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つなげる笑顔のかけ橋

東京都社会福祉協議会

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福祉広報 2026年4月 807号 テキストデータ

【表紙】(写真)
杉並区阿佐谷にある「まちサロンおきやんち」。多様な背景を持つ地域住民の相互交流の場です。毎週水曜日には駄菓子と居場所をかけあわせた「みと商店」が開かれ、近所の子どもたちがたくさん詰めかけました。

p.2 ●社会福祉NOW
高齢者や障害者の「行きたい」に応える移動支援
p.4 ●み~つけた
きものを通じて子どもや女性に笑顔になってもらいたい
NPO法人きもの笑福(調布市)
p.5 ●連載 これからを生きる次世代へ【最終回】
子どもや若者と“仲間”として出会う地域社会
NPO法人全国こども福祉センター
p.6 ●福祉のおしごと通信~つなぐ眼差し~
まことの心で仕事と向き合う
社会福祉法人至誠学舎立川 至誠ホームミンナ 園長 諏訪 逸さん
p.7 ●Information
東京の寄附のカタチ/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本
p.8 ●くらし今ひと
子どもの頃のような「助け合える街」をめざして
味香 興郎さん


【目次】
1社会福祉NOW
2み~つけた
3連載 これからを生きる次世代へ 最終回
4福祉のおしごと通信 ~つなぐ眼差し~
5Information(東京の寄附のカタチ/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本)
6くらし今ひと


