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障害のある方の就労を支援するため特養とデイサービスセンターで訓練の場を提供

社会福祉法人多摩済生医療団(小平市)

社会福祉法人多摩済生医療団は、小平市障害者就労・生活支援センター「ほっと」と連携し、特養やデイサービスセンターで障害者の就労支援の場を提供しています。月曜日から金曜日までの毎日、4名~6名程度の障害のある方が、施設内の清掃作業を「ほっと」のスタッフとともに行っています。

平成28年1月4日掲載

障害のある方の就労訓練のために、特養とデイサービスの場を提供

社会福祉法人多摩済生医療団の多摩済生園、多摩済生ケアセンターは、「利用者の様々な思いとお一人お一人のかけがえのない人生に『添うこころ』をもってサービスを発想・展開・改善し、利用者が本来の自分でいられる場』の構築に最善を尽くす」という理念に基づいて、事業運営しています。

近隣にある小平市障害者就労・生活支援センター「ほっと」と連携し、年間を通じて、特養やデイサービスセンターで障害者の就労支援の場を提供する取組みについてご紹介します。朝8時45分、月曜日から金曜日までの毎日、4名~6名程度の障害のある方が、特養「多摩済生園」の職員玄関でタイムカードを押します。4階にある専用の休憩室で着替えて準備し、ミーティングの後、9時から清掃作業を開始します。

社会福祉法人多摩済生医療団の特養とデイサービスセンターの清掃作業は、社会福祉法人未来が運営する小平市障害者就労・生活支援センター「ほっと」(以下、「ほっと」)に登録している知的障害や精神障害がある方が担っています。週に1回の方もいれば、3回の方もおり、日によって顔ぶれも人数も変わります。あらかじめ決めてあるエリアをマニュアルに沿ったスケジュールで順番に清掃し、夕方5時までに一通りの仕事が終えられるよう、「ほっと」の職員の支援のもと進めていきます。


デイサービスセンターのフロアを清掃中

「ほっと」が近隣に引っ越してきたことをきっかけに始めた取組み

「ほっと」では、企業就労を希望する方や働く力を伸ばしたい方のために、より実践的な就労訓練を実際の職場で行う計画を小平市と協議のうえ、進めていました。一方で、多摩済生園では、以前から別の知的障害者施設の就労実習の受け入れをしてきた経緯がありました。平成20年3月、「ほっと」が花小金井から現在の多摩済生医療団の近くに移転してきたことをきっかけに、話し合いが持たれ、多摩済生医療団が「ほっと」に登録する障害のある方の就労訓練の場を提供する取組みがスタートしました。

平成21年4月からは、小平市独自の「障がい者企業内通所授産事業」として「ほっと」に委託され、この事業の受入れ先として多摩済生医療団が協力をしています。

Win-Winの関係で貢献

最初に多摩済生園で職員が担っている業務の中から仕事を切り出して、障害のある方の就労訓練としてやってもらえる業務を検討しました。調理や介助等の案もありましたが、取組んでもらいやすいことから清掃業務をお願いすることになりました。

清掃する場所は、廊下等を中心に建物の構造上わかりやすく、利用者のプライバシーに関わらない共有部分の場所に限っています。多摩済生園は、定められた範囲の清掃を「ほっと」に業務委託する形をとり、人数に応じて作業工賃相当額を支払うことにしています。「ほっと」は、それぞれの方の障害特性等を踏まえて、作業内容に適した人選、スケジュール調整を行い、毎日の清掃作業を決められた時間の中で終了できるようにします。また、作業を行う障害のある方を支援するため、「ほっと」の職員が必ず一人同行することになっています。

多摩済生園の施設長である中村与人さんは、「特養の現職員体制で高齢者入居施設としてできる事を行う」という考え方を持っています。中村さんは、この取組みについて、「職員が同行して就労支援をしてくれるところが大きなポイント」といいます。一方で、様々な調整により、日によって作業する人数が多い日もありますが、作業した方の人数分の工賃を支払い、また、この取組みだけではできない清掃は、別途、専任の職員を雇用して補い、多摩済生園が負担しています。清掃作業を「ほっと」にお願いすることで、介護職員が利用者への支援に集中できるようになり、Win-Winの関係で取組んでいます。


就労支援の担当者である田中伸一相談員(左)と中村与人施設長(右)

工夫して受け入れ、直接雇用につながったケースも

就労訓練の場として、できるだけ実際の就労に近いかたちで受入れをしようと、職員と同じ通用口から出入りすることにし、タイムカードも用意しています。又、障害のある方が働きやすいように、清掃する場所を図面に色分けして可視化したり、冷蔵庫もある専用の休憩場所を用意して、きちんと休憩をとって仕事に集中できるよう配慮しています。

最初の頃には、清掃作業がうまく進まず、床が水浸しになってしまうなどのトラブルもあり、職員からこの取組みについて疑問の声もあったと言います。しかし、双方の事業所で連携して継続するなかで、定着した取組みになっていきました。

この取組みをはじめて7年以上経ちますが、訓練終了後に、他の企業等で一般就労した方もいます。また、多摩済生園で直接雇用につながった方は5名以上にのぼり、現在は3名が職員として働いています。高齢者雇用の非常勤職員が障害者雇用の方をサポートしながら、クリーニング業務を担当するなど、障害のある方の状況に合わせ、その業務やサポート体制も工夫しています。

社会福祉法人が様々な方に「はたらく場」を提供することが、その事業所の利用者への支援に加えて、地域や社会への貢献につながっているひとつの取組みといえます。


作業の確認ができるよう作業室に掲示された作業手順等


就労訓練している方のタイムカード棚。職員のタイムカード棚の横に設置しています


小平市の「障がい者企業内通所授産事業」を受託し、この事業の連携先である小平市障害者就労・生活支援センター「ほっと」の施設長、中村真英さんからお話を伺いました

もともとは、「ほっと」の登録者や法人内の利用者を対象に、就業能力の向上のための訓練として取組みはじめました。一時期は訓練への参加者が少なくなったこともありましたが、就労移行支援事業所の利用者の就職準備訓練の一環としてプログラム化したり、法人内の作業所利用者の就業体験に役立てられるなど、企業内訓練事業への参加を希望する方のニーズも多様化してきました。ほかにも、就労継続支援B型を利用する前の初めの一歩としての「就労体験」の方もこの事業を利用しています。例えば、精神科のデイケアに通所中で病状が安定した方や、救護施設の利用者などです。最近では、障害者雇用率が上がったこともあり、一般企業での就労が可能な方は企業への就職にもつながっています。

障害のある方本人の状況に合わせて、多様な活用の仕方ができるのがこの事業のメリット。一般企業における障害者雇用への取組みや、企業実習機会の拡大ももちろんですが、社会福祉法人の事業所による「就労体験」の受入れ先が増えてくれることを期待しています。


社会福祉法人未来の建物


小平市障害者就労・生活支援センターほっと の中村真英施設長

社会福祉法人未来  小平市障害者就労・生活支援センターほっと  
〒187-0001 小平市大沼町2-1-3

 

社会福祉法人多摩済生医療団

昭和11年医療保護施設・多摩済生病院として開設。『心をひとつに 助け合い 共に生きる』という理念に基づき、病院、特別養護老人ホーム・デイサービスセンター、訪問介護、居宅介護支援事業所等を運営。

〒187-0041 小平市美園町3-12-1
http://www.tama-sai.jp/