の軽減につながることがわかりました」と山口さんは振り返ります。
(写真 SmileSupportメンバー(左から福田さん・山口さん・池田さん・池本さん・藤堂さん・中村さん))
企業としても介護者を支えていけるように
「介護サロンの開催情報は社内全体に発信しています。しかし、それだけだとただ制度をつくったのと同じです。個別に声をかけると『実は気になっていて…』という人もいます」と話すのはSmileSupportメンバーでサロンを運営する池本佐恵子さんです。「まずは介護に関する制度やサービスを知ること。そしてそれらをどのように使うのか、自分や家族にとってよい選択なのか考え方を広げられたらいいなと思います。また、上司や同僚に言いづらいときの相談のしかたなど、経験者談を知ることで何となく感じる後ろめたさが軽減されている人もいます」と、介護サロンによる参加者への効果を話します。
次回以降も気軽に参加してもらえるよう、当日欠席された人には個別で連絡を入れているそう。顔がわかり信頼できる関係が職場で構築されることこそが、“介護をしながら仕事を続けられる”と思えるポイントなのかもしれません。このポイントについて、山口さんも「大企業だとより多くの社員に伝えようとセミナー形式の研修になりがちですが、小規模なサロンだからこそ参加者の安心感や理解につながっていると感じます。そして、経営層や人財本部からの後押しがあって続けられています」と話します。介護の話題は職場で出しづらいのが現状です。サロンを継続し、介護について気軽に相談できる場があることを広めていきたいとのことです。
単独世帯が増加していたり、地域との関係が希薄になり近くに頼れる人がいないという人も増えています。こうした状況をふまえ、池本さんは「介護を家族だけの問題とするのではなく、企業側もサポートをさらに推進することがますます重要になってきますね」といいます。
(写真 和やかな雰囲気のサロン)
2025年4月1日に施行された改正育児・介護休業法*1では、労働者の介護離職防止のため、雇用環境の整備や制度の周知等が事業主に義務づけられました。経済産業省からは経営者向けガイドライン*2が公表されており、事業主による仕事と介護の両立支援の充実が期待されます。それとともに、一人ひとりがちょっとアンテナを立てることで自分らしい仕事と介護のバランスを見つけられるのかもしれません。
*1  育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律(2024年法律第42号)
*2  仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン(経済産業省)



--2【み~つけた】
工房から地域へ。ひらかれた空間が人と人をつなぐ
狛江市 PLATHOME 東野川SPACE
地域の人たちとの出会いから人が集う工房に
東京・狛江市の閑静な住宅街にたたずむ一軒家「PLATHOME 東野川SPACE(以下、プラットホーム)」は、シェアキッチンやコワーキング、イベント等に使える多目的スペースとして地域の人たちにひらかれています。ここを運営する「PLATHOME労働者協同組合*」の共同代表の飯野健一さんは、もともとグッズ制作の会社を運営していました。コロナ禍を機に、工房兼、事務所をこの一軒家に移したのが2021年。飯野さんは「移転した当初は周りに知り合いがいなくて、地元のセミナーやワークショップにたくさん行きました。そこで出会った人たちと話していると、何かやりたい人が多くて。ものづくりに必要な機材は一通りあるから『うちでやってみたら?』と誘ったことがきっかけで、だんだんとここに出入りする人が増えていきました」と当時を振り返ります。そんな中で出会ったのが杠(ゆずりは)千晴さんと石田文華さんです。杠さんは「初めはグッズ制作の仕事を不定期で手伝っていたんですが、いろいろな人たちと出会う中で『こんなことやりたいね』と飯野さんと話すようになりました」と出会いを語ります。石田さんは「子育てがひと段落して働きたいなと思っていた時にSNSでここを知り、なんだか楽しそうだなと思って関わりはじめたのがきっかけです」と懐かしそうに語ります。
地域の“基盤のような場所”になればいい
工房兼、多目的スペースとして地域にひらいてきた一方で、「自分たちがワクワクする」をモットーにイベントも多数企画してきた3人。その代表的な取組みとして、アートや工作などの活動を通じてものづくりを経験できる場「放課後カルチャークラブ」を企画。「メルトクレヨンで風鈴つくり」「レーザー加工機で鉄砲つくり」など、それぞれのジャンルで活躍する講師を呼び、多様な体験ができる場になっています。子どもたちにとって、手を動かしながら自分の好きな事が見つけられ、普段関わることのない大人たちとも出会える場。ここを通じていろいろな道があることを感じてもらえたらと3人は共通の想いを語ります。
飯野さんは、今後について次のように語ります。「ゆるやかな関係の中で、地域の人たちにだんだんと知ってもらえるようになりました。この“ゆるさ”が“つながりやすさ”になっているのかなと実感しています。名前の由来にもあるように、やりたいことが叶う地域の“基盤”であり続けたい」。杠さんは「シェアカフェは2025年に始めたばかり。地域の皆さんと『食を通じたコミュニケーション』を深めていければ」と話します。石田さんは「一人ではできないことも、みんなと一緒なら実現できる、そんなゆるくて温かな場所。地域の皆さんに気軽に使ってほしいです」と話します。
「やってみたい」が叶う場所、プラットホーム。人と人とが関わり合い、地域の新しい可能性をともに紡いでいきます。
* 労働者が組合員として出資し、それぞれの意見を反映して自ら従事することを基本原理とする組織のこと。2022年10月に労働者協同組合法が施行。
PLATHOME 東野川SPACE
場  所:狛江市東野川4-9-11
営業時間:10:00〜17:00(不定休)
(QRコード PLATHOME 東野川SPACE ホームページ)