--1【社会福祉NOW】
高齢者や障害者の「行きたい」に応える移動支援
移動支援とは、何らかの理由により移動が困難な人たちに対して、通院や通学・レジャーなどの外出をサポートすること。移動や外出は、生活を支える要素であり、地域活動や社会参加を促し、孤立を防ぐためにも重要な意味を持ちます。今回は、高齢や障害が理由による移動困難者を中心に、「全国移動サービスネットワーク」に移動支援の概要や今後の課題などを取材し、都内の事例として「おでかけサービス杉並」の取組みから移動支援の意義やこれからを探っていきます。
高齢者・障害者の移動支援の今と課題
特定非営利活動法人 全国移動サービスネットワーク
特定非営利活動法人全国移動サービスネットワーク 副理事長
社会福祉法人幹福祉会 理事長
谷口 幸生さん
(写真)
移動支援に期待されること
車両を使って外出に困難を抱える人たちの外出を支援することを移動支援といいます。外出困難に陥ってしまう要因は、高齢や障害などを理由とした身体面や精神面、運行本数・バス停や駅が遠いなどの地域面や利便性の問題がありますが、移動するという当たり前ができなくなることで日常生活が困難になり、社会的孤立や孤独のリスクを抱えることになるなど、大きな影響を及ぼします。「全国移動サービスネットワーク」の副理事長で、所属する社会福祉法人でも移動支援事業を展開する谷口幸生さんは「移動を支えるということは、障害者や高齢者の日常生活を守ることだけではなく、そういった人たちがどんどん地域に出ていくことで、住民理解がすすみ、インクルーシブな社会につながっていくためにも大きな意義があると考えています」と話します。
移動支援の種類と概要とは
移動支援のサービスを実施する団体は、自治体や社会福祉法人、NPO法人などさまざまな主体があり、サービスの形態や利用料なども多様です。そのうち有償によるサービスは、道路運送法が定める範囲で決められていて、サービスの種類は次の表のように大まかに分類することができます。表中(2)は、地方では“ささえあい交通”として認識されていて、都内でも八王子市や町田市で運営されています。
谷口さんは「(3)を行う団体は全国で2,400ほど存在しています。最近は(1)や、東京都では(5)に分類される介護タクシーも増えてきています」と現状を話します。
福祉有償運送は、高齢や障害など身体的な要因で移動が困難な人が利用できるサービスで、障害や介護度などの状態や程度により必要な介助が異なります。例えば、比較的重度の方の外出なら、身体介助や乗降介助の対応が可能な福祉有償運送やヘルパーによる有償運送の利用が主です。通院や通学での利用がほとんどですが、旅行やレジャーにも対応でき、利用者の状態やニーズに合わせた移動手段をコーディネートできるのが特徴です。軽度の方なら福祉限定タクシーや、対象は問わない福祉タクシーなどが利用できます。谷口さんは「介護保険法や障害者総合支援法など各種制度やサービスの種類もさまざまで、利用する側にとっては分かりにくいのが現状です。しかし、サービスは使える時に使えないと意味がありません。杉並区や世田谷区には移動サービスの相談センターがあり、移動の各種相談から配車までを受け付けています。こういった機能が広がったら、移動に困っている人が気軽に出かけられ、地域や社会活動に参加できる機会が増えます」と期待しています。
担い手不足にどう対応するか
ドライバーや同乗する介護員などの担い手不足も深刻です。2024年の道路運送法の改正により、一般タクシー業者が自家用車を活用する「日本版ライドシェア」が始まったほか、交通空白地有償運送と福祉有償運送は「公共ライドシェア」が認められるなど、国は規制を緩和することでニーズの拡大と担い手不足への対策に乗り出しました。
担い手が増えても、利用者の「また使いたい」「またここに来たい」といった継続的な外出意欲につながるとは限りません。谷口さんは「私たちの団体でも、40代~50代の働き盛りのドライバー確保が難しい状況です。とはいえ、ただ数を増やしていけばいいというわけではなく、ドライバーへの教育も大切です。運転者講習では、運転技術や介助、接遇への知識はもちろんのこと、利用者さんに日々接することで見えてくる地域の移動の壁がどこにあるのかという視点ももってほしいと伝えています。こういった意識が障害者や高齢者が住みやすい地域につながっていくと思うのです」と話します。
これからの移動支援サービス
少子化の波に歯止めが利かず、高齢者や障害者数も年々増加傾向にある現代。移動支援のサービスへの需要はますます増えていくと予想されますが、担い手不足や近年の物価高などは、サービスを利用する側だけでなくサービスを担う団体にも大きな影響を及ぼしています。今後は、交通、福祉、行政といった3分野間の連携がさらに重要になり、限りある人材や資源で持続可能なしくみをどうやって構築していくかが求められます。
特定非営利活動法人
全国移動サービスネットワーク
(QRコード 特定非営利活動法人全国移動サービスネットワーク)
相談から配車、居場所運営など外出をトータルで支援
特定非営利活動法人おでかけサービス杉並
特定非営利活動法人おでかけサービス杉並 理事長 
秋山 糸織さんほか、おでかけサービス杉並の皆さん
(写真)
各団体との連携体制で移動困難者を支える
「おでかけサービス杉並」では、移動困難を抱える方たちを対象として、会員制の福祉有償運送サービスを行うほか、杉並区外出支援相談センター「もび~る」や居場所の運営などを行っている団体です。理事長を務める秋山糸織さんは「先代理事長が2005年に『自分たちに必要なものは自分たちの手でつくる』という“市民自治”の理念のもとに立ち上げた移動サービスを現在も受け継いでいます。移動を起点に、住民が安心して移動でき、住み続けられる地域をつくっていきたいという想いで活動しています」と語ります。設立から20年以上が経ち、1年間の利用件数は5,000件以上にのぼります。
2006年には杉並区の委託を受け、「もび~る」がつくられました。「介護タクシーも含めていろいろあり、どの移動サービスを使ったらいいか分からない」といった声に応えるため、「もび~る」では外出に関する相談や、移動サービスの各団体・事業者の情報提供、外出時の付き添いサービスの案内や各種制度の情報など、外出における総合的な相談に応えています。
拠点を置く杉並区では早くから移動困難に陥っている人たちへの社会参加や移動支援を重視しており、区内ではさまざまな団体や事業者が移動サービスを提供してきました。「もび~る」では、そのゆるやかなネットワークを活用する形で多様な形態の88団体・事業者と協力体制を敷き、利用者に適したサービスの案内や車両の予約代行なども行っています。事業者の所在地や電話番号などの詳細なデータを収集し、サービスの選び方などを細かく記載したガイドブックの作成や最新情報をホームページでも公開するなど、利用者やその家族、ケアマネジャーなどの支援者からも「どのサービスを選んだらいいか分かりやすい」と好評を得ています。また、区内のすべての地域包括支援センターと日ごろから連携があるので、たとえば移動サービスの相談を受けていて「もしかしたら福祉の介入が必要かも」というケースをすぐにつなげられると秋山さんは話します。
出かけていきたい場所もつくる
「おでかけサービス杉並」では、“出かけたくなる場”も展開しています。26館ある区立の高齢者交流施設「ゆうゆう館」のうち、2館の運営を受託し、地域包括支援センターと連携しながら体操や英会話、書道などの企画を行っています。高齢分野だけでなく、子育てや教育関連の団体が集まって定期的に会議を行うなど、ここを起点に小地域間のネットワークが根づいているといいます。多世代が集うサロン「けやきの見える家」では、地域包括支援センターのスタッフや保健師が来訪し、高齢者だけでなく誰でも相談ができます。
移動サービスや、地域のニーズに合わせて次々と事業を展開してきた「おでかけサービス杉並」。秋山さんは「移動という視点で日常生活の支援を通じて、杉並区の地域包括ケアを支えるという想いで活動を続けてきました。今注視しているのは、ビジネスケアラーの増加。ケアラーの方のニーズをきちんと把握し、相談しやすい環境をつくりながら、ドライバー不足なども考慮し、人と場をどうやってつないでいくか考え続けていきたい」と話します。
誰もが行きたい場所に行けて自分らしく地域で過ごせるように「おでかけサービス杉並」はこれからも、地域のネットワークを駆使して移動困難者を支え続けていきます。
特定非営利活動法人おでかけサービス杉並
(QRコード 特定非営利活動法人おでかけサービス杉並)

