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東京都地域公益活動推進協議会

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小規模社会福祉法人による地域貢献事業の取組み

社会福祉法人小茂根の郷(板橋区)

社会福祉法人小茂根の郷は、介護保険制度の開始をきっかけに、経営が悪化し大きな転換を図る必要に迫られました。社会福祉法人の大きな役割である「地域を守る」という使命を再確認しました。そして、法人理念に基づき、「健康づくり」「居場所づくり」「食事の提供」など、さまざまな社会貢献事業を実践しています。

平成27年10月23日掲載

社会福祉法人として「地域を守る」

介護保険制度がスタートし、福祉サービスが措置の時代から様々な一般企業の参入によりサービスの自由競争となりました。経営が悪化するとともに、優秀な職員を流失してしまいました。社会福祉法人小茂根の郷は、福祉サービスを提供する社会福祉法人として、経営面での大きな転換を図る必要がありました。社会福祉法人の大きな役割として「地域を守る」という使命を持っています。地域との関わりの中で育ててきた理念を下記のようにあらためて文書化しました。

  1. 利用される全ての方の人権を尊重し信頼される施設
  2. 地域社会に貢献できる施設
  3. 職員のやりがいがあり、活気に溢れた施設

小茂根の郷は、法人理念に基づき「社会貢献事業」をできることから着実に実践しています。「地域から求められる支援の提供をしたい」「地域が持っている力を引き出したい」「地域の課題を一歩先に気づき対策したい」「この地域で生活できてしあわせを実感してほしい」という視点で、さまざまな社会貢献事業等を実施しています。

だれもが参加できる「あすなろクラブ」

小茂根の郷は「いつまでも地域活動に参加し健康に年をとる」ことを目的に、2007年から運動機器を使用したリハビリクラブ「あすなろクラブ」を自主事業として運営しています。デイサービスの終了後、地域の介護保険対象外の虚弱高齢者を対象に、理学療法士が個別プログラムを組み、30分~60分間の運動を行っています。2015年8月現在、会員数は63名、月50回程度の利用があり、最近は介護保険制度改正の影響もあり、参加者が増加しています。利用料金はボランティア活動をしている方は無料、その他の方は1回500円です。ボランティア活動は、習字、折り紙、お茶出し、ドライヤーかけ、外出同行、カラオケなどです。最近はデイサービスに通う認知症症状がある利用者と園芸作業をしていただき、ゴーヤやインゲン豆の収穫など一年を通して土作りから行っています。利用者の生きがいづくりにつながっています。

ボランティア活動をしながら運動をする方や、デイサービスに通うのはためらう方など、とくに男性の参加が多くなっています。最近は、参加者が友人を誘い参加して、ランチクラブともつながるなど、活動が広がっています。また、介護保険法改正により、要支援者も自主的に参加されています。また、難病の方や介護者、町会の役員などさまざまな方が楽しそうに身体を動かしています。運動の前後のお茶を飲みながら会話をすることも楽しみのひとつのようです。病気により歩行状態が悪化し引きこもっていた男性は、町会の老人会でお誕生会の時にお声かけをして参加していただき、最初は、苦虫をつぶした顔をしてきていました。毎回声をかけながら様子を見ていると、段々表情が穏やかになり「クラブ」で友達ができたようで、最近は楽しそうに参加されています。

皆で楽しく食べる「こもねランチクラブ」

小茂根の郷では、地域包括支援センターが緊急的に出動するケースの中に、地域とかかわりがなく衰弱死寸前のケースがありました。また、男性の1人暮らしで、SOSを出さなく衰弱しているケースなども把握していました。町会、自治会とつながりがあったり、民生児童委員や地域包括支援センターの見守りがあるケースはすぐに変化に気づくことができますが、地域から孤立している方は、すぐに変化に気づくことが難しく、生命の危険性が高いのです。

小茂根の郷は、以前から安否確認を目的とした「配食サービス」を行っていましたが、安否確認と食事提供はできても、地域での関係づくりは困難でした。そこで、当法人ですぐにできる支援を考え、食事をしながら皆で話すことで、新しい関係作りのきっかけになるのではないかと期待し、2015年2月から「こもねランチクラブ」を始めました。

