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法人の課題共有から地域とつながる―社会福祉法人愛隣会 ここからカフェ

社会福祉法人愛隣会(目黒区)

社会福祉法人愛隣会は、同一敷地内に高齢・児童・障害分野の10施設があり、職員約300人、利用者約600人以上の大所帯の複合施設です。平成26年4月より地域福祉コーディネーター(以下、コーディネーター)を専任常勤で法人本部に配置しています。そして、利用者・職員・地域の方に開かれた場所として地域交流スペース「ここからカフェ」を都市型軽費老人ホームがある建物の6階に開設しています。

平成28年1月13日掲載

社会福祉法人愛隣会は、同一敷地内に高齢・児童・障害分野の10施設があり、職員約300人、利用者約600人以上の大所帯の複合施設です。平成26年4月より地域福祉コーディネーター(以下、コーディネーター)を専任常勤で法人本部に配置しています。そして、利用者・職員・地域の方に開かれた場所として地域交流スペース「ここからカフェ」を都市型軽費老人ホームがある建物の6階に開設しています。


愛隣会案内図

愛隣会「地域福祉コーディネーター」とは

コーディネーターの業務は、法人が提供するサービスの中で把握したニーズや、課題および課題解決のために行ってきたことを、まずは法人内で共有し、QOLやQOCの質の向上につなげることです。そして、社会貢献の観点から、地域で生活課題を抱える方にその情報を提供し地域と法人がつながっていくことをめざして活動しています。

コーディネーターは、少し離れた場所から担当職員とは違う視点で利用者と接することができます。コーディネーターの平井美香さんは、「法人内も一つの地域であり家族。施設内のニーズを把握するアンテナを持ちながら、利用者や利用者家族、そして職員が抱えている思いや課題を受け止め、そこから見えてくるものを地域に情報発信していくことをめざしている。現在は、施設の種別を超えた課題の共有を行っている」と話します。

地域交流スペース ここからカフェ

愛隣会の基本方針の中に「常に人間とは何か!を問いながら事業を展開する」というものがあります。そして、法人理念として「隣人愛(自らを愛するように貴方の隣り人を愛しなさい)」が創設以来、今日まで受け継がれてきています。この理念に表現されるように、ありのままの自分を見つめ直し謙虚になることで、隣の人へ感謝や配慮が生まれます。自己理解を深めていく中で、他者理解、つまり目の前の課題のある方に寄り添うことができます。

「ここからカフェ」では、“心の居場所や置き場所がない”、“ちょっとした悩みを聞いてほしい”、“誰かと想いを共有したい”、そのような方たちの想いを受け止められる場でありたいと考えています。そして、躓いた時に誰かにSOSが出せるよう、年齢や立場は関係なく、自分の言葉で目の前の人を尊重できる、そのようなことを学べる場でもあります。

施設内の利用者へ、第三者としての寄り添い

法人がコーディネーターに期待することの1つに、利用者への第三者としての寄り添った関わりがあげられます。これまでには、軽費老人ホームの要支援1,2の方を、地域交流スペースここからカフェに招いてのお茶会を開催しました。ボランティア2名が参加し、お茶を飲みながらお話をする場でした。お茶会の後、参加者からは「私が私らしくいられた」との感想がありました。ボランティアとのフラットな関係の中、会話の中で「私はこうだったわよ」などと利用者がボランティアにアドバイスする姿が見られました。いつも、何かをしてもらっている立場の利用者が、自分が他の方に何かをしてあげられたと感じる場になったようでした。軽費老人ホームに戻った後、「お茶会後、参加した利用者さんの表情が変わった」と施設長からも報告がありました。

担当職員とは違う立場で、利用者の話を聞いてあげてほしい等の依頼もあります。職員も、施設内で完結するという考え方から、法人のコーディネーターをうまく活用するようになってきました。例えば、「家に帰りたい」と言う高齢入所者の方に家族の状況を説明し「帰れないのよ」と説得するのではなく、他愛もない話をしていく中で「もう少し、ここにいてもいいかな」と思ってもらえる関わりを心がけています。

利用者だけでなく、職員と地域住民の交流も月1回の〝おしゃべりば〟を通して行っています。金曜日17時半から19時半の勤務時間外に開催しています。「認知症」をテーマに開催した際は、認知症カフェの方にゲストに来ていただき、認知症の方への声掛けなど接し方について話を聞きました。地域にも広報し、保護司やNPOの方など、興味を持たれた方々が参加しました。参加した障害分野の職員からは、高齢分野の話だが、知的障害者への対応や声掛けと似ている部分があったという気づきの声がありました。職員間の交流だけでなく、利用者の家族や地域の課題を理解するきっかけとなっています。