(図表 サービスの類型 概要)
サービスの類型 概要
(1)登録不要の移動支援
移送支援サービスを実施するためには道路運送法による許可が必要だが、利用者の負担がガソリン代等の実費程度なら届出なしでサービスが実施できる。通称「日本版ライドシェア」。
(2)交通空白地有償運送
市区町村、NPO法人、社会福祉法人などの非営利法人が、交通が不便な地域に対して、営利に当たらない範囲で送迎を実施することができる。
(3)福祉有償運送
市区町村、NPO法人、社会福祉法人などの非営利法人が、高齢や障害などを理由に介助が必要な人に対して、営利に当たらない範囲で送迎を実施することができる。
(4)ヘルパーによる有償運送
介護保険の利用者および障害者総合支援法の居宅介護、行動援護、同行援助、重度訪問介護が対象。ケアプランに基づきヘルパーが行う運送。
(5)福祉限定タクシー
車いすやストレッチャーのまま乗降ができる装備を備えた福祉車両を使ったタクシー。福祉輸送限定で、一般的に「介護タクシー」と呼ばれる。セダン車両でも許可される。
(6)福祉タクシー
車いすやストレッチャーのまま乗降ができる装備を備えた福祉車両を使ったタクシー。一般のタクシー業者が福祉車両を所有し、移動困難者に限らず誰でも利用ができる。
このほか、道路運送法として許可を受け必要な講習を受けた運転者が、指定された機器を備えた車両を使って行う「民間救急車」もある。ただし緊急搬送や医療行為を行うことはできない。
※「移動サービス認定運転者講習テキスト2021年度改訂版7版 P10-11(NPO法人全国移動サービスネットワーク発行)」をもとに作成

