社会福祉法人の使命に基づき、地域における福祉課題の解決に向けて、3層による地域公益活動を推進します。

東京都地域公益活動推進協議会

ホーム > 各法人の取組み事例の紹介 > 児童養護施設の出身者に、地域の施設が協働してかかわる

このページをプリントします

児童養護施設の出身者に、地域の施設が協働してかかわる

多摩ユースサロン(多摩地域)

「多摩ユースサロン」は、多摩地域の児童養護施設を退所し、社会で生活する人たちの交流の場として、平成28年に立ち上がりました。多摩地域14の児童養護施設による三多摩児童養護施設長会における発案により、各施設の自立支援コーディネーターを中心に、NPO法人エンジェルサポートセンターと連携してサロン活動やイベントを実施しています。

第1回サロンの様子

「多摩ユースサロン」は、多摩地域の児童養護施設出身者たちが安心して集える居場所として、複数の施設の自立支援コーディネーターが協力し、NPO法人と連携して活動をしています。立ち上げの年である平成28年は料理教室やボウリング大会などを行いました。参加者は企画を楽しみながら日々の心配事を児童養護施設の職員に相談したり、他の参加者と施設での思い出や近況などを語り合い、交流を深めています。

複数の施設が合同で開催しているため、出身施設以外の退所者や職員と知り合え、参加者からは「違う施設の人と話せて良かった」との感想が挙がっています。

自立支援コーディネーター

平成24年度から東京都の「自立支援強化事業」として、都内の児童養護施設に配置されている専門職。

児童養護施設を退所する子どもたちの社会での自立を総合的に支援するため、入所中から就職や進学など退所後の生活支援を、退所後はアフターケアとして個別相談等を行っている。また、自立支援に関する施設職員への助言や関係機関との連携等も担当している。

一施設では難しい支援を協働で

18歳で施設を退所し、地域で生活をすることになる児童養護施設出身者のために、その自立を支えるアフターケアは欠かせないものです。しかし、支援体制はまだ整備の途上にあります。「病気になったときにどうしたらいいか」「一人でさみしい」など、生活のちょっとした悩みを相談したり、安心して自分を解放するには、出身者同士で連絡を取り合うだけではなく、児童養護施設のことや本人が入所することになった事情を知る、専門知識を持つ大人が傍にいる集まりであることが大切だと、多摩ユースサロンでは考えています。

「自立支援コーディネーターが中心となって、職員は皆アフターケアに尽力しているが、限られた人と時間のため、退所児童の自立を支えるための支援には限界がある。一つの施設だけで取組むのは難しくても、各施設のコーディネーターが協力し、施設出身者同士のつながりの中にかかわっていけば必要な支援が実現できると考えられた」と、多摩ユースサロン立ち上げの検討会委員の一人である、至誠大地の家施設長の高橋誠一郎さんは、退所後のアフターケアに地域の施設が協働で取組んだ背景を話します。

地域住民となった子どもたちとのかかわりを通じた地域公益活動

社会福祉法人による地域公益活動の観点において、三多摩児童養護施設協議会代表の高橋利一さんは、「施設の退所者は地域の住民になる。アフターケアとして施設出身者とかかわり、地域でのつながりを支えることは地域公益活動でもある」と、サロン活動の意義を伝えます。また、「職員は施設の外のことはなかなか分からない。施設出身者と接して地域のことを教えてもらうことは、職員の資質向上にもつながる」と話します。

職員育成の面ではさらに、「各施設が協働で取組みをすすめることで互いに影響を与え合い、地域の児童養護施設の質を全体的に底上げできる。自施設以外の出身者とのかかわりも、日常業務へのヒントになる」と、その効果を語ります。例えば、各施設の自立支援コーディネーターは、サロン活動の方針を検討する内に、自発的な勉強会も行うようになりました。

この点について、多摩ユースサロン事業実行委員会実行委員長・こどものうち八栄寮施設長の大村正樹さんは、「自立支援コーディネーターへの提案はサロン構想を伝える程度だったが、コーディネーター同士で連携し、一生懸命つくりあげていった。『いい形で次の活動につなげよう』と、回を重ねるごとに発想も広がっている」と話します。サロン活動という切り口から各施設の結びつきが今まで以上に深まり、地域の児童福祉の充実につながる流れができ始めました。

安心できる居場所を求めている

もっとも、こうした取組みをすすめる第一の原動力が「施設を退所した子どもたちのため」であることは揺らぎません。大村さんは、「実際にサロンをやってみて、施設出身者は安心して集まれる場所が欲しいのだと再確認した」と言います。

サロンには、積極的にプログラムに参加する人だけでなく、一人で静かに時間を過ごす人も来ています。自立支援コーディネーターなど「児童養護施設にいたことを話せる人がいる」という安心できる環境を求めて、施設出身者はそれぞれの目的でサロンに集まってきます。そして、同じように悩みや不安を抱えながら社会で努力している仲間との出会いが、自立に向けた力に変わっていきます。

第2回サロン「料理教室」

第3回サロン「ボウリング大会」

 

子どもが集まれる「柱」づくり

多摩ユースサロンを始めて2年目となる平成29年度は、「参加者に何を与えられたのか」「本当に施設出身者に沿っている支援か」を常に考えながら、引き続き参加者の希望に基づいてサロンの在り方を検討しています。これまでの参加者が変わらず集まれるようにするだけでなく、今はまだ参加をためらっている人も、必要なときに安心して来られる空間づくりをめざしています。

大村さんは、「施設出身者が集まれる『柱』をつくる仕掛け」が今の課題だと言います。これまで諸所で開催していたサロンの場所を、平成29年度から地域内の一会場に固定したのは、この「柱」づくりの一環です。施設出身者が「ここが集まれる場」と認識できるようにするとともに、児童養護施設の他にも知っている場所を地域の中につくれるようにとの願いも込められています。

施設出身者と伴走し、ともにつくり上げる安心の居場所「多摩ユースサロン」は、これからも地域の中で取組みをすすめていきます。

多摩ユースサロン

多摩地域14の児童養護施設の自立支援コーディネーターを中心に、NPO法人エンジェルサポートセンターと連携して活動中。

三多摩児童養護施設協議会
NPO法人エンジェルサポートセンターこのリンクは別ウィンドウで開きます