--3【連載 これからを生きる次世代へ 第3回】
「子ども民生委員」の体験を通じて、地域の中で“生きる力”を育んでほしい
〈今回取組みをお聞きした方〉
(社福)大洋社 理事長 齋藤 弘美さん、常務理事 近藤 真弓さん
大森東地区民生委員児童委員協議会 会長 比戸 二郎さん
(社福)大田区社会福祉協議会 総務課 根本 恵津子さん、地域福祉推進課 山口 忠行さん、後藤 恵美子さん、細尾 侑加さん
しんどい時に打ち明けられる存在があること、他者や地域を気にかけられる人でいること。そうした“生きる力”を子どもたちに身につけてもらいたいと、大田区の社会福祉法人で構成される大田区社会福祉法人協議会(以下、法人協)では「子ども民生委員」の取組みをすすめています。今回は「子ども民生委員」の取組みから、地域だからこそ生み出せる次世代への取組みを考えていきます。

地域における身近な相談相手として、住民や地域のニーズに寄り添う民生児童委員。大田区では民生児童委員の活動を子どもたちが体験する「子ども民生委員」の取組みが2018年からすすめられています。もともと、ひとり親家庭の小中高生を対象に「さまざまな経験を通じて『生きる力』を育んでもらいたい」という思いで動き出した法人協(法人協の中の4つの協力法人)による体験型の学習支援「れいんぼう*」の一環。大人との関わりや体験機会が限られている子どもたちに、地域に頼れる存在がいることや、地域の支え合いの中で生活していることを自然に感じられる経験を生み出せればと子ども民生委員の取組みにつながっていきました。福祉施設、民生児童委員、社会福祉協議会の三者が協働しながら取り組むことで、活動の幅や関係性が広がっているといいます。区内の大森エリアと久が原エリアを中心に、今年度からはコロナ禍の時に規模縮小していた募集も再開しました。
多様な他者、地域と出会う
小学1~6年生が中心の子ども民生委員の任期は1年で、2025年度は19名の子ども民生委員が誕生。委嘱式で民生児童委員や福祉について学んだら、その後は地域のお祭りや街頭募金の活動に参加していきます。10月に開かれた自治会連合会主催の「いつつのわふれあい祭り」では、お祭りを訪れる人たちにパンフレット配布やクイズを通じて民生児童委員の啓発活動に取り組みました。臆せずに一人で話しかけにいく子もいれば、誰かと一緒におそるおそる声をかけてみる子も。民生児童委員等の見守ってくれる大人の存在があることで、子どもたちは安心して活動ができるといいます。また、事前に子どもたちには活動の趣旨や考えてもらいたいことを伝えたり、関係する大人が積極的に声掛けを行ったりするなど、一人ひとりにとって大切な機会になることをめざしています。