--2【み~つけた】
きものを通じて子どもや女性に笑顔になってもらいたい
調布市 NPO法人きもの笑福
和装教育の講師がきっかけで活動を開始
NPO法人きもの笑福(わふく)は、児童養護施設で育った子どもや母子生活支援施設で暮らす女性たちに笑顔になってもらいたいという想いで活動している団体です。一生に一度の七五三や成人式の祝着きものの着付け支援をし、ハレの日の写真をアルバムにして差し上げています。
代表の鎌田弘美さんは祖母の影響で子どもの時からきものが身近なものとして育ち、きもの講師として活動していました。2013年に家庭科で和装教育が始まったことで、中学校でゆかたの着付け授業を行うことになりました。その時に児童養護施設から通う子どもや、ゆかたを持って来られない子どもの存在に気づきます。貧困の家庭や生活費を優先しなければならない経済的に厳しい家庭等にとって、きものは手の届かないものになっていることがわかったのです。そのことをきっかけに貧困による格差をなくし、子どもたちの人権擁護と人格形成の一助になる活動をしたいと思い、2017年に志を同じくした友人と「七五三・成人振袖支援プロジェクト」という、現在も続く活動を始めました。その後法人化が必要と考え、2019年のNPO法人の認定につながっていきます。
自分たちの着付けを笑顔につなげたい
児童養護施設での成人式の着付けでは、どの子どもも着付けの段階を追うごとに、表情がどんどん笑顔に変わっていきます。「お子さんが笑顔になる瞬間を見れるだけで幸せです。そして、小さなころから施設を出るまで24時間体制で身を粉にして育てた職員の方に『よく頑張りましたよね』とねぎらいの言葉を贈ることも大事」と鎌田さんは言います。着付けがすすむ様子を見守りながら、涙を流す職員も多いそうです。また、成人式は18歳で施設を離れた子どもたちが再び姿を見せるきっかけにもなり、その後の様子を確認する日でもあります。
子どもや女性たちの生きる力になれたら
きもの笑福の活動に賛同する会員は約30名で、30代~70代と幅広い年代の女性で構成されています。きものが好きで、子どもや女性たちを笑顔にしたいという想いを共有しています。年代の異なる会員同士の会話はお互いのモチベーションにつながり、尊い活動になっています。また、この取組みに賛同し、寄付してくださる方の気持ちを着付けで伝えることも大事な使命であると鎌田さんは考えています。『自分も児童養護施設で育ったので同じ思いをしてほしくない』『自分が着なくなったので子どもたちのためになるなら』など心温まる声が寄せられています。「寄付をご検討いただいている方は、どうか一歩踏み出すお気持ちをお寄せいただけたら」と鎌田さん。
鎌田さんは「親からの虐待や配偶者によるDVが年々増えていると感じています。根底には貧困問題が大きなウエイトを占めていて、そのしわ寄せを受けているのが日本の子どもたち。子どもたちに貧困の負の連鎖に陥らず、自己肯定感を得て学ぶ力、生きる希望を見出してもらいたいです」と語ります。着付けを通じて子どもや女性が笑顔になれたらという想いで、これからもきもの笑福は活動していきます。
きもの笑福ホームページ
(QRコード きもの笑福ホームページ)
寄付・ご支援
(QRコード 寄付・ご支援)

