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東京都地域公益活動推進協議会

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高齢者も障害者も子どもも"あたりまえ"にその場にいる居場所づくりをめざして

社会福祉法人芳洋会 特別養護老人ホーム ひのでホーム(西多摩郡)

日の出社協青木さん、日の出ホーム嶋崎さん

日の出町にある社会福祉法人芳洋会が運営する高齢者施設で、地域の子育てサロンと連携した取組みが、平成27年12月、新たにはじまりました。子育てに追われて忙しいお母さんたちが別室でリフレッシュする間、デイサービスのスペースでデイサービスの利用者が子どもたちとふれあい、交流して過ごします。

平成28年9月12日掲載

地域のニーズ

子育て支援サロンの立ち上げに伴って、お母さんたちが集える場所と、お母さんたちがリフレッシュしている間に子どもたちを見守ってくれるボランティアを探していたが、気軽に集まれる活動場所がみつからない現状があった。

日の出町社協青木さん(右)と、ひのでホーム嶋崎さん(左)
日の出町社協青木さん(右)と、ひのでホーム嶋崎さん(左)

社会福祉法人芳洋会 特別養護老人ホーム ひのでホームでは、以前から地域の方に対して事業所の空きスペースを会議室や手芸教室の会場として開放していました。日の出町社協から相談を受けた地域の子育て団体主催の子育てサロンの活動場所を提供する取組みでは、小さな子どもを受入れることの不安がありました。しかし、地域の方に気軽に訪れてもらえるような事業所をめざしていたこともあり、日の出町社協とともに検討と事前準備を重ね、平成27年12月試験的実施にこぎつけました。この取組みをきっかけとして、ひのでホームは、高齢者も障害者も子どもも“あたりまえ”にその場にいる居場所づくりをめざしていこうとしています。

ひのでホームのボランティア受入れ

ひのでホームでは、利用者の生活の質を高めるうえで地域住民によるボランティアの協力は必要不可欠なものと考え、施設内に“ボランティア担当”を配置して16年以上になります。

ボランティア担当は、ボランティア活動をしやすいよう場所と備品の準備をするだけではなく、実際に活動する現場の介護職員の受入れ態勢を整えています。特別養護老人ホーム「ひのでホーム」ボランティア担当の嶋崎美咲さんは、「ボランティアを行う方の要望やクレーム等に迅速に対応するために、法人内の研修を通して職員のコミュニケーションスキルを高めることで、ボランティアの方に『またきたい』と思っていただけるよう心がけている」と話していました。

しかし、一方で新規ボランティアを募集する際のネットワークに乏しく、変化する利用者の要望に合ったボランティアの調整に苦労をしていました。そのため、地域行事や自治会活動などを通して積極的にPR活動を行うことで、少しでも多くの地域の方にひのでホームを知ってもらえるよう動いていました。

枠にとらわれない居場所づくり

子育てサロン「おやこの会ハミング♪(以下ハミング)」代表の金子緑さんは、サロンの立ち上げに伴ってお母さんたちが集える場所と、お母さんたちがリフレッシュしている間に子どもたちを見守ってくれるボランティアを探していました。

平成27年10月、金子さんから相談を受けた日の出町社協 地域福祉推進課 地域福祉係の青木建治さんは、近隣にあり、以前からボランティアの受入れや場所の貸し出しなど施設の開放に積極的だったひのでホームで、ハミングが活動するための場所を提供しつつ、子どもたちと施設の利用者との交流ができないかと、嶋崎さんに提案しました。

相談を持ちかけられた、ひのでホームでは、小さな子どもを受入れることへの不安がありました。しかし、地域の方に気軽に訪れてもらえるような事業所をめざしていたこともあり、日の出町社協とともに検討と事前準備を重ねました。

はじめてのサロンは、平成27年12月、お母さん6名と5か月~3歳の子ども9名が参加しました。ひのでホームのデイサービスで使用している和室スペースを子どもたちに開放し、別室でお母さんたちがアロマ教室を受けました。青木さん、嶋崎さんとハミングが用意した2名のボランティアが、怪我やトラブルのないように子どもたちふれあう利用者と子どもを見守りました。現在まで7回活動が開催されましたが、その内の2回がデイサービスの利用者との活動となっています。