取組み当初から関わる(社福)大洋社の近藤真弓さんは「恥ずかしがっていた子も一歩踏み出してみたら気づきや変化が生まれて、この活動が子どもたちの大きな自信につながっていることを実感します。地域の大人たちがこうした機会を生み出していく姿勢が大切では」と振り返ります。4月から担当になった大田区社協の細尾侑加さんも「地域とのつながりが生まれたり、相手の立場になって考える経験をしたり、成長につながる素敵な活動」と見守る一人として思いを明かします。
(写真)
自分を、そして他者や地域を大切にする一人に
コロナ禍も止まることなく、今年で7年目となる子ども民生委員の取組み。立上げ当時を担当した大田区社協の根本恵津子さんは「参加した子が年を重ねていき、街中で活動を目にした時に何か感じられることがあるのではと思います。続いているからこそ、より自分にとっての経験になる」と継続する意義に触れます。また、取組みの継続と、今後は体験の幅や関わる人、そして地域を広げていくことについて皆さんは言及します。
一つの団体ではなく、地域で取り組むからこそ次世代に伝えられるもの。それは自分を見守る存在だったり、多様な人や団体が支え合いながら生きる地域だったり。長く関わる民生児童委員の比戸二郎さんは「道行く知らない人に話しかけること、募金を呼び掛けること、子どもたちにとって一つひとつが成長のきっかけ。安心できる存在に見守られながら、地域の多様な人と交流してもらいたい」と話します。(社福)大洋社の齋藤弘美さんは「子どもたちが大切にされていることを実感しながら、自分自身を大切にする、好きになる経験をしてもらいたい。そして、誰かが用意する未来ではなく、自分たちの将来として地域のことを考えていく一人になってもらえたら」と思いを明かします。手をひかれて参加していた子が、いつのまにか誰かを後押しする存在に。子どもたちが“生きる力”を育んでいくために、地域の多様な人が協働しながら取り組み続けます。
* 4つの社会福祉法人(大洋社、池上長寿園、大田幸陽会、大田区社会福祉協議会)の地域における公益的な取組みとして実施。「学ぶ」「食べる」「動く」「体験」の4つの切り口から多様なプログラムを展開。



--4【Focus on! 今、こんな動きがあります】
オール東京でつくる“母子生活支援施設らしさ”
東京都社会福祉協議会では、「令和7~11年度 東社協中期計画」において“協働”ですすめる5つの「取組みの柱」を設定しています。
今号では、取組みの柱Ⅳ「福祉で働く人と支える組織づくり」に位置づけられた、令和7年度の母子福祉部会の重点取組みについてご紹介します。
東社協 母子福祉部会
(左から)副部会長 横井 義広さん(リフレここのえ 施設長)、部会長 齋藤 弘美さん(大洋社 理事長)、副部会長 岡田 薫さん(目黒区みどりハイム 施設長)
(写真  東社協 母子福祉部会)