--3【連載 これからを生きる次世代へ 最終回】
子どもや若者と“仲間”として出会う地域社会
NPO法人  全国こども福祉センター  理事長 愛知文教女子短期大学 准教授 保育士・社会福祉士 
荒井 和樹さん
著書に『子ども・若者が創るアウトリーチ』(2019, アイエス・エヌ)、『能力社会から共同体自治へ』(2025, せせらぎ出版)がある。
「これからを生きる次世代へ」と題してこれまで6回にわたり、子どもや若者の“生きる”に対して多様なアプローチで取り組む人に話を聞いてきた本連載。最終回となる今号では路上や公共空間で子どもや若者と“仲間”として出会い、ともに共同体を運営することからアウトリーチに取り組んできた荒井和樹さんを取材。子どもや若者が安心して生きられる地域社会とは。取組みからみえてきたことをお聞きしています。
(写真)
福祉ではなく、路上やSNSを選択するこどもや若者たち
15年以上にわたって路上や公共空間を拠点とし、生きづらさや困難を抱える子ども・若者と関わってきた荒井さん。その背景には施設職員時代に出会った福祉や支援を選ばず、SNSや路上へと向かう子どもや若者の存在があります。大人に騙されたり、犯罪に巻き込まれたりする彼らを前に自分は何かできないのか ―。福祉や教育関係者によるアプローチもほとんどない当時、路上で子どもや若者に声をかけることから始めていったといいます。しかし、当初は周囲に理解してもらえず、一人で難しい時もあったそう。そんな時に荒井さんの力になってくれたのは、まさに声をかけた子どもや若者たちでした。出会った彼らと一緒に声かけをしたり、交流活動を企画したり。そうして仲間が増えていき、2012年のNPO法人全国こども福祉センター設立につながっていきます。
今では80名を超えるメンバーが活動に参加し、その8割は子どもや若者。声をかけられた人もいれば、ボランティア活動をしたくて来る学生も。ソーシャルワーカーや教育関係者もいて、多様な背景や動機を持つ人がそこで「仲間」として出会い、ともに何ができるかを考えて取り組む共同体に発展しています。子どもや若者はそうした多様な人との関わりのなかで福祉につながることもあるし、福祉以外の選択肢や可能性を知ることもあるといいます。これまで全国こども福祉センターでは2万人を超える若者に交流や活動機会を提供。団体として現在は助成金等を活動資金とせず、そこに居合わせた人たちの願いや考えを尊重する運営を大切にしています。
公共空間で出会い直した先にあるもの
公共空間に拠点を創る背景には、“子どもや若者が大切にしている場所で出会いたい”という思いとともに、公共空間が持つ“人と人とが出会い直せる可能性”があります。「自然と人が集まる場所で地域福祉的な活動ができたら、福祉に否定的な彼らともつながることができるんじゃないか。肩書きも立場も背景も関係なく、そこで出会った人の表情や姿をみながら、信頼関係を育んだり。従来の福祉活動から脱却できる期待がそこにはありました」と荒井さん。支援のなかでの出会いは関係性が固定化されてしまうし、子どもや若者の尊厳を奪うことになるかもしれない。だからこそ、全国こども福祉センターでは公共空間で“仲間”として出会うことを大切にしてきました。
「仲間として出会うからこそ、そこに安心が生まれたり、その先に仲間のために何ができるかという思いが芽生えたり。もちろん揉め事もありますよ。でもそれは当たり前でみんな考えも価値観も、歩んできた道も違う。路上生活者のメンバーもいます。そうした多様な他者と子どもや若者が“仲間”として出会うことは、情報で得られない姿を知ることになるし、違いを許容していくことにつながるように思います。誰もが頼り頼られながら生きている。そのことをリアルに体感することが大切」と荒井さんは話します。
これからを生きる次世代へ
現代を生きる子どもや若者をとりまく厳しい社会。過度なルッキズムや偽りがネットには溢れ、個人を能力で評価する流れは加速し、個人主義や完璧主義で苦しむ人が増え、閉塞感や無能感が広がっています。そんな時代だからこそ私たちに求められているあり方を荒井さんは次のように考えています。「公共空間には、立場を固定せずに出会い直せる余白がある。人口が減少し個人に力が求められる時代だからこそ、他者も自分も大切にすることが大事。子どもや若者の周囲の大人や支援者も一人ひとりを無条件に受け止めてほしい。そこに理由はいらなくて、仲間だから助けるみたいな。そして子どもや若者はいろんな人を頼って、多様な人に出会い、多様な体験をしてほしい。みんな助けられながら生きているから。『自分がいなくても社会は変わらない』。そんな思いが生まれたら、一人、二人の仲間と小さな社会をつくってみて一歩踏み出してほしいな。個人ではなく、共同体でアプローチしていくことがまさに今私たちに求められているのでは」。
血縁や地縁が希薄化し、社会に広がる孤独や孤立。だからこそ、荒井さんが考えるように個人単位ではなく、居合わせた人で取り組んでいく。そんな小さな関わりを紡いでいくことが、子どもや若者が安心して生きられる地域社会につながるのではないでしょうか。