施設を通じて地域の課題を把握、そして地域とつながる

法人内にある訪問介護ステーションの責任者との話で、「高齢者の家を訪問した職員が時間通りに帰してもらえない」「後ろ髪をひかれる思いで帰って来る」という話がありました。在宅で生活する方は独居が多く、話し相手が欲しい様子が見えてきました。要支援1・2の高齢者の課題や悩みに対してどの様な支援ができるか情報交換の場をつくり検討をしています。今後は、ケアマネとも連携し、施設の利用者だけでなく地域の方にも、その人らしい生き方や、いまの健康状態を維持できるよう支援していきたいと考えています。そのために、法人内で情報交換の場をつくり、行政や社協と協働して不足するサービスの創出に力を注ぎたいとしています。

これまで愛隣会では、職員が地域に出て行くことがあまりなく、地域とつながるというよりも、施設間だけで完結してしまうことが多くありました。また、法人・施設内の交流も少なく、それぞれがそれぞれの業務を行っている状況でした。

コーディネーターが積極的に地域の行事に参加する中で、徐々に地域の方たちとも顔が見える関係になってきています。お祭りや防災に関する会議など、積極的に地域に出て顔見知りを増やしています。駒場町会や目黒区独自の住民組織である住区住民会議のスタッフの方から「児童養護施設の子どものために何かをしたい。どのように話を持って行ったらいいか」との依頼があり、児童養護施設の施設長に話をつなぎ、子どもがフラワーアレンジメントを体験できる機会も生まれました。地域住民の方から気にしてもらえ、見守られていたことに気づかされます。

また、施設へ見学にきてくれた方にはお礼状やお礼のお電話をし、地域の方とつながれたきっかけを大切にし、「またご連絡していいですか?」と継続した関係へつなげています。ゆっくり話をしてみると、地域の方の困り事や、近所の人を気付かう気持ちも見えてきました。サービスを受けていることを近所の人に知られたくない方、近頃、お隣の方の姿がみえなくて心配に思っている等の声を聞かせてもらえるようになってきました。

平井さんは「ここからカフェは、地域の人も含めて一人ひとりが自分らしく生きることのできる社会を実現できるように『人と人とが寄り添う場所』をめざしている」と話します。

地域の居場所づくりを進めるための取組み

「ここからカフェ」の取組みの一環として、3回シリーズで第1回目を平成27年9月12日(土)の午後、目黒区近隣住民の方などを対象に「コミュニティ心理学公開講座」を開催しました。「ここからカフェ」自体が地域の居場所のひとつとして、入所者、職員、近隣の住民、ボランティアなどに利用してもらえるよう活動をすすめていますが、この講座は、さらに『地域で居場所(サロン)をつくってみませんか』と呼びかけるものです。

ここからカフェ運営委員の一人でもあり、元東京女子大学大学院教授の高畠克子さんを講師に迎え、めぐろボランティア・区民活動センターとの共催という形で開催しました。目黒区内はもちろんのこと、他の地域で居場所づくりに関わっている方や、ボランティアなど、約50名が参加しました。

コミュニティ心理学の視点から「心の居場所」を作るには?

高畠さんは、「いろいろな地域の方や様々な職種の人との協働によって住みやすい社会を作って行くことが大切」と話し、コミュニティ心理学の視点から、地域に「心の居場所」を作ることの意義を伝えました。また、地域に居場所を作る場合には、ニーズのある所に出かけていくFootwork、様々な方と協働するNetwork、活動の成果を共有するために公表していくHeadworkの3つのワークが必要だと言います。

そして、「心の居場所」を地域で作るには市民感覚を持ったボランティアの支援が不可欠とし、ボランティアに求められる5つの力として、(1)相手の話をゆっくり聴ける力、(2)相手と言葉のキャッチボールができる力、(3)相手の良い面を引き出せる力、(4)すぐに結論や評価を出さない力、(5)失敗から学べる力を挙げました。

「居場所に心を寄せ、継続して来てもらうための工夫は?」という質問に対し、「まずは楽しい場所でなくては!」と高畠さん。おいしいお茶やお菓子の用意や、気を緩めることができる工夫も腕の見せ所です。

めぐろボランティア・区民活動センターと連携した取組み

最後に愛隣会の榊原正明常務理事と地域福祉コーディネーターの平井美香さんが参加者にここからカフェの宣伝をし、めぐろボランティア・区民活動センターの担当者からは、10月にセンターが開催する「地域での居場所(サロン)づくり講座」の案内があり、「色々な形で皆さんと協働していきたい」と締めくくりました。

目黒区内の社会福祉法人である愛隣会と目黒区社会福祉協議会が運営するボランティア・区民活動センターが協働した今回の取組み。今後、地域の住民やボランティア、関係者を巻き込んで「心の居場所」作りのきっかけとなり、地域づくりが進められていくことが期待されます。

 

社会福祉法人愛隣会(目黒区)

〒153-8516東京都目黒区大橋2丁目19番1号
電話番号03-3466-0264  FAX番号03-3466-0265
http://www.airinkai.org/

今後の「ここからカフェ」の取組み