母子生活支援施設は、ひとり親であったり離婚を考えていたりする女性が困りごとを抱えている際に、ひと休みして生活を立て直すために子どもと一緒に入居できる集合住宅型の施設です。施設長や職員と関係団体が集まって母子福祉部会の活動をしています。
母子生活支援施設はDV被害者も多く利用するため秘匿性が高く、積極的な情報発信をしづらい傾向があります。また施設数も都内に32のみで、1法人1施設の法人や自治体の中に1か所のみの施設も多くなっています。そのため、法人内で独自に研修を実施することや他法人の情報を得ることが難しく、職員が悩みやつまずきを抱えやすい環境にあります。そのような中、部会では「人材の確保・育成・定着について、部会に設けたすべての委員会で法人・施設の垣根を越えオール東京で取り組むことで、よい情報をシェアし、それぞれの施設が孤立しないように」というねらいで研修・交流等に取り組んでいます。
施設や分野を越えた人材の課題への取組み
研修委員会で実施する育成・定着のための勉強会のほか、従事者会や、心理職などの専門職同士の会議では、職員がグループワークで悩みを共有する時間を設けています。「都内に施設が分散し施設数も少ない中、悩みを話し合って乗り越えていく過程や、それを通じて誇りを持って働ける自分たちのアイデンティティをつくっていくことが、育成・定着に必要です」と副部会長の横井義広さんは話します。また、委員会や部会の活動を順番に各施設の中で行うことで、職員が他施設の状況を知ることができるように工夫されています。「『全施設の施設長が全施設の職員を育てている』という意識を持てたら、東京の母子生活支援施設がレベルアップしていくのでは」と副部会長の岡田薫さんは語ります。
加えて、部会では月1回の施設長会でタイムリーな情報を共有しています。また、より理解を深めるために、乳児部会や児童部会など他の部会と協働で勉強会を開くことも。部会長の齋藤弘美さんは、「母子が地域生活をするうえで女性、障害、保育といった要素がつながっているからこそ、他の部会と一緒に勉強をしたり企画を考えたりしていきたい。職員一人一人がそのつながりを活かす意識を持つことで、孤立防止など地域共生社会に向けて一緒に取り組んでいけます」と話します。
「家族支援」を強みに母と子を多面的に支えていく
正副部会長の皆さんは、改めて施設の存在意義や母子支援のやりがいを次のように語ります。「母子生活支援施設はケアワークだけでなくソーシャルワークの要素も大きいことを学生に知ってもらいたいです」と横井さん。金銭面や就労活動のサポート、子どもが通う学校との連携、さまざまな関係機関との調整や手続きなど、母子の地域生活を支えていく中でソーシャルワークは不可欠です。さらに近年は、施設の多機能化として地域支援も求められており、そのためのコミュニティソーシャルワークも強化されつつあります。
また、母子生活支援施設では、母親を職員が支え、きょうだいとの関係も含めてサポートができます。他の分野にはない、家族を丸ごと支援していく「家族支援」の考え方を大切にすることで、虐待予防やパーマネンシー※の保障など、さらにできることがあるといいます。
齋藤さんは最後に、「母子支援の仕事では人生そのものを考えたり学んだりすることができます。自分も他の人に支えられて生きているからこそ、孤立している人たちが『嬉しい』『美味しい』『楽しい』と思える経験をできたり、未来への希望や夢を持つことのお手伝いができたら、という思いで働いています」と話します。
母子福祉部会では、このように母子生活支援施設での業務やさまざまな活動・役割について丁寧に伝えていき、多様な人がやりがいを持って母子支援の仕事に取り組める環境をこれからもつくっていきます。
※ 永続的に安心できる特定の大人とのつながり
(QRコード 母子福祉部会HP)



--5【Information(東京の寄附のカタチ/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本)】
ともしび募金
東京善意銀行への現金寄附の方法は、銀行振り込み、クレジットカード決済のほか、「ともしび募金」があります。この活動は東京善意銀行の原点の1つです。設立翌年の昭和40年7月にタクシーの中に募金箱を置いたのが始まりで、その後、現在も設置いただいている信用組合や都庁舎、役所等に広がっていきました。昨年度は都内約560カ所に置いた募金箱に合計2,076,442円ものご寄附を賜りました。ぜひ、街で見かけた際はご協力お願いいたします。
(QRコード 東京善意銀行では社会福祉施設等への寄附のご相談を承っております。)

