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東京都社会福祉協議会

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福祉広報 2026年2月 805号 テキストデータ

【表紙】(写真)
「TACHIBANA TERMINAL」はB型事業所、ホステル、多目的スペースを設けた多機能福祉拠点。B型事業所の利用者が就労支援の一環としてホステルを運営する、全国でもまれな施設です。福祉・観光・まち・文化をつなぎ、障害のある人のくらしが豊かになる「まちまるごと福祉」をめざして。
Photo by:管 洋介  Yosuke Suga


p.2 ●社会福祉NOW
「知ること」からはじめる、誰もが働きやすい職場づくり
―外国人材・LGBTQを学ぶ研修より―

p.4 ●み~つけた
福祉と観光・まち・文化をつなぐ今までにない多機能福祉施設 
TACHIBANA TERMINAL(墨田区)
p.5 ●連載 これからを生きる次世代へ【第5回】
応えあう中で生まれる安心 ~広がる「大人としゃべり場」
西川 正さん

p.6 ●Focus on! 今、こんな動きがあります
「女性支援法」のもと、官民が協働する支援体制を
東社協 女性支援部会

p.7 ●Information
フクシロウレター/マンスリーニュース/ 東社協の本/ 東社協トピックス

p.8 ●くらし今ひと
子どもたちが「生きていいんだ」と思える社会へ
認定NPO法人 第3の家族 理事長 奥村 春香さん

 

【目次】

1社会福祉NOW
2み~つけた
3連載 これからを生きる次世代へ 第5回
4Focus on! 今、こんな動きがあります
5Information(フクシロウレター/マンスリーニュース/ 東社協の本/ 東社協トピックス)
6くらし今ひと

 


--1【社会福祉NOW】
「知ること」からはじめる、誰もが働きやすい職場づくり
― 外国人材・LGBTQを学ぶ研修より ―

今年度、東京都福祉人材センター研修室(以下、研修室)では、「多様な人材が働きやすい職場づくり研修~知ることからはじめよう外国人、LGBTQのこと~」(東京都委託事業)を実施しました。
「誰もが働きやすい職場」とは何か、福祉施設・事業所における課題や受講者の声から見えてきたものをお伝えします。


研修実施の背景とねらい
近年、職場のダイバーシティ推進に向けたさまざまな取組みが広がっています。特に、福祉・介護職場では従前より人材不足が大きな課題となっており、多様な人材を確保するとともに職員の定着率を高めることが喫緊の課題となっています。
こうした状況を踏まえ、「令和7~11年度 東社協中期計画」で掲げている取組みの柱の一つ、『福祉で働く人と支える組織づくり』に基づき、本研修を企画しました。同計画では、その具体的な方向性として『多様な福祉人材の確保・育成・定着支援』を示しています。なお、本研修は、毎年研修室にて、時流や現場ニーズに応じて職員の定着に資するテーマを設定する「採用力強化等研修(東京都委託事業)」を活用して実施しました。
本研修では、多様な人材の中でも、外国人材とLGBTQの二つに焦点を当てました。その理由の一つは、福祉・介護現場において、外国人職員の採用がすすむ一方で、文化や言語、価値観の違いへの戸惑いや対応の難しさが現場から多く聞かれているためです。LGBTQの当事者は、日本国内に約10%いると言われているものの、見た目や言動だけではわかりにくいことが多く、職場ではその存在を前提とした配慮がなされにくい現状があります。そうしたことから当事者の働きづらさや心理的負担につながることが指摘されています。
実はどちらも身近なテーマである一方、正しい知識習得や理解促進の機会が十分とは言えない現状がある中で、無意識の思い込みや何気ない言動が、当事者の働きづらさにつながってしまうケースも少なくありません。
また、今回の研修は、知識がないことを理由に受講のハードルを感じてほしくないという思いから、研修のサブタイトルを「知ることからはじめよう」としました。まずは気軽に参加し、多様性について知ることの第一歩としていただきたいと考えました。