「こもねランチクラブ」は、近所付き合いの苦手な方や、一人暮らしの方、高齢者世帯の方に気楽に小茂根の郷にきていただき、食事を食べながら楽しい時間を過ごす活動です。施設内の食堂で毎日開催し、施設入所者と同じ栄養バランスのとれた食事を1食330円で召し上がっていただいています。1月20~30名前後の参加があります。

開始から半年が過ぎ、毎週定期的に参加される方や週3~4回参加している方もいます。また、ご近所の方を誘って参加される方などもいます。友達作りのきっかけや、引きこもりの予防につながっています。参加者からは「家だと1人だし、同じものばかりで食べてしまう。ここでいただくと美味しい。続けてくださいね」と話されます。また、食後に「あすなろクラブ」を見学して参加される方もいます。開始後半年で193食、月平均32食です。メニューを見ながらご自分のペースで参加者が増加しています。


みんなで楽しく食べるランチクラブ

元気な高齢者が働き、若い職員の手本に

小茂根の郷では、健康な高齢者に働く場所を提供し、いつまでも生きがいのある生活を提供するため、高齢者雇用をしています。高齢者雇用を開始してから既に10年が経過しています。現在3名雇用しており、最高齢者は80歳です。週3日、3時間程度の仕事を元気に行っていただき、若い職員の良い手本になっています。また、職員の定年後の働き方の参考にもなっています。仕事内容は、封筒封入、買い物、車椅子整備、自転車点検、看板作りなどの雑務など、職員の手の回らない部分を担っていただいています。

老人会と施設をつなぐ

板橋区で活動する老人会「桜樹会」のメンバーは平均年齢が80歳後半で、足腰が段々不自由になり活動場所が遠い地区会館では参加できにくくなっていました。そこで、小茂根の郷では、2年前から3か月に1回、老人会の誕生会を施設の会場を提供しています。また、誕生日会の際には「お元気講座」を開催し、元気に生活するための日常生活のコツや、認知症や生活習慣病の予防などの話と運動を行っています。施設を提供するようになり参加者が70名程度に増えました。そして、施設入所者も老人会に参加させていただき、地域の一員としてより近い関係が築けるようになりました。また、月2回活動しているカラオケ活動について、月1回施設を提供しています。「ご近所付き合い」という近い関係の中で、お手伝いできることをから実践しています。

老人会の方で認知症の症状がある方が2名いました。ご近所の方は気づいていたようでしたが、支援には繋がりませんでした。老人会と施設の関係が深まることで、専門職による支援につながりました。その方は現在も元気に在宅生活を継続されています。また、あまり外出しない男性を老人会に参加していただき、「あすなろクラブ」につながり、現在は元気に散歩や男友達を作り楽しく生活している方もいます。

小茂根の郷は、地域の高齢者の励みになるよう、老人会で盛んに活動しているグランドゴルフクラブにユニホームを寄付しました。施設の利用者等へも指導をしていただいており、今後も交流を大切にしていきます。

敷居のない社会福祉法人に

小茂根の郷は、地域に根ざした社会福祉法人として「地域で今困っていること」に焦点をあて、地域づくりに取組んできました。今後も地道に地域づくりをすすめ、住民にとって敷居のない社会福祉法人をめざしていきます。


老人会「桜樹会」誕生会の様子


寄付したユニフォームを着るグラウンドゴルフクラブのみなさん

 

社会福祉法人小茂根の郷

板橋区小茂根4-11-11
TEL03-3959-7421
http://www.komonenosato.com/

1996年に社会福祉法人設立。1997年から特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、在宅介護支援センター、訪問介護事業、配食サービス事業等総合福祉事業を運営。法人理念は、(1)利用される全ての方の人権を尊重し信頼される施設、(2)地域社会に貢献できる施設、(3)職員のやりがいがあり、活気に溢れた施設、としている。