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東京都地域公益活動推進協議会

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保育園の機能を活かした親子広場

社会福祉法人新川中原保育会 成城つくしんぼ保育園(世田谷区)

昔は大家族で暮らす中、祖父母等から自然と育児のノウハウが伝えられてきました。現在は、核家族化がすすみ、親と子だけで向き合う「密室の育児」が増えています。ここでは、保育園の機能を活かして地域の親子広場を運営する、社会福祉法人新川中原保育会成城つくしんぼ保育園による「けやき広場」を紹介します。

福祉広報2015年02月号

世田谷区にある成城地域は高級住宅街で有名ですが、都営住宅やマンションもあり、子育て家庭も暮らしている地域です。また、世田谷区は待機児が多い区でもあります。保育園に入園できず育児休業を延長した親や専業主婦など、様々な親子が生活しています。

地域とともに子どもを支える

社会福祉法人新川中原保育会は1985年に保護者・地域と職員が共同して運営する無認可の共同保育所を三鷹市でスタートしました。現在は、三鷹市の共同保育所は認可園となりました。世田谷区祖師谷と成城に認可園を開設し、計3園を運営しています。3園ともに地域の親子広場を常設で運営しています。

新川中原福祉会は、地域とともに子どもを支える保育を実践し、30周年を迎えました。子どもたちが心身ともにすくすく育ち、地域の人が子育ての喜びを共感しあいながら安心して預けることができるよう、誰でも気軽に立ち寄ってもらえる保育園づくりを目指しています。

相談になる前に「広場」で解決

保育園は、地域の子育て家庭の育児相談を掲げていますが、養育者が自分から電話をかけて相談するのはハードルが高く、あまり相談がないのが実態です。そこで、保育園の中に、いつでも・だれでも・訪れることができる「居場所」を用意し、保育士や親同士で話す中で、子育ての悩みが相談になる前に自然と解決できるよう、常設の広場を運営することにしました。成城つくしんぼ保育園園長の布川順子さんは「保育園には安心・安全に保育できる環境があり、保育の専門家がいる。地域の親子が訪れる『居場所』をつくりやすい」と話します。

ベテラン保育士を配置

成城つくしんぼ保育園が運営する「けやき広場」は、平日9時半から12時、13時半から16時まで開所しています。主任保育士を経験し退職したベテラン保育士2名を配置し、どんなことにも対応できるようにしています。専業主婦の親子や育休中の親子、母親だけでなく父親や祖父母が訪れることもあります。1日平均10組前後で、平成25年度は延べ4千人が訪れました。毎日訪れる人、人が多いと行きにくいから雨の日に訪れる人など、様々です。


木のぬくもりに囲まれた居心地の良い広場

広場では、離乳食や子どもが食べやすい料理教室を企画したり、おもちゃの手作り会のサークルもあります。広場の親子が自由に借りられる「けやき文庫」もあります。保育園で節分などの行事がある際は、広場の親子も参加しています。また、実際に保育園を利用してみる「保育体験」も行っています。


自由に借りられるけやき文庫

さらに、毎月小児科医に広場に来てもらい、子育てに関する様々な悩みを相談できる日を設定しています。その日に来られない親子は相談したい内容をメモにして事前に渡します。相談内容は、「爪はどうやって切ればいいの」「子どもが鼻そうじを嫌がるのですが…」など、病院では聞きにくい日常の些細な疑問もあります。

自然と子育てのノウハウを伝える

布川さんは「親は『自分の子育ては間違っていないのか』と常に不安を抱えている」と話します。けやき広場の職員は、絵本の読み聞かせ方を見せて伝えたり、子どもがおもちゃを上手に使えたときには「上手にできたね」とその場で優しく話しかけるなど、子育ての仕方を自然に伝えています。また、親が子どもへの声かけなどがスムースにできた場合は、集団の中でできたことを共有し、親の自信を育むことにつながっています。

また、広場では、室内に入ったら手を洗う、室内では靴を脱ぐ、挨拶をするなど、日常生活の基本的なルールを伝えるようにしています。密室で孤独に過ごす親子が増えていることもあり、けやき広場は社会のルールを伝える役割も担っています。

子育てに自信を持てる

広場を訪れた親子の変化について、布川さんは「子育てに自信が持てて、少し余裕が生まれる」と話します。同じ立場の親子が集い、日常の小さな悩みを話す中で、「不安を感じているのは自分だけではない」と思うようになります。月齢が高い子の様子を見て、自分の子どもの将来を想像でき、安心感が生まれます。

発達が気がかりな子がいた場合は、親と関係を築きながら関係機関につないでいます。また、親の様子が心配な場合は、丁寧に話を聞きながら関係機関と連携して対応しています。子ども家庭支援センター等から紹介され、広場を訪れる親子もいます。

地域の親子にとって必要だから

けやき広場は、法人が自主的に運営しています。布川さんは「地域の親子には、いつでも・だれでも集える居場所が必要と考えて運営している」と話します。広場の利用者がバザーの収益で滑り台を提供してくれたり、費用面で協力してくれています。

また、広場の運営をし始めたことで、地域の子育て情報が自然と入るようになりました。広場を訪れる親から「近所で虐待が起きているかもしれない」などの情報が入ったり、子ども用品が安いお店や親子連れで入れるお店の情報が集まるようになりました。

地域の声に耳を傾け、それぞれの法人・施設が持つ機能を活かした取組みが求められています。

広場を訪れた親の声

 


Junko Fukawa 布川順子
社会福祉法人新川中原保育会
成城つくしんぼ保育園 園長

 

社会福祉法人新川中原保育会 成城つくしんぼ保育園

〒157-0066 東京都世田谷区成城8-27-17
TEL:03-5490-2100
http://www.seijo-tsukushinbo.jp/

1985年に無認可の共同保育所を三鷹市で開設。
三鷹市に1認可園、世田谷区に2認可園を運営。
3園ともに地域の親子広場を常設で運営している。
2014年に30周年を迎えた。