研修内容の紹介
第1部は「外国人介護従事者の受け入れについて」として、一般社団法人  kaigoと日本語つむぎの会  代表理事の羽生隆司さんから制度や受け入れの背景・全体像を、また同会理事の中野玲子さんからは現場での具体的な課題や多文化共生等の視点での講義をいただきました。
羽生さんは、施設長を務めていた特別養護老人ホームにおいて、2005年に初めて外国人材を採用して以来、約20年間で12か国に及ぶ外国人職員の受け入れに携わってきました。定年退職後には「kaigoと日本語つむぎの会」を設立し、現在は介護に特化した日本語教育支援などに取り組んでいます。講義では、人口動態や在留資格制度の解説を通して、外国人介護職員受け入れの背景を理解するとともに、採用から就労・生活支援、マネジメントのポイントまで、近年の外国人介護従事者の受け入れを取り巻く制度や環境等の概要について学びました。
続いて、同会や地域で外国人住民とともに多文化共生活動を行っている中野さんに講義を引き継ぎました。中野さんは自身の経験も踏まえて「外国人材が働きやすい職場とは」をテーマに、外国人材を採用した福祉職場で生じやすい「ことばの壁」だけでなく、宗教・制度・文化や価値観の違いなど、「ことば以外の壁」についても取り上げ、現場での具体的な課題と工夫を共有しました。
第2部では、「多様な性ってなんだろう」として、認定NPO法人ReBit(リビット)キャリア事業部マネージャーの三戸花菜子さんに講義をいただきました。ReBitは教育・キャリア事業等を通じて、LGBTQもありのままで未来を選べる社会をめざすことを目的とした認定NPO法人です。
講義の前半では、多様な性とは何か、LGBTQの基礎的な知識や用語を中心とした解説がありました。後半では、職場で働く中での困りごとや嬉しかった経験等について当事者の方々のインタビュー映像を通して、具体的な事例が紹介されました。それらを踏まえ、誰もが安心して働ける職場づくりのために、組織として取り組めることや、今日から一人ひとりが実践できることについての提案があり、受講者が自身の職場に置き換えて考える機会となりました。

「知る」ことから、次の一歩へ
本研修は108事業所、158名の方に受講していただきました(種別割合:障害:38.6%、高齢:36.1%、保育・児童:13.9%、その他:11.4%)。
受講者の参加動機では、「外国人職員の増加に伴い、言葉や文化の違いへの対応を学びたかった」「来年度から特定技能の受け入れを予定しており、制度だけでなく現場での課題を事前に学びたかった」といった声が寄せられ、外国人職員の採用がすすむ中で、言語や文化の違いへの対応に悩み、現場で役立つ具体的なヒントを求めていた様子がうかがえました。また、LGBTQについては「言葉は知っていたが、具体的な職場での配慮について学ぶ機会がなかった」「職場のハラスメント研修では触れたこともあり、自分では理解があるつもりだったが、曖昧に捉えていた部分が多く、改めて学ぶ必要性を感じた」との声が多く、自身の意識を見直す目的で参加した受講者も少なくありませんでした。
また「受講後、自分の考え方・意識が変わったこと」を尋ねると、「自分の常識を一旦“置く”ことの大切さに気づいた」等の前向きな声とともに、「実際に現場で対応できるか不安がある」といった慎重な意見も聞かれました。「多様な人材が働きやすい職場づくり」は、一度の研修で完結するものではありません。しかし、「知ること」をきっかけに、日々の関わり方を少しずつ見直していくことが、誰もが安心・安全に働ける職場環境づくりの土台となります。
また、多様な人材は、今回焦点を当てた外国人材やLGBTQに限られるものではありません。誰かのための配慮や工夫は、結果として、すべての人にとって働きやすい職場づくりへとつながっていきます。
研修室では、今後も『福祉で働く人と支える組織づくり』に向けて、現場の声に寄り添いながら、実践につながる研修を企画・実施していきます。それらの研修が、職員一人ひとりのやりがいや安心して働き続けられる職場づくりの第一歩となることを願っています。

受講者から寄せられた声より(抜粋)
●日本のやり方に合わせてもらうことばかり考えていましたが、相手の文化や背景を知り、相互理解を深めることが大切だと学びました。
●LGBTQの話は思っていた以上に身近で、表明できない人も多いと知り、日頃の言動を振り返るきっかけになりました。
●『彼女・彼氏』と何気なく使っていた言葉が、誰かを悩ませる可能性があると初めて意識しました。言葉選びを見直したいと思います。
●違いを特別視するのではなく、一度自分の常識を“置いて”相手と向き合うことが、働きやすい職場づくりの第一歩だと感じました。
●実際に現場で対応できるかを考えると不安もあります。ここからが大事だと感じています。

(QRコード 東社協研修受付システム「けんとくん」はこちらから)
(QRコード Xで研修情報、研修室職員のつぶやきを発信中!)