マンスリーニュース 2025.10.26~11.25
ピックアップ
(10/27)ケアマネ、現行の5年ごとの更新制度廃止へ
厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会ではケアマネジャー資格について議論がなされた。現行の5年ごとの更新制度を廃止する案や、受験に必要な実務経験の短縮や、受験資格の対象拡大について方針が示された。2026年の通常国会に関連法案を提出する方針。
(11/13)6府県で「地域限定保育士」の試験実施へ
こども家庭庁は2025年10月に児童福祉法に創設された「地域限定保育士制度」に基づき、6府県が認定を受け、試験の実施が可能になったことを発表。全国で保育士不足が課題とされるなか、特定の地域での保育士確保をめざす。
(11/25)障害福祉サービス、持続可能な制度検討を
厚生労働省は「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」で、この間の障害福祉サービス等の総費用額の大幅な急伸をふまえて、制度の持続可能性の確保に向けた検討の必要性を示した。
急伸の要因として、一人当たりの総費用額の伸びと利用者の増加に言及。

東社協トピックス
● 第74回東京都社会福祉大会のご案内
今年度は、458名41団体に東京都社会福祉協議会会長表彰状・感謝状を贈呈します。
日 時:2025年12月19日(金)14:30~16:00
場 所:東京都庁第一本庁舎 大会議場
主 催:東京都、東京都共同募金会、東京都社会福祉協議会
●「ゆめ応援ファンド」助成金−2026年度募集−
都内におけるボランティアグループ、市民活動団体を対象とした活動資金助成制度です。
助成金額:上限50万円(2026年4月1日以降の支払費用が対象)
申込方法:申請書に必要書類を添付して郵送
募集期間:~2026年1月6日(火)まで*消印有効
問合せ先:東京ボランティア・市民活動センター TEL:03-3235-1171
(QRコード)
● 社協実践フォーラム「“してみたい”からはじまるつながりのカタチ」のご案内
社協の取組みを発信し、地域のみんなでどんな地域を創りたいか、そのために何ができるかを一緒に考えるイベントです。
日 時:2026年1月23日(金)13:30~16:30
方 法:ハイブリッド開催(会場:AP東京八重洲/Zoomミーティング)
対 象:地域活動に興味のある方は誰でも
申 込: 東社協HP内の申込フォーム
問合せ先:地域福祉部 地域福祉担当
(QRコード)

東社協の本
ご注文は 東社協図書係まで  電話03-3268-7185
新刊 改訂版社会福祉法人会計の実務 第2編決算編
令和3年1月に発行された「令和2年版 社会福祉法人会計の実務 第2編 決算編」の改訂版です。前版以降の社会福祉法人会計基準等の改正を取り込み、令和7年3月までの会計関係行政指導通知の改正等を反映した内容となっています。改正された社会福祉法においては、決算承認手続き等が詳細に規定され、法人情報及び決算情報の公表義務等にも対応する会計の実務は複雑になったため、具体的に実務をサポートできる内容とすることを目標に作成しました。
◆規格 A4判・440頁
◆発売 2025.12.1
◆定価 5,500円(本体5,000円+税10%)
(写真 改訂版社会福祉法人会計の実務 第2編決算編 表紙)
新刊 ふくしのしごとがわかる本2026年版 福祉の仕事と就職活動ガイド
主に福祉職場への就職をめざしている方を対象に、福祉の仕事にはどのようなものがあり、仕事をする上でどのような資格や要件が必要なのか、就職活動をどのようにすすめたら良いのかについてまとめたものです。分野ごとの福祉の仕事の内容、福祉の資格や福祉業界の求人の現状や傾向、就職活動の方法、就職に関わる情報源などを紹介しています。
◆規格 B5判・116頁
◆発売 2025.11.10
◆定価 1,100円(本体1,000円+税10%)
保育園における働き方改革と保育業務の実態 ~調査報告書~
東社協保育部会で会員園の現場職員を対象に保育士業務の実態を調査し、その結果をまとめ、提言に結びつけました。
◆規格 A4判・142頁
◆発売 2022.11.02
◆定価 990円(本体900円+税10%)