地域の方は新しい風

はじめは慣れない場所に戸惑う子どもたちと、普段は聞こえることのない子どもたちのかわいい声に利用者も戸惑っていましたが、すぐに利用者が子どもたちのもとに集まり、抱っこしたりあやしたりと人だかりができました。「もう孫も大きくなっているからこんな赤ちゃんは本当に懐かしい」と利用者から嬉しそうな声が聞こえてきます。「あっ、今笑ったね」と利用者同士の会話も自然に生まれます。

子育てサロンの子どもを抱くデイサービス利用者
子育てサロンの子どもを抱くデイサービス利用者

嶋崎さんは、「特別養護老人ホーム等にいると同じ年代の方だけが集まってしまう。このような取組みを行うことで、さまざまな世代の方が施設に来所してくれる。地域の方が施設に新しい風をいれてくれ、それがご利用者の生活の潤いになっている」と話します。そして「ご利用者には、地域の方が来ている時もありのまま過ごしてもらっている。ホームにある売店や廊下でご利用者が子どもたちや地域の方と会う自然な交流も大切にしている」と話します。

この取組みがきっかけで、初めてひのでホームを訪れた金子さんは「施設の中はとてもきれいで過ごしやすく、職員の方がみんな明るくて素敵という印象を持った。実際に行ってみて施設がどういうところなのかわかったし、場所の貸し出しをしているということも知らなかった。場所をお借りできるだけだと思っていたのに、子どもをみてくれる態勢まで考えてくださったことに驚いた。次は、子育てサロン利用者のお母さんたちから施設にできることはないかを考えている」と話します。また、参加者からも「特別養護老人ホームは暗いイメージがあったが、ひのでホームの明るく暖かい雰囲気にイメージが変わった」という声がありました。

子育てサロン受入れまでの法人内での準備・調整、職員の反応

子育てサロン開催の一年程前から、ひのでホーム内では、施設長より地域の方への場所の貸し出しを積極的に行っていきたいとの方針があがっていました。そのため、子育てサロンとのコラボ企画は,受入れる前提で話を進めることができました。

職員間で問題点として主にあがったことは、「デイサービスのご利用者と関わるうえでの感染症対策」と「施設設備使用マニュアルの共有」の二点でした。

そのため、新たに作成したマニュアルを金子さんへ提供し、子育てサロンに来所するすべての参加者へ共有してもらいました。

また、子育てサロンの参加者に、短い時間でも楽しく過ごしてもらえるように、金子さんへ、当日どのようなサロンを計画しているのか、子どもを預けるうえでの心配事はないか等、事前の確認を取りました。ひのでホームの職員としても、どんな人が何の目的で来所するのか、また地域にとってどういう試みなのか、施設にとってどんな相乗効果が生み出されるのかを開催前に知ることで取組みに対して理解が深まり、一つの未体験イベントとして当日を楽しみに迎えることができました。

分野の垣根を越えた地域のネットワークへ

この取組みから青木さんは、社協の立場で「事業所が地域の中で異質な存在ではなく、地域に存在しているのが当たり前と感じてもらえるような事業所を増やしていきたい」と考えました。そこで、平成28年5月に、日の出町社協主催「ボランティア受入れ施設向け研修」を企画し、ひのでホームで開催しました。町内の保育園や幼稚園、高齢者施設のボランティア担当職員などが集まり、参加者が保育サポーターボランティアを体験しながら、地域のボランティアを受入れる意味を考えました。同時に、ひのでホームが実施した地域の子育てサロンに場所を貸し出す取組みを紹介しました。

ひのでホームは、昨年度のボランティア研修から、地域のボランティア受入れ施設の事例発表者として関わっていました。そこで、青木さんより、昨年よりステップアップした研修を行いたいとの相談を受け、今回の「ボランティア受入れ施設向け研修」は、企画の段階から携わりました。嶋崎さんは昨年の研修では、資料を使ったボランティア受入れ事例発表だった為、今年は実際に見て体験してみてはどうかと提案しました。

「ボランティア担当という役割についたばかりの頃、ボランティアを『業務』として難しく捉えてしまい、エネルギッシュなボランティアの方々との温度差に正直悩むこともあった。しかし、実際に一緒に活動を重ね、ボランティアさんの熱い想いを聞いたり、たくさんの笑顔に出会ったりしていくうちに、“ボランティア活動って素晴らしい!すごく楽しい!”と心から思えるようになり、受入れ担当として大きく変わることができた」と嶋崎さんは話します。