--2【み~つけた】
福祉と観光・まち・文化をつなぐ今までにない多機能福祉施設
墨田区 TACHIBANA TERMINAL

B型事業所の利用者が働くホテル
下町の情緒が今もなお残る墨田区京島。ここの「キラキラ橘商店街」に、2025年10月、就労継続支援B型事業所「旅のワンダ」とホステル「1つの風景」、多目的スペースを設けた多機能福祉拠点「TACHIBANA TERMINAL」がオープンしました。「福祉を起点に、観光・まち・文化をつなぐ」ことをめざし、障害者施設で宿泊事業を展開しているのが大きな特徴です。きっかけは運営母体である日常福祉合同会社共同代表兼、「旅のワンダ」施設長の堀直人さんがゲストハウスを運営していた経験から。堀さんは宿泊業のタスクとB型事業所の生産活動に親和性があると感じていたそうです。「宿泊業はタイムスケジュール通りにすすむシングルタスクなので訓練がしやすく、かつ希少性も鑑みて、宿泊業をメインにしたB型事業所をつくろうと考えました」と背景を話してくれました。
例えば、身体に障害がある人ならパソコンでの予約管理、人と接することが好きな人はチェックイン業務、ルーチン作業が向いている人は掃除など、利用者が障害の特性に合わせてさまざまな役割を担いながらホステルを運営しています。
サービス管理責任者の中村隆幸さんは、「最初は『この作業内容はちょっと難しいかな』と思っていた方でも実際に携わってもらったら、予想以上の対応をしてくれたことがありました。可能性は日々変わっていくし、職員側はそれを見落とさないでいようと思いました」と話します。支援員の高山翔伍さんは、「始まったばかりなので自分たちで場をつくっている感覚があります。そのおかげで利用者の新しい一面を知れますし、利用者の魅力をどう引き出せばいいか考えるきっかけにもなっています」と手ごたえを語ります。支援員の滝大雅さんは「利用者からは『雰囲気がいい』といってもらえています。施設の雰囲気や職員の空気感をいいといってもらえるのはとても嬉しいです」とそれぞれ話します。

福祉のまちづくりをここから発信していく
「TACHIBANA TERMINAL」全体の敷地は400㎡と広大で、現在はその半分ほどしか使用されていません。堀さんは、はじめからすべてが設計された建物にしたくなかったといいます。「利用者にとって安心できる場所でありつつも、望めばいろいろな人と交流ができる場所でありたいと思い、あえて“余白”のある場所を残しています。実はこの場所でクラフトビール工房を作ろうと構想中です」と今後の展望を話してくれました。最後に堀さんは「“まち”という全体を見た時、B型事業所だけでは障害がある人の生活を支えきれません。一人ひとりの困り事を見ていって、時には福祉の枠にとどまらない、解決のための活動をする。そんな“まちまるごと福祉”の拠点のような存在になりたいですし、それが結果的にまちを良くしていくアプローチになることが理想です」と想いを語ってくれました。
これからも「TACHIBANA TERMINAL」は、地域の福祉を豊かにするための活動を展開していきます。

TACHIBANA TERMINAL
場所:墨田区京島 3-23-11
問合せ先:03-4400-8770
(QRコード TACHIBANA TERMINALホームページ)

 


--3【連載 これからを生きる次世代へ 第5回】
応え合う中で生まれる安心~広がる「大人としゃべり場」

西川 正さん
NPO法人ハンズオン埼玉副代表理事。岡山県真庭市立中央図書館長。「おとうさんのヤキイモタイム」キャンペーンなどコミュニティを育むためのさまざまなプロジェクトを提案してきた。大学等で非常勤講師。著書に『あそびの生まれる時〜「お客様」時代の地域活動コーディネーション』、『まちを耕す トークフォークダンスで語ろう』(ころから)等。