--4【福祉のおしごと通信~つなぐ眼差し~】
今号からの「福祉のおしごと通信」では、福祉業界でキャリアを積み上げてきた方々に、福祉の業界の魅力やこれからの福祉を担う世代への想いを伺います。1回目は 東社協・東京都高齢者福祉施設協議会で人材対策委員会委員長を務める、至誠ホームミンナ園長の諏訪逸さんにお話を伺いました。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」がモットー
社会福祉法人至誠学舎立川 至誠ホームミンナ園長
諏訪  逸さん
(写真)
まことの心で仕事と向き合う
祖母の介護への心残りが転機に
30年ほど前、結婚式場や宴会場を運営する会社で働いていたころ、祖母が認知症を発症し寝たきりになりました。当時は介護保険制度もなければ私自身も介護や認知症の知識が全くないまま、祖母の意思などお構いなしに無理やり食事やトイレ介助をするといった、いわゆる自己都合の不適切ケアにあたる対応をしていました。その時の祖母の悲しそうな表情は今でも忘れられません。
世話になった祖母に対しそのようなケアをしてしまったことへの罪滅ぼしの思いと、自分と同じように介護や福祉について知識や経験がない方々を適切な機関やサービスにつなぐ橋渡しができればと思い、退職して社会福祉士の資格を取得し、現在の(社福)至誠学舎立川に入職しました。それから27年、主に在宅系の相談員やケアマネジャーとして勤務し現在に至ります。
その人の人生に寄り添うかけがえのない仕事
人と接することが好きでしたし、前職で学んだホスピタリティは福祉の仕事にも通じると感じています。“人生のこれから”を見届ける結婚式とは違い、“人生のクライマックス”に寄り添い、支えていくのがこの仕事です。今の施設で職員と共有していることは、入居者・利用者の方々の“その人らしい生活”を追求することです。時代や社会、制度が変わってもそこは変わらないと思っています。その中で日々一生懸命に働く職員は本当に眩しく、心の綺麗な人ばかりで頭の下がる思いです。その裏方的な役割として、風通しの良い職場環境や施設と地域との良好な関係づくりをすすめるのが私の役割です。
この仕事は決して一人ではできません。高齢者福祉でいうと、ご本人はもちろんご家族や職員、ボランティアさんなどと一緒にその人の人生の最終ステージをつくりあげる、とてもダイナミックな仕事です。ともに支えてくれる人たちへの感謝と、どれだけ経験を積み立場が上になったとしても、「自分は完全ではない」という謙虚さを忘れないこと。私が常に心がけていることです。
いまだに福祉の仕事は3K(きつい・汚い・危険)などといわれ、負のイメージが先行しています。確かに人の生活を支えることの難しさ・厳しさは並大抵のものではありませんが、3H-Hospitality(おもてなしの心のもと)/Humanity(人間味があり)/Heartwarming(心温まる)-でこのかけがえのない仕事の魅力を表現できるのではないかと思っています。現代はタイパやコスパなど、速さや効率、生産性ばかりがうたわれていますが、その真逆というべく入居者・利用者の方々とじっくりと向き合い、人と人とのつながりの中で自らも人として成長できる。これこそが福祉の仕事の醍醐味ではないでしょうか。
また、この仕事は皆さんそれぞれの強みを活かせる場面・場所が必ずあります。あなたらしさをそのままに、ぜひ福祉の世界に飛び込んでいただければと思います。
決断・判断に迷ったときに必ず立ち返る法人創設者のことば
(写真)
--5【Information(東京の寄附のカタチ/マンスリーニュース/ 東社協トピックス/ 東社協の本)】