その経験から、嶋崎さんは、今回研修を受ける施設職員・子育てサロンの参加者、子ども達、デイサービスの利用者、見守りボランティアの方と友情出演で参加した町内会の保育施設職員で結成された歌う体操のお兄さんグループのマウンテンズ等、参加者が「楽しい」を一緒に共有できる内容で企画できたら、地域のつながりを深める第一歩となるのではと考えました。

研修に参加した事業所の職員からは、「地域の方への場所の提供は、利用者への感染症の予防の観点などから、難しいと思っていた。しかし、ボランティア受入れに関しての書類作成方法や、ひのでホームでの実践事例を聞いて、思っていたより難しいことではないと感じた」「こういうやり方があるんだとわかった」「地域福祉につながっているという見方をはじめて知った」などの感想がありました。

青木さんは、「研修を通して、施設に利用者以外の方が入ることや、施設を地域のために有効活用することで生まれる効果を感じてもらい、新しい気づきがあったと思う」と話します。また、「参加者同士の垣根を越えた横のつながりができればと企画した。それぞれの施設が『うちの施設には何ができるだろう』と考えたり、ひのでホームの取組みを見て『これならうちにもできるかも』という思いを持ち帰ってくれたのではないいか」と話します。

実際に、今回の研修を終えて、参加した高齢者施設と保育園の職員は、「今まで地域内の他の事業所と交流がなかったが、今後一緒に取組むことができないかと話が広がった」と、種別を超えた今後のつながりにも期待が広がります。

嶋崎さんは「今後も社協や他団体との横のつながりを大切にしながら、垣根なく幅広い年代で地域に貢献していきたい。ひのでホームとしても、日本一の福祉のまちづくりをめざす日の出町の町おこしに一役買いたい」と話します。

青木さんも「みんなが一緒に暮らせる当たり前のまちづくりをすすめるのは社協だけではなく地域。社協は音頭を取るだけではなく、地域の方の自主性を大切にしながら、上手にやっている団体にリーダーシップを発揮していただき、一緒に取組んでいる」と話します。

今後は子育てサロンにおいても、更に個別のニーズに対応できるようにするとともに、新たなニーズを掘り起こしていくつもりです。また、「ボランティアの輪を広げて協力すれば、すべての人に地域の人の目が届くようになるはず。福祉施設もひとつの地域の社会資源としてみんなで活用してもらいたい。そしてそのお返しとして地域の方が施設の行事を手伝ってくれるような関係になれば、施設が自然と地域になじんでいくことができる」と地域が協力してつくる共生社会への想いを青木さんは語ります。

この取組は始まったばかりですが、ひのでホームは施設職員だけではなく、地域に暮らす一人ひとりが“あたりまえ”を共有し、高齢者も障害者も子どもも一緒に暮らすことが“あたりまえ”の町になってほしいと願っています。そのためにも今回のような取組みを通して施設職員同士のネットワークを広げ、医療・児童・障害・高齢という種別の垣根を取り除いていきたいと考えています。「今回、打ち合わせを重ねるなかで、青木さんの地域づくりへの思いに共感した。ひのでホームとして、これからも積極的に地域の役に立ちたい。そして、いつか障害者も一緒にデイサービスで過ごせたら良いと考えている。それが自然なかたちで“あたりまえ”になればいい」と嶋崎さんは語ります。

ひのでホームの行動指針“あたりまえをあたりまえに”に基づき、ひのでホームは、利用者に限らず、誰もがあたりまえに分け隔てなく生活を送れる居場所づくりをお手伝いしていく使命があると考えています。今後は、地域のニーズをみつけて取組んでいけるよう、日の出町社協をはじめとする地域のさまざまな事業所等とも分野をこえた連携により横のつながりを広げていきたいと考えています。

 

社会福祉法人芳洋会 特別養護老人ホーム ひのでホーム

〒190-0182 東京都西多摩郡日の出町平井3076
TEL:042‐597‐2021 / FAX:042‐597‐1973

http://www.h-sunrise.com/service/home/

「あたりまえのことを、あたりまえに」を行動方針として掲げている社会福祉法人芳洋会特別養護老人ホーム「ひのでホーム」は、自然豊かな日の出町「文化の森」の中にあるホーム。地域の中の施設として、ホームにあるカフェやショップを地域の方へも開放している。