(写真)

子どもと大人が向き合って1対1で話す「大人としゃべり場」。いま、全国に広がりつつあります。わずかな時間にもかかわらず、参加した子どもの表情がみるみる豊かになったり。目の前の大人に話しを聞いてもらう場は子どもたちにいったい何を生み出すのか―。「大人としゃべり場」のファシリテーターでもあり、その意義を発信している西川正さんにお聞きしました。


2人1組で向き合い、お題に応じて1分ずつ話したら、フォークダンスのように席をずらしてまた新たな人と話す「トークフォークダンス」。ペンも紙も不要、人が集まれば始めることができます。初対面でも、立場が違っても、ひとりの人間として対等に話ができる、出会えるのがこのワークショップの最大の魅力。主に中高生と大人とでトークフォークダンス行うことを「大人としゃべり場」といいます。「年齢や肩書きに関係なく、自分の言葉で自由に語ることができる。この特徴(強み)が最大限に発揮されるのが『大人としゃべり場』です」と西川さん。PTAや地域の発案で場が開かれており、小学生と大人50人が輪になることもあれば、高校生と大人200人が向き合うことも。都内では品川区の複数の中学校で実施されています。

“応え”が言葉を生み出す
急に出されたお題にわずかな時間で答えることを求められるがゆえに、大人も子どもも思わず本音が出てしまうところに取組みの面白さがあるといいます。一方で、子どもと大人という普通なら力の差が生まれやすいなかでやりとりが行われるからこそ参加者が安心していられる場づくりが、大事なポイントになります。「無理に話さなくてもいい」「相手の言うことを否定しない」といったグランドルールを設け、会の最初に確認をします。ファシリテーターから発せれられる「質問」も、安心して誰もが話せるものにするなどさまざまな工夫が必要になります。例えば、家族に関することは、中高生に聞くことはできません。そもそもさまざまな家族があり、子どもたちがどう感じているかは最もセンシティブなことだからです。
西川さんはこれまで「教室ではしゃべらない子がこの場だとしゃべっていました」と担任の先生がとても驚かれている場面に何度も出会ってきたそうです。「自分の発言に対して良い悪いを評価せず、ただ自分の話を聞いてくれる大人が目の前にいる。あらかじめ決められた〝答え(正答)〞ではなく、自分の声に“応え”てくれる。言葉にならなくても考えている、その姿を受け止めてくれる。そんな大人の『聞く耳』が安心を生み出し、思わず話してしまうのではないでしょうか」と西川さんはいいます。実施後のアンケートでは子どもも大人もほぼ100%「もう1回やりたい」「またやってもいいかも」という声が聞かれています。

(写真 出典:『まちを耕す トークフォークダンスで語ろう』(ころから))

多様な大人との出会いを通じて、安心を届けたい
参加する大人は、立場や経験、歩んできた道のりが一人ひとり異なります。「子どもの頃に夢はありましたか。それはどうなりましたか?」という質問では、叶った人もなかにはいますが、ほとんどの人は叶っていないことに子どもたちは驚くそうです。西川さんは「子どもたちはいつも何者かになるように求められています。また苦手を克服しなければならないといつも言われています。それゆえ『立派ではない』大人の素直な姿に出会うことで、少し安心するようです。こんな風に固定的な大人のイメージが揺れるところが面白いのです」といいます。
また「誰でも苦手なことはあります。あなたの苦手なことはなんですか?」という質問には、大人も自分の苦手なことをちょっと恥ずかしそうに話してくれるとか。「誰しも苦手なものがあるまま大人になっていますよね。苦手なことは誰かに手伝ってもらうとか、社会は色々なやり方ができるってことを感じてもらえたらなと願っています。あんまり心配しなくても大丈夫だよって」と西川さんはいいます。そして、大人としゃべり場は、教育活動の一環として実施されますが、このことについても次のような思いを話してくれました。「コミュニケーション能力をつけなくてはとよくいいますが、練習したところでつくものでしょうか。結局、いろいろな人と話すしかないのですよね。それにはまず、人と話して楽しかったという経験が必要です。そこからもっといろいろな人と話してみたい、という気持ちが生まれてくる。大人としゃべり場は、そんな時間であってほしい」。
子どもたちは、家と学校が生活のほとんどを占め、出会う大人は限られています。「大人としゃべり場」のような、安心できる空間で多様な大人と話した、それが楽しかったという経験は、今を生きる子どもたちにとってとても大切なのではないでしょうか。