東京の寄附のカタチ
現役プロサッカー選手によるサッカー教室
東京善意銀行には「体験寄附」も寄せられます。2025年度は、児童養護施設を対象にした現役プロ選手の鈴木義宜さんによるサッカー教室をご寄附いただきました。直接指導を受け積極的に練習を行った後は、質問コーナーでプロ選手のマインドを知れる時間も。子どもたちは楽しさだけでなく、くやしさや達成感、高揚感を感じられる一日を過ごし、「これからは諦めない自分になりたい」など前向きな感想も聞かれ、まさに生きる力を育む貴重な機会となりました。
(写真 プロ選手から多くを学ぼうと子どもたちも真剣です)
東京善意銀行へのご寄附はこちらから 
東京善意銀行
(QRコード 東京善意銀行)

マンスリーニュース 2026.2.26 ~3.25 
ピックアップ
(2/26)25年の出生数70万人で過去最少更新
厚労省が発表した「人口動態統計速報」によると2025年の出生数は70万5,809人で、前年から15,179人減少したことがわかった。10年連続で減少となり、最少を更新し続けている。婚姻数は前年から5,657組増えて505,656組となり、2年連続で増加。離婚数は前年から6,983組の減。
(2/27)児童支援員の資格要件を緩和へ
現場で人手不足が深刻化する中、こども家庭庁は「放課後児童支援員」の量及び質を確保するため、専攻に関係なく大学・大学院卒業(修了)者で、一定の従事経験があれば対象とする等の資格要件を緩和する方針を示し、2027年度からの運用開始をめざす。
(3/4)生活保護申請、過去最多
厚労省が発表した生活保護被保護者調査によれば、2024年度の被保護実人員数は200万8,061人となり、前年度から12,515人減少。保護申請件数は21,626件となり、677件増加した。また、保護開始世帯数は19,045世帯となり、536世帯増加したことがわかった。いずれも1か月平均の値。

東社協トピックス
2026年度の 東社協事業計画・予算が決定しました
東社協の2026年度の事業計画・予算が、3月17日の理事会および3月26日の評議員会において承認されました。事業計画では、「東京らしい多様性を活かした地域共生社会」という 東社協のビジョン実現をめざして、中期計画で定める5つの「取組みの柱」にもとづき、30の【重点取組み事項】を掲げました。
昨年12月に「社会保障審議会福祉部会報告書」がとりまとめられています。包括的支援体制の更なる整備、地域生活課題の一つとしての頼れる身寄りのいない高齢者等への支援、災害に備えた福祉的支援体制など、重要な課題が指摘され、今年度、社会福祉法の改正も予定されています。また、 東社協・総合企画委員会でも、高齢期に限らない身寄りの問題について、会員の方々とともに協働して取り組んでいくことを提案しています。
2026年度はこうした状況を踏まえ、会員をはじめとする幅広い関係者の方々との協働を更にひろげながら、【重点取組み事項】をはじめとする取組みを着実に推進していきます。
2026年度重点取組み事項
(QRコード 2026年度重点取組み事項)
東社協・中期計画
(QRコード  東社協・中期計画)

東社協の本
ご注文は 東社協図書係まで  ☎03-3268-7185
介護等体験マニュアルノート
~社会福祉施設~【2024年11月改訂版】
介護等体験に対する理解を助け主体的な学習を促進することを目的に刊行したマニュアルの改訂版。社会福祉関係の法改正を反映し、最新の情勢にも対応。介護体験の事前・事後の学習にぜひお役立てください。
◆規格A4判/66頁
◆発売日2024.11.05
◆定価1,100円(本体1,000円+税10%)
成年後見制度とは…〔改訂第4版〕
本書は、成年後見制度をわかりやすく解説した小冊子の改訂版です。
制度の概要を理解するためにぜひご活用ください。
◆規格A4判/32頁
◆発売日2023.05.31
◆定価:550円
(本体500円+税10%)
【DVD】 今すぐ役立つ! 感染症予防
本DVDは、福祉施設における集団感染を防ぐための手順や対応を紹介。
施設の職員研修等にご活用ください。
◆収録時間:基礎編:約13分30秒
対応編:約13分
◆発売2017.9.29
◆定価1,320円
(本体1,200円+税10%)