--6【くらし今ひと】
助け合いが特別なものではなく、自然に広がる社会へ
子どもの時に触れた価値観や経験をもとに、中高生にボランティアを身近なものとして捉えてもらいたいと活動してきた山内さん。そのはじまりや取組みへの思いについて、お話を伺いました。
山内 康太郎さん
都内の高校に通う高校2年生。学生団体「ボランティアプレイス」の代表をしながら、個人でも地元のボランティア活動に参加している。好きな食べ物は唐揚げ。
親の仕事で幼少期は地域を転々としていました。小5から中2まで米国のワシントンで過ごしたのですが、コロナ禍で思い通りの生活がなかなか送れず、近所では抗議活動や暴動も起きていたりして、社会的な混乱を肌で感じる日々でした。今思えばそこで自分は変わったなと思います。渡米前とは触れる情報も環境も違って、さまざまな体験を通して、価値観も広がって。“ボランティア”との出会いもまさにその時でした。現地の友人に声をかけられて公園で掃除をしたり、オンラインで小学生に勉強を教えたり、いわば友人と遊びに行くような感覚。学校もボランティアについて情報提供や制度化といった環境が整備されていて、そうした中で過ごした自分にとっては“ボランティア”は特別ではない、身近な存在でした。
誰かの第一歩が生まれる場所に
帰国後は地元の中学校に戻り、コロナ禍も後押ししてすんなり馴染めました。そんな中学生活の最後に仲の良い友人と電車を乗り継ぐ旅に出たのですが、確か群馬あたりを揺られていた時だったはず(笑)。「俺たちで何かやってみない?」という話になって、起業とかアイデアがいろいろと出た中で、最終的に自分の提案にみんなが賛同してくれました。それが2024年5月に設立した学生団体「ボランティアプレイス(以下、ボラプレ)」のはじまりなんですけど。当時中学生だった自分が地域でボランティアをやろうにも情報が少なかったり、受入れにハードルがあったりして、ボランティアに対する捉え方や状況が日本とアメリカで大きく異なることにギャップを感じていました。高校生の自分たちだからこそ、そこに対して何かできるのではと始めてみて一年半が経ち、現在は都内をはじめ全国から集まった高校生26名で運営しています。
活動当初は都内のボランティアセンターに問い合わせたボランティア情報を自分たちの言葉で同世代向けにSNSで発信したり、自分たちが実際に参加した活動を綴ったりと情報発信に注力していました。次第に、ボランティアをやったことがない人が情報に行き着くハードルが高いことを実感し、“ボランティアへの第一歩”を生み出せるようなイベント企画にも取り組んでいます。都内社協や同世代の他団体とコラボした企画も実施していて、来年春には都内で大規模なゴミ拾いイベントも計画しています。中高生目線で参加しやすい日程や規模、気軽で楽しい企画を意識しているほか、団体の代表として、運営メンバーがまずは楽しみ、文化祭の準備をしているような関係性で常にいられることを心がけています。
(写真 企画のテーマや実施場所はさまざまで、最近だと防災をテーマにした勉強会も。その中でもクリーンウォークは誰でも参加しやすく、会話が自然と生まれるので、大切にしている取組み。)
若者を起点に助け合いが広がる社会を思い描いて
一年半取り組んでみて、活動分野や地域を特定しないがゆえの壁にぶちあたることも多く、団体を継続する難しさを感じています。とりわけ運営資金の確保や、学校生活と両立した運営体制の構築が喫緊の課題で、応援や期待をしてくれる人がいる中、その思いに応えていきたいと悩みまくっているところです。
これまでの活動を通じて、同じような思いで取り組む同世代や地域の人に出会いました。同時に、国や地域によって社会貢献や市民活動に対する意識の差があることも感じています。多くの社会問題に直面している日本の現状を考えると、若者からもっと助け合いの風潮が広がればいいなと思っています。そんな助け合いのマインドが広がることのきっかけに「ボラプレ」がなれたらなんて。自分自身も多様な世界に触れ、何事も経験することを大切に、自分ができることを続けていきたいです。
(QRコード ボラプレHPではイベントやボランティア情報のほか団体への寄附も随時受付中。)

以上で、福祉広報2025年12月号を終わります。

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