(QRコード トークフォークダンスや「大人としゃべり場」の魅力が一冊につまった書籍はQRから)

 


--4【Focus on! 今、こんな動きがあります】
「女性支援法」のもと、官民が協働する支援体制を
東社協 女性支援部会

(写真)

東社協中期計画の取組みの柱Ⅱ「包括的支援の体制づくり」に基づき、女性支援部会により開催された「都内女性支援関係者意見交換会」についてお伝えします。

都内女性自立支援施設5施設からなる「女性支援部会」は、売春防止法に基づく「保護・更生」を目的とした公的な女性支援の在り方を変えるべく、長年に渡り当事者に寄り添う支援と支援現場からのソーシャルアクションを重ねてきました。その声が「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(以下、「女性支援法」)」の成立につながり、2024年4月に施行されています。「困難な問題を抱える女性」は、女性であることにより、性暴力や性的虐待、性的搾取などの性的な被害を受け、身体的・心理的外傷や、偏見・差別等の経験に起因する孤立・生きづらさ等を抱えています。当事者の侵害された人権を回復し、その人らしい日常生活を取り戻すための包括的で切れ目ない支援が必要です。
今回、5回目となる「都内女性支援関係者意見交換会」は、東京都女性相談支援センターや区市の女性相談支援員、民間の支援団体の参加を得て、法施行3年後の見直しに向け、改めて支援現場から現状や課題を振り返り、発信していく場として2025年11月に開催されました。

当事者を真ん中に、垣根を超えた連携を
まず、東京都女性相談支援センターから、2024年秋に開始したSNS相談が、相談できる場所やシェルター等を知らなかった女性の支援につながる入り口となっている状況や、一時保護所を経ずに女性自立支援施設へ直接入所できる「プレ入所方式(※1)」の実績等が報告されました。
次に区市の女性相談支援員から、基本計画の策定状況や支援調整会議について共有がありました。女性支援法では、区市町村に支援の責務があることがはじめて規定されています。報告では法施行による成果として、守秘義務がかかる個別ケースの支援調整会議が、庁内をはじめ医療や住まいなどの多様な関係機関との連携による支援や、本人が参加することで自己決定を尊重した支援につながっていることが挙げられました。そして、今後さらに連携を確かなものとするため、地域福祉計画や重層的支援体制整備事業の実施計画に「困難を抱える女性の支援」を盛り込む必要性が提起されました。加えて、支援を必要とする女性の多くは自らを責め相談をためらう傾向にあり、「窓口につながっているケースは氷山の一角」「アウトリーチを通して当事者とつながる民間団体との連携が欠かせない」と、官民協働の必要性が示されました。
また、女性自立支援施設いずみ寮の横田千代子さんは、「女性の福祉」「人権の尊重や擁護」といった新たな基本理念のもと、「困難な問題を抱える女性」の定義に「性的な被害」という言葉が入ったことの意義を強調しました。その上で「私たちは女性支援法を実践に活かすことができているのか」を改めて問いかけ、当事者を真ん中にした垣根を超えた連携や、民間団体との協働をさらにすすめていくことの重要性を訴えました。

早期につながり、被害からの回復を中長期に支える
さらに横田さんは、「施設における通所型支援モデル事業(※2)」を紹介しながら、被害を未然に防ぐために、地域の中で女性の居場所づくりに取り組む必要性や、中長期に被害からの回復支援ができる女性自立支援施設の活用を呼びかけました。
東京都の若年被害女性等支援事業に取り組む民間の4団体からは、繁華街でのアウトリーチ活動や、ゆるやかで安心できる居場所やシェルターの提供など、民間性を活かした取組みの共有や、改めて加害者を生み出す社会のありようなどが指摘されました。また、当事者女性の若年化がすすんでいること、自傷や希死念慮のある人が多く、精神疾患や軽度の知的障害を抱えているなど課題が複合的な状態にあることが示され、「新たな連携が急務」と、さらなる協働が呼びかけられました。
女性支援部会では、法施行3年後の見直しを見据え、これからも官民による連携を深め、新たな協働により、困難を抱える女性一人ひとりの「生きる」を支えます。