--6【くらし今ひと】
子どもの頃のような「助け合える街」をめざして
住人がお互い声を掛け合える拠点として「まちサロンおきやんち」をつくった味香興郎さん。これまでの半生と活動の中で大切にされている思いを伺いました。
味香 興郎さん
杉並区阿佐谷にある「まちサロンおきやんち」代表。杉並区商工相談員などを歴任し、地元商店街から相談に長年携わってきた。趣味は読書。
(写真)
人間やればなんとかなる
私は、三重県四日市市の旧市外の出身です。生まれ育った地域で子どもの頃からさまざまな災害に遭遇してきました。12歳の時には東南海地震を体験、会社員時代の1959年9月には伊勢湾台風に遭遇、当時勤務していた会社も大きな被害を受け事後処理に奮闘しました。これらの災害を経験して「人間やればなんとかなる」というスピリットを得られたことは良かったなと思っています。今思うと貴重な経験でした。
声を掛け合える居場所をつくりたい
今思い返せば、子どもの時の近所の人たちは、何かあれば助け合える関係でした。冠婚葬祭があれば、近所が総出で準備やお手伝いをしてくれる。災害が起きれば、声を掛け合って、安否確認や手助けをしてくれました。ところが、東京では隣近所にだれが住んでいるのかが分からない、新しく近所に引っ越してきた人も引っ越しのあいさつすらありません。家には表札もかかっておらず、不幸があっても知らせもないのです。隣近所に新しく、アパートやマンションが建設されて移住者が増えてきているにもかかわらず、どのような人が隣に住んでいるのかが見えにくい。私はこの状態を「東京砂漠」と呼んでいます。この状態を何とかしなければいけないと常々強く感じました。
そもそも、阿佐谷北三丁目地区には地域の人が交流できる“集会所”がありませんでした。杉並区と交渉しても不可でした。どうしたらいいかと困り果てていたときに次女からアドバイスをもらって、自宅隣の一階の倉庫を使って地域の人たちが集う“みんなの家”にすればいいと閃きました。それは、私が90歳の時でした。築50年以上経った古い家だったため、耐震補強と防音工事が必要でした。その改修費用に約620万円かかりましたが、クラウドファンディングで皆さんの協力を受けて改装し「まちサロンおきやんち」を2024年4月にオープンしました。
「生涯現役」をモットーに阿佐谷に住む全ての人を巻き込みたい
災害が発生した時に住民同士が助け合うには、日頃からもっとフランクな付き合いが必要です。しかし、阿佐谷では、こうした関係を築くことがまだまだ難しいと感じています。町内会の役員として、新しく引っ越してきた人に「町内会へ入ってください」とお願いすると、「私には関係ない」と断られます。文京区の「こまじいのうち」や世田谷区の「岡さんのいえTOMO」など各地の居場所を見学し、老若男女が集える取組みをぜひ自分の街で実現したいと思ってきました。しかし、地域性が異なるため、居場所を通してどこまで人を巻き込めるかはまだまだ途上にあります。最近は、外国から移住してきた方も増えてきました。言葉や文化の壁を乗り越えて、いろんな人たちとも接点を持ちたいと考えています。
第一の人生は産業人として47年、第二の人生はコンサルタントとして25年全速力で走ってきました。90歳で突入した第三の人生でも、これまで信奉してきた日野原重明先生の「生涯現役」をモットーにこれからも地域づくりに貢献していきたいと考えています。

以上で、福祉広報2026年4月号を終わります。

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