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東京都地域公益活動推進協議会

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コロナ禍における文京区地域公益ネットワークの取り組み

文京区地域公益活動ネットワーク(文京区)

令和2年8月7日に開催した「コロナ禍の地域公益活動を考えるオンライン実践発表会」で発表いただいた内容を掲載します。

令和2年10月2日掲載

令和2年8月7日に開催した「コロナ禍の地域公益活動を考えるオンライン実践発表会」で発表内容です。

発表者:文京区社会福祉協議会 地域福祉推進係 地域福祉コーディネーター兼生活支援コーディネーター 本多桜子氏、浦田愛氏

 

文京区と地域福祉コーディネーター

文京区は、面積約12㎢、人口22万人程度で、人口密度の高いエリアです。文京区社会福祉協議会は、施設を運営していない職員50名程度の規模の小さな社会福祉協議会です。そのうち10名が地域福祉コーディネーターで、地区担当として活動しています。

文京区内の全社会福祉法人で取組む「夢の本箱」プロジェクト

文京区は製本所や出版社が多く、本とゆかりの深いエリアです。「夢の本箱」は、「本でつなぐ文京の未来」をキャッチコピーとして、文京区内の企業の協力を得て、文京区地域公益活動ネットワークのプロジェクトとして立ち上げました。平成28年に地域公益活動に関する情報交換を区内の社会福祉法人に呼び掛けて行い、平成29年に全法人にアンケート調査を実施し、ネットワーク全体で行うプロジェクトの可能性を検討しました。そして、平成30年から夢の本箱プロジェクトがスタートし今年度で3年目となりました。

平成29年度のアンケート調査では、地域公益活動を始めやすい条件として、社会福祉法人を地域の人々に知ってもらえる機会になること、人材が不足している中であまり人手がかからないこと、などの声が上がりました。それらの意見をもとに企画を行い、区内企業の協力も決まり、夢の本箱プロジェクトが始まりました。

夢の本箱プロジェクトは、子供たちが笑顔で夏休みを過ごせるようにしたい、というのが目的です。その仕組みは、個人や法人が読み終わり不要になった本を、区内の社会福祉法人の施設の入口などに設置した「夢の本箱」に投函してもらい、その本を区内企業に買い取ってもらいます。そのお金や、企業や個人の方からいただいた寄付を財源として、長期休み期間中の子ども食堂などの子供の食と居場所を提供する団体を支援します。区民が利用可能な本箱は、区内の社会福祉法人に22か所設置されています(新型コロナウィルス感染拡大の影響で、回収を休止している法人もあります)。施設の事情などから本箱を置くことができない法人は、その他の運営面などでこのプロジェクトに携わっています。

文京区地域公益活動ネットワークは、企画・協働推進部会10法人、広報戦略部会7法人、財務部会5法人で構成され、社協は総務係、ボランティアセンター、地域福祉推進係でそれぞれ役割分担をしながら事務局機能を担っています。本の寄付実績は、初年度は年間約四千二百冊/約20万円、令和元年度は約4千冊/24万円でした。

コロナ禍での取組み「学校休校時の緊急食支援プロジェクト」

文京区では令和2年3月1週目から一斉休校がスタートしました。夢の本箱プロジェクトによる財源を給食のなくなってしまった子供たちの食支援に充てることができないか、という検討を行い「学校休校時の緊急食支援プロジェクト」を実施することが決まりました。

第1段階は、社協でつながっている家庭に対し、区内社会福祉法人からの食品寄付を届けながら、ヒアリングを行いました。そこで、昼食の支援が求められていることがわかり、第2段階として、場づくりの支援のために子ども食堂への助成と、主任児童委員やボランティアとも連携しながら心配な家庭への弁当の配達を行うことを決めました。食事は、すべて区内の社会福祉法人からパンや唐揚げ、お弁当などを提供してもらい、資金は夢の本箱から拠出しました。

4月には、コロナの感染拡大により、ボランティアが主催する対面式の子ども食堂が開催できなくなったことで、お弁当の配付に加え、第3段階として、常設型の場所で感染対策を行い、営業許可をとっている喫茶店等での食事の提供がスタートしました。家庭の人数や利用日数に応じて、必要枚数のチケットを各家庭に配布し、月末にお店から枚数を報告してもらい、夢の本箱から料金を支払う形式としました。全段階を通して、緊急事態宣言下で困難な状況にある子どもだけではなく、子どもが家にいることによって働きにでることが難しくなったり、精神的な負担となったりしている親も含めた家庭全体に対象を広げることが大切ではないかとの議論があり、利用者を拡大してチケットを配布することになりました。

学校休校時の緊急食支援プロジェクトにかかった費用は、第2段階のお弁当配達、場づくり支援は200食/11万円、第3段階の常設型の場所での食事提供は350食/26万円となりました。飲食店などの実店舗、専門職の方、公的機関など、今回の緊急食支援を通してネットワークが広がりました。

 

「学校休校時の緊急食支援プロジェクト」報告会

今回の緊急食支援の担い手となってくれていたのは、普段文京区で活動するボランティアや子ども食堂の関係者、主任児童委員、そしてカフェを運営する地域住民の方たちでした。文京区地域公益活動ネットワークに参加している法人の方にも、地域の方たちが行っていた取組みの生の声を伝えてもらい、実態や課題の理解をより深めるために、緊急食支援報告会を10月に行いました。報告会では、今回食支援の担い手となってくれた4名の方がオンラインで報告を行い、当日は11法人、16名の方にご参加いただきました。報告では、それぞれの立場から、コロナで地域のつながりが切れることのないよう工夫をしていたこと、夢の本箱プロジェクトの仕組みが資金を支援してくれたことが、つながり続けるための重要なサポートとなったことなどが語られました。参加した法人からは次のような感想が寄せられました。

 

<参加法人からの感想>

  • 社会福祉法人だけでなく、地域の様々な方々がつながることでネットワークがより強化されると感じた。
  • 場所、時間、お一人お一人の力の提供により、支援活動がとても身近なところで行われていたことを改めて知ることができた。
  • 居場所があるということの大切さを再認識した。
  • 施設に置いている本箱の本の売り上げが、具体的に地域で必要としている子どもたちや、その支援者に届いていること、その輪が広がっていることがわかった。

今後の地域公益活動ネットワーク

緊急食支援プロジェクトは、夏休み、冬休みにも引き続き行われました。コロナ禍での一斉休校に伴う食支援の目的は、6月の給食再開で果たされましたが、その後も引き続き困難な状態にある家庭に対して、継続してつながりづくりのための支援が必要と考えました。ネットワーク参加法人からは、「今後も地域の方の声を聴く機会を作っていきたい」「ネットワークとして今後も様々な主体と連携していく必要がある」などが意見として出されています。社会福祉法人のネットワークが地域を支える仕組みになっていくよう、引き続き活動を進めていきます。

令和2年度に開催した「コロナ禍の地域公益活動を考えるオンライン実践発表会」において発表いただいた内容を編集しました。
発表者 文京区社会福祉協議会 地域福祉推進係 地域福祉コーディネーター兼生活支援コーディネーター本多 桜子さん、浦田 愛さん