※1 女性自立支援施設を利用しやすくするため、施設見学・一時保護委託を経て本入所するしくみ。2022年に試行、現在は都の基本計画に位置づけられている。
※2 女性自立支援施設において、女性の多様な居場所を確保し、自立支援を図る事業。都内では2025年度は2施設で実施、2026年度にはさらに2施設での実施を予定。
(QRコード 女性支援部会ページ)

 


--5【Information(フクシロウレター/マンスリーニュース/ 東社協の本/ 東社協トピックス)】

「福祉人材確保への取組み」フクシロウレター

東社協のネットワークを活かした就職イベントを開催しています
東京都福祉人材センターでは、福祉の仕事に関心を持っていただくためのセミナーや相談会を都内各地で開催しています。
「社会的養護施設のお仕事 合同就職説明会(2/18)」、「社協の仕事 ミニセミナー(2/27)」では、 東社協の会員施設・社協のご協力のもと、現場職員から仕事の魅力を発信していただく企画を予定しています。 東社協のネットワークを活かした取組みに今後もご期待ください。
(チラシ)
(QRコード 東京都福祉人材センター、東京都保育人材・保育所支援センターの取組みやイベント情報については、随時ホームページでお知らせをしております。)
(イラスト 「フクシロウ」)


マンスリーニュース 2025.12.26~2026.1.25
ピックアップ
(12/26)内閣府「更生保護制度に関する世論調査(速報値)」を公表
全国の18歳以上3,000人を対象に実施された「更生保護制度に関する調査」の結果によると、更生保護に携わる民間協力者や団体についての認知度について、保護司を知っている人は全体の66.8%、更生保護施設を知っている人は44.7%であった。 いずれの数字も平成30年9月調査よりも認知度が上がった。「いずれも知らない」は18.4%だった。

(12/26)東京都、特別養護老人ホームの入所申込者減少
都が発表した「特別養護老人ホームの入所申込者の状況に関する調査」によると、在宅・要介護3以上でかつ入所の優先度が高い申込者は2,888人で前回調査から約4%減少した。特別養護老人ホームの整備や特定施設の開設がすすみ、施設・居住系サービスの選択肢が増えたこと等が背景にある。

(1/16)介護報酬臨時改定、処遇改善加算の拡充内容が明らかに
16日に開かれた社会保障審議会介護給付費分科会において、厚生労働省は26年6月に行う臨時介護報酬改定における「処遇改善加算」の拡充内容について説明。加算の対象をこれまでの介護職員から、訪問介護やケアマネジメント等介護従事者全体にまで拡大するほか、生産性向上や協働化に取り組む事業所には上乗せ措置を講じる。


東社協の本
ご注文は 東社協図書係まで  電話03-3268-7185

生活相談員のためのショートステイマニュアル 〔改定版〕
相談員や多職種の方々にもっとショートステイを理解してほしいと思い、マニュアル本としてまとめました。ショートステイにかかわる相談員が当然知っていなければいけない基本的な知識や、リスクマネジメントの視点などを掲載。振り返りとしても活用いただけます。
◆規格 A4判・110頁
◆発売 2015.06.15 
◆定価 1,430円(本体1,300円+税10%)

介護施設のためのキャリアパスのつくり方・動かし方(CD-ROM付き)
本書では、キャリアパスモデル規程を実行可能なものとして策定するために何が必要なのか、何をすべきか、何ができるか等、具体的な解説を加え、詳細な事例を掲載しています。また、キャリアパス制度に必要な帳票類をCD-ROMに収録しています。
◆規格 A4判・88頁
◆発売 2017.02.17
◆定価 1,540円(本体1,400円+税10%)

改正社会福祉法対応のための規程集 第2弾(CD-ROM付き)
理事・監事などの選任、理事長・理事会、監事等の機能、定款細則など改正社会福祉法に対応しております。社会福祉法人の活動の一助に。
◆規格 A4判・290頁
◆発売 2017.03.08
◆定価 3,300円(本体3,000円+税10%)


