地域共生社会の実現に向け、“オール東京の社会福祉法人” による地域公益活動を推進します。

東京都地域公益活動推進協議会

ホーム > 地域の連携による取組み > 中野区 > 相談支援型フードパントリーの取り組み ~中野区内社会福祉法人等連絡会協働事業プロジェクト

このページをプリントします

相談支援型フードパントリーの取り組み ~中野区内社会福祉法人等連絡会協働事業プロジェクト

中野区内社会福祉法人等連絡会

提供食品

中野区内社会福祉法人等連絡会では、立ち上げと同時に、最初の協働事業プロジェクトとしてフードドライブを実施しました。設立当初から地域の相談に対応できる仕組み作りを目標に掲げ、2021年より相談支援型フードパントリーの試行が開始されました。

令和4年1月14日掲載

令和3年10月27日開催「地域公益活動を考える オンライン実践発表会」において発表いただいた内容を編集しました。
社会福祉法人中野区社会福祉協議会 小山奈美氏
社会福祉法人武蔵野療園 しらさぎ桜苑 白岩裕子氏
 
中野区内社会福祉法人等連絡会の概要

中野区内の社会福祉法人では、2017年度より情報交換会を定期的に開催し、横のつながりをテーマに公益的な取り組みの検討を進めてきました。そして2019年8月に、中野区内社会福祉法人等連絡会を発足し、現在30法人44事業所が加入しています。役員会を中心に協働事業プロジェクトというチームを立ち上げ、地域の公益的な取り組みを連絡会として実施しています。事務局は中野区社会福祉協議会が担っています。

 

相談支援型フードパントリーの試行

中野区内社会福祉法人等連絡会の立ち上げと同時に、最初の協働事業プロジェクトとしてフードドライブを実施しました。各法人がそれぞれの事業所でフードドライブの取り組みを通して地域の子ども食堂への寄付を実施していましたが、その活動の中で生活困窮者の課題や取り組みを知り、協働事業プロジェクトとして定着しました。

2020年度は、コロナ禍により生活困窮者が増大し、単発型のフードパントリーでは足りない状況となりました。常時、食料を必要とする方が目の前に取りに来ていることで、生活困窮者の課題を肌で感じました。そこで、社会福祉法人武蔵野療園が独自に緊急対応的な相談支援型のフードパントリーを実施。それをきっかけに常時相談を受けながら、食料を渡せる仕組みについて検討を始めました。

社会福祉法人の公益的取り組みの一つとして、設立当初から各事業所が地域の相談に対応できる仕組み作りを目標に掲げてきました。そして2021年度に、全体の事業計画として相談支援型のフードパントリーの試行を決定しました。2021年2月から役員会で協議し、フードバンクのNPO法人セカンドハーベストジャパンとの協議を経て、3月に協定を結び、毎月50世帯分の食事を提供してもらうことが決定。4月に総会で決議し、試行が開始されました。

 

さくらパントリーとハピネスパントリーの取り組み

しらさぎ桜苑は「さくらパントリー」、中野区社会福祉協議会は「ハピネスパントリー」として4月1日からパントリーを実施し、現在も継続しています。緊急事態宣言を受けて、2~3月に行った武蔵野療園単独のフードパントリーから見えた課題も含め、今回、協働事業プロジェクトとして試行しています。

セカンドハーベストジャパンから提供される50世帯分の食料は、さくらパントリー10世帯分、ハピネスパントリー40世帯分に分け、それを2~3日分の緊急支援食料として袋詰めを行い、配布しています。

2021年4~9月の実績は、表のとおりです。

相談実績

さくらパントリーでは、20代から80代まで幅広い年代から相談が入っています。ハピネスパントリーでも同様の傾向がみられますが、特例貸付の生活福祉資金を借り切っていたり、資金がまだ振り込まれていなかったりして、手持ちの現金が少ない緊急性の高い人への支援が増加しています。リピートで食料を取りに来る人もいます。こういった課題を積み上げ、試行しながら、今後は社会福祉法人全体の事業として発信していきたいと考えています。

相談実績2

 

さくらフードパントリーの取り組み

しらさぎ桜苑は、社会福祉法人武蔵野療園が運営する高齢者サービスを中心とした小規模多機能型ホームです。社会福祉協議会は中野区のほぼ中心にあり、さくらフードパントリーは上白鷺宮包括エリアにあります。

地域・場所

フードパントリーの対象者は、コロナ禍の影響で食生活に困っている人たちです。チラシの配布によってPRを行っています。社会福祉協議会を通して民生・児童委員や町会、生活援護課や子ども家庭支援センターの窓口に配布するなど、相談支援窓口に周知し、必要な人に食料が届くように工夫しています。また、年に数回行っている「中野つながるフードパントリー」の食料にもすべてチラシを入れています。そのほか、FacebookやTwitterといったSNSも活用しています。

常時、食品を渡せる体制づくりとして、社会福祉協議会がセカンドハーベストジャパンと契約を結び、毎月50世帯分の食料の提供を受けるうち、10世帯分を受け取っています。また、フードバンクからの食品ロスを削減するために、武蔵野療園からも食品の提供を受けています。個人からの寄付もあり、活動の周知に伴い、地域や企業からの寄付も増えています。

食品の確保は、武蔵野療園が車を出してセカンドハーベストジャパンまで食料を取りに行き、社会福祉協議会に届けています。そして、食品の仕分け後、社会福祉協議会からさくらフードパントリーへ運んでいます。費用をかけられないため、リサイクル冷蔵庫や棚などを準備して、食料を保管しています。当初、セカンドハーベストジャパンからは非常食が多く提供されていましたが、最近は、子育て世帯の栄養面も考慮した内容となっています。しらさぎ桜苑で獲れた野菜なども入れています。

さくらパントリー食品・その他

食品

食品の受け渡しおよび相談は、月曜から金曜の10時から16時までの間で、地域連携の担当職員が電話を受け付け、申込者と担当者で都合を合わせて来所してもらう形式をとっています。相談受付の共通書式を作成し、来所者の情報を共有しています。

相談内容はさまざまです。緊急事態宣言で仕事がなくなったという独身の派遣社員には、福祉関連の仕事を紹介しましたが、職種変更は難しいとのことでした。夫がリストラされたという子育て世帯には、子どもの無料塾につなげることができました。また、コロナ禍で仕事を失ったシングルマザーもいて、社会福祉協議会と連携しながら相談に乗っています。一方、資産も借金もあって生活保護が受けられないという高齢者には、社会福祉協議会でさまざまな助成金制度を紹介したり、桜苑のカフェにつないだりしています。

相談支援型フードパントリーは、食の支援が入ることで、相談しやすさがあります。住所などの連絡先を聞くことで、必要に応じて継続して関わりを持つ伴走型の支援を目指していますが、社会福祉法人との連携を生かし、相談支援型フードパントリーをさらに発展させていきたいです。