地域共生社会の実現に向け、“オール東京の社会福祉法人” による地域公益活動を推進します。

東京都地域公益活動推進協議会

ホーム > 各法人の取組み事例の紹介 > はたらきにくさの理解と多様な働き方の受け入れとしごとの組み立て

このページをプリントします

はたらきにくさの理解と多様な働き方の受け入れとしごとの組み立て

社会福祉法人芳洋会 特別養護老人ホーム サンライズ大泉

社会福祉法人芳洋会 特別養護老人ホーム サンライズ大泉では、「働きにくさ」を抱えた方を受け入れることによって、その人その人にあわせた仕事の組み立て方、チームのあり方などを考えながら、自分たちの仕事の見直すことによって、業務改善にもつなげています。

平成30年6月11日掲載

<取り組みのきっかけ>

たまたま、中途採用、パート募集の求人に就労に対する支援の必要な方「Aさん」が直接応募してきたことがきっかけでした。採用面接で履歴書をみて、何か事情があるのか尋ねたところ、”幼少期より難病を抱えていること、精神面と身体面のバランスがうまく保てないこと、就労すると気負ってしまい心身ともに不安定となり、継続的な就労ができていないこと、2~3ヶ月で転職を繰り返し、生活保護を受給し生活をしている状況だということ”がわかりました。そんな状態なので、新たな就労先も見つからず、偶然、当施設の掲示板の求人をみて、直接応募したとのことでした。

就労はできたとしても、「頑張って、はたらかなくては」という思いで決められたシフト・業務をこなそうと無理をし、体調を崩し退職をせざるを得なくなる負のスパイラルになっていました。状況を聞いていくうちに、Aさんの「就労する意欲」と「はたらきにくさ」を知り、何とか継続的な就労ができる方法はないかと考え、以前説明を受けていた「はたらくサポートとうきょう」の取組みがあてはまるのではないかと、東京都社会福祉協議会へ相談をし、登録、整備を行っていくこととなりました。

サンライズ大泉

 

<職場外の支援体制づくり>

「はたらくサポートとうきょう」への登録、体制の整備を行うとともに、「東京都困窮者就労訓練事業所」の認定申請をTOKYOチャレンジネットを通して行いました。また、Aさんの生活保護担当者との連携を図るため、連絡を取り合い、「はたらくサポートとうきょう」の担当者の方から、制度の説明などを行ってもらい、連携協力体制を整えました。

 

<受け入れ側の理解~一緒に取り組む~>

同時に、Aさんの「はたらきにくさ」は何なのかをAさん本人と話し合いの中で相互に理解しあいました。また、意向の再確認を行いました。

そして、Aさんを受け入れるチームへ主旨や目的を説明し、理解を得るようにしました。そして、チューターを中心に自分たちの仕事内容の見直し、Aさんにお願いする業務内容を一緒に決めるようにしました。Aさんにとってプレッシャーに感じないように、また、Aさんがいてくれることで、その分、チームメンバーが直接的なケアに集中して取り組むことができるように配慮して内容を組み立てていきました。一緒に取り組むという体制でAさんやチューターだけでなく、チームのこととして考え、相談し、協力していくことができました。

 

<職場内の支援体制>

施設内の役割は、「チューター担当」「現場責任者」「就労支援担当者」を明確にしました。

○「チューター」担当(ユニットリーダー)は、日々のOJTをしながら、本人の日々の仕事の相談、チームメンバーとの調整役。

○「現場責任者」は、チューターやチームメンバーの相談やフォローを。

○「就労支援担当者」は、Aさんが言いにくいことを聞いたり、はたらきにくさに対する相談窓口としました。また、就労支援担当は、毎月のAさんとの面談に加え、SOSが出しにくいAさんに対し、交換日記をすることにしました。仕事のことや日常的なこと、日々の感じていることを、強制ではなく、書きたいことがある時に書いて持ってくるというルールにして、言いやすい環境づくりに努めました。

 

<活動プロセスと本人とチームメンバーの変化>

Aさんはもちろん、受入れチームのチューターやチームメンバーの状況にあわせて、目標設定をして、仕事の日数や時間、仕事の内容を定期的に面談し振り返り決めていきます。

Aさんは、「非雇用型Ⅰ(無償)」からスタート。「職場の雰囲気に慣れる」こと、「決められた日時に継続して通うことができること」を目標にし、支援を開始しました。チューターやメンバー、ご入居者との顔合わせができ、Aさんも受け入れ側も相互理解を深める時間を持つことができました。最初の2週間で雰囲気もわかり始め、次のステップでは、「非雇用型Ⅱ(有償)」就労日数を1日増やし、間接的介護業務に加え、簡単な直接的介護業務をチューターの指導のもと行うこととしました。目標も「体調のコントロール」と「SOS(体調不良)を伝えることができる」としました。

メンバーからの積極的に声を掛け、体調は大丈夫か。無理はしていないか。をつど確認しました。最初のころは、体調不良により休んでしまうことが定期的に数日続けてありましたが、その後は安定して通うことができてきました。「休んでも理解してもらえる」という気持ちが、体調の安定につながったようでした。

4か月を過ぎたころ、職場にも慣れ、波はあるものの、体調不良で休むことは減ってきて、少しずつ行えることが増え、自信がついたことで、「もっといろんなことにかかわりたい」と意欲が出てきました。そのため、就労日数、時間を少し増やし、直接的介護の内容も増やしてみました。Aさんのやりがいにつながる一方で、自分の役割、必要性を大きく感じてしまい、逆に体調不良を周りに言えない状況となってしまいました。ただ、周りのスタッフの理解や気づきで、就労支援担当者へすぐにつなげてくれ連携して、Aさんを支援することができました。

   

   活動の様子

受け入れ側の職員が「やりがい」を感じるとともに、Aさんが仕事を休んでしまうと、無理をさせすぎたのではないか、無理していたことに気づけなかったのではないかとプレッシャーを感じてしまうことがあり、チューターやチームメンバーの精神的なサポートが必要でした。

<今後に向けて>

これをきっかけにして、今後EPAの外国人就労者の受け入れや、練馬区のお元気高齢者地域活躍推進事業など、働く人も多様化する中でさらに仕事の切り出しを進め、それに対応したサービス体制を整えていくこと。受け入れスタッフが、それぞれの目的の違いなどの理解をより深める必要性も痛感しました。

事例が先にきたケースであり、勉強をしながら、体制を整え、まさに試行錯誤をしながら進めてきたわけですが、Aさんを受け入れてみて、「人を支えることを専門とする職員の存在」「働く場としての機能」をいかすことができ、社会福祉法人としての責務を再確認しあうことができました。

  

   活動の様子