東社協トピックス
企画担当ではさまざまな媒体で福祉に関する情報をお届けしています!
〇メールマガジンを毎週金曜日に配信しています。
東社協の最新情報に加え、国や東京都の福祉に関わる情報もあわせて掲載しています。1週間単位での情報収集にぜひご活用ください。

(QRコード)

〇「ふくし実践事例ポータルサイト」では、福祉施設や事業所、区市町村社会福祉協議会、地域住民による福祉に関わる実践事例等を発信しています。
地域課題や多様な主体による取組みを知るツールに、また新たな取組みのきっかけになればと思います。

(QRコード)

 


--6【くらし今ひと】
子どもたちが「生きていいんだ」と思える社会へ

大学在学中に、匿名・返信なしで悩みを投稿できる掲示板「gedokun(ゲドクン)」を開発した奥村春香さん。活動に至るまでの背景や若者に対する想いなどについてお話をお聞きしました。

認定NPO法人 第3の家族 理事長 奥村 春香さん
弟の死をきっかけに認定NPO法人「第3の家族」を設立し、匿名掲示板「gedokun」をはじめ各種イベントも運営する。趣味はアートとロック。

弟の自死がきっかけになった匿名掲示板
私が大学2年生の時に弟が自死しました。私の家庭は教育に厳しく、大学受験を迎えるころにはさらにエスカレートし、次第に衝突が増えていきました。親が望む進路にはすすまなかった私に代わり、その期待や理想が弟に向くようになったことが要因かもしれません。しばらくはショックで何もできませんでした。次第に、「私や弟のように家庭環境に悩んでいる子どもたちのために何かできないか」と考え始め、もともとデザインやものづくりが好きだったこともあり、大学3年生のころに試しにつくったのが匿名のコミュニティサイト「gedokun」です。

子どもたちのゆらいだ気持ちを受け止める場
リリースしてしばらくは一般企業に勤めながら「gedokun」を運営していたのですが、口コミやSNSなどでどんどん広がっていき、一気に3,000人までユーザー数が増えていきました。家庭環境に悩む子どもたちがこんなにも多いのかと驚き、次第に「もっとやらないと」と使命感のようなものを感じるようになりました。また、あるユーザーから「こういう場所をつくってくれてありがとう」という言葉をもらったことも後押しになり、勤めていた一般企業を退職し、「認定NPO法人第3の家族」を立ち上げました。
「gedokun」を立ち上げて4年が経ち、今では月間のアクティブユーザー数が8,000人を超えました。ユーザーは中学生を中心に小学生から大学生までがほとんどです。投稿にはすべて目を通していて、多いのが家庭内不和、きょうだい差別、LGBTQ、精神疾患関連です。「gedokun」は完全匿名で、返信機能はないですが、「わかる」「エール」などの励ましボタンがあるので、同じ悩みを抱えた人たちとゆるくつながることができます。話を聞いてくれる人がいるだけでも、少しは気が楽になって、子どもたちに「明日も生きてみるか」と思ってもらえるような場所でありたいと思っています。

(写真)

“第3の家族”として寄り添い続けたい
投稿を見て、どのケースも共通していえるのは「自分を責めている」ということ。「自分はできない子だ」「死にたい」と思ってしまう若者が増えてきている印象があります。これは、子どもだけの問題ではなく、親世代にも立ち止まって考えてみてほしいと思います。核家族化や共働き率の増加で親は毎日忙しく「親が頑張りすぎなきゃいけない社会」じゃないですか。「いい親でいないと」「レールに乗らないと幸せになれない」と思っている親は多いと思います。そのしわ寄せを一手に引き受けてしまっているのが現代の子どもじゃないでしょうか。子どもが安心して成長するためには、まず大人の皆さんが幸せであることが大切なんじゃないかなと思います。最終的には、「大人になる前に死にたい社会」ではなく「子どもたちが生きたいと思える社会」になればいいですね。
子どもたちが家族や友人といった「第1の家族」「第2の家族」の中で自分自身を肯定し、「第3の家族」としても安心して居場所を見つけられるような機能やサービスをこれからも考え続けていきたいです。


(QRコード 認定NPO法人第3の家族)
(QRコード gedokun)


以上で、福祉広報2026年2月号を終わります。

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